学生の頃の話だから、今から十年以上も前の事になる。
多少記憶が曖昧なところもあるが、最初の頃の事は、比較的鮮明に覚えている。
この話は、当時、四年生の某大学に通う学生だった俺が体験した話だ。
俺は親元を遠く離れ、一人アパートでの下宿生活をおくっていた。
高校卒業後、大学に進学した俺は、そこで初めての一人暮らしを経験する事になる。
男なので、親はそれ程心配していなかったが、それでも「学校に近いと友人達の溜まり場になり易くなる」とか「遠いと通うのに不便だ」など俺としては、どうでも良い事を気にしていた。
俺は、贅沢なんて言わない。
安ければ良いと思っていたのだ。
孝行息子の俺は、親に余計な負担は掛けたくなかったからだ。
結局、不動産屋の奨めもあり、学校から程よく離れた住宅街に位置するアパートになった。
軽量鉄骨木造二階建、四世帯入居型。
間取りは、全面フローリングの六畳に三畳ほどの狭いキッチンが続き、バス・トイレがある一人暮らし向けの物件だった。
近くにはコンビニやスーパーマーケットもあり、駅まで出るバス路線もある。
環境はとても好く、家賃も手頃だったので、下見をして直ぐに契約した。
俺の部屋は101。
一応引っ越しの時に挨拶に行くと、201・202共に近くの女子短大の学生が入居していた。
隣の102には、若いOL風の女が入居しており、なんと女の園だった。
意外にも住む事になったアパートには、俺と同じ学校の学生は入居していない。
それもそのはず、大学近隣には学生向け専用のアパートが多く、大半がそちらを希望するからだ。
こうして俺の一人暮らしが始まった。
一人暮らしを始めて良い事は、親の目を気にせず自由に暮らせる事だ。
おおっぴらにエロビの鑑賞とかエロ本が読める。
それに、彼女が出来ても、気にせずに自分の部屋に呼べる。
そして、そこは二人だけのラブホテルにも早変わり。
俺にもすぐに同期の彼女が出来て、童貞ともおさらばしたのもこの部屋だった。
休みの時なんか、一日中抱き合っていた事もあった。
一人暮らしをして一年後、上の短大生二人は卒業と同時に引っ越していった。
結構可愛いモテそうなお姉様方だったが、真面目なのか俺の知る限りでは、部屋に男を入れている様子は無かった。
その点、俺はしょっちゅう彼女とお部屋デートしていたし、お泊りもしたてたけど・・・。
彼女と二人で出入りするところは、住人に何度も見られていたから、彼女達も下や隣の部屋で繰り広げられる男女の営みは、想像の範囲だったろう。
なんせ壁が薄いから、生活雑音が無くなる深夜には、隣や上の音がよく聞こえた。
ま、上の場合、下の音はさほど響かないだろうが・・・。
再び入ってきたのは、やはり同じ短大の新入生だった。
今度の二人は、前の子達と違ってはっきり言って・・・×。
一人は、まあまあの顔なのだが、推定体重◯◯kgはあろうかと思われるデブ。
もう一人は、なんとも田舎くさい感じのブー子。
言っちゃ悪いが、彼氏なんてまず出来ないだろう事請け合い。
ま、でも俺には彼女いるし、そんな短大の子には、興味なんて全く無かった。
そんな俺は、彼女と二年目の夏に別れた・・・。
他に好きな奴が出来たって・・・。
くそー・・・まぁ~でもお互いマンネリ化していたし、俺もきっぱりと諦めた。
俺だけ一足先に、冬が来やがった!
それ以来、俺は再びオナニー生活に戻る事に・・・とほほ・・・。
そうなると、上の×は論外として、隣のOLが妙に気になってきた・・・って言うか前から少し・・・いや大分気にはなっていたけどね・・・。
学生の俺とは違って、朝は7時過ぎに仕事に出かける様だし、夜もだいたい8時前くらいに帰ってくる。
土日は休みの様だった。
たまに出会った時には、軽く挨拶するくらいで、単なるお隣さんなのだが・・・。
そのOLのお姉様・・・なんかいい感じなのです。
美人って程じゃないけど、俺好みの顔立ち。
服の上からだから確信は無かったけれど、プロポーションも良さそう。
胸がデカイのは、間違いない。
色白で脚も細くて綺麗。
いいなー・・・俺は「お姉様にお相手してもらえないかなー」なんて妄想し始めていた。
だが、その妄想が、現実のものになろうとは・・・。
事の発端は、隣の声が聞こえた事からだ。
彼女がいる時は、隣や上の音にあまり注意を払った事は無かった。
むしろ、こちらの音が隣に聞こえる事に対して注意していた方だ。
なんせ彼女といちゃついている時の声を聞かれるのは、恥ずかしいし・・・。
ところが、一人寂しく暮らしだすと、隣の音が良く響くと感じられた。
暮らし始めた頃もそんな感じだったが、その時は自分も音を立てて迷惑を掛けてはいけないと思う程度で、隣の音に聞き耳を立てる事はしなかった。
それが、試験前に黙々勉強している時だった。
隣のOLのお姉様の部屋からなにやら女の声が・・・。
それもうめく様な・・・。
ん?テレビの音か?
最初は気にも留めなかったが、その声は次第に大きくなっていく。
うめく様な声から時折、小さく叫ぶ様な声も聞こえる・・・!
明らかに隣からだ!
俺は隣に面する壁に耳を押し当てた。
今度ははっきり聞こえる。
女の喘ぎ声?かな?
そんな風に聞こえるのだが?
テレビの音は別に聞こえているし、明らかに声の主は隣のOLのお姉様か!?
え!もしかして・・・いい事してる最中?
俺は聴覚に全神経を集中させて聴いた。
でも、他に男の声とか動く音とか声とか気配は、感じられない・・・。
しばらく聞き耳を立てる。
あれ?なんか、微かに「ブィーン」ってなんかモーター音らしき音も聞こえる!?
すると、「イク」って・・・!!・・・おい!
・・・絶対、喘ぎ声じゃん!
俺の結論が出た。
OLのお姉様がオナニーをしている!
それも、バイブかローターかマッサージ器か知らんが、道具使っています!?
その時は、俺もなんかムラムラして、それをおかずに抜きました。
その日から俺は、お隣の音に関してあれこれ考えて調査を始めた。
まず、部屋の間取りを思い浮かべて構造を考えた。
ここのアパートは、外観から察するに、隣とは左右対照的な配置になっている。
バスルームとトイレが接し合う間取りだったので、バスルームの天井にある点検口を空けて覗き込んでみた。
すると、隣との境界部には、石膏ボードの壁が張ってあった。
ライトで照らしながら、上半身を天井裏まで入れ、壁を入念に観察。
壁と梁には、少し隙間がある。
隙間にライトをかざして更に覗き込むと、隣の内壁の石膏ボードが見えた。
軽量鉄骨でも内装は木造だ。
隣を隔てる壁は、石膏ボート二枚だけ。
考察の結果、室内の方も同様の構造だと思われた。
壁と壁の間隔は約15cm。
おそらくその間には、断熱材が入っているだけだ。
俺は、隣に面する壁にあるコンセントに注目した。
コンセントは石膏ボードをくり貫いて、壁と壁の間に設置されている。
対照的な配置なら、隣も同じ位置にコンセントがあるはずだ。
理系の俺にとって機械、電気、構造などは得意分野だし、工作は俺の趣味でもある。
早速コンセントの取り外しに掛かった。
カバーを外し、ベースプレートを固定するネジを取る。
コンセント本体を引き出すと、灰色の電源ケーブルが一緒に付いて出た。
ケーブルにはテープが巻かれ、101とマジックで走り書きがある。
俺の勘は当たっていたと、その時確信した。
はやる気持ちを抑え、埋め込みボックスを慎重に外して壁から引き出した。
やはりあった!
隣の部屋のコンセントの埋め込みボックスだ!
俺は、隣の埋め込みボックスにある隙間から微かに光が洩れているのも確認する。
ボックスは黒い樹脂製だ。
熱したカッターで慎重に背面を切り取ると、お隣のコンセントの本体がお目見えした。
隣の電気を盗むのが目的ではない。
音を聴くだけだ。
今度は、隙間から洩れる光がはっきりと確認できる。
次の日の夜、お姉様が帰ってきたのを見計らって、俺はコンセントに耳を入れて隣の様子をうかがった。
聞こえる、聞こえる!
壁越しに聞いていたのとは大違い!
小さい音も、はっきりと聞こえる!!やったね!
壁全体が集音板の役目を果たし、コンセントの穴はヘッドホン状態だった。
しかも、隙間のあるカバープレート一枚だけで隔てられただけなので、隣の部屋の空気までも感じられる。
俺は待った。
ひたすら待った。
お姉様がオナニー始めるまで。
10時頃だったかな、おっぱじめました。
超リアルに聞こえるお姉様の声。
間違いなく俺の読みは当たっていた。
オナニー!
・・・で、お姉様はバイブを使っていると俺は読んだ!
なぜか?
モーター音が大きくなったり小さくなったりする時に、クチュクチュと音がしているからだ!
なんとエロい音!!
俺・・・想像して大興奮!
それから俺は、毎日そのエロOLお姉様の部屋に聞き耳を立てた。
そして、それをおかずに抜く・・・。
お姉様は、ほとんど毎日オナニーしていた。
よっぽど好き者らしい。
あっ・・俺もか・・・。
土日は、日中も時々聞き耳を立ててみた。
電話をしている声も聞こえた。
ある土曜日の午後だった。
電話を掛けるプッシュホンの音に気付いた俺は、コンセントの穴から聞き耳を立てる。
何処に掛けているのか?どんな話をするのか?
興味津々だった。
だが、コール音が切れて繋がっても会話がない。
すると、微かに機会音声が聞こえる。
続いてプッシュ音・・・更に何度かプッシュ音。
その後、おもむろにお姉様の話す声が聞こえた。
「26歳OL、マキといいます。K市Mに住んでいます。土日限定で割り切ってお付き合い・・・」
なんか一方的にしゃべる感じだ・・・へ?
あー!ダイアルQ2の伝言ダイアル!
当時90年代前半、携帯電話はあったものの、ほとんどの人は所有してない。
ネットもないし、そもそもパソコンの普及が今程一般的ではなかった。
当時、一世を風靡したその手のサービスは、ダイアルQ2伝言ダイアル!!
悪友が使っているのを何度か聞いていたので、大体の事は分かっていた。
利用料が高いし、彼女もいたので、俺は使ったことは無かったが・・・。
俺は、彼女の言葉を聞き逃さない様、息を★して聴いた。
26歳OLなのか・・・。
マキちゃんね・・・。
住所もあってるね。
おおーセフレ探してんだ!
だよな、好き者みたいだし・・・そかそか。
って、俺がそのセフレになりたーい!ぜひぜひなりたーい!
隣に駆け込んで、僕立候補します!
なんて言いたくなったが、出来るわけ無いよな・・・。
でも、諦めたくない・・・。
そ~だ!そのダイアルに電話して・・・。
だが、何処のダイアルだろう?
俺は数あるダイアルサービスの中から、エロ本に載っている、この地方限定のものを色々探してみた。
んー無理だ、多すぎる、どれかなんてわかんねー・・・と諦めかけた時、ふと先日ポストに入っていたチラシを思い出した。
時々だが、アパートのポストには、怪しいチラシが入ってる事がある。
裏ビデオ販売・風俗アルバイト募集・・・そしてダイアルQ2。
そのチラシは、ダイアルQ2だった。
女性無料、◯◯地域限定、結構人気、ふむふむ・・・。
俺はOLのお姉様が、このチラシを見てダイアルしたと読んだ。
そして、一か八か俺は、この読みに賭けてみた。
そして、ダイアルしてみた。
機会音声がガイダンスを流す。
俺はプッシュボタンを押して登録を済ませると、女性のメッセージを探した。
五、六人目の時だった。
OLのお姉様が話していた言葉と同じメッセージが流れる。
やった!
またまた俺の読みビンゴ!!
俺は、彼女のメッセージボックスに返事を吹き込む。
「20歳学生の雅治です。彼女と別れて寂しい毎日です。体力には自信あります。良かったらお返事下さい・・・」
俺は、一応事前に考えていた言葉を淡々と喋った。
それから俺は、彼女の部屋の動向を一時間おきくらいに確認した。
何の動きも無い。
出掛けたのか?
その日の夜だった。
再び彼女が電話をしている様子。
無言なので、メッセージを聞いているのか?
しばらくすると、プッシュ音がして彼女がしゃべり出す。
「メッセージありがとう。会ってみたいです。明日はずっと空いているので、よかったらどうでしょうか?お返事待っています」
おおー誰かに答えるメッセージだ!
俺はコンセントに防音の為に買っておいた粘土をはめ込んで、ダイアルQ2に電話した。
ハラハラドキドキ!
俺はメッセージボックスを確認してみた。
「メッセージは二件です」
機会音声が言っていた。
おおー!入ってる、入ってる!!入っているよー!!!
喜ぶのはまだ早いのだが・・・。
彼女かな~?
はやる気持ちで受話器の音声に耳を傾ける。
「あのー・・私は・・・ぷつっ・・・」
一件目は、上ずった声の女だった。
それだけで切れた。
ガクッ!残念・・・。
続いて二件目が流れた。
「メッセージありがとう・・・」
やった・・・彼女だ!
間違いない!
確かに彼女が吹き込んでいたのと同じメッセージだ!
俺は事前に返事の言葉を考えていたので、落ち着いてメッセージを入れた。
ちょっと緊張して声が上ずりそうになったが、なんとかごまかせた。
「ありがとうございます。僕もぜひ会ってみたいです。明日Z駅前ロータリーの噴水の前午前11時でどうでしょうか?身長は・・・目印にバイクのヘルメット持っています」
入れた。完璧。
後は、彼女からのメッセージを待つだけ。
一時間くらいして再びメッセージを聞くと、彼女からの返事が入っていた。
「・・・明日午前11時にZ駅前ロータリーの噴水前で待っています。私は・・・」
やった!性交・・・じゃなくて成功!
俺は明日が楽しみで、なかなか寝付けなかった。
次の日俺は、バイクでZ駅に行く。
近くのコンビにから噴水を見張った。
11時少し前に彼女が現れた。
間違いなくお隣のOLのお姉様。
メッセージの通り白のタンクトップにタイトスカートだ。
おおーエロい。
誘う気満々か!?
彼女は、あたりをキョロキョロ見回している。
高鳴る俺の鼓動。
11時になって、俺はそっと彼女の後ろから近付いた。
「ども・・・」
俺の声に、彼女が振り向く。
俺の顔をみたOLは、一瞬ポカーンとした表情をした。
「あっ・・・お隣さんの・・・こんにちは」
彼女は、俺の事に気付き挨拶をするのだが、同時に俺が持っていたヘルメットを彼女の前に出すと、表情が驚きに変わっていくのが分かった。
「えっ!?・・・もしかして・・・」
「あっ・・・あのー僕です・・・」
俺も一応驚いた様に振舞う。
交わした言葉は少なかったが、彼女はメッセージの相手が誰であったのか察した様だった。
立ち話もなんなんで、近くの喫茶店で話をする事にした。
昼も近かったし、ついでに食事も。
初めはどうなるか心配だったが、以外にも彼女は俺の事を気に入ってくれた。
話も世間話からアパートでの事など、当たり障りのない内容。