あきお君が帰った後、私は保健体育の教科書を開き、精子について調べた。



そして、精子が入ると妊娠してしまうこと、それを防ぐためにはコンドームという物を使わなければならないことがわかった。



私は焦った。






(どうしよう、赤ちゃんができてしまう)と思い、動揺した。






そしてドラマで観た、「生理がないの・・・」というシチュエーションと結びつき、生理が来たら妊娠じゃないと思い、(どうか生理が来ますように・・・)と、すがるように祈った。



しかし杞憂に終わった。



その日のうちに生理になったのだ。






性に関して興味が発達した私は保健体育の生殖に関する部分は読んでいた。



しかし妊娠するという概念については興味が乏しく、ただ、男の人にはペニスがあり、それを女の人の膣に入れることがセックスというものだ、という認識だけしていた。



この日を境に、“妊娠”という概念が私の中に芽生えた。



そして、“避妊”という概念も。






私は貯金箱を開け、コンドームを買いに走った。



ドラッグストアの駐車場の端っこに、その自動販売機があることは知っていた。



そして、それはちょっといやらしい物を売っているということも知っていた。



けれど、それはコンドームという物で、避妊に使うものだということは考えてもいなかった。



私は車通りと人通りのない隙きを見計らって、コンドームを買った。






家に帰ると母が帰宅していた。



私はコンドームの箱がばれないよう、持っていた手提げを体の陰にしながら、「お帰り」と言った。



そして、「今まで友達の家に行ってたの」とも。






自分の部屋に入ると、内側から鍵を掛けた。



そして買ってきたコンドームを開封し、1つをまじまじと観察した。



小さなゴム製品だな、というのが第一印象だった。



そして説明書のように装着してみたくなり、工作道具ののりの容器を出し、それに被せ、注意深く引き下ろした。



意外とすんなりと被せることに成功し、私は嬉しく感じていた。






そうか、これをおちんちんにつけてセックスをすると、あの精子がこれに出て、あそこの中には出されないんだ。



だから、赤ちゃんはできないんだ。



私は避妊について、こうして学んだ。






次の日、いつもと同じようにあきお君と下校した。



そして、ひそひそ話をした。



精子を身体の中に出すと赤ちゃんができてしまうこと。



それを防ぐために、コンドームっていうゴムをおちんちんにつけてセックスすれば大丈夫なこと。



要点は、その2つだった。



あきお君も、なんとなくは知っていたようだ。



ただ昨日は、自分でも驚くほどすぐに出てしまい、家に帰ってから私と同じように保健体育の教科書を見てビックリしたと言っていた。






私は、「直後に生理が来たので大丈夫、赤ちゃんはできないよ」と言った。






あきお君は、「そうか」と言った。



そして、「生理ってどんな感じ?」と訊いてきたので簡単に教えてあげた。



それまでは男子が生理のことをからかうと嫌な気持ちになったが、あきお君にはすんなりと話すことができた。






そして、「この生理が終わったら、またしよう」と言った。






今思えば、小学5年生の私達がこんなことを話していたことがとても不思議なことに感じられる。



とても多感な時期であるにも関わらず、私達は秘密を共有することによって急速に親しくなり、性のことについてこんなにもオープンに話すことができていた。



だから、あきお君は私の生理について理解を示し、からかう男子とは一線を画した“いい男”になっていた。



少なくとも私にとっては。






そして私も、あきお君から聞く性についての話にたくさんのことを学んだ。



朝はあの時と同じように勃起すること、小学校に入る頃ぐらいからオナニーしていたこと、初めて射精したのは朝の勃起のときで、夢から引きずり起こされるような感覚で気が付いたらパンツが濡れていたこと。



そして次からはそれを自分でできるようになったこと。






私も、自分で触ることを教えてあげた。



けれど、イッたことはまだなかった。



その頃は、触って気持ちよくなることが“イク”なのだと思っていた。






不思議なことに、あきお君とは気まずくなることは全くなく、むしろお互いの生理について知ったことでそれまで以上に優しく接していた。



だから下校を共にすることもそれまで通りであり、別れ際にキスさえすることもあった。






1週間ほどして生理が終わると、私はすぐにあきお君のことを意識していた。



セックスしよう、と思った。



まだ週休2日制じゃなかった土曜日、下校の時に私はあきお君を家に誘った。






「ご飯食べたら家においでよ」






あきお君は、すぐに返事をした。



私は母が作っておいてくれたお弁当を食べ、シャワーを浴びた。



あれから、アダルトビデオを観せてくれた友達に冗談交じりで「貸してよ」と言ったら、本当にお兄ちゃんの部屋から1本持ってきてくれたので、それを1人でこっそり観た。






そこには、69があった。



私は衝撃を受けた。



お互いのものを舐めあうなんて、なんていやらしいのだろうと思い、あきお君としたら気持ちいいだろうと思った。



そのために、シャワーを浴びて待っていようと思ったのだった。






しばらくすると、あきお君は家に到着した。



30分ほどゲームをすると、どちらともなくキスを始めた。



そしてすぐにお互いに裸になった。



挿入はせずに、肌の気持ちよさを確かめ合うように抱き合い、キスをし、性器を触りあった。






私は、「ビデオを観よう」と提案した。



「エッチなのあるんだ」と。



あきお君は興味を示した。






「エッチビデオって観たことある?」と訊くと、「ない」と言った。






私達は裸のままでビデオを再生した。



そこには、大人の男女のセックスが前戯からフェラチオ、69、正常位での挿入、バック、そしてフィニッシュと様々な形で描写されていた。



私達は観賞しながら、時々ビデオを一時停止させ、「これやってみない?」と真似てみたりした。






あきお君が求めたのはやはりと言うか、フェラチオだった。



私はあきお君のそれを気持ち悪いなどとは露ほども思わなかった。



むしろ、そう頼まれるのを待っていた。



私は、それを口に含んだ。






「あ、やばい、気持ちいい・・・」






あきお君がため息を漏らすのを私は心地良く思った。






「だめ、出るから」






あきお君は私の口からそれを離した。



次に、69をした。



それが『69』という名前の付いたものであるとはもちろん知らない。



けれど私達はその行為がとても気持ちの良いものであることは知っていた。






まず、あきお君がクンニをしてくれた。






「濡れてる・・・」






あきお君は、「ヌルヌル」とは言わなかった。



後から聞いたのだが、あきお君は私の生理の間、あきお君の5歳年上のお兄ちゃんの部屋にあったエッチな雑誌を盗み読んではオナニーを繰り返していたらしい。



そして、女の人のあそこを舐めるという行為について、その雑誌で知ったと言った。



私は、あそこを舐められることについて少し怖いと思っていた。



なんとなく。






しかし、それはすぐにかき消された。



とても気持ちよかった。



唇と唇でさえあんなに気持ちいいのだ、あそこを唇で愛撫されるのが気持ちよくないはずがない。



私はクンニされながら身体を移動させ、あきお君のモノを口に含んだ。



とても大きかった。






「入れよう」とあきお君が言った。






69は、実はすぐに終わった。



あきお君がまた、「だめ」と言ったからだ。



今思うと、この時にあきお君はフェラチオでイクこともできたのだが、きっとお兄さんの雑誌で、すぐイクのはかっこ悪いとでも学んだのだろう。






「ちゃんとセックスしてイク」と言っていた。






私が「コンドームつけて」と言い、机の奥に隠していた箱を取ろうと立ち上がると、「俺、持ってきたよ」とあきお君はバッグの中から小さな巾着袋を取り出し、その中から本当にコンドームを出して見せた。



そして包装を破り、私に背中を向けて装着した。



途中で「見せて」と言ったが、「だめ」と言って着けるところは見せてくれなかった。



薄いピンク色になったあきお君のそれを、私はとても可愛いと思った。






これも後から聞いたのだが、あきお君は私と同じように自動販売機でコンドームを買い、2個ほど試し付けをしたそうなのだ。



そして、その2回とも、着けたままでオナニーしたとも。






私は横になり、この時はためらうことなく足を開いてあきお君を迎え入れた。



とても気持ちよかった。



ビデオはバックの姿勢に移っていたが、私達は正常位のままであきお君のフィニッシュを迎えた。






脱力しているあきお君を前と同じように私は抱き締め、しばらく待っていた。



あきお君は身体を離し、コンドームの着いたそれを抜いた。



私はコンドームの先に溜まっている液体を不思議に思いながら見つめた。






「こうなるんだ・・・」と口に出すと、あきお君は、「あんまり見ないでよ」と身体を向こうへ向けた。






あきお君はコンドームを外し、ティッシュに包んで捨てた。



そして、「ふー」とベッドの上に横になった。



私達は身体をくっつけあい、まだ整わない呼吸が収まるのを待った。



あきお君のそれは、また大きくなっていた。






「もう1回してもいい?」






あきお君が訊いた。



私は、1日に何回もできるのかと驚いたが、「いいよ」と言った。






「今度は、こうして」






私はビデオを巻き戻して、バックのところで再生した。



あきお君は「うん」と言い、また新しいコンドームを装着した。






私達はその日だけで3回した。



どの回も、あきお君はすぐにイッてしまっていたが、私は気にならなかった。



早くイクことがダサいとか、そんなことは知らない頃だ。



それよりも、あきお君とセックスできることが楽しくてしょうがなかった。






以来、私とあきお君は週に1~2度はセックスする仲になった。



けれど、恋愛感情と結びついていたかというと、今思うと疑問だ。



しかし、その頃はお互いが必要だった。



身体はもちろん、一緒に同じ時間を抱き合って過ごす相手がいることの精神的充足を感じていたからだと思う。



私にとって、あきお君はかけがえのない存在であったし、あきお君もまたそう感じていたのだろう。



中学校に進学しても、そして別々の高校に進んでからも、私達のこの関係は、回数が減りこそすれ、崩れなかった。






その間、私達は一度も、「好き」だとかの類の言葉は口にしなかった。



その証拠に、私達は中学と高校、それぞれに彼氏・彼女がいた。



しかし、その彼氏・彼女とは2~3度ほどしかセックスはせず、その代わりのように私達は身体を重ねた。






今、私達は大学生である。



お互いに地元を離れ、それぞれの場所でまた新しく恋人を作っている。



あきお君とは電話もメールもしない。



ただ正月や長期休みなどに、『今度実家に帰るけど、そっちは?』という短いメールを送りあう程度だ。






そして会い、当然のようにセックスする。



さすがに、この年になって家に呼ぶのは親の目が気になるので、もっぱらホテルで会う。



そして、何度も何度もセックスをするのだ。



その合間に大学のことや共通の友人の話題に花を咲かせ、話が尽きたらまたお互いを求め合う。



そんな付き合いを、あきお君としている。