もう4年くらい前になるだろうか・・・。



俺には彼女がいた。



名前は楓(仮名)としておきます。






一つ年下で、清楚で、明るく、顔もかわいく、自慢の彼女だった。



大学のサークルで知り合い、一目惚れと言ってもいいかもしれない。



そんなわけで、かなりモテていた。



1年くらいの間で結構仲良くなり、駄目もとで告白したところ、私も前から好きだったと言われ、天にも昇る気分だった。



2日に1回は会ってデートをした。



初めてエッチをした時も最高に幸せで、一生かけてこいつを守ろうなんて思っていた。



その反面、心配の気持ちも尽きなかった。



やはりモテていたし、こいつを狙ってるやつなんて腐る程いた。



そんな不安な気持ちはかっこ悪いので言えるはずもなかったのだが、そんな気持ちさえも楓はわかってくれ、私はあなたしか見てないからなんて言われ、こいつは一生ものだなんて思っていた。






付き合って1年とちょっとくらいした頃、ある先輩がいつも楓と話していた。



すごく心配で気になっていたが、楓の言葉を信じて気にしないふりをしていた。






ある日、楓と会う約束をしていたのだが、友達が風邪をひいたのでお見舞いに行くから今度にしよと言われた。



なんの疑いもなくわかったと言い、暇だったので友達と飲みに行った。



友達に会ってからはみんなに文句を言われ、彼女ばっかり相手にしてんなよと怒られた。



ほんとに彼女とばかり会ってたので、友達と会う時間も作らないとって思ったものだ。






店を出て、さぁ次どこ行くって飲み屋街をみんなで歩いていると、前に腕を組んで歩いているカップルが見えた。



女の方は後姿がすごく彼女に似ていた。



まさかそんなはずないと思っていると男の横顔がちらっと見えた。



その男はいつも楓と話していた先輩だった。



それまでそんなに酔っていなかったのに、頭がずきずきしだし、吐き気を催した。



俺の状態に気付いた友達が声をかけてくるが、全く耳に入らない。



鼓動がはやくなる。



だが、その時点では女の方の顔は見えていなかったので、まだ最後の希望は捨てきれないでいた。



その瞬間、カップルは飲み屋街のホテルへ入る為に横を向いた。






紛れもなく彼女だった。






そのまま俺に気付くことなく、仲良さそうにホテルの中に入っていった。



目が回る。足元がふらつく。



その異常な状態に友達はお開きにしようと言ったが、俺は首を横に振った。



飲まずにはいられなかった。






次の飲み屋に行き、飲みまくった。



どうしたんだと友達に聞かれ、答えた。



そんな女捨ててしまえとみんな口々に怒っていた。



本当にいい友達だと心から思った。



飲んでも飲んでも飲み足りない。



本来酒に弱いのに全く酔わなかった。



でも次第に気分だけは悪くなってきた。






一人の友達が気を使ってくれ、風俗に行こうと言い出した。



俺は断ったが、強引に連れて行かれ、マットヘルスへ皆で行った。



店に着く頃にはふらふらだった。






一人の友達が、「ユエ(俺の名前)にこの店で一番いい子を着けて」と店員に言った。



その店で一番の子を着けてもらった。



こういうところに来るのは初めてだったので、普通緊張しまくるだろうが、酔いも手伝ってかそれは全くなかった。



一番人気の子だったらしく、待ち時間も長く、友達は先に入ってしまった。



やっと俺の順番が来て、女の子と対面した時にはめちゃくちゃ驚いた。



ものすごい綺麗な子だった。






楓も50人はいるサークルのアイドルだったのでかなりかわいかったが、まったくレベルが違った。



こんな子が世の中にいるのかと思ったほどだ。



俺はその時まで楓が世界一かわいいなんて思ってたりしたものだが、やっぱりいるところにはいるんだって思った。



そう思ったら気持ちも少し楽になった。






その子は源氏名をりえと言った。



めちゃくちゃきれいなのに気取ってなく、明るかった。



一番人気なのもうなずけた。



俺もどうせなら楽しもうと明るく振舞った。



会話も弾み、本当に楽しかった。その矢先にりえに言われた。






「何かあったの?」






俺はびっくりした。



自分では楽しんでるつもりだった。明るくしていた。



ポーカーフェイスは得意だったのでかなり驚いた。



初対面なのになんでわかったのか・・・。






「なんとなく、辛そうに見えたから・・・」






さすがプロってこの時は思った。



ほへーーって感じでりえの顔を見ているとびっくりした表情に・・・と思ったら心配そうに近寄ってきて抱きしめられた。



どうも泣いていたらしい。



涙って自分で気付かずに出ちゃったりするんだと思った。



それからは涙が止まらず、かっこ悪かったのだが、ずっと泣いてた。



その間、ずっと抱きしめてくれていた。



彼女をほんとに好きだったこと、その子が他の男とホテルに入っていくところなど、心中をなぜかりえに話した。



初対面なのになぜと思うが、全てを泣きながら話した。



少し心がすっきりした気がした。



そのまま風俗なのに泣き疲れてりえに抱きしめられながら寝てしまい、起こされた頃にはもう終了時間になっていた。






「元気出して!またね!」と言われ、うなずき店を出た。






「またね」という言葉に少し引っかかったが、また店に来てねということだと思った。



友達と口々に最悪だったとか、普通だったとか風俗の話に花が咲いた。



俺の子はどうだったと聞かれ、普通と答えてしまった。



初めて会ったのにその子を友達に指名して欲しくなかった。



心の中で、このまま風俗にはまっちまうかなぁなんて苦笑いをした。






友達に「元気出せよ」、「別れろ」、「紹介してやる」など言われ、家に帰った。



一人になると、またあのホテルの前のシーンを思い出し、へこんだ。



前は彼女が浮気したら即効別れるなんて言ってたが、いざ自分に降りかかるとどうしていいかわからなかった。



別れたくなかった。






ほんとに好きだったのだ。






そんな風にもんもんと考え込んでいると、電話が鳴った。



携帯を取ると画面には梓(仮名)と出ている。



おいおい、そんな友達いねぇぞ?なんで登録されてんだ・・・?



10コールくらいで考え込んでる間に切れた。電話帳を見る。



メールアドレスも入っていた。



忘れてるだけかな?悩んだ末、折り返しかけてみた。






「もしもーし、元気でたぁ??」






・・えーーっと・・・わかりますよね?






「なんで番号知ってんの。てか、俺の携帯にも登録されてんの。」



「嫌だった?」心配そうな声が聞こえた。



「嫌じゃないけど・・・。」



「よかった。ね、これから遊びに行こうよ!」



「え??これから??もう2時なんですけど・・・」時計は夜中の2時を過ぎていた。



「今一人なんでしょ?」



「そうだけど・・・てか、本名は梓って言うの?」



「そだよ。お客さんで本名教えたのユエ君だけだかんね。」



「ほんとかよ・・・」



「信じろってば!また暗くなってたんでしょ!」



「う゛・・・。バレバレ?」



「バーレバレ!◯◯まで迎えに行くから、出てきなさい!決定!」






◯◯は俺の家の近くのディスカウントショップ。



店に行ったときにそのディスカウントショップの近くと話していた。






「え?もう決まりなの?」



「決まりだよ!後10分くらいで着くから!来なかったら泣いちゃうかんね!」






一方的に約束を取り付けられ、電話を切られた。



楓は男に合わせる系のタイプだったので、全く違った性格だった。



年は2歳梓の方が年上だったのだが、そのせいか強引なところが多々あった。



なぜか初対面なのに不思議と嫌な気はしなかった。






5分位して家を出て、◯◯に向かうともう梓は着ていた。



おそーいなんて言われながら彼女の車に乗った。






「どしたんだよ?こんな時間に。」



「んーまた泣いているかと心配になっちゃって。」はっきり言う女だなこいつは!



「泣いてないし。心配で番号交換してたの?」



「へへ、まね。それだけじゃないけど。あたしさ、浮気するやつって許せないんだよね。」






梓は彼氏を追ってこっちに来たらしかった。



すごく好きだったらしい。



最初のほうはうまくいってたらしいが、浮気とかしだして、でも好きで黙ってると保証人にされたままとんずらされたらしい。



額はそんなにたいした額じゃなかったらしいが、その時はあわてて、手っ取り早く稼ぐには体を売る行為しか思いつかず、風俗に入ったららしい。



それ以来、男嫌いらしい。



でも、風俗は割り切っていると言った。



だから、お客と番号交換したりしたことはほんとに始めてだと言っていた。






「じゃあなんで、俺とは番号交換したの?」



「ほっとけなかったっていうのが本音かな。本来男嫌いだから心の中では嫌悪感があるんだけど、ユエ君にはそれがなかったの。ね、あたしとリハビリしようよ。」






意味がわからなかった。



聞くと、俺の心が壊れかけてるから直してあげるといった内容だった。



だから仮にってことで付き合おうよと言った。






これにはぶっちゃけ引いた。






ほんとは軽い女じゃないの?って感じだった。



だって今日会ったばっかりだよ?



でも、楓のことはショックの反面悔しさもあった。



だからしかえし的な気持ちでOKを出した。



まあこの辺からやっぱり俺の心は壊れてたんだな。






それからは忙しい毎日だった。



楓と梓両方と会うわけだから。



はっきり言ってこれ二股なんだよね。



最低だったなこの時の俺。



楓と会う時はやっぱりすごく苦しかった。



でも、ポーカーフェイスは得意なのでいつもどうりにして見せてた。



Hも楓とはしていた。



最初はこの前のシーンを思い出し、鬱になって勃たなかったが次からはできるようになった。






心が凍っていく感じがした。






楓は勃たなかったことで浮気を疑ってきたが、元来俺はそういうタイプじゃないので、すぐに疑いは晴れた。



梓のほうはキスもしなかった。



一度そういう雰囲気になったが、楓の顔がちらつきできなかった。



プラトニックな関係だった。



でも、本当に楽しかった。



梓といる時だけは楓を忘れられた。



そういった関係が2ヶ月ほど続いた。






ある時、梓と街で飲んでブラブラしているとこの前と全く同じ光景を見た。



この前と同様先輩と楓が腕を組んで歩いていたのだ。



じっと見入ってたことに梓が気付き、全てに気付き、ものすごい形相でそのカップル目掛けて走っていこうとしていたところを止めた。






「なんでよ!!!ひっぱたいてやんないと気が済まない!!」






なぜかものすごく怒っていた。



その梓とは違って俺の心は落ち着いていた。



怒りもなく、悲しみもない。



その時点で俺は気付いた。



心はもう治っていたのだ。






そして、好きな子が自分の中で変わっていることも・・・。






俺はあせった。



惚れるとは思っていなかった。



おそらく梓は俺のことなんてなんとも思っていない。



いっぱいいる男友達の中の一人ってとこだろう。



つまりこの関係は梓にとっては遊びなのだ。






掴んだまま考え込んでいるもんだから、「大丈夫?」と聞かれた。



梓に喜んで欲しくて、「今の光景を見てもなんとも思わなかった。心は治った。」と言った。



でも、梓の顔は笑っていなかった。



悲しい顔をしていた。






「ね、これからうちに来て飲まない?」






梓の家に行くのは初めてだった。



俺は単純に嬉しかった。



でも、その中で複雑な感情は捨てきれないでいた。



あの光景に対してなんとも思わない自分が少し寂しかった。



完全に心は梓へと移ってしまったと感じた。



でも、遊ばれてると思っていた。



告白してもOKしてもらえないだろう。



仮だからこんなにうまくいっているんだ。



なにより、さっきの今で告白しようとしている自分が軽く感じた。



2時間くらい普通に楽しく飲んでいると、明るい顔で言われた。






「でも、ふっきれたかぁ。ほんとよかった!・・・じゃあこの関係もお終いだね。」






笑顔でそう言われた。



やはり俺のことはなんとも思ってなかったのだ。



そう感じた時、身震いがした。






これで・・・終わり?






このままなにも伝えず終わってしまうのか。



そう思うと勝手に口が開いていた。






「・・・あのさ、こんな事言って軽蔑されるかもだけど、さっきの今だし・・・でもこのままなにもしなくて終わりたくないから。ずっと惹かれてた・・・。すきになっちゃったんだ。お前は俺の事なんとも思ってないのはわかってる。でも、言わずにいられなかったんだ。・・・ごめん。」



「・・・」






時間が流れる。



鼓動が速く、顔は見れない。



なにか言ってくれーーってずっと待ってた。



でも、返事は無い。



5分くらいかな。じーっと待ったけど、反応なし。



この沈黙に耐えれなかった。






「・・・ごめん。」






そう言って帰ろうと立ち上がり、玄関のほうへ歩いていくと背中に何かがぶつかった。



そのいきおいで玄関のドアで頭を打った。






「いってー!!なにす・・・」






おでこを抑えながら振り返ると梓が泣きながら俺に抱きついていた。






「なんで・・言っちゃうの?我慢・・してたのに・・。あたし風俗で働いてるんだよ?付き合えるわけないじゃん!!」






小さな粒、大きな粒とつまりおお泣きしていた。






「じゃあ辞めればいいだろ!!お金は俺も手伝って返す!!」



「そんなことさせれるわけないでしょ!!馬鹿にしないでよ!!」



「じゃあ貸しといてやる!!返済終わってから少しずつ返してくれればいい。」



「そんなこと・・できない・・」



「俺は今回の件でかなり助かった。お前がいなかったらいつ忘れられたかわかんないよ。それくらいさせてくれ!」



「・・・同情なんじゃん。」



「え??」



「やっぱり同情なんじゃない!!好きじゃなくて同情なんでしょ??!!」



「さっき言ったやろが!!好きなんやって!!好きな子助けたいって思うの当たり前やろ?」



「でも・・」



「てかお前の気持ち聞いてないよ。俺の事好いてくれるん?」



「好きじゃない・・」



「目見て言えって!」



「・・・・・・・好きよ。★ぬほど好き!!」






がばっとキスされました。



初めての梓とのキス。



夢中で舌を絡ませた。



5分くらいして梓から唇を離した。






「ベッド・・・行こ?」






ベッドの中で色々話をした。



初めて会った時から気になってた事。



楓の事が許せなかった事。



仮付き合いを始めてどんどん魅かれていった事。



いつも楓にヤキモチを焼いていた事。



色々話してくれました。



その時のHは最高に幸せだった。



この時から本当の彼氏彼女になった。






次の日梓は風俗の仕事に行った。



一番人気だったこともあり、急に明日辞めさせてくれとはできず、辞めるのに1ヶ月以上かかった。



その間気が気じゃなかったが、それはしかたなかったので、我慢した。



店長から残ってくれたら今の給料より1割上乗せする等と散々辞めるのを渋られたらしいが、梓は頑なに拒み、堂々と辞めていった。






付き合ってからの梓は、適度に甘え、適度に反抗してかわいくてしかたがない。



そして気が強いので、一度へそを曲げると大変だ。



デートは必ず迎えに行っている。



何度か外で待ち合わせをしていたのだが、たまたま俺が待ち合わせに遅れたとき(5分程度だが)もうナンパされていた。



確かにめっちゃ綺麗だからね。



それも心配だったのだが、しつこいナンパの男をビンタしたのだ。



キレだした男達に対してバタバタ梓を連れて逃げたことがあった。



気が強すぎるのもどうかと・・・ちゃんと怒りましたが。



まだ男嫌いは健在らしく、俺以外の男には触られたくないとの事。



自分以外の男に拒否反応を起こすなんてたまらなくかわいいです。






俺はちゃんと付き合いだした次の日にも楓に言って別れようと思っていたのだが、梓が首を縦に振らず、風俗を辞めて新しい仕事をしだしてちゃんとした自分で戦いたいと言い出し、付き合って2ヶ月後くらいに一緒に言いに行きました。



一人で行くって何度も言ったんだけど、「また気持ちが戻ったらどうすんのよ」とか「ひっぱたいてやらないと気がすまない」とかで納得せず、結局二人で行きました。



楓は泣き出して大変でしたが、先輩のことを言うと瞳孔が開いたようにびっくりして、泣きながら、「断りきれなかった」と繰り返していました。



その瞬間梓がビンタをし、「自業自得でしょ?」って言って俺をひっぱって帰ってきてしまいました。






その後、何度が携帯に電話がありましたが出ていません。



その事に梓が気付き、携帯を変えるように言われ、それから連絡とっていません。



サークルも辞めてしまったので。



大学の時は友達といるので、話しかけてこれないみたいでした。



その後どうなったかしりませんが、先輩の友達曰く付き合ってはないとの事でした。






梓と付き合って2年くらい経ちますが、借金も今年の初めにやっと返し終わり、先月に親と会って欲しいと言いました。



梓は泣いてしまい、抱きついてきました。



「嬉しくてたまんないよぅ」なんて言われ、俺も嬉しかった。



実家に行く途中ずっとビビリまくってて、



「ねぇ。あたし大丈夫かなぁ?ばかな子とかに見えないかなぁ?」



なんてずっと聞いてきていました。






かわいすぎっすよあなた!!






いざ連れて帰ると親はびっくり!!



おかんの第一声は「この馬鹿!!どこから誘拐してきたの!!」と言われ、フライパンで頭を叩かれてしまいました。



なんて親だ・・。



あまりに綺麗過ぎてびっくりしたんだと思います。



何度も梓に「ほっんとうにこのばか息子でいいの?」と聞いていました。






何度聞くんだこのやろう!






年の離れた中2の妹もいるのですが、「おにいちゃん援交?」なんて言われました。



4人で飯を食ってると父帰宅。



梓を見るなりぼーぜん。






「えっと・・・◯◯(妹の名前)の友達??」






どいつもこいつも!!



でも家族は気に入ってくれたようでした。



今月は彼女の実家に挨拶に行くことになってます。



かなりビビッテます。






でも幸せです。