さすがに僕は自分の体の変化に気付いていた。
お姉さんと離れたくない。
ずっとこうしていたい。
目の前の唇に吸い付きたい。
僕のチンポはガチガチに硬くなっていた。
「ああああぁぁぁぁぁ!!!!」
お姉さんが全身をビクビク痙攣させながら、突如声を漏らした。
僕は何が起こったのか正直分からなかった。
シーンと静まった僕の部屋で、よく考えると変態行為以外の何物でもない行為をやっていたのだが、お姉さんは何度か僕の息を吸い込んだ瞬間、目をギュッと瞑り、眉を八の字に歪め、何かに耐えているような表情で声を漏らすと、より一層僕の全身をきつく抱き締め、全身をビクンビクンと痙攣させていた。
お姉さんの心臓の鼓動が尋常じゃない。
バクバクバクバクと信じられないようなスピードで動いている。
お姉さんの体から伝わる、そういった数々の異変が僕は怖くなった。
心臓麻痺か何か起こしたのかとか、何か持病でも持っててそれが出たんじゃないかとか、そんな事を考えているうちに、とてもお姉さんのことが心配になってきた。
「お姉さん・・・大丈夫・・・?苦しいの?」
声を出した時、予想以上に自分の声が上擦っていることに自分でビックリした。
心臓がお姉さんと同期してバクバク言っているため、うまく喋ることができない。
お姉さんは僕の問いかけに一瞬ビクッと体を震わせると、さらに体を締め付けてきた。
『意地でも離さないぞ』と言わんばかりである。
そしてわずかではあるが、次第にお姉さんの心音も痙攣も収まってきていた。
「大丈夫よ武君・・・もうちょっと待って・・・」
お姉さんはそう言った。
しかし、僕はお姉さんのかけた魔法から急激に覚めていった。
お姉さんの体が正常に戻っていることを肌で実感した瞬間、まるでオナニーを終えた後の男のように、急激に冷静になっていった。
何か余韻に浸っている感じがするお姉さん。
少しずつ僕は、お姉さんが僕を抱き締める力が弱まっていることに気付いた。
がっしりホールドされている腕をもぞもぞ動かすと、辛うじて動くようだ。
突然だが、金縛りにあったことはあるだろうか。
あれが怖いのは、脳がはっきりしているのに体が全く動かないという状況である。
あれから脱出することは非常に困難だが、実は僕は独自にその脱出方法を編み出していた。
まず一旦冷静になり、体を動かそうとする意思をなくす。
そして頭の中に0~100までのゲージをイメージし、10秒ほどゲージを100にするくらいの力を溜め込む。
そして一気にゲージを100にする力を解放するイメージを浮かべながら、「ほりゃああああ!!!!」と叫びながら急激に起き上がるのである。
この方法によって僕は金縛りから脱出できることに気付いた。
僕はお姉さんに抱き締められつつ、そのことを思い出していた。
お姉さんのホールドの力を確認する。
(いける!)
「・・・」
急に力を抜く僕。
「武君・・・?」
密着状態のため、体の変化は手に取るように分かる。
お姉さんは僕が急激に力を抜いたことを敏感に察知したようだ。
僕は力を抜いた体でぼんやりと横山光輝の三国志を思い出していた。
僕の中の竜が今、天に昇らんとしていた。
「ほりゃあああああ!!」
「うわあ!!」
僕の奇声と共にお姉さんの体がふわっと宙に浮き上がった。
その瞬間、僕は右に体を回転させ、お姉さんの体は何もない空間にドサッと着地した。
お姉さんの瞳がすかさず僕の方にキッと向けられた。
僕はすかさずベッドから退いた。
そこにコンマ何秒かの差で飛びかかってくるお姉さんの体があった。
お姉さんと僕の間で火花が飛び散っていた。
しかし冷静になって考えてみると、お姉さんの目的は一体何なのだろうか。
僕のことが好きなのだろうか。
それにしたって、まず口で言うべきであろう。
いきなりハンターするとは何事か。
お姉さんの体の感触と、ひと時の異常体験がお姉さんに対して好意を持たせてしまったのも事実で、恐怖と好意の狭間で僕の思考は揺れていた。
お姉さんの好意には何か理由があるにしろ、我を忘れてしまっていることは確かである。
僕に体を跳ね飛ばされ、自分の存在が否定されたかのような気持ちになっているのだろう。
これは怖い。
一方的な気持ちであると自覚してしまった人間というのは、時折信じられないようなことをしてしまうものである。
お姉さんにベッドに押さえつけられて、ゆうに1時間は経っている。
お姉さんは僕を支配してる感覚だったはずだ。
しかし突如として拒否されたお姉さん。
僕はただ逃げたかっただけで、お姉さんは別に嫌いじゃないが、本人はそうは思ってしまい。
野獣のような目を僕に向け、綺麗な顔を醜く歪めていた。
そこでピーンと来た。
お姉さんは、僕に受け入れられないと感じてしまった自分の気持ちを暴走させている。
それをうまく収めるアイデアが浮かんだのだ。
名付けて『むつごろうさん作戦』である。
お姉さんはジリジリと僕の方に無言でにじり寄って来ていた。
一瞬の隙をついて、僕はお姉さんの懐に間を詰めた。
突然の出来事に目を見開いたお姉さんの表情が見える。
すかさず僕はギュッとお姉さんの体を抱き締めた。
腕ごと抱き締める形で、お姉さんには何もさせない。
そして僕はこう言った。
「お姉さん、大丈夫だよ。僕はお姉さんの味方だから。ほら、よしよし」
そう言いつつ僕はゆっくりとお姉さんの後頭部を何度も撫でた。
「大丈夫だよ。興奮しないで。よしよし落ち着いて。僕は逃げないから。僕はお姉さんの物だからね。ほ~ら、よしよし。大きく深呼吸するんだ。1回落ち着こう」
僕はそうなだめながらお姉さんの顔を見た。
キョトンとした呆けた表情のお姉さんがいた。
「本当に武君は私の物?」
しかし、お姉さんが食いついたのはその部分だけだったらしい。
半信半疑な感情を持ちつつも、自分の気持ちが受け入れられたと感じたお姉さんは、次第に目に涙を浮かべ、ヒックヒックと泣き始めた。
僕はお姉さんが泣き止むのをずっと待った。
「冷静に考えると、すごいことしちゃったね、私・・・」
(今頃冷静になったのかよ!)と心の中で突っ込みつつ、僕はお姉さんの第一声を聞いた。
「お姉さん、僕は味方ですから。お姉さんのことも好きですし、冷静に訳を話してください」
お姉さんの味方だよ作戦を実行しつつ、お姉さんの話を引き出すために優しく促した。
お姉さんは下を向いて俯いたままだったものの、次第にゆっくり顔を上げ、僕の手を両手で握り締めて話しだした。
「私、レズなんです・・・」
(はい?)
「昔から女の子が好きで好きでたまらなかった。でもそれが間違いだってことも分かってるんです。心も体も女の子が欲しくてたまらないのに、一方でこんなんじゃ将来普通の恋愛も結婚もできないなって思う自分もいて、どうしていいか分からなかったんです」
(はい?)
「そんな時に武君に会って、明らかに女の子みたいな顔なのに本当は男の子で、頭がこんがらがってきたんです。それからずっと武君のことばっかり考えるようになって、男の子でも、ああいう女の子みたいな子ならアリかなとか想像しちゃって」
そ、そんな事を考えていたのか。
男だけど顔が女みたいだから、レズの私でもアリかなって・・・。
なんじゃそりゃあ!
ディープすぎるだろ、常識的に考えて・・・。
「武君とならいいかなあって。私に抵抗感を感じさせず女にしてくれて、ゆくゆくは普通の男が好きな女の子に戻してくれそうだなあって。そう考え始めてから武君が欲しくてたまらなくなって」
オナニーさえしたことのない俺にそんな事を言われても。
「お願い!!私を助けて!!私を普通の女の子に戻して!!武君じゃなきゃ無理なの!!さっきベッドで時間をかけて確かめたの。武君、男なのに全然嫌じゃないって。むしろ大好きだなあって感じたの。おまけに・・・その・・・イッちゃったし・・・」
行っちゃったって、どこに?
まあ、確かにお姉さんに抱き締められている時は、怖かった反面、気持ちよかった。
脳が変になっちゃったし。
しかし、普通の女の子に戻してって言われても、どうすればいいんだか。
もともと女だろう。
女を女にしてって言われてもなぁ。
「いいですけど、別に何も特技とかありませんよ、僕?」
「ふふ・・・大丈夫。これがあれば!!」
お姉さんはそう言うと僕の股間に手を伸ばし、まだ硬さを幾分か残していた僕のチンポをギュッと握り締めた。
「うわあ!!何するんですか!!」
「やっぱ男の子なんだあ。信じられない・・・そんな女の子みたいな顔して・・・」
「そういうこと言わないでくれませんか!!男なんですから!!」
「反則よ、こんなの。いいとこ取りしすぎじゃないの。女の子にチンポ付けたみたいじゃない・・・」
お姉さんはそうブツブツ言いながら僕のチンポを握り締めていた。
「一度落ち着いてくださいって!僕はお姉さんの味方だって言ってるでしょう!!」
女が男のチンポを積極的に握ってくるなど想像しようもない僕は、とりあえずお姉さんを冷静にすることを心掛け、とりあえずチンポを握っている手を離させた。
「前から思ってましたけどね、物には順序ってものがあるでしょう!いきなり飛びついてきたり、いきなりチンポ掴んだり!!それにね、お姉さんは大学生でしょ!!僕は中学生ですよ!!年の差ってもんがあるでしょ!!」
口からマシンガンのように言葉が出てくる。
そこで、はっと気付いた。
お姉さんの味方だよ作戦が台無しだ。
お姉さんの顔が悲しみの表情に変わっていく。
「だ、だからですね、何度も言ってるように僕はお姉さんの味方なんですから、色々順序ってもんをですね・・・」
「本当に私の味方?」
「ええ。だからですね、いきなり飛びつかなくていいんですって。お姉さんを拒否しませんから。全てを受け入れますから」
「・・・」
そう僕が告げると、お姉さんの頬がポッと紅く染まった。
今、何か企んだな。
「私はね、女の子しか好きになれないの。自分がよく分かってる。でもそれを治したいって思うのも本当。武君は私を正常な女の子に戻してくれる唯一の男の子なの」
「はぁ。それは何となく分かりましたけど、僕に正常な女の子に戻して欲しいって言われてもですね、正直何をしていいやらさっぱり分からないんですけど・・・」
「ショック療法しかないんじゃないかと思うの。普通の男の子はまだ抵抗あるけど、武君は女にしか見えないし、でもチンポあるし。私の体に男の体を少しずつ刻み込んで欲しいの」
「チンポは男なんだからありますよそりゃあ。だから、男の体を刻み込むって何を・・・何かエッチなことですか、もしかして?」
「・・・」
お姉さんは少し沈黙した後、持ってきた自分のカバンから何かを取り出した。
ペットボトルのジュースである。
「のど、渇いてない?」
「はぁ?」
「色々暑苦しいことしちゃったし、のど渇いたでしょ。ほら飲みなって」
「はあ。まあ貰いますけど」
お姉さんはなぜか、僕がジュースを飲むのをずっと見つめていた。
この時、何の疑いも持たなかった僕は馬鹿としか言いようがない。
「あ・・・何だ?体がうまく、動かな・・・」
お姉さんはニヤリと笑うと僕の方に近付いてきた。
そしてキュッと抱き締めると・・・。
「ごめんね武君。武君は味方だって言ってくれたけど、このやり方が一番だと思うの。安心して。体に害はないから。ちょっと動けなくなるだけ」
「何を、の・・・飲ませたんですかぁ・・・」
「ふふっ」
お姉さんの顔が動けない僕に向かって近付いてきた。
やばい。
本当に抵抗できない。
脳裏に恐怖が芽生えたその瞬間、僕の唇にお姉さんの唇が重なった。
(あ、キスを・・・)
初めてキスというものを体感した僕だった。
しかし、お姉さんにとってのキスはこんなものじゃなかった。
テレビでよく見るキスというのは、口と口をチュッとやってそれで終わりというのが大半で、僕にとってもキスはそんな印象でしかなかった。
しかし、お姉さんは目を細めながら口を僕と重ねた後、全く動こうとしない。
長いなあと次第に思い始めたのは、おそらく2、3分経った頃のことだった。
お姉さんは1回、右に顔を傾けながらキスを終えた後、一旦口を離して、今度は左に顔を傾けながらキスをした。
近付いてくるお姉さんの目が僕の唇を凝視し、それ以外は見えていない感じがした。
しばらくして2回目のキスを終え、とりあえず口と口をくっ付けるという段階を満足したらしいお姉さんは、今度は僕の下唇をムニッと自分の唇で挟み込むと、吸い付いたり舌で僕の下唇を舐め回したりということを繰り返した。
「んん・・・」
お姉さんは完全に目がイッており、理性が飛んでいるのではないかと僕は思った。
下唇に満足すると、今度は上唇に移り、同様の行為を繰り返していた。
お姉さんの唇の感触が絶え間なく僕に妙な感覚を与えていた。
上と下の唇を丁寧に全部吸ったり舐め回したりした後、お姉さんは腕を僕の後頭部に回し、ギュッと抱き締めたまま今度は普通のキスを力いっぱいしてきた。
お姉さんの唇の吸引力が今までと全然違っていた。
僕の全てを吸い取ることが目的かのような、そんな感じだった。
一度キスの力を弱め、お姉さんは口と口が触れる程度のキスをしてきた。
(何だ急に?)と思ったが、お姉さんはキスを始めて、初めて僕の目を見た。
僕の目を見ながら、お姉さんは強く吸ったり軽く吸ったりを繰り返した。
密着したお姉さんの体から、先程と同様の心臓の爆音が聞こえてきており、あまりに長く、全くやめる気配のないお姉さんのキスと、再び高鳴り出した心臓の音が僕の脳を再び変にしていった。
こんなに長く唇を弄ばれると、頭が変になる。
お姉さんを抱き締めたい。
ギュッてしたい。
でも体が動かない。
次第に唇に力が入らなくなり、少し口が開いて来た頃、僕の唇を舐め回していたお姉さんの舌が僕の口の中に入ってきた。
「あっ・・・ああああ」
思わず変な声が出た。
お姉さんはニヤリと笑うと、一層後頭部に回していた手にギュッと力を入れ、より一層口と口をくっつけていた。
一つになった僕とお姉さんの口の中で、お姉さんの舌が僕の口内を舐め回していた。
そんな事をされたことがない僕は、ただただお姉さんの舌の感触を楽しみつつ、されるがままになっていた。
チューっと僕の舌がお姉さんの唇に吸われた。
お姉さんは口をより一層密着させながら吸い込んだ僕の舌を舐め回したり、唾液を塗りつけたりしていた。
そして塗りつけた唾液を吸い取るという行為を繰り返し、時折ハァハァと熱い吐息を僕の顔に吹きかけた。
もう僕の唾液なのかお姉さんの唾液なのか分からない。
(気持ちいい)
僕は正直にそう感じた。
お姉さんはキスをやめる気配が全くない。
もう30分は経っている。
時間をかけてお姉さんは僕にキスの抵抗感を奪っていった。
執拗にじっくりと時間をかけて繰り返される数々のキスに、僕は何も考えられなくなっていた。
ただただお姉さんの行為を全て受け入れていた。
僕の心臓の音が、お姉さんのそれを超えていた。
密着しているからお姉さんの体は手に取るように分かる。
それは反対にお姉さんにとっても同じだ。
お姉さんは僕の心臓の鼓動の高鳴りを感じて、嬉しそうに笑い、一層強く舌を吸っていた。
「ぷはぁ」という音と共に久々に僕の唇がお姉さんから解放された。
お姉さんは嬉しそうに笑みをこぼしながら、最後に1回チュッと軽くキスをした。
「やっぱり・・・全然嫌悪感がない。武君なら大丈夫だ。絶対・・・」
お姉さんはそう言うと、僕の体を両手で抱え上げ、ベッドの上にそっと乗せた。
お姉さんは頬を赤く染め、ハァハァと荒い息遣いで手を自分の胸に当て、切なそうな目つきで僕を見ていた。
お姉さんは僕の上半身を起こし、僕の後ろ側からギュッと抱きついてきた。
僕の左肩に顔を乗せ、首筋を吸っていた。
体にゾワッとした感覚が走った。
「んふう・・・ちゅっ・・・ちゅばっ」
お姉さんは音を立てながら首筋を吸っていた。
抱き締めているお姉さんの手が僕の上着にかけられ、ゆっくりと剥ぎ取られていった。
上半身が裸になった僕。
お姉さんは吸っていた首筋から唇を外し、肩越しに僕の上半身を隅々まで見つめていた。
脇の下から通した両手でキュッと僕を抱き締めると、お姉さんは耳元で、「武君、こっち向いて」と囁いた。
お姉さんの方に顔を向けると、お姉さんはそのまま僕に唇を重ねた。
そして顔を離しては僕の体をキュッと抱き締めて、僕の表情の変化を確かめつつ、何度も何度も唇を吸った。
お姉さんは絶え間なくキスを繰り返し、キスを2人の間で“当然の行為”という意識レベルまで持ってこようとしているようだった。
いつしか僕もお姉さんとのキスが、特別な行為というよりは、どこか普通のことのような妙な感覚になってしまっていた。
それほどお姉さんは僕に何度も何度もキスを求めた。
<続く>
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