かなり昔の思い出です。



私はその頃、好景気な時代というのもあって、若いうちからかなりの好条件のマンションに1人で住まわせてもらっていた。



隣には、ひかるくん(仮名)とその家族が住んでいた。






ひかるくんは、中学生なんだけど、小柄で色白。



髪の後ろだけを伸ばしており、つぶらな瞳をしていて、薄ピンクの唇には艶があって、まるで星が輝いているというか、女の子のようにとても可愛らしかった。



喜怒哀楽の表情も天真爛漫という言葉がぴったりで、女の私が羨ましくて見惚れるくらいに可愛くて、思わず抱き締めたくなるくらいだった。






私はというと、自分で言うのもなんだけど色白美肌で、長くて艶のある黒髪、胸やお尻の形や大きさ、やや太いけども脚の長さにも自信があった。



でも、少ししゃがれ気味の声と、冷たい雰囲気が怖く見えるらしく、実年齢よりも年上に見られることが多かった。






でも、ひかるくんは初めて出会った時から、子供なりの気遣いがあったのかもしれないけども、私のことを「お姉さん」と呼んでくれた。



会うと必ず挨拶してくれて、学校のことや、自分の好きなこと、友達のことなどの話をしてくれた。



家族旅行に行ったときは、丁寧にお土産を持ってきてくれるし、回覧板も必ずひかるくんが持ってきてくれた。



そういう時は私は、「お手伝い出来て偉い偉い」と頭を撫でてあげた。



ひかるくんは凄く喜んで、「えへへ・・・」と照れながら笑った。



またその顔が可愛かった。






時々部屋に上がってもらって、ひかるくんの大好きなオレンジジュースや苺のケーキを出してあげた。



ひかるくんは男の子だったけど、とても大人しくて、お菓子や花や可愛い人形が好きな子だった。



1人っ子のひかるくんは私を年の離れた優しいお姉さんとして慕ってくれて、私は周囲からそっぽを向かれていたこともあり、ひかるくんのことを無垢で可愛い弟のように思っていた。





だから私は、「もし嫌なことがあった時とか、いつでも遊びに来ていいよ」と言ってあげた。



でも私は無垢なひかるくんとは真逆の薄汚れた人間で、お金に浮かれた時代の退廃した大人の1人だった。






職業はというと、その時の私はSMの女王様をやっていた。



今でいうオラオラ系で、鞭で痛めつけたり、凄んで怖がらせたり、縛り上げたり、ろうそくで責めたり、ヒールで踏みにじったり・・・。



特に私は鞭が好きで、鞭を持つと強気になるし、長めの黒の一本鞭振り下ろして痛めつけるのが快感だった。



ビシッという音が気持ちよくて、振り下ろした時に大きな乾いた音が部屋に響き渡るのが堪らなかった。






ボンデージ姿になると気が引き締まった。



過激で加虐な愛の感情でいっぱいになる。



その時のお気に入りは、胸の谷間が強調されて、胸の谷間から臍のあたりまで編み上げになっている、股やお尻が食い込むハイレグボンデージ。



手には二の腕まであるロンググローブと黒の一本鞭。



足は太ももまで覆うヒールの高いサイハイブーツ。



そして黒のエナメルボンデージで身を固める。



普段から服の下は黒エナメルのブラとTバックというボンテージの下着だったし、身体を締め付けるような、食い込んでくるものが好きだった。






その日の夜は私の部屋で1人の奴隷を調教していた。



鞭やろうそくなどSMの道具を予め用意して、お気に入りのボンデージに着替えて、真っ赤な口紅と、ちょっと強めのブルーアイシャドウでメイクした。



これが私の女王様メイク。






女王様になった私は、奴隷を裸にして、手拭いで目隠しと猿轡をして、縄で全身をきつく縛り上げた。



そして床で横たわっている奴隷に鞭を力いっぱい振り下ろした。



途中で蹴ったり踏みつけたり、そしてろうそくを垂らしながら鞭を振り続けた。



部屋には何度も私の★気立った、それこそ「オラオラァッ!」って感じの優しさの欠片もない凄んだ冷徹な声と、鞭を打ちつける大きな乾いた音と、奴隷の恐怖と苦痛と歓喜の悲鳴が響き渡っていた。






・・・でも、私の女王様姿とSMプレイを、ひかるくんに見られていた。






「あの・・・お、お姉さん・・・」






後ろから上擦った声が聞こえた。



私が振り返ると、ひかるくんが立っていた。



ひかるくんはガタガタ震えて、真っ青な顔をして私を見つめていた。






ひかるくんは、いつものように回覧板を持ってきた。



日は暮れていたけど時間は決して遅くはない。



鍵が開いており、ドアを開けると中からは私の声が聞こえたので、私がいると思い、回覧板を直接届けようと入ってきてしまったらしい。






ひかるくんは私を見ながら、「あの・・・僕・・・その・・・」と言いながら、ゆっくり後ずさりしていたけど、そのまま尻もちをついてしまった。



ガタガタと小刻みに震えながら泣きそうな顔で、私と、私が持っていた長い鞭を交互に見上げていた。



私は動揺しながらも、すぐにひかるくんの側まで行って膝をついて、怖がらせないように目を見ながらゆっくり話しかけた。






「あのね、お姉さんは今忙しいから、あまり見ちゃダメよ。わかった?」






私は出来るだけにっこり笑いながら、ひかるくんの頭を撫でながら優しく言ったつもりだったが、こんな時は逆効果でしかない。






「ご、ごめんなさい、お姉さん!僕は何も見ていないし誰にも言いません!」






震えながら叫ぶと、回覧板を床に置いて、逃げるように部屋を飛び出していった。



私に怯えながら逃げるひかるくんの後ろ姿を見て、ひかるくんは何も悪くないのに、すごく可哀想なことをしてしまったと思ったんだけど、そのときはどうしようもなかった。






私は玄関に鍵を掛けると、わざとヒールの音を立てながら奴隷のもとへ戻った。



そして奴隷を冷たく見下ろすと、力いっぱい鞭を振り下ろした。



部屋には再び私の凄んだ声と、鞭を振り下ろした音と、奴隷の悲鳴が何度も響き渡った。






それから、ひかるくんの姿をまったく見かけなくなった。



考えてみたら、部屋の中へ入ったら私が★気立った様子で、どこの誰だか分からない男が目隠しされて縛り上げられていて、その男に私が凄みながら何度も力いっぱいに鞭を振り下ろしているのだから、そんなのを見たら怖いに決まっている。



私のしゃがれ気味の声は凄みと怖さを増すし、きっと私に鞭で打たれると思っただろうし、絶対に怖い女だと思われたに違いない。



説明しようにも、SMのことなんて分かるわけがない。



こんな私のことを、優しいお姉さんだと思って慕ってくれていただけに、嫌われたかと思うと寂しかった。






でもあれから半月くらい経った夕方だったと思う。



チャイムが鳴って、ドアスコープを覗くと、ひかるくんが立っていた。



すぐにドアを開けると、ひかるくんは私の顔を見るなり頬を赤らめて、俯き加減に目を逸らした。



私もどうしていいのか分からず、ただただ凄く緊張した。



私もひかるくんも、そのまましばらく黙ったままだったけど、「ひかるくん、部屋に上がっていく?」と、ようやくその一言が私の口から出た。



ひかるくんは、「・・・うん」と小さく呟いて、私の顔を見ずに部屋に入った。






ひかるくんは、いつもみたいにリビングのソファーに座った。



大好きなオレンジジュースを出してあげたけど俯いたままで、なかなか手を付けなかった。



私もいつものように向かい合わせにソファーに座った。



ひかるくんは黙ったままだった。






「あの・・・お姉さん、この前はごめんなさい・・・」






ようやく絞り出すような声でひかるくんが言った。






「い、いいのよ、だって怖かったよね?」






「うん・・・」






「でも、お姉さんは、ひかるくんには絶対にあんなことをしないから・・・」






「う、うん・・・」






私もひかるくんも、ぎこちなく早口になった。



ひかるくんは顔を上げずに、また黙ってしまった。



私も次の言葉が続かない。






「あ、あのね、お姉さん・・・」






しばらくしてひかるくんは目を伏せたまま顔を赤らめ、恐る恐るという感じで口を開いた。






「僕・・・お姉さんが凄く怖かった・・・」






「う、うん、そうだよね・・・」






改めて言われるとやっぱり辛い。






「僕もお姉さんに捕まえられて、あんな風にされちゃうんじゃないかって・・・。だから、帰ってから布団の中に入ったんだけど、お姉さんのことが頭に出てきて・・・」






「うん、うん、怖かったよね、怖がらせてごめんね・・・」






私は横に座って頭を撫でてあげた。



ひかるくんは何かに怯えるみたいにビクッと身体を震わせた。






「だ、大丈夫?」






「はい・・・何でもないです」






ひかるくんの身体からは震えのようなものが伝わってきた。






「でもね・・・僕・・・」






ひかるくんはゆっくり続きを話し始めた。






「僕・・・なんだかよくわからないけど・・・思い出しているうちに、怖いはずなのに・・・お姉さんが・・・お姉さんが凄くかっこいいって思った・・・。なんだかドキドキしてきて・・・何度も何度もお姉さんの姿を思い出したくなって・・・その・・・」






混乱しているのか言葉を選んでいるのか、ひかるくんは言葉を詰まらせながらも早口で話を続けた。






「そ・・・その・・・僕・・・お姉さんのこと・・・お姉さんのことを考えていると・・・なんだか・・・あの・・・」






身体を震わせながら真っ赤になって俯いてモジモジし始めた。






「なんだか・・・変になりそうになってきて・・・それで・・・あの・・・あの・・・」






ひかるくんは目を強く閉じながら身を縮めて、擦れそうな声になっていった。



よく見ると、ひかるくんはズボンの上から股間を押さえて、隠すような動作をした。



ズボンの前がしっかりと膨らんでいた。



ひかるくんは勃起していた。



私はひかるくんの勃起にちょっと驚いた。






「その・・・あれからずっと・・・私のこと考えてたの?」






「は、はい・・・そうです・・・」






真っ赤になったままモジモジしていた。






「・・・も、もしかして・・・私でオナニーしたの?」






別に責め立てるつもりなかったんだけど、驚いて、つい言ってしまった。



オナニーという言葉を聞いて、ひかるくんはビクっと身体を震わせて、真っ赤になって微かに頷いた。






ひかるくんは、女王様の私を見てオナニーをしてしまった。



オナニーしてしまったことを言い出せなくて、私の前で真っ赤になって恥ずかしがっている姿が可愛いって思った。



そして、ひかるくんはもう一度、私の女王様姿を見たがっていると思った。



誰だっていつかは性的なことに興味を覚えるのだから、普通はそんな気にする必要もないのだけど・・・私が女王様だったばかりに・・・。






なぜだか私は、ひかるくんに少しだけ意地悪がしたくなった。



女王様をやっているせいか、もともと自分が持っている性格なのか、意地悪とか嫌がらせがしたくてたまらない。



もちろん無関係な人に一方的にやってはいけないし、相手は中学生なんだから大人げないとは思うんだけど・・・。



だけど人間って、自分が強い立場にある時って、性格とか関係なく、弱った者や自分にすがってくる者に攻撃的になってしまうものだと思う。






勃起して恥ずかしがっている、ひかるくんを見ていると、いつも以上にすごく可愛く思えてきた。



そして、今のひかるくんが私の女王様姿を見たら、どんな風に興奮するのか、見たくなった。






<続く>