小さい頃に親父とおふくろが居なくなって、年の離れた兄貴は実質、俺の親代わりだった。






一方、俺は物心つくのも遅くて、兄貴に養ってもらうことが当たり前って感覚の甘えん坊で、アレ欲しいコレ欲しいってのを普通にねだってた。



中学になってねだる物も高価になっていったけど、兄貴は嫌な顔せずに「うんうん、そうか、これが欲しいんか」って言って残業増やして買ってくれたりした。






まぁさすがにこの頃からは遠慮もし始めたけど、でもまぁ、そんな兄貴にもねだれないものがあった。



年頃の男子なら興味を持つエロ本とかエロ漫画類。



兄貴とは全然そんな話もしなかったから、兄貴は聖人君子みたいな人なんじゃないかって思ってた。



だから高校に受かったって報告した俺に兄貴が、「実は・・・」って言って義姉さんを紹介してきたときは何が起こったか分かんなかった。



あ、その時はまだ義姉さんじゃなくて彼女だったけどね。






その彼女さんがそれがすっごく綺麗で可愛くて、正直見た目じゃ兄貴と全然釣り合いとれてない。



そんとき、「マジでっ」て何回言ったか覚えてないくらい言った。






彼女さんって見た目だけじゃなくて中身も凄く良い人で、俺の合格祝いにってPARKERのボールペンを贈ってくれた。



自分が欲しいって言ったものじゃないのを贈られるのって初めてだったから、凄く変な感じがした。



でも、嫌じゃない。



そのボールペンは今でも使ってる。






その日に、兄貴から「俺はこの人と所帯を持ちたいと思う。だからといって、お前を放っては置けない。一緒に住むことになるけどいいか?彼女はお前と住むことに賛成してくれてる」って告げられた。








美人で可愛いお姉ちゃんが出来るのに反対する訳ないから、即答で「いいよ」って答えた。






その時はエロいことなんて何にも思いつかなかった。



兄貴が綺麗なお嫁さん貰うってことでちょっと誇らしくもなったね。






俺って子供だから、それからすぐに結婚するのかなって思ってたけど、二人はお金を溜めてからって話をしてて、いわゆる彼氏彼女の関係で暫く頑張ろうってことになってた。



だから、週末ごとに彼女さんが俺たちの家に泊まりに来て一緒に御飯食べて、次の日兄貴達がデートに出かけてって生活が、新しい高校生活の定番になってた。



婚約する前にも週末にデートで外食とかしてたみたいだけど、「家でご飯食べるようになってお金が貯まるようになった」って彼女さんが嬉しそうにしてた。






彼女さんが入って話をすることで、俺はどうも今まで兄貴に頼りすぎてたことに気がついてきた。



その頃、何となくだけどボールペンのプレゼントが嬉しかった俺は、二人に結婚のお祝いが贈りたくなってきてた。



でも、何を贈れば喜んで貰えるかさっぱり判らなかった。



なんせ兄貴にはねだってばっかりで、兄貴が何かを欲しがってる姿なんて見たことなかったからな。



悩んでるうちに気がついたら、2年になろうとしてた。






何はなくとも金がなきゃってことで、兄貴に内緒でバイトを始めてて、バイト先の店長に怒られながらもちょっとずつお金を貯めていた。



ちなみにバイト先はレストラン。



食い物食えそうでお金も貯まるのってすげえいいなって思って面接受けに行った。



その頃はまだガキだったから、面接で志望動機って言われて正直に「食い物食えてお金貰えるのがよさそう」って答えちゃって落ちそうになったんだけど、兄貴達にプレゼント贈りたいって話をしたら採用してもらえた。



礼儀から常識から何から何まで仕込んで貰って、あの店長には今でも頭が上がらない。



兄貴が敬語とか使えるようになった俺のことを不思議がってたけど、部活の先輩にしつけられたことにした。



実際はゆるゆるの文化部だからそんなわけないんだが。






金はぼちぼち貯まってきてた。



でも相変わらずプレゼントが思いつかない。



もう、ひとりじゃダメだろってことで、彼女さんに相談することに決めた。






こっそり「相談したいことがある」って言ったら、「私も相談したいことがあるから」って言われて、学校終わった後ファミレスで会うことになった。






この頃には、『相談』って言われてドキドキするくらい仲が良くなってたから、少々期待してたところはあった。



兄貴が会ってなかったら、俺が告白してたと思うくらい彼女さんのことは気に入ってたし。



年齢差?知らねえよ、愛にそんなの関係あるかって。



でもまぁ、彼女さんの俺に対する態度って、年の離れた弟に対する態度そのものだったんだよね。



可愛い子だねって感じで接されてた。






待ち合わせのファミレスに入ったら彼女さんはもう席についてて、入ってきた俺を見つけて嬉しそうに手を振るんだよ。



俺って、いつもと違う場所で、しかも兄貴抜きで会うってことでちょっといけないことをしている気分になって興奮してた。



席についてドリンクバーを頼んだら、普段飲まないくせにコーヒーを入れて帰ってきたりしてね。






「お、そんなの飲んだら寝れなくなるぞー」って、俺は小学生かっつーの。






初めはとりとめのない話をしてたんだけど、「ねぇ、相談ってなに?お兄ちゃんには相談できないこと?」ってスッと本題に入ってきた。






俺は「あ、いや、兄貴っていうか、姉ちゃんにも相談するの変なんだけど・・・」って、怪訝な顔する彼女さんに徐々に話し始めた。






あ、その頃には彼女さんのことは『姉ちゃん』って呼び始めてた。



で、姉ちゃんに、去年入学祝いが嬉しかったこと、二人の結婚祝いを何か贈りたいなって思うようになったこと、今バイトをしてるってことを話していった。



バイトは姉ちゃんも気づいてなかったらしくて、ビックリした顔した後、ニヤーって笑って、「そういや大人っぽくなったもんねー」って言いながら頭をグリグリ撫でてくれた。



話してるからあんまし気づかなかったけど、頭を撫でられてるとき、凄く気持ちよくて、なんか“ぽわーっ”とした気分になった。



ちょっと勃ってたかもしれない。



こんな気持ちいい姉ちゃんと結婚できる兄貴がちょっと妬ましくなった。






ひと通り俺が語り終わったら、姉ちゃんは笑いながら「贈り物なんてね、何でもいいんだよ」って、一言答えてくれた。






それでも納得出来ない俺に、「欲しいものは、君がお兄ちゃんに何かを贈りたいと思ったその気持ちだよ」って。



だから兄貴は何を贈られても凄く嬉しいんだ、って。






姉ちゃんに手を掴まれてそう言われたとき、そこまで考えを姉ちゃんに理解して貰えてる兄貴が羨ましくなって、そんな理解の出来る姉ちゃんを抱き締めたくなった。



と、同時に掴まれてる手が凄く恥ずかしくなって、どう答えていいかよくわからなくなって「う、うん」って唸り声みたいな答えをしたと思う。



正直良く覚えてない。






「判った?まぁ、どんなのがいいかは、どこか一緒に見に行ってあげてもいいけどね」






・・・って繋げてフォローしてくれたから、その話はとりあえずそれで決着がついた。






「じゃ次は、私の相談」






俺みたいな子供が相談に乗れるもんだろうかって思ってたけど、姉ちゃんから頼られるってのは何か嬉しくて、さあこい、くらいの軽い構えをしてた・・・。






「ねえ、今、彼女いる?」






(はぁ?)






身構えてた顔が一瞬傾いた。






(何言ってんの姉ちゃん?)






・・・いや、まぁ、いませんけど、昔も今も。



答えに詰まってる俺を見て、照れてるとでも勘違いしたのか姉ちゃんが続けて・・・。






「こういうのって若い子がどうしてるのかなぁって気になって聞くんだけど・・・」






完全に彼女居るって誤解をしたままで・・・。






「キスとかセックスとか・・・どこまでしてるものなの・・・?」






頭、完全に真っ白。



姉ちゃんからキスとかセックスとか生々しい単語が出てくるんだもん。






「彼女いません」って一言だけ絞り出したら、「居た時とかどうだった?」って過大評価な追加質問。






「姉ちゃん、俺、彼女できそうに見える?」






「見える・・・え?もしかしてずっと居ないの?」






意外とザクザク切り込まれる俺。



そこで力が抜けて、彼女なんてできたことがないこと、「姉ちゃんみたいな可愛くて綺麗な人がいればいいのになぁ」ってボヤキをしゃべる。






「私だって、お兄ちゃんがいなかったら君に目をつけてたかもヨ」って悪戯っぽい目で姉ちゃんも返してくる。






まぁ、俺からは姉ちゃんの期待するような若者の意見とか出せなさそうだけど、とりあえず話し始めちゃったからってことで悩みを話してくれたんだ。






姉ちゃんの悩みって、兄貴とセックスしてないってことだったんだよね。



姉ちゃんの友達に言わせれば、いくらなんでも1年以上付きあってセックスしないとかないそうな。



しかも二人は婚約してるわけで。



彼女も居ない俺にはセックスとか雲の上の行為だったわけだけど、姉ちゃんがそんなことで悩んでいるって知って激しく興奮した。



姉ちゃんは、実は兄貴とセックスしてみたいと思ってるらしい。






(くそー、兄貴め、くそ羨ましいっ)






でも、兄貴にそれとなーく誘いをかけても、ある一線以上は越えてこない。



単に潔癖なのか、肉体的に魅力が無いのか悩んでた、と。






(魅力が無いなんてとんでもない!)






泊りに来てお風呂に入っているとき、気づかず洗面所に入って、曇りガラスの向こうの肢体を見ちゃったから知ってるんだけど、そこに映ってるシルエットを信じれば、スタイルについても抜群で、おっぱいも大きいし、だから悩む必要なんかない!



・・・言えないけども。






風呂のドアを見た話はともかく、男から見て凄く魅力的で、そんな悩みは気のせいだって力説した。



勢いに乗って「俺だったら今すぐ抱いてます」くらいのことを言っちゃったりしたと思う。






気がついたら、顔を真赤にして姉ちゃんが俯いてた。






「あ、兄貴は照れてるだけだって」






話をしめたけど、どうも変な褒め方をしちゃったらしい。



姉ちゃんは、小さく「あ、ありがと」って言って顔を上げてくれない。






そこに来てどうも自分が「あなたは魅力的です。顔は可愛くて、唇はプルプルしててキスしたいし、おっぱいが大きくて俺好みだし、とてもセックスしたいです」ということを必★に伝えてたことに気がついた。



そこからは俺も顔を赤くして、「兄貴って、真面目過ぎますよね、あはは」みたいに流して話を終わらせた。






まぁ兄貴のことだから、本当にいつ手を出していいかなんて分かってないかもしれないとは思ってた。



だって、弟もそのタイミングが分かってないわけで。






ファミレスを出たら日が暮れて暗くなってて、気持ち姉ちゃんが俺寄りで歩いて帰ってた。



手を触れるか触れないかくらいの距離。



俺は手を触れないようにビクビクしてた。



その日は平日だったから、姉ちゃんがうちに来る日じゃなくて、駅に向かう交差点で別れることになった。






姉ちゃんは、ちょっと顔を赤くして、「相談出来てよかった」って言ってくれた。






そこからまたしばらく幸せな日常が続いてた。



たまに、姉ちゃんとファミレスでお茶することが増えたけどね。



話題はほんと他愛もない話。



兄貴との惚気話も沢山聞かされたかな。






で、2年の秋、秋休みのちょっと前ぐらいだったと思う。



ファミレスで秋休みの予定を聞かれた。






「何で?」って聞いたら、「贈り物選ぶの手伝ってあげる」とのこと。






そこで秋休みの一日、二人で街を回って一緒に選んでくれるって約束をした。



家に帰って、(これってデートじゃね?)ってちょっとドキドキしてみた。






相変わらず兄貴は姉ちゃんとはキス止まりらしい。






<続く>