
萌ちゃんに引っ叩かれて数日。
それまでまったく話をしなかった僕と萌ちゃんは世間話ができるまでの間柄になった。
クラスの連中は、なんであんな子供っぽい男子と萌ちゃんが仲良くしてんの?って思っていたと思う。
萌ちゃんは僕と話をしていると、とても楽しそうにしている。
学校でもかなりの美少女に好かれて、僕も悪い気はしなかった。
萌ちゃんの普段の声は低いんだけど、笑うと声が1オクターブ高くなって、それが聞けた日はなんか嬉しかった。
やがて僕と萌ちゃんは毎日一緒に下校するようになった。
僕が見上げて萌ちゃんが下を向いて話をする構図。
毎日何人かの生徒にからかわれたが、僕も萌ちゃんも気にしなかった。
ある秋の日。
僕と萌ちゃんは一緒に下校していた。
いつもはずっと萌ちゃんがしゃべっているのに、その日に限って萌ちゃんの口数が少なかったのが気になった。
「ねえ雄太君」
「ん?」
「今日、私の家に寄って行って」
「うん、いいよ」
僕は萌ちゃんの家にあがった。
「お茶どうぞ」
前にも出してもらった冷茶。
いつもの味。
美味しかった。
「今日はどうしたの?」
「うん・・・」
萌ちゃんはモジモジしている。
「なんか話しにくいこと?」
「いや、そんなことも・・・ないんだけど」
「どうしたの?」
「うん・・・あのね・・・」
なかなか本題に入ろうとしない。
「また今度にする?」
「ううん、雄太君まだ帰らないで」
「なあに?どうしたの?」
「・・・雄太君ってスカート捲りばっかりしてるでしょ?」
「え?ばっかりでもないと思うけど」
「あ、そうだね。ゴメンね」
「えーと、たまにスカート捲りするでしょ?」
「あ、言い直してくれたんだ。それで?」
「あのね・・・」
「うん?」
僕はお茶をすすった。
「なんでやるの?」
「なんでって?」
「スカート捲り」
「え?なんで僕がスカート捲りをするのかってことを聞きたいの?」
「うん・・・」
「なんでって・・・特に理由はないんだけどな」
「だって他の男子はしないじゃない。なんか理由があるんでしょ?」
「他のやつはよくわかんないけど・・・」
「ねえ、理由を教えて」
「理由?ううん・・・難しいなあ」
「下着が見たいの?」
「いや、そういうわけじゃ・・・」
「え?じゃあなんでするの?」
「なんでって・・・改めて聞かれると困るなあ」
(・・・そうか、萌ちゃんってやっぱりまだ小5の女の子なんだ・・・)
萌ちゃんには、“捲った時の女の子の反応が楽しい”って感覚はわからないらしい。
「下着だったら私のを見せてあげてもいいのに。あれ、やめられないの?」
「萌ちゃんの見ると引っ叩かれるし」
「あ、あれはビックリして。ごめんね。学校じゃなくて、ここでなら・・・」
「そう改まって見せるって言われるとね・・・」
「ねえ、スカート捲りやめられない?」
「やめて欲しいの?」
「うん・・・」
「なんで?」
「え?なんでって・・・」
「なんでやめて欲しいの?」
「なんとなく」
「なんとなくじゃわかんないよ」
こんなやり取りがしばらく続いた。
結論が出ないまま時間が経過した。
「あの、私・・・」
「うん?」
「あのね・・・」
「何?はっきり言ってよ」
「あの・・・びっくりしないでね」
「どうしたの?」
「ゆ、雄太君のことが好きなの」
「へ?誰が?」
「あの・・・私が・・・」
「え?萌ちゃんが?」
「うん・・・迷惑だった?」
「いや、迷惑なんて・・・」
僕の目が点になった。
目の前には顔を真っ赤にした萌ちゃんがいる。
とてもからかっている表情には見えなかった。
萌ちゃんだったら高校生くらいの彼氏がいても不思議じゃないし、どっちかというとその方が釣り合いそうに見える。
「ホ?ホントに?」
真っ赤になってひたすら頷く萌ちゃん。
僕はといえば、女の子に告白されたのなんて生まれて初めての出来事。
僕はあまりのことに気が動転し、萌ちゃんの家を飛び出して自分の家に帰ってしまった。
その夜は一睡もできずに朝を迎えた。
萌ちゃんは学校を休んだ。
(・・・きっと僕のせいだ・・・)
僕は萌ちゃんが気になって授業も上の空だった。
(・・・萌ちゃんの様子を確認したい・・・)
僕は先生が配ったプリントを何枚か持って、帰りに萌ちゃんの家に行った。
萌ちゃんの家の玄関の前に着いた。
手がブルブル震えてなかなかベルが押せない。
やっとの思いでベルを押した。
萌ちゃんが無言で玄関を開けてくれた。
「・・・」
「あ、あ、あ、あの・・・」
「・・・」
「も、萌ちゃん、昨日はゴメン」
「・・・」
「あの、これ今日配ったプリントなんだけど・・・」
「あがって・・・」
僕は萌ちゃんの部屋に入った。
2人とも無言。
気まずい時間が過ぎていく。
「私、告白なんかしなきゃよかったね」
「え?いや、そんなこと・・・」
「あの後、すっごい後悔した」
「ご、ゴメン。びっくりして・・・」
「告白さえしなけりゃ、ずっと楽しく話できたんだろうなって」
「・・・」
「私のこと、嫌いになったでしょ?」
「いや、嫌いってことはないんだけど・・・」
涙を浮かべて僕を見つめる萌ちゃん。
僕は子供心に萌ちゃんが愛おしくなった。
「・・・」
「萌ちゃんって・・・」
「え?」
「見た目は大きくて大人っぽいから、もっと年上の人が好きだと思ってた」
「私は雄太君が好きなの」
「な、なんで僕なんか・・・」
「クラスの男子ってみんな女子のこと意識して格好つけてばっかりだし・・・」
「そう?」
「雄太君はちっちゃくってお猿さんみたいだけど格好つけてなくて」
「お猿?」
「とても元気だし、女の子のスカート捲って嬉しそうな顔をすると可愛いし」
「可愛い?」
「だからずっと前から好きだったの」
「そ、そうなの?」
「それに・・・この前、『大好きだよ』って言ってくれてすごく嬉しかった」
「あ、言った・・・」
「それにね・・・」
「それに?」
「他の女の子と同じように私の・・・私のスカート捲ってくれたから」
「え?でも引っ叩かれたし」
「何度も言うけどあれはビックリしちゃったの。ホントにゴメンね」
「うん、まあ・・・ビックリさせたのは僕だし・・・」
「それに・・・雄太君だけは私と普通に付き合ってくれるから」
「そうなの・・・」
「うん、こんなこと言って迷惑だったでしょ。ごめんね」
「いや、謝らなくてもいいけど・・・」
「これからも友達でいいから仲良くして」
「友達でいいからなんて・・・僕なんか全然勉強できなくてダメなヤツなのに・・・」
この時、僕はまだ小5。
実に子供。
他の女子なら実感も湧いたんだろうけど、見た目は高校生の萌ちゃんからの告白。
大人に告白されたみたいでビックリしたのが本音。
「萌ちゃん」って呼んでたけど、ホントは「萌さん」って感じでした。
「じゃあ、プリントありがと」
「明日は学校に来れる?」
「うん、行く」
「じゃあね。バイバイ」
僕は萌ちゃんの家をあとにした。
さらに数日後。
夕方、学校帰りにまた僕は萌ちゃんちにいた。
この日、事件が起きた。
実はその日、僕はノロウィルスにやられたらしく体調が悪かった。
萌ちゃんは僕に色んな話をしてた。
前に行ったディズニーランドの話とか。
学校にいる時と違い、僕の前では少女の一面を覗かせる萌ちゃん。
そんな萌ちゃんを見ながら僕は吐き気と戦っていた。
「僕・・・そろそろ帰らなきゃ・・・」
言い終わらないうちに耐えられなくなってテーブルの上に吐いてしまった。
「あっ、どうしたの?」
「おえっおえっ」
「大丈夫?雄太君しっかりして」
「おえっ」
大粒の涙をボロボロこぼしながら僕は吐き続けた。
「ここに横になって」
萌ちゃんは僕を横に寝かせると口のまわりをハンカチで拭いてくれた。
テーブルの上にぶちまけた汚物を片付ける萌ちゃん。
「ねえ、萌ちゃん・・・」
「なあに?まだ気持ち悪いの?」
「ううん、スッキリしたんだけど・・・」
「そうそれなら良かった」
「僕の吐いたもの・・・気持ち悪くないの?」
「いいから雄太君は横になってて」
僕の目からさらに涙が溢れ出た。
テーブルを片付けると萌ちゃんは僕の横に座った。
「ねえ、大丈夫?」
「うん・・・ありがとう」
「明日、病院に行ったほうがいいよ」
「うん・・・そうする」
そう言われているうちに睡魔が襲ってきて、僕はそのまま萌ちゃんの部屋で寝てしまった。
しばらく寝て目が覚めると僕を覗き込む萌ちゃんの姿があった。
「あ、ここは・・・」
「目が覚めた?調子どう?」
「そうだ、帰らないと!」
僕は飛び起きた。
なぜか大きいパジャマを着ている。
「あれ?このパジャマ・・・」
「大きいでしょ。私のだから」
「着替えさせてくれたんだ。ありがとう」
「もっと寝てていいんだよ。あの・・・下に穿いてた物も洗っておいたから」
・・・そうか、ゲロまみれの短パンとパンツ・・・。
部屋の中にはキレイに洗ってある僕の服が見えた。
「あ、パンツ!!」
「ごめんね。あの・・・濡れてて気持ち悪いかなと思って」
「脱がしちゃったの?」
「ご、ごめん・・・でもね。ちゃんとは見てないから・・・」
僕は真っ赤になってしまった。
萌ちゃんも真っ赤になってた。
「は、恥ずかしいな・・・」
「雄太君ごめんね。もし怒ったんなら私のも見せるから」
「いや、いいよ。そんな・・・」
「怒ってない?」
「怒ってないよ。僕、帰らなきゃ。あれ、乾いたかな?」
「まだ少し濡れてるけど・・・」
「いいよ、家近いし」
「じゃあ着替えて」
僕は慌てて着替え始めた。
パジャマの下穿きを脱ごうとした時に萌ちゃんの視線を感じた。
僕は下半身だけ壁の方を向けて振り向いた。
萌ちゃんと目が合ってしまった。
「あの、そっち向いててくれる?」
「あ、ご、ごめんなさい」
「もしかして・・・萌ちゃん・・・僕の見たいの?」
「え?いや、見たいなんて・・・」
「なんか見たそうにしてたから」
「え?そんなふうに見えた?」
「うん、もしかして見たい?」
「あ、見たくなくはないけど・・・」
「じゃあ見たいんでしょ?」
「うん・・・ちょっとだけ・・・」
「さっき僕が寝てからパンツ脱がした時、もしかして見た?」
「う・・・うん・・・ちょっとだけ」
「ホントはしっかり見てたんでしょ?」
「え?ちょっとだけだと・・・思うよ」
「ホントは?」
「うん・・・結構見てた・・・ごめんね。でも私のも見せるから許して」
「いや、そんな・・・じゃあ、また今度見せて」
「今度でいいの?」
「いや、できれば早くてもいいんだけど・・・」
「じゃあ、今見てく?」
「やっぱり僕、帰るよ」
このままエッチな行為を進めたいと思いつつも、また気分が悪くなってきた僕は慌てて服を着て玄関を出た。
萌ちゃんは今回も玄関先まで送ってくれた。
ノロウィルスのせいで家に帰っても体調はすぐれなかった。
薬を飲んで寝ようと思ったが、萌ちゃんの家で起きたことを思い出すと眠れなかった。
