私の初体験、いわゆる処女喪失は中学3年の終わり頃だった。



中3にもなって、私は性に全くと言っていいほど興味がなかった。



保健の授業もろくに聞いていなかったし、性知識が欠落していた。






高校受験が終わり、早めに進学先が決まった私は、当時プレッシャーになっていた両親の期待から少しでも遠ざかりたいがために、高校入学を待たずにコンビニでアルバイトを始めた。



私はやはりどこでもケラケラと笑う奴で、初めてのバイトでも結構上手くやれていた。



社員の方ともすぐに仲良くなることができた。



社員さんは仕事が終わると、カラオケやらボーリングやらによく連れて行ってくれた。



そこには仲良くなった社員さんの友達なんかも来た。



カラオケが終わると家の近くまで送ってくれた。






そんなある日、帰り道がいつもと違うことに気付いた。



社員さんの車には、3人の男性と女は私が1人乗っていた。






「どこに行くんですか?」






なんとなくフツーに聞いた。






「もうすぐ着くから」






運転手の社員さんはニコニコしていた。





後部座席に乗っていた私はいつの間にか眠っていた。






「着いたよ」






そう言われて肩を揺すられた。



むにゃむにゃと起きたそこは、やはり見知らぬ場所だった。






「ここ、俺ン家。ちょっと上がっていきなよ」






社員さんが手招きする。



他の人々はもうマンションに足を運んでいた。



私は気後れしつつも社員さんについて歩いた。



お宅に上がりリビングに通される。



どうやら社員さんは一人暮らしのようだった。



テレビを点け、リビングのソファに座って皆で喋った。



トイレに行きたくなって私はその場を立った。



用を済ませ、手を洗って、タオルがないことに気付いた。






「あの、すみません、タオル貸してもらっても・・・」






そう言いかけたその時だった。



後ろから、タオルのようなもので顔を力強く覆い隠された。



あまりにも突然のことで、私は避けることもできなかった。



と同時に身体を押さえつけられ、そのまま抱き上げられた。



リビングのソファだったろうか、ドサリと倒された。






「なに!?」






そう言おうとしたが、顔に被されたタオルで口を塞がれた。



着ていたトレーナーが捲り上げられ、顔と腕をトレーナーで動かせない状態にされた。



私の穿いていたズボンが、力強く一気に引き下ろされた。



抵抗しようとしても大人の男性の力には敵わなかった。



しかも3人いる。



トレーナーで周りが見えない。



私はパニックに陥っていたんだと思う。



何か叫ぼうとしても、声が出なかった。



身体中が縮み上がって、思うように力が入らなかった。






足を掴まれ、大きく開かされた。



彼らは私をおもちゃのように触り始め、何か冷たいものを塗りつけた。



そのすぐ後、経験したことのない鋭い激痛が下腹を襲った。



何か声を上げたかも知れない。



あまり覚えていない。



ガツリ、ガツリと何度も何度も激痛を与えられた。



私の身体が力なく上下に揺れ動いた。



周りで彼らが何か喋っていたがよく分からない。






しばらくして、強く上に押し上げられる衝撃が収まった。



私の身体はガタガタと震えていた。



でも、それで終わらなかった。



また先ほどと同じ激痛が私を襲った。



さっきよりも強く強く上に突き上げられた。



それもしばらくして終わった。



でも、すぐにまた同じことが起こった。



私は気を失った。






気付いたら私は社員さんの車の中だった。



周りを見渡すと見覚えのある景色だった。



家の近くだった。






「着いたよ」






社員さんの声がして、私は車を降りようとした。



声にならない声が私の口から漏れた。



下腹が痛くて痛くてたまらなかった。



なんとか車の外に出た。






「またな」






笑い声と共に彼らの声が遠のいた。



家に帰って、すぐに風呂に入った。



何がなんだか分からなかった。



とにかく下腹と股奥が痛くてたまらなかった。



それから2週間だか3週間だったか、出血が止まらなかった。






アルバイトは辞めさせてもらうつもりだった。



でも店長に、「今辞められたら困る」と言われた。






「次の子が決まるまでちょっと待ってくれ」と言われた。






毎日のように入っていたシフトを少し減らしてもらった。



社員さんと顔を合わせたくなかった。



怖かった。






当時の私は、彼らに何をされたのか理解できなかった。



とにかく怖かった。



痛かった。



血が止まらなかった。



社員さんに近寄りたくなかった。



心配かけたくなかったので、親には黙っていた。






ある日、社員さんに呼び出された。



私は怖かったけれど、断ることができなかった。



断ったらもっと恐ろしいことになりそうな気がした。



社員さんの車の中で、私はまた彼に犯された。



私の股は腫れあがっていて、血が溢れていた。



あまりの恐ろしさに足がガクガク震えて立てなかった。



声も出なかった。






社員さんはおもむろに私にポケットベルを手渡した。






「誰にもバラされたくなかったら言うこと聞け」






そして、ベルを鳴らしたらこの場所に来るようにと言われた。



バイトは辞めていいと言われた。



その代わり他にやってもらうことがあるからと言われた。






ベルは授業中でも容赦なく鳴った。



そのつど私は、「具合が悪い」と言って早退した。



先生は誰も疑わなかった。



顔色が常に青白い私だったから・・・。



家には帰れなかった。



学校を早退してどこかに出かけるなんて親にバレたら大変だ。



あの道を左に曲がって、そして右へ曲がる。



彼の車が停まっていた。






初めのうちはホテルに連れ込まれた。



私はよく倒れた。



血が足りなかった。



下腹もずっと痛かった。



でも誰にも言えなかった。



誰にどう相談すればよいか分からなかった。






そしてそのうち相手が変わった。



ベルが鳴る。



あの道を左に曲がる。



そして右へ曲がる。



彼の車が停まっている。



でも、その助手席には彼ではない男が座っていた。



私はその男にホテルに連れて行かれた。



2時間が経過し、外で待機している彼の車に戻る。



車に戻ると、男は彼に現金を手渡していた。



同じ男が何度かやって来たこともある。



知らない男が入れ替わり立ち代わりになったこともある。



外で待機している彼は、必ず私とホテルに入った男から現金を受け取り何かボソボソと話していた。



その金は彼の懐に入っていった。






私の身体はいよいよ限界に来ていた。



出血も止まらず、食事も喉を通らなかった。



常にフラフラし、震えが止まらず、ベルに怯えていた。



どうしようもなくなってクラスメートに相談をした。






「誰にも言わないで」






私はそう懇願した。



次の日、教室に入ると私の机がなかった。






「汚ねぇんだよ、便所」



「臭せぇから出てけ」



「こんなとこに来てないで金稼いで来いよ、売春婦」






話したこともないクラスメート達にそんな事を言われた。



意味が分からなかったけれど、約束は破られたと思った。



打ち明けた友達を見ると、その子は視線を逸らした。



私は汚くて臭い奴なんだと、その時思った。



誰かに黒板消しを投げつけられ、私は教室を後にした。



そして、またベルが鳴った。






そんな高校生活が3年間続いた。



生徒達は先生の前だと私を便所呼ばわりしなかった。






「顔色悪いぞ、大丈夫か?」と私に聞く先生に続いて、「具合が悪いなら帰った方がいいよ」と言った。






クスクスと密やかな笑い声が聞こえた。



クラス替えをしても状況は変わらなかった。



卒業できたのが不思議だった。






進学先は、私のことを誰も知らない場所に行こうと決めた。



両親を何とか説得して、田舎の祖母の家の近くの短大を受験していいという許しをもらった。



私は何がなんでも受かってやると思った。



そして見事受かった。



私は誰にも進学先を告げず、両親にも口止めをし、祖母の家に下宿した。






しばらくは何度もベルが鳴った。



実家にも彼からの電話がしつこくあったらしかった。



でも両親は私がどこに行ったか黙っていてくれた。



私は生徒達の罵声から解放され、彼から解放された。



でもベルを捨てることは出来なかった。



夢で何度もベルを捨てた。



でも目が覚めると、ベルは私の部屋に戻ってきていた。



何度も何度も捨てたが、ベルは私を追いかけてきた。



遠く離れた場所にいながら、私は彼に苦しめられた。



見つかるはずはないと分かっていながら、影に怯えた。






ある日、私は祖母から車を借りて、夢でも現実でも戻ってこれないような場所に行ってベルを捨てようと決めた。



部屋でベルを粉々に砕き、ビニール袋に入れ、私は車で海へ向かった。



太平洋が眼下に広がる崖の上で私はビニール袋を開け、粉々になったベルを投げ捨てた。



ベルは私の青春そのものだ。



私の手で粉々にされ、そして今、解き放たれていく。






今はもう分かっている。



私の初体験は強姦で、輪姦され、私の高校生活は売春で埋め尽くされていたのだと。