最近は子育てにも少し慣れてきて、自分の時間も作れるようになってきたので、そんな時間に少しずつ思い出話を書いてみようかなって思って・・・だからこれは思い出話。



旦那にも友達にも誰にも言っていない、私だけの秘密。






まずは自己紹介。



私、里奈。



当時20歳。



商社系の会社で働くOL。



どっちかというと会社では“甘えん坊キャラ”かな。



でも、仕事はしっかりするのがプライド。






甘えん坊キャラの私しか見たことがない同僚は、ふと仕事をしている私を目にして「里奈さんって、しっかりしてるんだね」と驚かれることもしばしば。



それがまた面白い。



でも会社を出てプライベート、つまり恋人や友達の前に出ると、どっちのキャラも捨てちゃうの。



本当の私になって自然に生きてるの。






ある日、私のいる事務所に、沢松っていう38歳独身の男の人が転勤してきた。



彼はかなり人付き合いが不器用な感じの人。



私も別に話すこともなくって挨拶程度だった。






そんな毎日が過ぎて一ヶ月経った頃かな、「沢松さんは自分が女に好かれるわけがないって思ってるらしい」って話を耳にした。



そんなことない、顔だって結構男前だし、自分から打ち解けるタイプなら女から寄ってくるよ絶対!って思った。



でも彼を観察していると、本当だ、女性を自分から避けてる・・・。



そこでは私はある作戦を実行しました。






・毎日、沢松さんとすれ違うたびにニッコリ笑って挨拶をする。



・休憩室で会ったら必ず自分から話し掛ける。



・残業して帰るとき、彼のいる部署で彼が1人だったら必ず立ち寄って挨拶して帰る。






とりあえず彼と親しくなるように、毎日毎日実行し続けた。



何のために?



うーん、別に理由はなかったのよね。



当時は彼氏もいたし、セックスフレンドもいたし、沢松さんが好きってこともなかったし。



だから「なぜ?」と聞かれると、まったく判らなかった。



でも、関わりたかった。



もしかしたら、自ら女を遠のけている彼だけど、私にだけは振り向かせたかったからかも。






2ヶ月以上、毎日そういうことをし続けて、やっと彼からも話し掛けてくるようになった。



帰りに彼が1人で残業してたら、彼の隣のデスクに座って話して帰るようになった。



でも私からはもちろん、彼からも誘ってくることはなかった。



普通なら、「飲みに行こうよ」とかっていう流れになるじゃない?



でも全然なの。






私は彼から誘われるように頑張ろうと決めた。



自分からは絶対誘わないけど、たとえば、「帰ってビールでも飲もうかなあ・・・」って彼が言ったら、「いいな~私も飲みたくなっちゃった~。私も買って帰ろうかなあ」とか。






そういう会話をするようになってまた2ヶ月・・・。



休憩室で話をしていたら、彼がポロッと、「飲みに行こうか・・・」って。






「え~まだ4時ですよ~。それに仕事中だし~」って言ったら、笑いながら下を向いてしまった彼。






しょうがない。






「じゃあ、7時に7番出口でどうですか?」






彼は驚いた顔で私を見て何かを言いかけたんだけど、私はさっと立ち上がって、「さぼりすぎた~」って言いながら立ち去りました。






夜7時、地下鉄の7番出口。



会社からはかなり遠い出口。



行ってみると、不安そうな顔で立っている沢松さん。






「どこ行きます?」と声をかけると、「あ・・・来たんだ」って・・・。






私たちは近くの居酒屋に入って飲むことになりました。



明らかにぎこちない彼だけど、お酒が入るとすっごい明るくなってよくしゃべる。



私も彼に引き込まれて、気がついたら11時。



帰りながら彼は私の頭を撫でたりちょっと近寄ったりするんだけど、それ以上はなし。



そして駅で手を振ってお別れ・・・。



う~ん、ま、こんなもんかって感じ。



エッチなことしようとしてきたら、どうやってかわそうかとまで考えてたのに・・・。



そんなこと考えてたら、ちょっと濡れてたのに・・・。






その夜、私は彼氏の家に行く予定もあったから、そのまま帰るつもりだったけど、私に触れたのは頭を撫でたときだけで、なんだかすごく焦らされた感じ。



その夜、彼氏の家に行った私は、来るのが遅かった私を責める彼をなだめながら彼の下半身を裸にして舐め始めた。






「お詫びね」と言いながら。



状況の流れによっては、沢松さんとこうなっていたかもしれないと思いながら・・・。






(心のどこかではそれを望んでいたのかも?)






そんな自問は振り切らないと、彼に失礼よね。



彼は私のミニスカートを捲りあげて下着の中に指を入れた。



くちゅって音がするくらい、私は溢れてた。






「そんなにしたかったの?」






彼の指を受け入れて、クリトリスを触られながらバックで彼を受け入れて、自分でも腰を振り続けて、(これが本当の私・・・?)って、そんな思いがふと頭をよぎっていった。






休みの間中、彼氏とセックスしていても、火曜日にはセフレと会ってセックスをする。



そんな毎日を続けていた私が沢松さんに興味を持ったのは、私と全く違う生活をしているであろう彼のセックスに興味があったのか、彼自身に興味があったのか、彼を振り向かせてみたかっただけなのか・・・私にはわからない。






2人で会ったときに電話番号を交換しても、沢松さんからは全く電話はない。



次の週に誘われることもない。



毎日がそれまでと同じことの繰り返し。



私のことに興味がないのかとも考えたけど、そうでもなさそう。






「癒される、可愛い・・・」






なんてポツポツ言うようにもなっていたし、視線を感じることが多くなっていた。






沢松さんに関わろうとし始めてから半年以上経ったある土曜日、彼氏とも会えなくて、セフレとも会えなくて、そして何より仕事が忙しくて、珍しく休日出勤した。



鍵が開いていて、誰かが来ている。



明かりの点いている部屋を覗くと、沢松さん!



彼も私を見て驚いているみたい。



それでも私は軽く挨拶をして仕事を始めた。



仕事を始めるとすごい集中力を発揮する私は、「里奈ちゃん」って言う声に心底ビックリ。



沢松さんが立っていて、「もう帰るから」って。



わざわざ私に声をかけに来てくれたみたい。






「里奈ちゃん」と初めて名前を呼ばれたことに気がつかない振りをしながら、「え~、もう帰るんですか~」と彼の立っているところへ行き、腕を持って私のデスクのそばに引っ張っていった。






「座っててください。あと10分で終わりますから。1人になるの怖いもん」






無意識を装いながら彼の腕に胸を押し付けて甘えてみた。



沢松さんは少し笑って隣に座り、仕事を片付けていく私をじっと見ている。



仕事を片付けて帰ろうとして、私はあることを思い出した。






「休憩室にビールが冷えてますよ。飲んで帰りましょうよ、ね?鍵、締めちゃお~、もうこんな時間に来る社員さんはいないと思うし、変な人が入って来たら怖いもん」






私は彼の返事も聞かずに休憩室のそばにあるドアに鍵を掛けました。



ビールを取り出し、プシュッと缶を開けて彼に渡しながら、「あ。ごめんなさい。この後って用事とかありました?」って聞くと彼は、「ううん、どうせ帰って1人で飲むだけだったから」って。



私たちは棚に置いてあるお菓子を広げて飲み始めた。



私は酔ったふりをしながら(実際、酔っていたかもしれませんが)、彼の隣に移動した。



ぴったりくっついて飲んでいると、彼の体は硬直している。



何気なく彼の膝に手を置いても彼は硬直したまま。



私はもっと彼にくっついて、ベタベタ甘えていた。






「そんなにくっついたら、キスするよ」






彼のものとは思えない言葉を、いきなり私の耳の中に吹き込んできた。



私が「いいよー」と目を瞑ると、彼はキス。



触れるだけのキス。



私は彼がキスなんてすると思っていなかったのでかなりびっくり。



一瞬の沈黙の間、見つめ合っていると、沢松さんは決心したように私に近づいて、今度は優しくゆっくりキス。



私たちはお互いの唇と舌を感じあうように、長く長くキスをした。



そして私は彼の唇の温かさを感じながら、(ああ、やっぱり私は、こうなることを望んでいたんだ)と確かに感じた。






<続く>