とある日の放課後。
自分は廊下で同じクラスのAさんと共通の趣味の話題で盛り上がっていた。
しばらく話し込んでると、廊下の奥から1人の女の子がこっちに駆け足でやって来るのが見えた。
同じく自分とクラスメート、細いフレームの眼鏡がトレードマークのKさんだった。
「あっ!KちゃんKちゃん!」
ほぼ同時にAさんも気づいたらしく、手を振りながら大きな声でKさんを呼んだ。
いつもテンションが高くてあっけらかんとしてるAさん。
どちらかというと控え目で大人しいKさん。
性格は対照的だけど、不思議と気が合うらしい。
2人は仲が良くて、休み時間を一緒に過ごしてる姿を毎日のように見ていた。
Aさんの声でKさんは自分達の存在に気づいたらしい。
「あ、こんにちは」
Kさんは足を止めると、自分達に挨拶をした。
「こんにちは」
自分も挨拶を返したが、Kさんの様子がどうも引っかかった。
少なくとも今までKさんが廊下を走る姿は見たことがない。
表情も気のせいか、いつもより少々堅く見えた。
気になった自分はKさんに質問してみる。
「そんなに急いでどうしたの?」
「え、それは・・・」
言葉を濁すKさん。
しかし、すぐにはにかみながら言った。
「ちょっと、お手洗いに・・・」
納得した。
Kさんの頬が、ほんのりと赤く染まっている。
恥ずかしそうな様子のKさんを見て、悪いこと聞いちゃったかなと思った自分はすぐに謝ろうとした。
・・・が、しかし。
自分が謝罪の言葉を発する前に、Aさんの明るい響きをもった言葉が発せられた。
「うんち?」
なんというダイレクトな質問。
女の子らしくない、というよりデリカシーが無さ過ぎるAさんの言葉に自分は呆気にとられてしまった。
Kさんはといえば顔を真っ赤にして首をぶんぶん振っている。
するとAさん、さらに驚くべき過激な行動に出た。
「そっかそっか、じゃあこっちの方か~!」
そう言いながら素早くKさんの背後に回る。
そして、なんとKさんの下腹部をギュッと押したのだ。
「キャ!」
Kさんは全身をビクリと震わせ、甲高い悲鳴を上げた。
「これがホントの“押しっこ”、なんちゃって」
超が付くほどの下らないダジャレを飛ばしながら、AさんはKさんに抱きつくようにして下腹部をギュウギュウ押している。
「押さないで!」
Kさんの焦った声が廊下に響く。
おしっこを我慢してる状態でそんなことされたら、地獄の苦しみを味わうことは誰でもわかる。
しかしAさんはKさんの膀胱への攻撃を緩めない。
「あ、ダメ・・・」
Aさんの恐ろしい責苦の前に、Kさんの体が『く』の字に折れ曲がる。
目の前で繰り広げられるエロスな光景につい見入っていた自分だが、さすがに見かねて助け船を出した。
「ちょ、ちょっとそのくらいで止めた方が・・・」
もしも本当にKさんがお漏らしをしちゃったらシャレにならない。
「ん、じゃあこんなもんで」
Aさんも軽いの戯れのつもりだったのか、すぐにKさんから離れた。
僅か10秒程度の出来事だったけど、おそらくKさんにはもっと長い時間に感じられたんじゃないかと思う。
「もう・・・やめてよ」
Kさんは体をそわそわさせながらAさんに軽く抗議し、すぐにトイレへ向かった。
廊下を駆けるスピードは明らかにさっきよりも上がっていた。
おそらくAさんの“押しっこ攻撃”により尿意が危険なラインに達したんだろう。
そして諸悪の根源、Aさんはというと。
「ちょっとKちゃんを偵察してくるから待っててね!」
ウキウキとした表情でKさんの後を追いかけて行った。
そして廊下には、1人ぽかーんと突っ立っている自分だけが残された。
悶々とした気持ちを抑え、自分は2人が帰ってくるのをただただ待った。
4、5分経って、やっと2人はトイレから帰って来た。
すかさずAさんはニヤニヤしながら自分に報告する。
「Kちゃんがしてる時の音、聞いちゃった!Kちゃん、トイレの水が流れないうちにしちゃうんだもん!」
またも飛び出したAさんのはしたない発言に、例によってKさんの顔は一瞬にして赤く染まった。
「え、嘘でしょ・・・先に流したはず・・・」
困惑した表情を浮かべるKさん。
そんなことまでわざわざ言わなくても・・・と自分はAさんに突っ込もうとしたけど。
「そう、嘘!」
満面の笑みを浮かべるAさん。
どうやら、ただ単にKさんをからかいたかっただけらしい。
「Aさんひどい!」
照れ隠しか恥じらいか、Kさんは顔を真っ赤にしたままAさんをポカポカ叩いた。
しかしすぐに取り押さえられてしまい・・・。
「ヒー、やめて~!」
Kさんは自分が止めに入るまでの数十秒の間、Aさんのコチョコチョ攻撃を受けるはめになったのだった。
すったもんだの騒ぎの後、自分はKさんにお願い事をされた。
「お願いだから、今日の姿はなるべく早く忘れて」
無理でした、すみません。
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