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天然女子高生との初体験エピソード








高二の秋のことだ。

修学旅行で広島に行った。



旅行初日の晩には定番のアレがあった。が、展開がちょっとおかしかった。



「おれは断然鶴田さんだな」

「おれもおれも」



隣のクラスには、鶴田さんという女の子がいた。



部屋の電気を消して、ふとんにくるまって、廊下の足音に意を配りながら、ひそひそ声で、あの子がいいだのあの子はダメだだの話し合うのが醍醐味だというのに、

どいつもこいつも鶴田さんがいい!としか言わない。

ので、まったく議論にならない。

 

 











 

鶴田さんの顔は…今思うとそんなに可愛いわけじゃなかったと思う。

整っているが少し眼つきがきつい。



でも、 「絶妙だよな、あのムネ」



「ああ。あの体型にはあのサイズしかない。お尻もちょうどいい」



「手とかほっぺたとかさ、真っ白なんだよな」



「つうことはだよ、多分、おっぱいも真っ白なんだぜ」



とみんなが言うように、素晴らしいカラダをしていた。



短く切りそろえたショートカットで、しかもバレー部でばりばり運動やってたから、お嬢様みたいな感じではない。



けど、持ち物や身なりはいつも小ざっぱりとしていて、清楚な感じはあった。



「その白さの中で、乳首のピンクが際立ってピンクなんだぜ。たぶん」





「いや。ピンク、というより、桃色、というニュアンスであってほしい」



「あー確かにわかるわそれ」



「おおお、オレなんだか興奮してきた」



健康な男子19人が、押し込まれた大部屋で悶々としながらささやきあい、うなずきあう。



僕も、桃色というニュアンスには陰ながら賛成だ。



暗いから顔も見えない、ささやき声だから誰が言ったのか判然としないけど、よくぞ言ったとほめてやりたい。



僕は、人の話を聞くのは好きだが自分から語るのは苦手だ。



だからずっと黙ってた。



ところが、ずっとだんまりを決め込んでいる人間を見逃すようなクラスメイトたちではない。



隣のふとんの奴が 「おい、おまえはどうなんだよ」



と、水を向けてきたのだった。



あーあ、やっぱりしゃべんなきゃダメかなあ。



しゃべりたくないな。



実は僕も鶴田さん派だった。



いや、ちょっとちがうかも。



ちがうな。



おっぱいがどうとか、もちろんそういうのにも興味はあったが、純粋に好きだったんだと思う。



一年のときクラスがおなじで、緑化委員を一緒にやってた。



あんまり口をきいたことはなかった。



メアドとかも訊いてない。



けど、週に一回まわってくる花壇の手入れの時には、僕も鶴田さんも生真面目に、さぼることなく草むしりをした。



放課後の時間、五時半きっかりに、昇降口のとなりで待ち合わせをする。



鶴田さんはバレー部を抜け出してくるから、ショートパンツ姿のままだった。



花壇の手入れは十分もあれば終わってしまう、その間、ふれそうでふれない距離にある彼女のふとももが視界のはしをちらちらと行き来する。



高校生の男子にはそういうのはダメだ。



僕が、いつも劣情を抑えるのに必○だったのはいうまでもない。



ふだんは寡黙な鶴田さんだったけど、花壇の手入れのときはしばしば歓声をあげることがあった。



好きな花が咲いているのを見つけたときだ。



特に、秋に多かったような気がする。



秋の花が好きだったんだろう。



いちばんよく覚えてるのが、紫色の、ベルみたいな形の花を見つけたときだ。



ハスキーで低めの声の鶴田さんが、いかにも女の子らしい声をだして僕を呼んだ。



それもたしか秋口のことだった。



びっくりした僕がきょとんとした目を向けると、鶴田さんは我に帰ったのか目を伏せて、その紫の花を指差した。



「これ、こんなところに生えてる。ふつうは山に生えるんだよ」



ツリガネニンジンていう草なんだ、と教えてくれた。



「これ、ほんとは雑草なんだけど…、見逃していいよね?」



いつくしむようにその雑草に目を落とす鶴田さんのたたずまいに、僕はすっかりやられた。



「おいおい小林、もったいぶんなよ早く言え」



みんなが口々にせかしてきた。



あんまり言いたくないんだけどなあ。



しかたなく空気を読んで、適当にお茶を濁そうと思ったら、 だしぬけに廊下から乱暴な足音が聞こえてきた。



生活指導の遠山のそれであることはみんな、すぐに察知した。



こういうときの連携はすばやい。



僕らは一気に気配を消し去って、目を固くつむった。



みんなが鶴田さんのことを笑い話にできるのは、彼女に抱いている興味が主にシモ関係のことだったからだ。



僕の場合はそういうのとはちょっと違う。



僕にとっては、好きな女の子が誰か、とか、その子のどこが良かった、とか、毎日顔を合わせてる連中に暴露するのはあまりに恥ずかしいことだった。



鶴田さんは目つきがちょっときついせいで、怖そう、とか近づきがたい、とか言われてる。



でも、僕はその目つきが、彼女の中で際立って魅力的なところだと思ってる。



確かに、冷たい印象は受けるかもしれない、けど、絶対笑ったらかわいいと思うんだよ。



だから、言わないで済んでよかった、と、その晩、眠りに落ちる前には思った。



でも次の日、僕はもっと恥ずかしい目に遭って、ああ、昨日さっさと白状しておくんだった、と後悔することになる。



泊まっていたホテルは宮島で、厳島まで歩いて行ける距離だったから、翌朝の朝メシ前、希望者は散歩がてらお参りに行くことが許されていた。



あの後、数回見回りの足音が聞こえたらしい。



遠山の足音をやり過ごした連中は、その後もささやき声でああでもないこうでもないと話し合ったらしいが僕はとっとと眠ってしまった。



宿のふとんがなかなか寝心地よかったのもあって、妙に目覚めがよかったから、同じ境遇の杉田と生熊の二人を誘って、僕も散歩に出かけることにした。



これがまずかった。



というのも、誘った二人は自分らが寝落ちしてしまったのを心底残念がっていて、神社への道すがら、延々と話の続きをしたがったからだ。



初めはそいつらが話す内容に相槌をうっていればよかったが、ちょうどあの赤い大鳥居が見えてきたあたりで、彼らの話題はつきてしまった。



そして、僕にせっついた。



「そういやお前、どの子が好みか言ってねえじゃん」



「あ!そうだよ、言いかけたところで遠山のやつが…」



うっかり声が大きくなってしまったのを、引率に来ていた遠山がとがめて、じろっとこっちをにらんで来た。



何度も見回りしたんだろう、ものすごく眠そうだ。



悪い人ではないんだろうけど真面目すぎる。



生徒が悪さをしたときだけ出動すればいいのに。



また僕らはひそひそ声になる。



「おお、いけね。あいつ来てるんだった」



「それより小林はやく言えよ、おい」



周りを歩いている同級生たちは、建物を見上げて上の空になってた。



それにちょうど物陰だったし、しゃべる相手も今ならふたりだけだし。



あんまりしつこく聞かれるのに、断ったら気分悪くさせちゃうかもしれないし。



と思った僕は、二人に顔を寄せて言った。



「鶴田さん」



僕はつとめて小声で言ったのだ。



ところが、生熊が、ああやっぱりな、といった風で、 「やっぱり小林も鶴田さんか!」



「あほ!声がでかいよ」



といっても、はりあげた声ではなかったから、周りに気付かれた様子はない。



僕らは一瞬ぐるりとあたりをうかがって、安堵した。



「わりいわりい」



と、生熊。



「勘弁してくれよ」



と、僕。



僕のうろたえぶりに、杉田は笑った。



「お前あわてすぎだろ。なんかマジっぽいぞ」



図星を突かれた僕はさらに赤面してしまう。



えい、もうやけくそだ。



「マジなんだよ。好きなんだよ。悪かったな」



僕が(あくまでささやき声だが)はっきり言い放つと、生熊も杉田も一瞬呆気に取られたようだった…。



と、思ったら違った。



ふたりの視線は僕の後ろに向けられていて、なんだろ?と思って後ろを振り返ったら、建物の陰からひょっこり人の顔がのぞいていて、誰だ!?と思ったら、それは話題の鶴田さんだった。



○ぬかと思った。



「あー、なんか邪魔みたいだし俺ら行くわ」



生熊と杉田はすたこらと、もと来たほうへ逃げていく。



すっごいニヤケながら。



神社のことなんかどうでも良かったらしいあいつらは、とっとと宿へ引き返して、この話をネタに洗面所でヒソヒソと盛り上がるんだろう。



何がなんか邪魔みたいだし、だよ。



こうなったのはあいつらのせいなのに。



最悪だ。



鶴田さんは前髪ぱっつんでショートだ。



傾けた顔に、サイドの黒髪がちりかかって、片方のほっぺたが隠れている。



そんな彼女が、朱塗りの柱の陰からひょっこり顔だけ出しているさまは、いたずらしに現れたおかっぱ頭の座敷わらしみたいだった。



いや、座敷わらし見たことないけど、あんな感じだと思う、きっと。



自分の顔が真っ赤になっているのがはっきりとわかった。



きっと、彼女のほうから見た僕は、赤オニやナマハゲみたいになっているはずだ。



座敷わらしは黒目を動かさず、まっ白い顔をこっちに向けてひと言も話さない。



しばらく僕のほうも何も言えないでいたが、髪で隠れてないほうの頬にちょっとピンク…、いや、桃色がさしたのが見えて、ようやく口をきくことができた。



「何してるの?」



すると、おかっぱ頭はひょい、と物陰に引っ込んだ。



その後についていくと、物陰にある柱の根元に紫色の花が幾房。



いつぞやのツリガネニンジンが咲いていた。



そういえば、ちょうど今は秋だったっけ。



鶴田さんはあずき色ジャージの姿のまま直立していた。



桜色にほほ染めるはかなげな風情とは裏腹に、彼女は極めて単刀直入だった。



「さっき言ってたこと本当?あたしのこと好きなの?」



さらには、極めて疑り深かった。



「本当?」



「どっきりとかじゃなくて?」



「冗談でもなくて?」



最初の一回うなずくのでさえ、恥ずかしさでこめかみから血を吹きこぼしそうになったというのに。



僕は何度も頷かなければならなかった。



うなずくべきかごまかすべきかについては、なぜか迷わなかった。



何度も何度も鶴田さんは僕に念を押して、ようやく納得すると、



「うん。…うん。うん。わかった」



そう言ってその場を離れていった。



あれ?あれ、そんだけですか。



その後の旅程といったらなかった。



鶴田さんから何かしらのアプローチなりコンタクトなりあると思っていた僕は、彼女の姿が見えるそのたび、さりげなく人のいないところに移動したり、こわばる顔を気合いで抑えて笑顔を作ったりして、話しかけやすい雰囲気作りに腐心しつづけた。



ところがなーんも、なかった。



たとえば、消灯時間ぎりぎりまで用もないのに風呂場の前の自販機横にたたずんでみた。



鶴田さんは友達と談笑しながら湯上りの匂いを残して通過した。



あるいは、平和祈念公園で見つけた紫色の野草(ツリガネじゃないやつだったけど)を小一時間見つめ続けたりもした。



しかし彼女は花にも僕にも気付かなかった。



ついには痺れを切らし、縮景園の庭で、すれ違いざまに目を合わせた、というよりガン見した。



が、彼女にとって僕は風景の一部に過ぎないようだった。



最終日同じクラスの連中が妙に優しかったのは、彼らの見解が「僕が鶴田さんにフラレた」



ということで一致したからだろう。



いや、実際フラレたも同然だ。



SAで生熊がフランクフルトおごってくれたけど、あまりのみじめさで味しなかったもの、ぜんぜん。



結局、鶴田さんから連絡が来たのは修学旅行から帰った晩のことだった。



くったくたに疲れていた(主に精神的に)から、晩飯も食わずに寝てしまったので、気がついたのは次の日の朝。



知らないメアドからのメールで、送信時刻は深夜の二時半、なぜか立て続けに六通、来ていた。



『明日、一時半に、町の総合運動場まで来てほしいんだけど』



『あ、御免なさい。一方的に』(←ここで切れてた)



『あ、御免なさい。都合も聞かないで一方的だよね。一時半から待ってます』



『遅くなってもいいです待ってるから。一時半以降で、都合のいいときでいいから』



『絶対来て。何も持たないで来て』



『あ、御免なさい。もしどうしても無理ならいいです』



『何度も御免なさい。私は、鶴田です。小林君のアドレスは、篠原先輩に訊きました』



ドジっ娘?なのかな?と寝惚け半分に思ったのも束の間、視界に入った時計の針で一気に眼がさめた。



現在、12時42分。



一時半まではあと50分弱しかない。



落ち着いて頭を整理してみた。



町の総合運動場は家から自転車で30分はかかる。



いくら『一時半以降ならいつでも』とあるとはいえ、女の子を待たせるのはいかがなものか。



日曜日だから服も見立てないといかん。



そう考えるとすぐにでも家を出る準備をするのがベストだ。



しかし昨日はメシはおろか風呂もすませず寝てしまった。



秋になったとはいえ荷物が重くてけっこう汗かいた。



このままいくのは体臭的な観点からまずいかも。



いや、確実にまずい、あの人きれい好きだもん。



よし。



僕はクローゼットとタンスを開け放し、中にある服をあらかた記憶すると一階の風呂場へ転げ降り、シャワーを浴びながらコーディネイトを考えた。



右手で体を洗いながら左手で歯を磨き、体を拭くと生まれたままの姿で部屋に駆け上がり、考えていた服を一気にまとった。



さらに洗面所へ突撃して髪を乾かし、見苦しくない程度にワックスでととのえて玄関を飛び出した。



僕のすっぽんぽんを見てしまった幼い妹の泣き声、洗面所でヒゲをそっていたら理不尽にも突き飛ばされた親父の怒号が聞こえた気がしたけど関係ない。



本当に人間というのは努力によってなんとでも苦境をはねのけられるもので、僕はふつうなら30分かかる道のりを21分で走破し、総合運動場の入り口へは一時二十分に到着した。



僕は自転車をとめ、水を買って一服ついた。



そういえば、いったい何の用なんだろうか。



携帯を取り出してメールを見てみるが、六通もあるわりには内容が簡潔すぎる。



文面には鶴田さんの真意がわずかも漂っていない。



状況からは、「改めてゴメンナサイされる」



というのがもっとも有りうべきパターンだと思う。



妹に全裸をさらし親父をどつき飛ばし自転車を飛ばしているときの僕は、焦るばかりでちっともその点に気がついていなかった。



もしそうならとんだ取り越し苦労になる。



一番ありそうだけど、考えたくない結末だ。



でも、と思うところもある。



鶴田さんは僕のメアドを篠原先輩から教わった、という。



篠原先輩というのは昔通ってたスイミングクラブ時代の友達で、今は同じ高校の先輩後輩になっている。



先輩は、高校入学と同時にスイミングをやめてバレーボール一本に絞り、今年の県大会ではうちの高校をベスト4まで持っていった人だ。



女だけど頼れる兄貴みたいな人で気兼ねが要らない。



今じゃ一応先輩って呼ぶけど話すときはタメ語でしゃべってる。



だけど、篠原先輩はバレー部の同級生や後輩相手には恐ろしく厳しくしているらしい。



本人もそう豪語してたし、うわさもそれを裏付ける。



鶴田さんは、まさにそのバレー部の後輩にあたる。



先輩の口から鶴田さんと特別親しいような話は聞いたことがないし、気安く僕のアドレスを聞きだせる間柄とは思えない。



ひょっとしたら、旅行中は照れくさくて言えなかったことを、どうしても僕に伝えるため、わざわざおっかない先輩にアドレスを問い合わせたんじゃないか、そんなことも、考えられなくはない。



考えられなくはないはずだぞ。



以上、四段落におよぶ思考を終えるのには一分とかからなかった。



満を持して、僕は鶴田さんを待った。



駐車場の縁石に腰かけて、野球少年がガリガリ君を食べてた。



待ってる時間、目の前の風景はまるで他人事のようだった。



約束の時間。



彼女の姿は見えない。



メールも……、来てない。



あ。…あ。



そういえば僕、返事してない。



いつごろ行くか、くらいはメールしておくべきだったよな。



それに気付いたらなんか自分が可笑しくなって、少し落ち着けた。



それに、この運動場は無駄にだだっ広い。



もう鶴田さんはとっくに来てて、別のところで待ってるかもしれない。



何で気がつかなかったのか。



あ、いい天気だな、今日。



『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は管理棟の前の駐輪場にいます』



送信…、っと、ちょっと待てよ。



「管理棟」じゃわかりにくいかもだな。



『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は正門ちかくの管理棟の、目の前の駐輪場にいます。緑の背の低い建物です』



よし、送s…、あ、これじゃダメだよ、「お前がこっち来い」みたいになってるもん。



『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕はもう着いてます。どこにいるか教えてくれる?』



うんうん。うん?これじゃ僕のこと待たせちゃったって気を遣わせてしまうかな。



もうちょっと直すか。



『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は今到着しました。どこにいるか教えてくれる?』



よし、これでいいかな。送信。



「こんにちは」



わぁ! 振り向くとそこには鶴田さんがいた。



すっごい笑顔だった。



よほどのことがない限り、女の子が屈託なく笑う様子は魅力的なものだ。



それを鶴田さんが、それもけっこう近い間合いで。



これには、来た価値あった。



ふられるかもしんないけど、良かった。



やっぱり笑ったら可愛かった。



おっぱいだけじゃないんだぜと、生熊たちに教えてやりたい…ような知られたくないような。



少し贅沢を言うなら、私服姿が見たかったかな。



鶴田さん、日曜だというのに制服だったから。



「あ、メール…」



間抜けなタイミングで送られたメールを見た鶴田さんは、 「優しいんだね」



と言って、きびすをくるりとかえした。



ほっぺたがまた桜色に染まったのを僕は見逃さなかった。



僕は女の子に告白したことも始めてでもちろんその返事をいただくのも今回が初めてだ、が、僕はこの時点で桜色の未来が来るのを電撃的に確信した。



僕は、「生熊と杉田に後でなんかおごってやろ」



と頭の隅っこのほうでわずかに考えながら、すたすたと姿勢良く歩き出した鶴田さんの後をふらふらと付いていった。



あまりの展開に驚いたが、僕が連れて行かれたのは彼女の部屋だった。



「上がって」



と、こともなげに鶴田さんは僕に促したけど、日曜だからご家族も在宅だった。



「おじゃまします」



とぎこちなさすぎる挨拶をリビングにいるお父さんらしき人に言っているのもかまわず、鶴田さんはさっさと階段を上がっていってしまう。



お父さんは高校生の娘が男を連れてきたのにもかかわらずにっこり笑って「いらっしゃい」



どういう家庭環境だろうか、とふしぎに思った。



後でわかったことには、このお父さんは実はおじいちゃんだった。



しかも、どっかで見たことあると思ったら町の助役さんだった。



どうりで結構いい家だった。



部屋に入るとき何故かまた「おじゃまします」



と口走って鶴田さんに笑われたが、それ以外は典型的なやり取りがあって、 「どうぞ、そこ座ってて」



「うん」



「何か飲み物持ってくるね」



「あ、おかまいなく」



僕は、部屋にひとり残された。



別に監視カメラがついているわけではない。



と思う。



でもなんだかきょろきょろしずらい。



ほんとは存分にきょろきょろ、いや、じろじろしたいのに、首をまわすのをためらってしまう。



顔をひねらなくても見える範囲には、窓と、ベッドがあった。



ベッドに眼がいってしまったことはわざわざことさら白状するまでもない。



ピンクのチェックのシーツとカバーにはきっちり糊がきいていて皺ひとつない。



やっぱり鶴田さんはきれい好きなんだ。



シャワーは浴びたけど、結局チャリンコで汗かいちゃった。



くんくん。



いや、あまり近づかなければいいんだけど、しかし、万が一ということも…。ん。



ベッドの枕許になにかある。あれ。あれぇ?あれってあれだよな。



「あ、ばれちゃった。かな?」



わぁ! タイミングが唐突だ。心臓に悪い人だ。



「ばれちゃった?て、なにが?」



僕はベッドから慌てて顔を背けて、自分のひざこぞうを見つめた。



正座していたから、ちょうど説教されてうつむく子供のようなかっこうで。



ところが、頭の中は桃色一色、アダルト満開だった。



枕許のあれは、アレだ。



間違いない、ゴムだ。



今年の正月に、従兄から三つもらった。



二つは財布の中に入れとけ、って。



あと一つはつける練習に使え、って。



実際、僕は勢い余って二回練習した。



そして虎の子の残弾ひとつは、こないだ実戦に投入した。



見間違えじゃないだろう。



リング状で数珠つなぎになっているものがこの世にみっつもよっつもあるわけない。



ばれちゃった、かな?って。



何をだ。



「窓からみえるんだよ」



「あ…」



鶴田さんが見ていたのはベッドではなく、窓のほうだった。



総合運動場のすぐ脇にある高台の上にある彼女の家からは、正門のあたりがはっきり展望できた。



試合の空き時間なんだろう、さっきとは違うユニフォームの子たちが、やっぱり縁石に座ってアイス食べてる。



ひざについた泥汚れまで見えた。



「実はここから見てたんだ」



「そうだったんだ」



「ごめんね、あたしの都合で」



「いやいや」



ぜんぜん気にしないで下さい。



と、僕は横に首をふった。



ぶるんぶるん振った。



そりゃあまあ、ちょっと遠かったですけどもね。



それにしても、どうして鶴田さんはこんなに余裕があるんだろう。



彼女は窓の桟にひじをついて、こう、お尻を突き出したような格好になってる。



あんまり無防備すぎるんじゃないか。



ふつう、こんなに気を遣わないものなのかな?それとも僕は信頼されてる?



もしくは無害だ、と舐められてる? ていうか、学校の外で会ったことない奴をいきなり部屋に入れるか? ひょっとしたら、制服の折り目も直な鶴田さん、というのは学校限定の被り物で、ほんとうはすごくふしだらな子だったんだろうか?



ともあれ、スカートからすらりと伸びた真っ白な脚を丁寧に折り畳み、鶴田さんは僕の向かいに腰かけた。



そして、ついに話題が核心に入っていったようだった。



「今日はごめんね。急に呼び出したりなんかして」



「いや、別にいいよ。暇だったし」



「でも、かなり慌てて来てくれたでしょ?」



「え?なんでわかったの」



鶴田さんは黒目だけを動かし、窓をチラッと見た。



ああそうか。



僕が必○で自転車漕いで駆け込んでくる姿も、見られてたってことか。



それにしても、鶴田さんの眼はすごい力がある。



なんか、レーザーポインタみたいだった。



普通の人なら指を差したり顎をしゃくったりするところなのに、彼女は瞳をちらりと動かすだけ。



それで、意図が通じてしまう、わかってしまう。



「いやあ、実はちょっと疲れてて、起きるの、遅かったから」



「ごめんね。それに、遠かったでしょう」



「いやいや、全然。んなこたぁない」



「優しいんだね」



「鶴田さんの呼び出しならどこでも行くさ。見合うだけの対価があるからね」



「対価?」



「さっき、笑顔、見せてくれたでしょ。学校では見たことなかったからさ」



「それなら、服もちょっと考えておくべきだったかな?」



「あはは、制服だったから、ちょっと残念だったかも」



タモリの半端な口真似や、ちょっとだけ勇気を絞ってみたくさいセリフは華麗にスルーされた。



慣れないことはするもんじゃない、というかしてはいけない。



けれどもそれ以外のところ、おおむね会話は自然に進んだ。



ように思えたのは、そこまでだった。



「じゃあ小林君、少し休も?」



「へ?」



「だって、疲れてるでしょ?それに、寝不足みたいだし」



そう言う鶴田さんのまなこはちらりと動き、ベッドのほうを指した。



「え?どういう…?何?」



「あたしもちょっとね、寝不足なんだ。いろいろ話す前に、ちょっと寝とこうよ」



僕はズボンを太ももの皮膚ごとひっつかんで、飛びそうになった理性を必○でつなぎとめた。



「寝る」



という動詞には、日なたの意味と日陰の意味がある。



僕は知ってる。



鶴田さんは知ってるんだろうかわかってるんだろうか。



僕がうんともすんとも言う前に、鶴田さんは立ち上り、乱れてもいないベッドの乱れをしつこいくらいに正した。



で、ふとんに入りやすいように、掛けぶとんを端を三角に折り返した。



こう、ぺろり、と。



いくら町の助役さんの家で、ちょっとしたお金持ちだろうと、年頃の娘にダブルを買い与える与太親はいないだろう。



セミダブルでもなかった。



どう見てもシングルサイズだった。



間断ない動きで、鶴田さんは支度を調えていく。



彼女は大きなクローゼットを開けて、少し考えるそぶりを見せたあと、黄色の袖なしニットと、下に黒のセミフレアを選び出して、おもむろにブレザーを脱いだ。



いったん思考停止していた僕だが、さすがに鶴田さんがブラウスのボタンに手をかけたところで跳ね起きて、制した。



思わず肩を抱くような格好になってしまってついに僕は勃起してしまった。



修学旅行明け、しかも疲れてたから昨日はヌいてない。



通算六日分たまってる。



「いや…あのさ」



二の句が接げない! 「ん?恥ずかしい?ごめん、じゃ、外で着替えてこようか」



いや、違うそうじゃない! ていうか、逆だろ?僕が出てくべきところだろ。



恥ずかしがるのは君だろ! と、ツッコみたいのに、でてくる言葉はあうあうあう、だけ。



首を横に振ったり縦に振ったりするのでせいいっぱい。



「なんだ。やっぱり、このままのがいいんじゃない」



両肩を僕の胸板のすき間にぴったりと納めた鶴田さんは、急にいたずらっぽく笑った。



顔が近い。



良く見ると、目の下にクマがあるのを、メイクか何かで隠していたようだ。



そういえばさっき自分でも言ってたけど、何で鶴田さん、寝不足なんだろ?



それに、何で僕の家が運動場から遠いって、知ってたんだろう?



そんな疑問が脳漿のなかをゆるゆると漂っている最中、僕の体は自由をうしなって、うつぶせにベッドの上に倒れこんだ。



顔から枕に突っ込んでしまい、何も見えない。



背中に、かすかな重みを感じる。



枕カバーからは鶴田さんの髪のにおいがする。



女の子って、こんなに軽いんだ。



少し湿った温かいものが僕の首筋にぴとっ、と貼り付き、少しのあいだ強く吸い続けた。



これは、たぶんくちびるだ。



くちびるはやがて離れ、今度は僕の耳元に近づき、ささやいた。



「あたしのこと、好き?」



僕は枕に顔をこすりつけるようにしてうなずいた。



「本当だよね?冗談じゃ、ないよね?」



前にも聞かれた質問だ。



こくり、こくり。



僕はもう二回、追加でうなずいた。



すると鶴田さんは僕の頭を鷲づかみにして、横を向かせた。



こめかみに爪が少しめり込むくらいの、すごい力だった。



ようやく横目の視界の隅で、彼女の顔がぼんやりとらえられた。



「あたしだけ?篠原先輩は?あの人、小林君の何なの?」



変な体勢だから息がつけない。



スイミングの友達、とだけようやく搾り出すように発音したら、彼女は上半身にかかる僕の拘束をといてくれた。



スイミングの友達。



ちょっと良心はとがめたけど嘘はついてない。



実は僕の童貞卒業はすでに姉御肌の篠原先輩にお情けで済ませてもらっていた。



でも、付き合ってるわけじゃない、あれは出会いがしらの事故みたいなものだったから数に入れなくてセーフだと思う。



思うことにした。



仰向けに向き直った僕の、さっきとは反対側に、また唇が押し付けられて、きつく吸い付いてきた。



脱ぎかけたブレザーをまた丁寧に着なおした鶴田さんは、首筋から顔を離すと、僕の顔を見据えて言った。



切れ長の目に、窓から入った光がらんらんと反射している。



「じゃあ、何でもないのね。あたしだけなんだね?」



正直、ちょっと異様な雰囲気はあった。



けど、すごい、透けそうなくらい白い肌で、目鼻が浮き立っていて、何かすばらしい彫刻を見ているみたいだった。



僕は迷うことなくうなずいてしまった。



「じゃあ、あたしのものになってね?」



強張っていた鶴田さんの表情は一気にほどけて、あの桜みたいな色味が、ふたたび頬紅みたいにつつましく差してきた。



そして、唇が今度は、僕の口の上に落ちてきた。



ここで、理性は吹っ飛んだ。



一回セックスしただけだからまだ僕はほぼ童貞だ。



はやく突っ込んで出してすっきりしちゃいたい。



その瞬間の正直な本音だ。



僕は轟然と体を起こし、荒々しく襲い掛かり、彼女を組み敷いた。



…つもりだった。



―ぱしん!ぱしんぱしん! 乾いた音が何発も聞こえ、起こしたはずの上体はびくともしておらず、みぞおちの上当たりに座った鶴田さんが僕の体をひっぱたきまくってる。



めちゃくちゃ叩くのですごく痛い。



何か、言葉のようなものを口走っているが何言ってるのかわからない。



僕がどうしたかというと、とりあえず、謝った。



「な、ちょっとやめて、ごめん、僕が悪かった」



しばらくはそれでも鶴田さんは治まらなかったし、何故か涙をこぼしてもいた。



そこまで至ってやっと僕はちょっと彼女が不安定なのだということを悟った。



でも、当時の僕は純粋だった。



好きな女の子を地雷扱いするような発想はなかった。



何せ好きだったから。



壊れ物を触るように頬をやさしく撫で続けた。



なきやんだ彼女は、こう言った。



「あたし、セックス好きだけど、されるの怖いの」



僕がどういうこと?と訊こうとするとさえぎって、 「訊かないで!セックス終わったら話すから、あたしの好きにさせて」



また暴れだしそうだったので、僕は黙った。



されるがままに身を任せるぶんには、鶴田さんは平静を取り戻してくれた。



僕のジーンズを下ろすと、彼女はお尻をこちらへ向けて、丁寧なフェラチオをしてくれた。



近くで見ると鶴田さんのお尻はボリュームがあって、少し紅潮していた。



フェラチオしてもらうのは初めてだったから記憶がとびそうになるくらいくすぐったくて、気持ちよかった。



鶴田さんの口の中は妙に熱を帯びていて、舌と唇がランダムにゆっくりと動く。



懸命に息継ぎをしながら愛撫してくれているのがわかって、僕のチンポは自分でもわからないくらいに膨らんだ。



シックスナインの態勢だから、僕も舐めたい。



篠原先輩のときはフェラもクンニもなしだった、女性のアソコの味がどんなものか知りたかった。



「鶴田さん」



「なに?」



「僕も舐めたいんだけど…」



「…だめ」



鶴田さんはにべもなかった。



何かわけありみたいだよな…。



無理強いはしちゃいけないよな…と思っても、目の前にあるものにどうしても触りたい。



フェラチオの律動に併せて、制服のプリーツスカートの中身がふるふると震えてる。



「触ってもだめ?」



「だめ。



ごめんね我慢して」



「じゃあ、見るのは?」



このときの僕の声は、飼い犬が人恋しいときにだすような声だった。



我ながらきもいと思ったけど、しょうがなかった。



触覚がだめなら視覚的刺激だけでも…!これはきわめて重大な問題だったのだ。



鶴田さんは、そんな僕をあわれんでくれた。



少し体を起こし、スカートをたくし上げてくれた。



「これでいい?」



淡い緑色のスキャンティ(当時は知らなかった、ショーツのさらに短いやつ)からはお尻の割れ目が見えていて、さらにクロッチの部分には縦に染みが入っていた。



脱ぐよりエロイ、というのはこういうことか!と、僕はうたた感動に堪えなかった。



彼女は丹念に丹念に僕のものをしゃぶってくれた。



飽きもせずに長々と。



股間のほうでちゃぷちゃぷ卑猥な水音がきこえ、目の前のスキャンティには濃い色の染みがだんだん広がっていく。



チンポはあたたかくうねる、鶴田さんの口の中。



これが天国か。



なんて思っているうち、僕は大胆にも寝てしまった。



次に気がついた時には、ブラウスをいい感じにはだけた鶴田さんが、僕の上にのっかってがんがんに腰を振っているところだった。



目をつぶり、いつもより高い声で、うなるようにあえいでいる鶴田さん。



額には汗の粒がある。



僕の体には、異常な疲労感があった。



横を向いてみて合点がいった。



使用済みのゴムが、ティッシュの上に放り出してある。



もう一回抜かれてしまったらしい。



頭が急速に冴えてきた。



起きると同時に賢者タイムに入るなんてなかなかできない経験だ。



ギシギシと派手な音をたてるピンク色のシングルベッド。



サイドテーブルの上では、ペンギンとくまのぬいぐるみが、僕らのセックスをじっと見ている。



時計の針は見えないけど、まだ陽は高いところにあるようだった。



……。まてよ。



「鶴田さん、鶴田さん。鶴田さん」



三回呼んだらようやく気付いてくれた。



「はあ、はあ、なあに?」



前髪とサイドが、汗で顔に貼り付いている。



それをかきあげるしぐさが妙に色っぽくて、彼女の中でチンポがむくむくと膨らんだ。



こんなときに何考えてんだ、って僕の分身なんだけど。



彼女もその変化に気付いたらしく、少し眉根をひそめて 「んっ…」



と、短い息を漏らした。



僕の胸板は、寝ている間にキスマークだらけにされていた。



「ねえ、家の人、下にいるんじゃないの?」



僕は、いまさらひそめても詮無い声をひそめてたずねた。



同時に、帰宅するときに投げられるかもしれない冷たい視線を考えて、ちょっと萎縮した。



チンポもちょっと萎えた。



でも鶴田さんは平然としていた。



「いるよ。どうして…んん…」



どうして?と言い終わる前からもう腰を打ちつけ始めてしまう。



不覚にもチンポはまた膨らむ。



摩擦が強くなって気持ちいい。



なんかすごくヌルヌルしててあったかい。



体温とかも関係あるのかな?鶴田さんの体は雪みたいに白いのに、ずっと熱を帯びていた。



ぎっしぎっしぎっしぎっし。



ベッドが一定のリズムで音を立てながら、鶴田さんの声は小さい音階を刻みながら切なげに上昇し、細くかすれ、途切れ途切れになっていく。



「太もも、触ってもいい?」



「ん、ん、うん、いい、ん、ん!」



おずおずと太ももに手を添えた。



太ももはどうやら平気らしい。



ふたりで草むしりをしていたとき、ひざ同士が触れそうなくらいに近くにあったものだから、今はじめて触ったというのに違和感さえあった。



僕は一回イっていたので、気持ちよかったけど射精感はおきてこない。



そのうちに、鶴田さんがイった。



控えめに体をふるわせて、僕のほうに倒れこんできた。



背中に手をまわして抱きしめると、彼女は息も絶え絶えになりながら、僕の頭を抱き返してくれた。



少し休んだあと、鶴田さんが顔を上げた。



「小林君、あたし上だと気持ちよくない?」



「いや、気持ちいいんだけど、なんか一回出しちゃったみたいだし」



「どうしたらイケる?教えて?」



「僕が上になってもいいかな」



「ごめん、それはだめ。後ろは?」



「え?いいの!」



正上位はNGだといわれた。が。



願ってもない提案だ。



僕はバックをやってみたかった。



「あ、パンツ脱がなくていいから…。うん、そうそう、ふとももにひっかけておいて」



「変なの…」



鶴田さんは僕のおかしな要求は、呆れながらも快くのんでくれた。



プリーツのスカートをたくしあげ、汗のひききっていない白いお尻をかかえただけで、僕の心臓はバクバク言い出した。



鶴田さんの背筋がすこししなって、うなじにはえりあしがかかっている。



僕はもどかしく入り口をさがして、チンポの先をぐりぐりと押し付けまくった。



そのときようやく気付いたんだけど、ゴムがついてなかった。



さっき騎乗位だったときも、ナマだったみたいだ。



「あの、ゴム…」



「いらない、あぅ、ん…っ」



彼女は声を漏らしながらも、脚の曲げかたを調整して、入りやすいように助けてくれた。



亀頭がひっかかる感覚をおぼえた僕は、ほとんど発作的に腰を前にすすめて、鶴田さんの中へ押し入った。



「うあああんっ…!」



カリのこすれる感じがはっきりとわかって、僕はあっという間にイキそうになってしまった。



「ごめん、もうでちゃいそうなんだけど」



「ん、んっ、いいよ…でちゃっていいよ…」



「どこに出せばいい?」



鶴田さんは鴨居のあたりを、例のあの視線でちら、と見た。



そこにはもう一着、制服がかかっていた。



「洗い替え、あるから、んん、どこでもかけて、あ!んん…」



私服見られなくて残念、とか思ってたけど、鶴田さんはこういう演出を用意してくれていたのだった。



ブレザーもブラウスもリボンもつけたままの鶴田さんは、四つんばいになってお尻だけをむきだしにして、男のペニスを受け入れている。



僕は、いかにも彼女らしい、プリーツの折り目のくっきりついたスカートを鷲づかみにして、そこへ精液をぶちまけた。



その日は最後に、念願だった、好きな女の子とのピロートークをすることができた。



といっても、さっぱり楽しめる内容ではなかった。



「小林君、ごめんね」



「何で謝るの?」



「試すようなまねしちゃった。



小林君ちが遠いこと、あたし知ってたんだ」



「試す?」



「そう。



ほんとにあたしの事好きなのかな、って。



夜中の三時にメール送ったのもわざとだよ。



慌てて起きて、メールに気付いて、それでも来てくれるかな、って」



鶴田さんが顔を赤くして恥ずかしそうに目を伏せると、彼女のあそこもきゅっと締まる。



「それにね、あたし変なんだよ」



うん。



何もいわずに僕は聞くことにした。



「お父さんとか、親戚のお兄ちゃんとかにいたずらされたことがあったのね。仲良くするにはこうするんだよ、とか言って。嫌だったんだけど、気持ちよかったの。だから、セックス好きだけど、怖いの」



うん、うん。



と、僕はうなずいていたが、あまりに衝撃的で、それを顔に出さないようにするので手一杯だった。



「でね、お父さんは○んじゃって、お兄ちゃんは外国に行って帰ってこないの。あの人たちは嘘ついてたんだよ。あたしを好きだとか仲良くしたいとか言ってたのに。だから、本当にあたしのことを好きでいてくれる人を探してたの。盗み聞きみたいになっちゃったけど、小林君がああ言ってくれてるのを訊いて、あたしわけわかんないくらい舞い上がっちゃって。旅行から帰ってすぐ篠崎先輩の家に行って小林君のアドレス訊いて、 三時まで夜更かししてメール送った。そのあとも寝ないで小林君のこと窓のところで待ってたんだよ」



すこしうつろな目をして語る内容は、脈絡があるようで全然ないように思えた。



ちょっと異様だったけど、でもやっぱり鶴田さんは彫刻みたいにきれいだった。



「仲良くなりたいな、と思ったから、最初からこうするつもりだった。



迷惑だったら、ごめんなさい」



「いえいえ、そんなことないよ」



「じゃあ、あたしで気持ちよくなれた?」



「うん。よかったです」



なんでへりくだったのかは自分でもわからないけど、率直な感想だった。



鶴田さんもそれ聞いて落ち着いたみたいだった。



「それでね、あたし変な子だから、ふつうのエッチはできないし、 途中で訳わかんなくなっちゃうこととか、多分あるんだ。



今日みたいに。



でも、そういうときだけだから。



普段はいい彼女でいられると思う」



「あ、じゃあ、付き合ってくれるの?」



「うん。変な子だけど、なるべく小林君の希望聞くようにするから。よろしくね?」



「あ、じゃあ早速なんだけど…、おっぱい見せてもらってもいいかな?」



「え?う、うっ、う…」



乳首が桜色なのかどうか確認したかったんだけど軽率だった。



鶴田さんのトラウマか何かに触れてしまったらしくて、その後は帰る時間までずっと彼女を慰めた。



結局、高校時代は鶴田さんの乳首を見ることはかなわなかった。








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