恭子と申します。






この夏は、特に旅行などの予定がありませんでした。



だからというわけではありませんが、夏休みはずっと実家に帰省していました。



私の実家は、かなりの田舎です。



周りに遊べるようなところは何もありません。



帰省して3日目にもなると、もう退屈で仕方ありませんでした。



リビングにいても、面白くもないテレビをぼーっと観るぐらいしかやることがありません。






2階の自分の部屋に上がりました。



音楽をつけてベッドに横になります。






(つまんないなぁ)






目を瞑って考え事をしたりします。



実家の私の部屋にはエアコンがありません。



網戸にした窓から時々風が入ってきますが、それでも汗がじわっとしてきます。






(暑い・・・)






ベッドに仰向けになったままTシャツを捲り上げました。



どうせここは自分の部屋です。



背中のホックを外して、ブラもずらしてしまいます。



男の人にはわからないでしょうが、暑いときにはこうするだけですごく楽になるのです。



だらしなく胸を出したまま、天井を眺めてぼーっとしていました。






(何やってんだろ・・・せっかくの夏休みなのに)






暇を持て余している自分が、なんだか情けなく思えてきます。






(それにしても暑いなぁ)






首の辺りが汗ばんできています。



穿いていたショートパンツにも両手を伸ばしました。



寝そべったまま腰だけ浮かせて、中のショーツごとずり下ろします。



下半身も丸出しにしてしまって両膝を立てました。



窓からそよいでくる微かな風を感じます。



脱ぎかけのパンツは、ふくらはぎの辺りに引っ掛けたままです。






(暑い・・・)






我ながら、みっともない格好でした。



パンツを下ろして寝そべったまま無防備に股を開いています。



捲り上げたブラの下で、おっぱいも丸出しです。






(退屈だなぁ)






目を瞑ると、なぜか職場の男性たちの顔が次々と浮かんできました。






(もし私のこんな姿を見たら、みんなどう思うだろう?)






自分で書くのはおこがましいですが・・・外見の容姿にはそれなりに自信のある私です。



細身のスタイルも相まって、周りからはいつも華奢なイメージを持たれています。






(あの人たちが・・・もし今、この部屋を覗き見たら・・・)






会社での、いつもきちんとしている私とのギャップに、きっと目を疑うことでしょう。



あられもない姿でいる私を見てニヤニヤするかもしれません。



そんな馬鹿なシーンを想像しただけで胸がきゅうっと締め付けられました。






(ああ・・・)






決して他人に見せることのないこんな私・・・。



手をあそこに持っていきます。



すでにヌルヌルしていました。



指先をクリに触れさせます。






(私のこんな姿・・・)






優しく動かすだけで快感が湧いてきました。






(見てみたいでしょ?)






会社の人たちの顔を思い浮かべながらクリを弄ります。






(こんな恥ずかしい私を覗けたら・・・喜んじゃうでしょ?)






・・・ふと思いました。



手を止めます。






(久々にやってみたい。誰かに覗かれてドキドキしてみたい・・・)






露出狂・・・?



自分ではよくわかりません。



でも、私はそういう興奮の高揚感の味を知っています。



過去に何度となく、忘れられない体験をしたことがあるからです。



それは、決して誰にも言うことのできない私だけの秘密でした。



日常生活では決して味わえない興奮・・・。



あの興奮に身を焦がしたい・・・。



ずっと自分の心の奥底に閉じ込めていたはずなのに・・・。



いけない感情だとわかっていました。



でも・・・。






(ドキドキしたい)






その思いは、みるみる膨れあがってきます。



本当は臆病な私・・・。



真面目なだけのいつもの生活・・・。



自分の殻を破って大胆になってみたい・・・。



居ても立ってもいられない気持ちになってきます。






久々にやってみようかな。



どうせ暇なんだし・・・。



本当にできる?






思考が一気に現実的になっていきます。






やるとしたら、どこ?



どこでならできる?



どうすればうまくいく?






1ヶ所だけ頭に浮かんだ場所がありました。






でも、今日はもう遅い・・・。



明日、朝から行ってみよう。






思い立ったら、俄然やる気が出てきます。



こんなことに力を注ぐのは、ばかばかしいとしか言いようがないのですが・・・私は本気でした。



この気持ち、いつぶりのことでしょうか。



あのドキドキに身を焦がしたいと、うずうずしてきます。






(そうだ、今日のうちに・・・)






親の車を借りて、町に出ました。






(水着、どこかで買わなくちゃ・・・)






国道を走らせていくうちに、聞いたこともないような洋服の量販店を見つけました。



駐車場に車を乗り入れます。



ひと目で安物とわかるような低価格カジュアルの店です。



ざっと店内を回ってみましたが、水着は置いてありませんでした。



お店の中を見ているうちに、ちょっと考えが変わってきます。






(水着じゃないほうがいいかも)






水着だと・・・水着になれるチャンスがなければ、それまでです。



頭の中で考えていました。



シチュエーションによって応用が利きそうなものを選ぶべきです。



例えば・・・さりげなく胸を見せやすい服・・・。






(ブラトップ?)






一見無防備そうな感じですが、あれは意外としっかりしています。



胸元が大きく開いた、薄手のチュニックを選びました。



ノースリーブで、腰までの長さのものです。



値段が安いのは好都合でした。



使い捨てにしてもいいというつもりで必要なものを選んでいきます。



一番値段の安いブラを探しました。



私の胸には合わない、わざと大きいサイズのものを選びます。






もうひとつ、たまたま目についた物がありました。



フレアタイプのショートパンツです。



ほとんどミニスカート感覚のショートパンツでした。



丈がこんなに短いのに裾がふわっと開いています。






(これにしちゃえ)






どうせ明日しか着ることのない服です。



自分の趣味に合わなくたって構いません。






帰ってから、買った服を着てみました。



鏡の前に立って前屈みになってみます。



首まわりのゆるいチュニック・・・。



大きくてカパカパのブラ・・・。






(よし)






ワクワクしてきました。



なんだか明日が楽しみです。






翌日、朝食を済ませてから出発しました。



今日も親の車を借りて自分で運転します。



自分で言うのもなんですが、かなりやる気になっていました。






(本当にできる?なんとかなる?)






タイミング良く、都合のいいシチュエーションに巡り合わせることができるかどうか・・・。



実際に行ってみなければわかりません。



それでも行くだけは行ってみようと思いました。



これと思える相手さえ見つけられれば、きっとなんとかなるはずです。






その場所を目指すのは約3年ぶりでしょうか。



道ははっきりと覚えていました。



国道を走り続けて、県境を越えます。



出発して2時間ぐらい経ったかもしれません。



だいぶ真上になってきた太陽がボンネットに照りつけているのがわかります。



良すぎるぐらいにいい天気で、外はものすごく暑そうでした。



周りの景色はすっかり山になってきています。



あるキャンプ場が近づいてきました。



そのそばを通り過ぎて、さらに車で山を登っていきます。






(そうそう、ここだ)






入口が目立たない脇道へと左折して、林道へと乗り入れます。



あまり整備されていないので慎重に車を進めました。



何度か分岐点を経ながらそのまましばらく行くと、行き止まりになります。



ちょっと広くなっているその場所に車を停めました。



スポーツサンダルに履き替えて車から降りました。



うるさいほどに蝉の声が響いています。






(ああ、おんなじだ)






森の匂いがしました。



風景も3年前に来たときと何も変わっていません。



ものすごい暑さでした。



あっという間に汗ばんできます。



周りの様子を確かめました。



耳をつくのは蝉の声だけ・・・。



紛れもなく私1人っきりです。






(よし)






その場で手早くスカートを脱ぎました。



Tシャツを脱いで、ブラも外してしまいます。



胸を丸出しにしたままショーツ1枚の姿になっていました。



たったそれだけのことで、もうドキドキしてきます。






昨日買った服を袋から出しました。



あまりの暑さに背中を汗が伝ってきています。



ショートパンツを穿いて・・・。



大きいブラを胸につけました。



最後に、被るようにチュニックを着ます。



脱いだ服は車の中に仕舞いました。



荷物を詰めたトートバッグを肩にかけます。






(行こう)






ここから数分歩いた先に沢があるのです。



運が良ければ水遊びに来ている人たちがいるかもしれません。



それが私の狙いでした。



森の中にできた細道を歩いていきます。



まさに炎天下という感じでした。






(暑いよう)






すぐに汗が噴き出してきます。



歩いているだけで気持ちがげんなりしそうでした。






(こんなに暑いのに人がいるかな?)






嫌な予感がしていました。






(さすがに誰もいないかも・・・)






ここまでの遠い道のりが、すべて無駄足になってしまいそうな気がしてきます。



川のせせらぎの音が聞こえてきました。



雑木林を抜けると、目の前に沢が現れます。



ようやく到着しました。



辺りの様子を見渡します。






(やっぱりだ・・・)






誰もいませんでした。



以前に来たときと同じように、(小学生ぐらいの男の子たちが水遊びに来てるかも)と期待していたのですが・・・。



人の姿はまったくありません。



完全に肩透かしでした。






(あーあ)






でもまぁ・・・たいてい現実はそんなものです。






(しょうがないな)






たぶんこうなるんだろうなぁということは頭では最初からなんとなくわかっていたのです。



ですから、さほどショックではありませんでした。



どうせ実家にいたところで、やることもなく暇だったのですから。



ここまで来てしまったこと自体に後悔はありません。






トートバッグを下ろしてペットボトルを出しました。



手頃な大きさの岩に腰かけてお茶を飲みます。



残念でした。



わざわざここまで来たのに・・・。



でも仕方ありません。



ぬるくなったお茶を飲みながら、しばらく景色を眺めていました。






(いい場所なのになぁ)






ここで3年前に自分がやったことを懐かしく思いながら・・・。



未練がましく粘ってみます。






5分ぐらいそこにいたでしょうか。



ただひたすら暑いだけでした。



やはり、他に誰かがやってくるような気配はありません。






(帰ろう)






諦めました。



立ち上がろうとした、その矢先のことです。






(あっ)






ずっと上流の方に何か動くものが見えた気がしました。






(ん?)






目を凝らしてみると・・・。



全然気づいていませんでしたが、やっぱり何かが動いています。



遥か遠くの岩陰から飛び出して見えるのは・・・。






(あっ!)






あれは、たぶん釣り竿です。






(人がいる!)






急に動悸がしてきました。






(どうする?)






あそこには人がいるということです。






(どうするの?)






チャンスがあるかもしれません。



ここまで来て確かめずに帰るわけにはいきませんでした。






(落ち着いて)






逸る気持ちを抑えます。



とにかく相手を確認することです。



相手がどんな人なのかによって、状況はまったく違ってきます。






川べりを、上流側に歩いていきました。



水の流れは穏やかそのもので、まさに天然のプールです。



3年前、ここで子供たちと水遊びしたことが昨日のことのように思い出されました。



今日もあの日と同じような男の子たちなら最高のシチュエーションなのですが・・・。



そうそう都合良くいくとは思えません。



状況を見極めるまでは決して油断できませんでした。






だんだんと川岸の幅が狭くなって岩場のようになってきます。



ますます背中が汗ばんできました。



大きな岩を回り込みながら、少しずつ上流へと登っていきます。



だいぶ近づいて来ていました。



ゆらゆら動く釣り竿の先が、はっきりと見えています。



みつからないように、岩の陰から顔だけ出しました。






3人・・・男の子が3人います。



顔の表面がぽーっと熱くなるのが自分でわかりました。



こんな奇跡とも思えるような展開・・・。



頭の中でまだ現実感が追いついてきていません。






岩陰から様子を窺います。



・・・1人が中学生ぐらいで、あとの2人はたぶん小学生です。



私の心臓は爆発しそうにドキドキしてきました。






(こんなことってあるんだ)






まさに願ってもないようなシチュエーションです。






(やるしかない)






周りに人の気配はありません。



私と、この子たちだけです。



このチャンスを逃すなんて考えられませんでした。






(どうするの?・・・作戦は?)






トートバッグからデジカメを取り出します。



最近買ったばかりのミラーレスデジカメです。



重いので迷ったのですが・・・。






(持ってきておいて良かった)






トートは肩に下げて、両手でカメラを持ちました。






(よし、行こう)






川べりを進みました。






(堂々と・・・堂々と・・・)






ここはまだ臆する場面ではありません。



心臓をドキドキさせながらも気持ちを奮い立たせます。



もう、すぐそこです。



この大岩の向こうに彼らがいます。



意識的に頭の中を空っぽにしました。



何かを考えたら躊躇してしまうような気がしたからです。



カメラを持ったまま、大岩を回り込みます。



そして、そのまま彼らと“鉢合わせ”してみせました。



そこは岩場の狭間のようなところで、少し開けた場所になっていました。






「あ・・・」






気配を感じた男の子たちが、こっちを振り返っています。






「あ・・・」






私も、初めて気づいたかのように驚いた顔をして見せました。



すべては第一印象にかかっています。






「あ・・・あれっ!?・・・こんにちは」






びっくりした様子を演じながらも、にっこり微笑んでみせます。



男の子たちも『きょとん』とした顔で返してきました。



まだ驚いているふりをして・・・。






「え・・・あ・・・釣りしてるの?」






見ればそうだとわかるようなことを、わざわざ聞いてみせます。



私が1人きりということもあるのでしょう。



3人がすぐに警戒心を解いてくれたのを彼らの表情に感じていました。






<続く>