中学の頃、休み時間は床に寝そべったり座り込んだりするのが普通だった。
そんなある日、俺的に『校内いい女ベスト3』に入れてる、同じクラスの松山さんが近くを歩いていた。
いつも他愛もない会話をしているが、その時の俺は何を思ったか・・・。
「パンツ見せて」
と、もちろん冗談交じりに言った。
いつもなら彼女は「バーカ!」と返してくるのだが、なんと彼女は周りをキョロキョロと見回した後、寝そべっていた俺の顔を跨いだ。
俺の目の前には、憧れと言ってもいい彼女のパンツが!
ちなみに白と青のストライプ柄だった。
彼女は照れながら去っていったが、俺は一生分の運を使い果たしたんじゃないかと思うくらい幸せだった。
おっさんになった今でも脳裏に焼き付いている。
実はこの後も信じられないことが俺と彼女に起きるのだが、その時は全く予測できなかった。
そのことがあってから幾日か過ぎた頃。
確かに衝撃的な出来事であったが、自分の心の中だけに秘め、いつもと同じように過ごし、いつもと同じように彼女と接していた。
松山さんは誰とでも仲良くできる人だったが、特に『仲良し3人組』と呼ばれる友達がいた。
その内の1人、荒川さんがある日、俺に話しかけてきた。
荒川「キスのやり方って知ってる?」
俺「え?普通に知ってると思うけど・・・」
荒川「教えて」
俺「え・・・どうやって?」
荒川「ちょっと来て」
彼女に言われるまま、校舎の端の人気のない屋上へと続く階段の途中の踊り場に連れて行かれた。
そこには仲良し3人組のもう1人と松山さんがいた。
荒川「ここで」
俺「え?」
状況が掴めずにいると、「ねっ」って言いながら荒川さんが松山さんの背中を押した。
(はっ?・・・何?)
荒川「彼女に実際にやってみて?」
俺「え・・・?」
松山さんは思いっきり照れた顔をしていた。
俺と松山さんは階段に腰を下ろし、その数段下から2人がじっとこっちを見ていた。
俺は照れと驚きで何もできなかった。
荒川さんの「早く~」の言葉を聞いて覚悟を決め、俺は松山さんの肩に手を回した。
そのとき松山さんが静かに目を瞑ったのをはっきりと覚えている。
俺は、そっと唇を重ねた。
10秒ほどは重ねていたと思う。
唇を離した俺は冷静さを装いながら荒川さんに、「こんな感じ」と言った。
荒川さんは「わかった」と言いながら松山さんの顔を見ていた。
その後、少し話をして俺と3人は教室に戻ったが、その途中で前を歩いていた松山さんが荒川さんに向かって小さくガッツポーズをした意味が、恋愛経験もほとんどない俺には全く判らなかった。
それからというもの、俺は松山さんのことを意識はしていたが、そこは中学生、受験やなんだといった渦に巻き込まれて、結局別々の高校に進んだ。
他愛もない話だろうし、その後の発展もなかったけど、俺にとっては青春時代のいい思い出です。
あれから何十年も経った今でも、この思い出だけは汚したくないという気持ちがとても強くあります。
おっさんになった今は、これ以上の発展がなかったから逆に良かったんだろうなと思います。
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