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( ^ω^)とξ゚?゚)ξが愛のあるセクロスをするようです。2











( ゚∀゚)「ツン、やっぱりおかしいんだ」



( ^ω^)「・・・・」



数日後、ジョルジュは再びブーンの家を訪ねていた。



( ゚∀゚)「今日さ、学校でツンの姿を見かけたときに、冗談で

     ”ツンちゃん”って呼んだら、あいつ今にも泣きそうな顔で振り向いたんだよ」



(;^ω^)「・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「何かあったのかな・・・」



(;^ω^)「・・・・・・んー・・・・」



ジョルジュの話を聞きながら、ブーンは心が締め付けられるのを感じた。

ツンの意志を尊重して言わないべきか?

それとも、ジョルジュに全てを告白して、なぜツンの様子がおかしいか分からないとい不安を解消してやるべきか?

考えても考えても答えは出ない・・・。



( ゚∀゚)「ごめん。こんなこと相談できるの、ブーンしかいなくて」



( ^ω^)「気にするなお。聞いてやることしかできないけど、

      それでもよければいつでも来るといいお」



( ゚∀゚)「・・・・・・・・・ありがとう」



そうは言うものの、本当は相談に乗りたくなかった。

ブーンは先ほどから、ジョルジュに無言の威圧をかけられているような錯覚に陥っていた。

俺はお前の知らないツンを知っている。

お前の知らないところで、ツンと恋人同士の時間を過ごしている。

お前がツンとしたことがないことをツンとしている。

俺とツンの絆は固い。何人も入る隙なんてない。

そんな重圧を感じながらも、結局のところ自分はどうすることもできないのだ。

ブーンは自分の無力さを感じながら、ただただジョルジュの話を聞くしかなかった。



ピロリ?♪



その時、ジョルジュの携帯電話が鳴った。



( ゚∀゚)「あ、電話だ。ちょっとすまん」





( ^ω^)「うんだお」



ジョルジュはポケットから携帯電話を取り出す。

まさか、ツンからの電話なのでは・・・?

だとしたら、二人の会話を聞くなんて自分には耐えられない。



( ゚∀゚)「もしもし・・・うん、ごめん。今日は行けないんだ。明日は行くよ。

     ・・・・・・・・うん、うん、じゃあまた明日」



( ^ω^)(そういえばツンはバイトがあるはずだお・・・ツンじゃないお?)



ピッ

( ゚∀゚)「ごめんごめん。友達からだった」



( ^ω^)「そうかお・・・」



( ^ω^)(・・・・・・”また明日”って言ってたお。やっぱりツンかお?俺のことを気遣って友達からの電話だって嘘ついたお?

      それとも本当に友達なのかお?でも・・・)



(;^ω^)(・・・・・裏を読んでいても仕方ないお。どっちにしろ俺には関係のないことだお)



ジョルジュは一時間くらいツンのことを話した後、すっきりした様子で帰っていった。

ただ話を聞いていただけなのに、ブーンはぐったりと疲れているのを感じた。



明け方頃に降り出した雨が、地面を冷たく濡らしている。

いつもなら初雪が降る頃なのだが、今年は暖冬らしく、未だに冬の知らせが届いていなかった。



ξ゚?゚)ξ「寒いねー。冬の雨って、雪よりも冷たく感じるよ」



( ゚∀゚)「珍しいね。11月に雨なんて」



この日二人は屋上ではなく、特別教室棟の4階の階段の踊場にいた。

ここは普段人がめったに通らないので、外の天気が悪い日はここで昼休みを過ごしていた。



( ゚∀゚)「今日ツンはバイトないんだよね?」



ξ゚?゚)ξ「うん。でもジョルジュ君は塾の日だよね」



( ゚∀゚)「うん・・・。ごめんね、一緒に帰れなくて」



ξ゚?゚)ξ「ううん!大学に受かる為だもん、大丈夫だよ」



( ゚∀゚)「ツンはいいこだね」



ξ///)ξ「・・・・・・・っっ」



いつものようにジョルジュがツンを抱きしめる。二人の唇が自然に引き寄せあう。

ゆっくりと舌を絡めあい、濃厚なキスに夢中になる。



( ゚∀゚)「そういえばツンは悩み事とかないの?」



唇を離してしばらくジョルジュの胸に顔をうずめているところに、急に話し掛けられた。



ξ゚?゚)ξ「なぁに?突然・・・」



( ゚∀゚)「いや、そうゆう話聞かないからさ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・まぁそれなりにはあるけど・・・気にしていてもしょうがないしね・・・・」



( ゚∀゚)「うん・・・」



ξ゚?゚)ξ「なるべく前向きにできるようになればいいなーとは思ってるよ・・・」



( ゚∀゚)「そっか・・・・」



ξ゚?゚)ξ「どうしたの?」



( ゚∀゚)「いや、俺の自慢のコはしっかりしてるなーと思って♪」



ξ///)ξ「もうっ」



本音ではなかった。

本当はずっと引きずっている事がある。夢に見てまでうなされる事がある。

前向きに考えられない事がある。



でも、ツンはジョルジュに気付いて欲しかった。表面だけじゃなく、心の奥の奥まで見てもらいたかった。



( ゚∀゚)「じゃあ、夜にメールするから」



ξ゚?゚)ξ「うん。頑張ってね」



二人はこの日、予鈴前に教室に戻った。



午後の授業を終え、ツンは一人本屋に来ていた。



ξ゚?゚)ξ(カラーコーディネートの資格欲しいんだよなぁ・・・)



実はツンはひそかに、メイクアップアーティストになりたいと思っていた。

女性の顔をより美しく彩るメイキャップに、ツンは憧れを抱いていたのだ。



ξ;゚?゚)ξ(うわ・・・なんか覚えるの難しそう・・・)



カラーコーディネートの資格は、本人のセンスというよりも、

本の内容を丸暗記しなくてはいけないと知人が言っていたのを思い出した。



ξ;゚?゚)ξ(覚えるの苦手なんだけどな・・・)



ツンはその本を手に持ち、一通り店内を回り終えた後、会計をして店を出た。



ξ゚?゚)ξ(あっ、雨やんでる!良かったー)



店の傘立てにさしていた自分の傘を手に持ち、今度は図書館へと向かう。



ξ゚?゚)ξ(図書館なんて小学校の頃に行ったきりだなぁ)



ξ*゚?゚)ξ(いつもジョルジュ君はこの道を通って図書館へ向かっているんだよね・・・)



彼とは一緒にいられないが、同じ道を同じ目的で歩いていることに嬉しくなる。

自然と足取りも軽くなった。



この図書館は規模は小さいものの、他の図書館よりも閉館時間が遅いため、多くの学生が受験勉強に利用していた。

入り口の自動ドアをくぐりぬけると、館内は異世界に迷い込んだのかと思えるような張り詰めた空気に包まれていた。

ツンは緊張を禁じえなかった。



ξ;゚?゚)ξ(うわ・・・センター近いからピリピリしてるなぁ)



あまり長くいない方が自分の身のためだ。

そう思い、足早に資格の本のコーナーへと向かった。



希望の本を見つけ、早速読もうと思ったが、1階の閲覧席は全て埋まっていた。

仕方なくツンは2階へと足を運んだ。



ξ;゚?゚)ξ(2階はもっとピリピリしてるんだろうな・・・)



そう考えながら、階段をのぼった。

2階には、一般書コーナーの窓際に閲覧席があり、他に自習室が5部屋あった。

この自習室は毎年この時期ともなると受験生で溢れかり、おのずと緊迫感も高まっている。



ツンはちょうど奥の閲覧席が開いているのを見つけ、一目散にその席へ向かった。



ふと一番手前の自習室の中へ目をやると、

そこには塾へ行ったはずのジョルジュの姿があった。



ξ゚?゚)ξ(あれ・・・?ジョルジュ君、塾終わったのかな?)



いつもジョルジュが塾を終えて帰宅するのは、早くても夜9時頃で、遅いときは12時にまで及ぶ事もある。

ツンは携帯電話の時計を確認した。まだ6時前だった。



ξ゚?゚)ξ(塾の休み時間なのかな?)



ツンは疑うこともせず、ジョルジュに話し掛けようと自習室へ入ろうとした。

その時・・・・。



ξ;゚?゚)ξ「!!!!!」



おくの机の影からジョルジュに話し掛けている人物が見えた。

二人は何やらこそこそと話をし、向かい合って座っていた。



目をこらしてよく見ると、ジョルジュの隣に座っているのは

市内の女子高の制服を着ている女の子だった。



ツンは足元がぐらつくのを感じた。

いまいち状況が飲み込めないのだが、とりあえずこの場から立ち去らなくては・・・。



おぼつかない足取りで図書館を後にし、自宅近くへ向かうバスへ乗り込んだ時には、

空から再び氷のような雨が降り始めていた。



頭がぼーっとする。まるで自分の体ではみたいだ。

何が起きたのか、よく分からない。

塾に行っているはずのジョルジュが、図書館にいて、知らない女の子と一緒にいた。



ξ;゚?゚)ξ「どういうこと・・・・?」



(´・ω・`)正直もううざいんだよね



ξ;゚?゚)ξ「!!!!」



ツンの脳裏にあの男の声が響く。こだまするように、何度も何度も。



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・ううん!きっと何か訳があったんだ!」



後ろめたいことなんかがあるわけない。ジョルジュを信じたい!

あの声を振り切るように、そして呪文を唱えるように、ずっとそんな事を考え続けていた。



翌日、ツンとジョルジュはいつものように昼休みを一緒に過ごした。

そして放課後はいつものようにツンはバイト先へ、ジョルジュは図書館へ向かった。

いつもと変わらない日常。いつもと変わらない二人の関係。

昨日あんな光景を目にしながら、ツンはジョルジュに真実を確かめることができなかった。



ξ゚?゚)ξ(もしジョルジュ君が浮気してるのだとしたら、私が問い詰める事で”真実”になってしまう。

     それならいっそこのまま黙っていて、隠し通された方がまだマシだ・・・)



真実に向き合う事に臆病になっているツンは、ジョルジュを信じることしかできなかった。

ただ、表面上では信じてはいるものの、心の奥には微かな不信感が芽生え始めていた。

しかしツンはそれをあえて遮り、自分に嘘をついてジョルジュと接し続けた。



('A`)「おいブーン、帰りヅダヤ寄ってかね?」



( ^ω^)「いいお。俺もちょうど欲しいCDがあったお」



二人はいつものように一緒に下校していた。

ヅダヤは二人の通学路とは逆方向にあったが、

邦楽が好きなブーンと、アニメのビデオやCDを借りるのが好きなドクオの帰りの寄り道の定番となっていた。



( ^ω^)「ドクオはヅダヤに何の用だお?」



('A`)「日蝕グランギニョルが欲しい」



(;^ω^)「・・・?」



('A`)「あるかな。田舎のヅダヤにも」



(;^ω^)「・・・・・・わかんないお」



('A`*)「・・・楽しみだな」



二人は店内に入り、CDのコーナーへ向かった。



( ^ω^)「チェミストリーのアルバム欲しいお。でもお金ないお」



('A`)「おい、ねーぞ日蝕グランギニョル」



(;^ω^)「しらないお」



('A`)「・・・・・・・・・・・もうやる気なくした。オナニーする気力もねーよ」



(;^ω^)「そんなに欲しいなら注文するといいお」



('A`)「俺に、ヅダヤの店員に話し掛ける勇気があると思うか?」



(;^ω^)「・・・・・・・勇気出すお」



('A`)「・・・・・・・・・・・・・いくら振り絞ってもしっこしか出ない。帰ろうぜ」



(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・・」



二人は結局何も買わずに店を出た。

ドクオは、俺は社会不適合者だからな、と、なんだかよくわけの分からない言い訳をしていた。



( ^ω^)「ドクオ、元気出すお。ゲーセンにでも行くお」



('A`)「・・・・・・・・・・メイたんが俺を待っているというんだな?」



(;^ω^)「メイたん?」



相変わらず会話が噛みあわないまま、二人はいつものゲーセンに向かった。



( ^ω^)「本当に暖冬かお?すごく寒いお。でも雪が降らないってことはやっぱり暖冬かお」



('A`)「俺の心にはいつも雪が降り積もっている」



(;^ω^)「・・・・・・」



('A`)「・・・・・あ、もうすぐ点広真人のイラスト集出るな。予約しようかな」



二人がいつも寄る本屋の前に差し掛かった時、ドクオは歩きながら外から店内を覗いた。

その時、ドクオの足が止まった。



('A`)「・・・・・・・・・・・・」



( ^ω^)「ドクオどうしたお。早くゲーセンに行くお」



('A`)(あれは・・・)



( ^ω^)「ドクオ?何見てr・・・」



('A`)「アッ―」

  

( ^ω^)「・・・・・・!」



その時、本屋の自動ドアから、見覚えのある人物が出てきた。



( ^ω^)「・・・ジョルジュ!」



(;゚∀゚)「ブーン!?」



ジョルジュの明らかに焦っている様子を見て、ブーンは疑問に思った。

そして・・・



ヽ^∀^ノ「ジョルジュ?どうしたの?」



ジョルジュの後ろから、他校の制服を着た女の子が顔を出した。



(;^ω^)「・・・・・・・・」



(;゚∀゚)「あっ、ああ、高校の友達」



ヽ^∀^ノ「ふーん」



(;゚∀゚)「・・・じゃ、またなブーン、ドクオ」



ジョルジュはその女の子を連れ、そそくさとその場を後にした。



(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・」



あの女の子は一体誰なのか?もしやジョルジュが、浮気を・・・?



('A`)「お前!決め付けるなって!妹かもしれねーだろうが!」



(;^ω^)「・・・・まだ何も言ってないお・・・」



('A`*)「アーン」



もはやゲーセンに行く気にもなれなかった。

二人はそのまま帰宅した。



そしてその夜―



( ^ω^)(納得いかないお。ジョルジュはどうして他の女の子と一緒にいたお?)



帰宅してからずっと、ブーンは本屋の前で起きたことを考えていた。

ジョルジュが狼狽している様子は、きっと誰が見ても不自然だっただろう。

明日学校でジョルジュを問い詰めなくては。

ブーンはそうは思ったものの、果たして自分が介入して良い問題なのか疑問を感じた。

もしかしたら「お前には関係ない」と門前払いをくらうかもしれない。



( ^ω^)「・・・・・・・ちょっとドクオの意見も聞くお・・・」



いつもならオナニーをしている時間だが、今日はやる気をなくしたと言っていたから、きっとゲームをしているだろう。

そう思い、携帯を手にした。



ぴぴるぴるぴぴ?♪



その時ブーンの携帯がなった。

画面に表示されている名前を見て一瞬出るのを躊躇したが、思い切って電話に出ることにした。



ピッ

( ^ω^)「・・・・・・もしもし」



( ゚∀゚)[・・・もしもし、俺だけど]



(;^ω^)(・・・・ジョルジュ・・・)



まさかジョルジュの方から連絡してくるなんて予想外だったが、遅かれ早かれ話さなくてはいけない事。

それならいっそ早い方がいい。



( ゚∀゚)[なんの用件かもうわかってるとおもうけど・・・・]



( ^ω^)「・・・ジョルジュのこと見損なったお。浮気なんてする奴じゃないと思ってたお」



(;゚∀゚)[違うんだ!あれは塾が一緒のコで・・・それで仲良くなったんだ]



( ^ω^)「・・・」



(;゚∀゚)[志望校が同じだから一緒に勉強してるだけで・・・・恋愛感情は全くない]



( ^ω^)「本当かお?」



( ゚∀゚)[ああ。俺が好きなのはツンだけだ]



それを聞いて安心した。

・・・・という言葉が脳裏に浮んだが、何故か声になって出ることはなかった。



( ゚∀゚)[・・・でも、誤解される状況作ったしな・・・ツンには正直に言おうと思ってる]



(;^ω^)「ツンに言うのかお!?」



( ゚∀゚)[ああ。バレてから言うよりも、事前に話しておいた方が後ろめたさもないし]



果たしてその選択は正しいのか、ブーンには決めかねる問題だった。

ジョルジュの言うことも一理あるのだが、ツンの心の傷をますますえぐる事になるのではないか。

自分でさえジョルジュに怒りを覚えたのに、ツンには重荷になるだけなのではないだろうか・・・。



( ゚∀゚)[じゃあそういうことだから]



(;^ω^)「あっ・・・待つお!」



( ゚∀゚)[?・・・何?]



(;^ω^)「・・・いや、なんでもないお。」



( ゚∀゚)[じゃあ、また明日な]



(;^ω^)「ばいぶーだお」



ピッ



電話を切り、携帯電話を充電器につなげた。



実はツンには消したくても消せないつらい過去がある。

そう喉まで出かかったが、その言葉を制止した。

自分が言うべきではない。ツンが言いたい時に言えばいいことなのだ。

でもこのままではツンが傷つくのを黙って見ているだけになってしまう。



(;^ω^)(・・・・・・・・やっぱり俺には何もできないお)



もはや自分とツンを繋ぐ存在はジョルジュだけであったが、

ブーンには越えられない壁となって伸し掛かっていた。



次の日の3時間目の休み時間。ツンは美術室へ移動していた。



( ゚∀゚)「ツン!」



ξ゚?゚)ξ「あ、ジョルジュ君」



美術室へ入ろうとしたところで、ジョルジュに声を掛けられ、立ち止まった。



( ゚∀゚)「今日の昼休みは図書室で勉強するからさ、一緒にいれないんだ」



ξ゚?゚)ξ「そっか。分かった」



( ゚∀゚)「で、そのかわりに今日一緒に帰らない?バイトないでしょ?」



ξ゚?゚)ξ「え?今日は勉強はいいの?」



( ゚∀゚)「うん。放課後玄関で待ってるから」



ξ゚?゚)ξ「わかった」



( ゚∀゚)「じゃあね」



いつもならメールで済ませるぐらいの用なのに、どうして今日はわざわざ直接来たんだろう。

と疑問に思いつつも、思いがけずジョルジュと会う事が出来てツンは嬉しかった。

それに今日は久し振りに放課後デートができる。



(^▽^)「なぁに??デートの約束?ほんとラブラブだねー」



ξ*゚?゚)ξ「またからかうー!」



授業が終わるの楽しみだな。

果物をデッサンしながら、ジョルジュとどうやって過ごそうかをずっと考えていた。



ξ゚?゚)ξ「・・・あっ、ジョルジュ君!ごめん待ってた?」



( ゚∀゚)「いや、大丈夫。それじゃあ行こうか」



授業が終わった後に早めに教室を出たつもりだったが、玄関にはすでにジョルジュの姿があった。



ξ゚?゚)ξ「どこ行こっか?」



( ゚∀゚)「ああ、俺んち来ない?」



ξ;゚?゚)ξ「え・・・ジョルジュ君の家?でも急に悪いな・・・」



( ゚∀゚)「親はまだ仕事だからいないよ。じゃあ行こうか」



なんか今日はジョルジュのペースに振り回されてる気がする・・・。

そう思いつつも、やっぱり一緒にいれるのは嬉しい。

ジョルジュの家に行くのは気が引けたが、素直に一緒に過ごそう。

ジョルジュの後ろを歩きながら、ツンはそう思っていた。



( ゚∀゚)「ごめんね、急に呼んじゃって」



温かいココアが入ったマグカップを差し出してジョルジュがツンに声を掛ける。



ξ゚?゚)ξ「ううん。・・・・いいの?勉強」



( ゚∀゚)「ああ。センター前の最後の模試でA判定が出たから」



ξ゚?゚)ξ「えっ?すごいね!合格確実だね!」



( ゚∀゚)「でもまだまだ油断できないよ。余裕こいて足切りになったら洒落にならないし」



ξ゚?゚)ξ「そうだね・・・」



( ゚∀゚)「今までどんなにあがいてもB判定までしかならなかったんだけど、一緒に勉強する人ができてね。

    その人と勉強したり対策問題を交換したりして、やっとA判定取れたんだ」



ξ;゚?゚)ξ「へぇ・・・」



その言葉を聞いて、図書館での出来事を思い出した。

まさか・・・今ジョルジュが話している人が、あの時の女の子・・・?



( ゚∀゚)「その人はクオリティ高校のコなんだけど」



クオリティ高校・・・。市内にある唯一の女子高である。

そして、図書館で見た女の子の制服も、クオリティ高校のものだった。



ξ゚?゚)ξ「それって・・・女の子ってことだよね」



( ゚∀゚)「でも、別にそのコのことが好きなわけじゃない。

    ただ志望校が同じで一緒の塾に通ってるからってだけで・・・」



ξ-?-)ξ「・・・・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「俺が好きなのはツンだけだよ・・・」



ジョルジュはそう言ってツンを抱きしめ、額にキスをした。

ふと目が合った時に、ツンは思わずうつむいてしまった。

ジョルジュがツンに触れる時の手はいつものように優しかったが、

その優しさが余計にみじめになった。



時計の秒針の音と一緒に自分の心臓の鼓動が部屋中に響いているのではないかと思うくらい、

ツンの心臓は高鳴っていた。



いつものように、誰もいない真っ暗な家に帰宅する。

真っ先に自分の部屋へと向かい、電気もつけずにベッドに飛び込み枕に顔を埋めた。



まさか、自分が問い詰める前にジョルジュから先に言われるなんて、

予想していなかった。心の準備もしていなかった。

ジョルジュがそばにいない今も、未だに居心地の悪さを感じている。



ξ゚?゚)ξ(先に言っちゃった方が私に隠さなくて済むからやりやすいんだよね・・・きっと)



ξ゚?゚)ξ(ジョルジュ君のこと、信じたい。信じたいけど・・・)



肩のあたりに、ジョルジュに抱きしめられた時の感触がまだ残っている。

いつもの優しい触れ方が、急に偽物のように感じた。



夜の暗闇と心の中の黒い感情が溶け合っていく感覚を覚えながら、

自分も溶けてなくなればいい、そう思った。



翌日の放課後も、ジョルジュはいつものように塾へ向かった。

塾のない日はいつものように図書館に行くのだろう。あの女の子と。



この頃ツンは、一人でいる方が気が楽だと思うようになっていた。

ジョルジュはもちろん、友達とでさえ話をしているのが苦痛に感じ始めていた。

みんな自分と仲良くしてくれているけど、いつか裏切るのではないか。

思考が悪い方向へ及んでいるのに嫌気を感じつつも、どうしても止められなかった。



インクボトルが倒れると、中のインクは瞬く間にこぼれ広がる。

そして、染み付いたインクはなかなか取れない。

ツンの心はまさしくこんな状態だった。



ジョルジュの受験勉強の追い込みとツンの心境の変化が手伝って、二人が一緒に過ごす時間は日に日に短くなっていった。

例年より遅めの初雪が降り始めた頃には、赤や緑のイルミネーションが街を鮮やかに彩っていた。



( ゚∀゚)「ツンは何か欲しい物ある?」



ξ゚?゚)ξ「んー・・・・。そういうジョルジュ君は?」



( ゚∀゚)「てゆうかクリスマス意識してるってのバレバレだねw」



ξ゚?゚)ξ「そうだねw」



一応普段通りの会話は心掛けるようにしていた。

多分、ジョルジュにはばれていない。自分の心が少しずつ離れていっているということは・・・。



( ゚∀゚)「毎日会えなくてごめんね。でもイブの日は一緒に過ごそうな」



ξ゚?゚)ξ「でも、私バイトがあるかも・・・」



( ゚∀゚)「早番か遅番かどっちかだろ?

    早番なら夜一緒に過ごせばいいし、遅番ならバイトが始まる時間まで一緒にいよう」



ξ゚?゚)ξ「うん」



( ゚∀゚)「ごめんね、まだ12月に入ったばっかりなのに、気が早いよね」



ξ゚?゚)ξ「ううん、楽しみにしてるね」



いつものように、夜11時頃にジョルジュから電話がかかってきた。

昼休みも一緒に過ごすことがなくなったので、電話は二人の仲をひきとめる大切な手段になっていた。

しかし、ツンにはこの電話が苦痛になっていた。



( ゚∀゚)「そういえば今日さ、クオリティ高の試験問題もらったんだよ。

    やっぱ高校によって内容が変わるんだな。解いててすごく楽しかった」



( ゚∀゚)「クオリティ高校の数学の先生はメイヂ大出身らしくて・・・」



( ゚∀゚)「そのコの先輩でメイヂ大に行った人がいて・・・」



あの日以来、ジョルジュはクオリティ高校のあの女の子のことをツンに話すようになっていた。

ツンにはだいぶストレスになっていたが、ジョルジュの受験が成功するためだと思い、適当に相槌を打ちながら聞いていた。



( ゚∀゚)「・・・・あっ、もうこんな時間か。そろそろ勉強しないと」



ξ゚?゚)ξ「まだ起きてるの?明日も学校でしょ?」



( ゚∀゚)「とりあえず数学だけやって寝るよ。ごめんね、ツンと話してると時間忘れちゃうんだよね」



ξ゚?゚)ξ「無理しないでね」



( ゚∀゚)「ありがとう。じゃあ、おやすみ」



ξ゚?゚)ξ「おやすみなさい」



ツーツーツー



電話が切れたのを確かめると、ツンはベッドに横になり、部屋の電気を消した。

お風呂に入るのも面倒くさい。明日の朝シャワーを浴びてから学校に行こう。

そして放課後はバイトで・・・。ジョルジュはきっと塾か図書館に行くんだろうな。明日はどっちかな。

まぁ、どっちにしろジョルジュとあの女の子は一緒に肩を並べて勉強するんだろうな。



あの時、ツンが「女の子と二人で勉強しないで」と言えば、ジョルジュはその通りにしただろう。

けどツンは言わなかった。言えなかった。

言おうと思うと、ツンの脳裏にはブーンと仲良くしている時の様子が浮んできた。

ξ゚?゚)ξ(私はブーンと仲良くしてたのに、ジョルジュに”女の子と仲良くしないで”って言うのは

      虫が良すぎるよね・・・)

自分の事を棚に上げてジョルジュを責めることなど、ツンにはできなかったのだ。



次の日の放課後。

ジョルジュは塾がなかったらしいのだが、珍しく図書館へも行かずにそのまま自宅へ帰ったらしい。

ジョルジュからのメールを見てそのことを知ったのは、ツンがバイト先についた後だった。



ξ゚?゚)ξ(いつもなら授業中にメールくれるのに・・・)



また自分のペースが乱されてる。

そんなことを思いながら、ツンはホールへと向かった。



(゚∋゚)「ツンちゃん、24と25は出番でもいい?」



ξ゚?゚)ξ「あっ・・・うーん・・・そうですねぇ・・・」



(゚∋゚)「ツンちゃんも予定があるだろうけど、せめてどっちかは出てくれない?」



ξ゚?゚)ξ「はい・・・わかりました」



(゚∋゚)「ごめんね、人手不足でさ。食器洗いのコもまだ入ったばかりで心配なんだよ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・」



(゚∋゚)「じゃあ上がっていいよ。おつかれ」



ξ゚?゚)ξ「お疲れ様でした」



重い足取りでロッカールームへ向かう。

今日も疲れた。家に帰ったらまたジョルジュから電話がかかってきて、話した後にお風呂に入って・・・。

最近、先のことばかり考えるようになっている。毎日が平坦すぎる気がする。前はこんなんじゃなかった気がする・・・。



何が自分をそうさせるのかはなるべく考えないようにしていた。



ピルル?



着替えている時、ツンの携帯が鳴った。



ピッ

『from:ジョルジュ

件名:

本文:バイト終わったかな?

   話があるので、家に着いたらメールちょうだい』



ξ゚?゚)ξ(話・・・ね)



ジョルジュがこんなメールをしてくるのは、明日一緒に何をしようとか、休日に遊ぶ予定を立てる時だった。

きっとクリスマスの話でもする気なのだろう。

ツンは特に気にとめることもなく、メールの返事をしないままバイト先を後にした。



真っ暗な家に帰宅し、リビングの電気をつけた。



ξ゚?゚)ξ「新しいバスソルト買ったから、今日はちゃんとお風呂に入ろう」



バスタオルと入浴剤を用意し、給湯器の温度を設定してお湯はりのスイッチを押す。



ξ゚?゚)ξ「あ、ジョルジュ君にメールしないと」



今帰宅したことを告げるメールを送った後、自分の部屋へ着替えを取りに行った。

そこでちょうどジョルジュから電話がかかってきた。



ピルル?♪



ξ゚?゚)ξ「もしもし」



( ゚∀゚)「あっ、ツン。おつかれー」



( ゚∀゚)「今、大丈夫?」



ξ゚?゚)ξ「大丈夫だよ」



いつものように、15分くらいで電話は終わるだろう。

そしたら新しく買ったバスソルトを入れた湯船にゆっくりつかって・・・

あ、そうだ、行きつけの美容室からヘアトリートメントのサンプルをもらったんだ。それも使ってみようかな。



ツンが他の事に思考をめぐらせている時、ジョルジュがまたあのコのことを話し始めた。



( ゚∀゚)「クオリティ高のコがさ・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・」



またあのコのことか・・・。

バスタイムのことを楽しく思い浮かべていたツンの心が急に重くなる。

今日はうまく聞くことができるだろうか・・・。



( ゚∀゚)「なんか、悩んでるみたいで。ツンに同じ女として意見を聞きたいんだけど」



ξ-?-)ξ「うん・・・・・」



あまり聞きたくない話題だな・・・。

まぁ、適当に流して適当にコメントしていればとりあえずやり過ごせるだろう。



( ゚∀゚)「最近彼氏と別れたらしいんだけど、原因は彼氏の浮気だったみたいなんだ」



ξ゚?゚)ξ「ふーん」



( ゚∀゚)「それで、人間不信になったとか言って、泣くんだよ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・」



( ゚∀゚)「ツンならどんな言葉をかけて欲しい?」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・」



この人は私に何を求めているのだろう。

私は、彼が他の女の子と仲良くする手助けをする為に付き合っているのだろうか。



ξ゚?゚)ξ「多分・・・そのコはジョルジュ君のことが・・・・好きなんじゃないかな」



( ゚∀゚)「えっ?」



言ってしまった。

言ってはいけないことだったかもしれない。

けどもう感覚が麻痺している。

というか、ぶっちゃけそのコのことなんてどうでもいい。



ξ゚?゚)ξ「ジョルジュ君に優しくして欲しいんじゃないかな?だからそんな相談するんだよ」



一度スイッチが入ってしまえば、もう怖いものなど何もないかのようにどんどん言葉が出てくる。

まるで、頭で考えるよりも先に言葉が出てきているようだ。



( ゚∀゚)「そうかなぁ・・・でもそのコにはツンのことも話してるよ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・好きなら関係ないよ・・・」



( ゚∀゚)「・・・・・・うーん・・・」



これをきっかけに、そのコと会うのを止めてくれれば・・・・。

そんな淡い期待はジョルジュに届くのだろうか。



( ゚∀゚)「ごめんね、こんな相談、ツンにすべきじゃないのに」



ξ゚?゚)ξ「ううん・・・・」



( ゚∀゚)「じゃあ、俺勉強に戻るな」



ξ゚?゚)ξ「うん。頑張ってね」



電話を切り、携帯を充電器につなげた。

ジョルジュは私の気持ちに気付いただろうか?

他の女の子の話をされて気分が良くないこと。そして、ヤキモチをやいていることを。



ピーッピーッピーッ



湯船にお湯がたまった合図のアラームが聞こえた。

気を取り直してお風呂でも、なんて気分にはなれなかったが、とりあえず何も考えないようにしよう。

軽くため息をついた後、風呂場へ向かった。



翌日、道路は雪でうっすらと白くなっていた。

まだ雪は積もるほど降ってはいないが、いつ大雪が降ってもおかしくないくらいの雲が天を覆い、

地上には身がひきちぎれるような冷たい風が吹いていた。



('A`)「おいブーン、俺帰り本屋寄ってくけど」



( ^ω^)「俺は今日は遠慮しとくお。おうちに帰ってご飯作るお」



('A`)「お前・・・まさか・・・」



( ^ω^)「たまには俺も手伝っておげるお」



('A`)「そうか・・・お前にもついに彼氏が・・・・」



( ^ω^)「ちょwww違うおwwwwwかあちゃんの誕生日なんだお」



('A`)「ああ、なんだ人妻か」



(;^ω^)「そんな言い方やめるおwwwwwww」



('A`)「お前のかあちゃん美人だよな。萌えるぜ」



(;^ω^)「そんな目で見るなお。咲代はどうしたお」



('A`)「人妻は別腹だ」



(;^ω^)「そうかお・・・。でも俺のかあちゃんはやめてくれお」



('A`)「で?メシ何作るんだ?」



( ^ω^)「とりあえずカレー作るお。帰りにスーパーに寄って買い物するお」



('A`)「そうか。俺も付き合うぜ」



( ^ω^)「いいのかお?」



('A`)「ああ。どうせ暇だしな」



今日はブーンの母の誕生日だ。中学の時に父が亡くなって以来、それまで以上に仕事に励んできた母を少しでも労ってあげたい。

あまり豪華なパーティーはできないけれど、母の好きなチーズケーキを用意して、ささやかにお祝いをしよう。



( ^ω^)(楽しみだお)



その日、ブーンは授業中も落ち着きなく過ごした。

そして放課後にドクオと一緒にスーパーで買い物をしたあと、帰宅した。



( ^ω^)「・・・・あれ?」



いつもは閉まっているはずの家の鍵があいている。

まさか・・・。



( ^ω^)「ただいまだお」



J(‘ー`)し「おかえりブーン」



( ^ω^)「ちょwwwかあちゃんなんでこんなに早いお」



J(‘ー`)し「今日は本社で研修だったから、早く帰してもらったんだよ。

      ブーン、これから外食にでも・・・」



( ^ω^)「あ・・・・」



J(‘ー`)し「・・・・・・・・あれ、ブーン、ご飯の材料買ってきてくれたの?」



( ^ω^)「今日は俺がカレー作ろうと思って・・・・」



J(‘ー`)し「ブーン・・・・」



( ^ω^)「でもいいお、今日はどこかにご飯食べに行くお。カレーは明日にするお」



J(‘ー`)し「でもせっかく買ってきてくれたんだし、作ってちょうだい」



( ^ω^)「でも・・・」



J(‘ー`)し「お前は気分屋だからね。今を逃したらもうお前の手料理なんて食べれないかもしれないし」



( ^ω^)「ちょwww明日また作るって言ってるおwwwwww」



J(‘ー`)し「実はお母さん疲れちゃって、外出するの億劫だったんだよ。だからカレー作ってちょうだい」



(*^ω^)「わかったお」



ブーンは張り切って台所に立った。しかしブーンは普段料理をしないので、何をするにも手際が悪かった。

そんな様子を見かねて、母があれこれ口を出して、終いにはほとんどの工程を母がこなしてしまった。

これじゃあいつもと変わらないね、と母は笑いながら言った。



( ^ω^)「うひょwwwwおいしそうだおwwwwいただきますお」



結局ブーンは野菜を切っただけになってしまったが、それでも母と二人で作ったカレー。いつもよりも何倍も美味しく感じた。

母も嬉しそうにほおばっている。



食後にバースデーケーキがわりのチーズケーキを食べている最中に、母が思い出したように言った。



J(‘ー`)し「そういえば、春に新商品が出るんだけど、試してみてくれない?」



( ^ω^)「今度は何かお?」



J(‘ー`)し「ボディケアの新ブランドなんだけど・・・」



化粧品メーカーの美容部員をしているブーンの母は、未発売の化粧品のサンプルを持ち帰っては、ブーンにモニタリングさせていた。

といっても本格的なスキンケア用品はさすがに使うことができないので、いつも10代向けのニキビケア用品だとか、リップクリームなどを使っていた。



J(‘ー`)し「パッケージは可愛いんだけど、ティーン向けだからお母さんには若すぎてね」



( ^ω^)「容器がすごく可愛いお。女の子が好きそうだお」



J(‘ー`)し「良かったらハンドクリームだけ試してみてくれない?それでいつものようにこの紙に感想書いてね」



( ^ω^)「わかったお」



J(‘ー`)し「実は他にもサンプルいっぱいもらったんだけど・・・さすがにこんなにいらないわよね」



そう言って母は、リップクリーム、ボディローション、ミルク、クリーム、ボディコロンなど、春に発売されるという新商品のサンプルがたくさん入った紙袋を持ってきた。



J(‘ー`)し「香りもとてもいいんだけど、お母さんには潤いが足りないのよね・・・」



( ^ω^)「良ければ俺がもらうお。使ってみたいお」



J(‘ー`)し「そお?でもブーンには油分が多いかもしれないから、ニキビが増えたらすぐに使うのやめてね」



( ^ω^)「わかったお。これでプリプリお肌になるお」



ブーンはその化粧品を部屋に持ち帰り、タンスの一番下の引き出しに大切にしまった。









(゚∋゚)「ツンちゃん、もうあがっていいよ。おつかれー」



ξ゚?゚)ξ「はい、お疲れ様でした」



いつものように9時半になるちょっと前にバイトが終わった。

ジョルジュは今日は図書館に行ったらしい。そして、ツンが帰宅する頃に電話をくれるとのことだった。

正直気が重い。だけどちょっと期待していた。もうあのコと二人で会わないと、ジョルジュが告げるのを。



家に帰り、リンビングの電気をつけ、まかないでもらったチャーハンを冷蔵庫に入れた。

今日はちょっと食欲がないから、明日のお弁当に入れよう。

そんなことを考えていたところに、ジョルジュから電話がかかってきた。



ピルル?♪



ξ゚?゚)ξ(あれ?ジョルジュ君の家の電話からだ。珍しいな・・・)



ピッ

ξ゚?゚)ξ「もしもし」



( ゚∀゚)「あ、ツン。家に着いた?」



ξ゚?゚)ξ「うん。ジョルジュ君ももう部屋?」



( ゚∀゚)「うん。今日もバイトお疲れ様」



ξ゚?゚)ξ「ありがと」



今日はジョルジュに会ってすらいない。そんな状態で電話をするのは珍しいから、なんだかちょっと緊張する。



( ゚∀゚)「昨日話してたあのコのことなんだけど・・・」



ξ゚?゚)ξ「!」



きた。またあのコの話だ。

まさか、もう二人きりで会わないって決めたとか、そういう話?



( ゚∀゚)「今日、もう二人っきりで会うのはやめようって言ったんだ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・そう・・・」



しまった。そっけない返事をしてしまった。

でも、本当はすごく嬉しい。まさか本当に自分の期待通りになるなんて。



( ゚∀゚)「そしたらあいつ急に泣き出して・・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・」



( ゚∀゚)「”やっぱり私より彼女の方が大切なんだ”って言って・・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・」



そりゃそうだよ。女友達よりも彼女が最優先に決まっている。私だってジョルジュを優先してきたんだもの。



( ゚∀゚)「それで、”私を見てくれるヒトがいなくてつらい、寂しい”って言うんだ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・うん・・・・」



( ゚∀゚)「で・・・・・・・・・・泣きながら、吐いちゃってさ」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・え?」



( ゚∀゚)「ごめん、ごめんって謝りながら吐いて、泣き続けて・・・・」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・」



これはどうやらそのコの気持ちは本物かもしれない。

本気でジョルジュのことが好きに違いない。

そうじゃなきゃ、そこまでしてすがりつくとは思えない。



( ゚∀゚)「・・・・・で、ツンには悪いと思うけど」



( ゚∀゚)「そのコについててあげようと思うんだ」



ξ;゚?゚)ξ「!?」



ξ;゚?゚)ξ「それってどういう意味?」



( ;゚∀゚)「誤解しないでくれ、ツンと別れるとかそんなんじゃない。

     ただ、そのコには受験勉強ですごくお世話になったし、同じ大学を目指す戦友っていうか・・・」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「今までお世話になった分のお礼みたいな感じ。

   他についててあげれる奴がいないみたいだし・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「傷ついたコは放っておけないだろ?」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・そうだね・・・・」



本当はそのコなんてどうでも良かったが、とりあえず当り障りのない返事をしてみた。



( ゚∀゚)「精神的に弱いコなんだよ。それに更に元カレの浮気で傷ついちゃってて、トラウマになってるみたいなんだ」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「せめて受験が終わるまではついててあげようと思う」



ξ゚?゚)ξ「そっか・・・・・」



( ゚∀゚)「ツンには寂しい思いさせると思うけど・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「あっ」



ξ゚?゚)ξ「?」



( ゚∀゚)「ごめん、携帯に電話きた。また明日メールするから」



ξ゚?゚)ξ「・・・うん」



( ゚∀゚)「じゃあな」



ツーツーツー



ξ゚?゚)ξ(どうせあのコからの電話なんでしょ・・・)



なんだか急に胸のあたりが重くなった。

冷凍して作り置きしていたスープでも温めて軽い夕食にしようと思っていたが、それすら喉を通りそうにない。



ツンはふらふらと階段を上がって、自分の部屋に入り、ベッドに飛び込んだ。



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・あのコの寂しい気持ちは埋めてあげるのに、私には寂しいの我慢しろってこと?」



急に、名前も知らないあのコへ対して○意が芽生えた。

彼女がいると分かっている相手に、同情を買うような形で心の隙を見せるなんて卑怯だ。

ジョルジュは受験が終わるまでそばにいるって言っていたけど、もし二人とも同じ大学に合格したら―。

それこそ、自分の目の届かない場所に二人がいってしまう。

自分がいないところで二人に何が起こっても、私は何も知らずに過ごす事になる。

そのコがどのくらい精神的に弱いのかだとか、どの程度心に傷を負ったかは知らないけれど、

どうして私までその事を知らされなきゃいけないのだろうか。



ここで自分が過去のことをジョルジュに話したところで、ただの不幸自慢になってしまう。

先手を取られた、まさしくそんな感じだ。



ジョルジュは、ツンなら大丈夫だと思って、ツンを信用してこのような決断をしたのだろう。

だがそれはツンには重荷でしかなかった。ただの足かせだった。

海の底で、海面に向かって一生懸命泳いでもいつまでたっても光が見えてこない、そんな感じだった。



ξ-?-)ξ「・・・・・・・」



なんか、色んなこと考えたらスッキリした。

そう思い、ツンはジョルジュに電話をかけた。



トゥルルルルル・・・・



( ゚∀゚)「はい、もしもし」



ξ゚?゚)ξ「あ、ジョルジュ君?」



( ゚∀゚)「ごめん、またあのコから電話がくるからさ・・・・」



ξ-?-)ξ「・・・・」



ツンの中で何かがプツッと切れたような気がした。



ξ゚?゚)ξ「私さ、どうすればいいの?」



( ゚∀゚)「?ツン・・・?」



ξ゚?゚)ξ「そのコのこと、ジョルジュ君はすごく心配してるだろうけど」



ξ;?;)ξ「私もそのコの心配しなきゃいけないの?」



(;゚∀゚)「・・・・・・・!!」



ξ;?;)ξ「勉強が目的とはいえ、女の子と二人で過ごしてたってだけでもすごくつらかった。

      本当は嫌で嫌で仕方なかった。できるなら会わないで欲しかった。

      なのに今度はそのコが立ち直る応援までしなきゃいけないの?」



(;゚∀゚)「いや、そこまで言って・・・」



ξ;?;)ξ「同じようなもんじゃない。そのコが元気になるまで私は待ってなきゃいけないんだよ。

       どうしようもないくらいに嫉妬しながら我慢してなきゃいけないんだよ」



(;゚∀゚)「・・・・・・」



ξ;?;)ξ「・・・・・・・・私には無理・・・自信ない・・・」



(;゚∀゚)「ツン・・・・」



ツンは溢れ出る涙を頬で感じていた。

今まで、ジョルジュに対してこんなに感情的になったことはあっただろうか。

涙は止め処なく流れてくるが、感情的になりつつも、自分でも驚くほど冷静だった。



( ゚∀゚)「ごめん・・・ツンが無理なら、仕方ないな・・・・」



ξ;?;)ξ「・・・・・」



( ゚∀゚)「・・・・・・・・わかった」



( ゚∀゚)「別れよう」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・・・え」



思いも寄らない言葉が返ってきた。

体が急激に硬直する。目の前がグラつく。

嫉妬に苦しんでひたすら我慢して・・・。その結果がコレ?



( ゚∀゚)「ツンをそんな気持ちにさせるなんて彼氏として失格だよ」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・・・」



( ゚∀゚)「今までつらい思いさせてごめん。

    でも俺はあのコを放っておけないし、ツンが俺を待てないって言うなら、別れよう」



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・・・わかった。

・・・・もう、終わりにしよう」



( ゚∀゚)「・・・・・・・・うん、今までごめん」



ξ゚?゚)ξ「ううん・・・・私の方こそ・・・・」



( ゚∀゚)「じゃあ・・・・・・・さようなら」



ξ゚?゚)ξ「さようなら・・・・・・・」



プッ

ツーッツーッツーッ



受話器から聞こえる機械音を聞きながら、ツンはしばらく放心した。



ジョルジュと、別れた?

あんなに大好きだったジョルジュと?

こんなに突然?



あまりに唐突すぎて事態がうまく飲み込めない。

頭の中をめいっぱい掻き回されている感じだ。

めいっぱい頭をフル回転させようとしても、完全にショートして動かなくなってしまっているようだ。



ξ゚?゚)ξ「・・・ふふ・・・変なの・・・もう、涙すら出ないよ・・・」



そう呟くツンの頬には、大粒の涙がぼたぼたと零れ落ちていた。



その夜はあまり眠れなかった。

寝苦しくて起きて、寝苦しくて起きてを繰り返していた為、

朝目覚し時計が鳴って起きた後も、頭がすっきりしなかった。



そんな状態で頭が働かないままなんとなく学校に行って、なんとなく授業を受けた。

お昼休みにはまかないのチャーハンが入ったお弁当を食べ、ぼんやりしたまま午後の授業を受け、

放課後にはバイト先へ向かった。



今日はお客さんが少ない日だったので、ボーっとしたまま働いていても特にミスをすることはなかった。

ただただ時間が経つのを待ちながら働き、今日は珍しく9時に上がる事ができた。



ξ゚?゚)ξ(・・・・あ、そうだ、コンビニに寄ってジュース買ってかえろ・・・・)



バイト先の通用口を出て、いつも帰る道とは反対側にあるコンビニへ向かおうとした。

その時―



( ゚∀゚)「ツン!」



声をかけられ振り返ると、そこにはジョルジュの姿があった。



ξ゚?゚)ξ「ジョルジュ君・・・」



( ゚∀゚)「ちょっと・・・いい?」



ξ゚?゚)ξ「ごめん、私帰るから・・・」



( ゚∀゚)「待ってくれ!!!」



ジョルジュがツンの腕をつかんだ。



ξ゚?゚)ξ「・・・・・なに?」



( ゚∀゚)「昨日はあんなこと言ってごめん!俺もちょっと気が滅入ってて・・・・」



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・」



( ゚∀゚)「・・・・・ちゃんとやり直したい。昨日の話、取り消してもいいかな?」



まただ。

また自分のペースが乱されている。



ξ゚?゚)ξ「私の気持ちは変わらないから」



( ゚∀゚)「ツン・・・・」

     ・・・・・・・本気か?」



ξ゚?゚)ξ「さようなら」



( ゚∀゚)「・・・・・・・ツン・・・・」



ツンはジョルジュに背を向けて歩き出した。

その後姿に向かって、ジョルジュが急に叫んだ。



( ゚∀゚)「もし俺がっ・・・!!」



ξ゚?゚)ξ「?」



ツンは立ち止まった。



( ゚∀゚)「もし俺がもう他の女の子と会わないって言っても別れるって言うのか!?」



ξ゚?゚)ξ「!!」



”他の女の子とは会わない”

この言葉をどれほど待ちわびただろうか。昨日の電話でも、いつジョルジュからこの言葉が出るかと期待していた。

自分のことをずっと好きでいてくれたジョルジュなら、こう言ってくれると思っていた。

そしてついにこの瞬間、自分が望んだ言葉をジョルジュが言ってくれた。



ツンはうつむいて少し考えた後に、ジョルジュに向かって言った。



ξ゚?゚)ξ「もう遅いよ」



(;゚∀゚)「・・・・・・・・・ツン」



ξ゚?゚)ξ「やっぱり気持ちは変わりません」



(;゚∀゚)「ツンッ、ごめん、ほんとに俺はもう―」



ξ゚?゚)ξ「さよなら」



ジョルジュの言葉を遮り、ツンはその場を後にした。

もし昨日、あの時に言ってくれてたら、違う今があったかもしれない。



でも、もう遅い。自分の気持ちはすっかり離れてしまったし、ジョルジュも自分よりもあのコの事で頭がいっぱいなはずだ。

ジョルジュの中で自分の存在が一番大きいのなら、誰よりも自分を優先してくれたはずなのだ。

だけどジョルジュはあのコといることを選んだ。それが何よりの答えだった。



付き合い始めて2ヶ月半。

二人の関係は、幕を閉じた―。



それからしばらくして、ジョルジュはクオリティ高校の”さやか”というコと付き合い始めたことを、ジョルジュとの共通の友人から聞いた。

ツンの中で全てがつながった。ようやく完全に納得できた気がした。



そしてブーンも、ツンとジョルジュが破局したという話を耳にした。

クリスマスも終わり、あと数日で新年を迎えようとしている時だった。



1月1日。新しい年の始まり。

新年を迎えたからと言って、何か特別なことをするわけでもない。

ただおせちを食べて、お餅があれば食べて、つまらない特番を見て、いつもより少しのんびりと過ごすだけだ。

しかし去年と一昨年はスーパーのバイトをしていたので、本当に一日中のんびりできるお正月は3年ぶりだった。



( ^ω^)「あけましておめでとうだお」



J(‘ー`)し「はいおめでとう。これお年玉」



( ^ω^)「うはwwありがとうだおwwwwwwww」



J(‘ー`)し「今日は出かけるの?」



( ^ω^)「ドクオと初詣に行くお」



J(‘ー`)し「そう。ドクオ君にヨロシクね」



外に出ると、さわやかな寒さが身を包んだ。

昨晩まで降り続いた雪は明け方頃にやみ、辺りは真っ白な世界が広がっていた。

いつもより時間が流れるのがゆっくりな気がする。ブーンは、積もった雪の感触を楽しむように歩いていた。



ピンポーン

( ^ω^)「お迎えにきたおー」



('A`)「うーす」



( ^ω^)「どこ行くお?去年と同じ神社でいいかお?」



('A`)「どこでもいい」



( ^ω^)「じゃあバロス八幡宮に行くお」



二人はバスを乗り継いで、市内で一番大きい神社へとやってきた。

初詣でこの神社を訪れる人はとても多い。屋台がたくさん並んで正月をにぎやかに演出するのも、集客が多い理由のひとつだ。

去年は元旦の夜、バイトが終わった後にブーンとドクオ、そしてツンの3人で初詣に来た。

人ごみをかきわけながら、ブーンは、背の小さなツンがはぐれないように注意をはらって歩いた去年の初詣のことを思い出した。



('A`)「やっべ、これ去年よりも人多いぜ」



( ^ω^)「そりゃそうだお。去年は夜に来たお」



('A`)「そういやそうだったな。しかし、夜でも人多かったよな。

   ツンもよく迷子にならなかったよな」



( ^ω^)「二人でちゃんとツンに注意して歩いてたからだお」



('A`)「・・・・・・・俺はいつでも迷っている。人生という名の迷路の中をな」



(;^ω^)「それ去年も言ってたお」



屋台が並ぶ通りを抜けると、御守りや破魔矢を販売している売店があり、その先に神社がある。

御守りの売店の隣には、甘酒を無料で配るテントが設けられている。

そのテントの裏に、パイプ椅子に座ってうなだれている酔っ払いがいた。



('A`)「おいっ!!!!!あのおっさん今年もいるぞ・・・・・」



(;^ω^)「ほんとだお。あいつには散々な目にあったお・・・」



('A`)「まぁ今年はツンがいないから大丈夫だろうけど」



( ^ω^)「・・・・・・・・」



('A`)「早くお参りして屋台まわろうぜ。くるくる巻きのお好み焼き食いたい」



( ^ω^)「俺も食べたいおwwwwwwwあ、おみくじも引くお」



('A`)「・・・・おみくじか・・・・・事の発端はおみくじだったんだよな」



( ^ω^)「・・・・・・・去年のことはいいお・・・・とりあえず早くお参りに行くお」



去年の話をすると、どうも歯切れが悪くなる。

そうは思いながらも、つい口からツンの名前が出てしまう。それはブーンだけではなく、ドクオも同じだった。



お参りの長い列に並び、やっと自分の順番がきた。鈴をならして手を合わせて目をつぶり、

今年も無事に過ごせるようにと心の中でお願いした。

ブーンがお賽銭を入れようと思ったその時、人ごみに流されてあっという間に列の外にはじき出された。

仕方なく、列の外から賽銭箱めがけて15円を投げ入れた。

ズボンのポケットに手を入れて行列を観察していると、ドクオがけだるそうな表情で人ごみの中から出てきた。

人が多くてお参りどころじゃねーな、なんて会話をしながら、二人はおみくじを引きに売店に立ち寄った。



('A`)「おい、おみくじどうだった?」



( ^ω^)「うはwwwwwww大吉ktkrwwwwwwwwww」



('A`)「マジか。俺、去年と同じ吉だった。微妙だ」



( ^ω^)「大吉なんて小学校の時以来だおwwwwwwww」



('A`)「俺の人生、おみくじごときで決められちゃつまらん。

  俺は自分で自分の道を切り開く!」



( ^ω^)「ドクオ、ここ見るお!」



('A`)「あん?」



( ^ω^)「”出産:案ずるより産むがやすし”って書いてあるお」



('A`)「・・・・・・・・俺に出産をしろと?」



( ^ω^)「おめでたktkr」



('A`)「子供の前に・・・・・・まずは童貞を捨てないと・・・・・・」



( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」



('A`)「早く俺のマグナムをインサートしたい」



(;^ω^)「・・・・・・・神聖な神社でなんてことを・・・・・」



('A`)「真性って言うな!」



(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwww」



ピルル?♪



ξ-?-)ξ「ん・・・・・・」



携帯の着信音でツンは目を覚ました。部屋の時計を見ると、午後1時をさしていた。

携帯を見ると、友人から初詣のお誘いのメールが来ていた。

すぐに断りの返事を送ると、ツンは再び布団にもぐった。



ツンのバイト先は、今時珍しく元旦は定休日になっていた。

おかげでツンはのんびり元旦を過ごす事ができる。



ピルル?♪



また携帯がなった。さきほどの友人からのメールだった。



ξ-?-)ξ「もー、行かないって言ってるのに」



”場所はバロス八幡宮だよ。気が向いたらおいで☆”



ξ-?-)ξ「バロス八幡宮ね・・・・」



そういえば、去年ブーンとドクオと3人で行ったっけ。



ξ#-?-)ξ「・・・・・・・・・・・今思い出しても腹立つ!」



去年の元旦。

ブーンが午後5時半までバイトだった為、その後に待ち合わせをして、ブーンとドクオ、そしてツンの3人でバロス八幡宮へ初詣に行った。

お参りをした後に3人でおみくじを引いたのだが、ツンは末吉を引いてしまった。



????????????????????



ξ#゚?゚)ξ『もう1回引く!!!!!』



(;^ω^)『ちょwwwおみくじは何回も引くもんじゃないおwwwww』



ξ゚?゚)ξ『うっさいわね、せめて中吉じゃないと気が済まないのよ!』



ツンは合計3回おみくじをひいたが、なんと全て末吉だった。



('A`)『これがお前の運命ってやつさ』



ξ;゚?゚)ξ『はぁ・・・・今年は悪い一年になりそう・・・・』



/'、З『おいお前ら、どうだった?』



(;^ω^)『・・・・・?』



('A`)『・・・・・・・・・・・』



ξ;゚?゚)ξ『・・・・・・・・・・・』



(;^ω^)『あの・・・・?』



/'、З『俺、この神社の住職だけど』



(;^ω^)『・・・・・・・・・・本当かお?』



('A`)(ただの酔っ払いにしか見えねーよ)



/'、З『本当だよ。お前ら、おみくじで何かわからない事があったら聞け』



ξ;゚?゚)ξ『・・・・・・・・』



(;^ω^)『なんで1回100円なんですかお?』



/'、З『それはなぁ、財布から取り出しやすい金額だからだ。

   150円だったら半端だし、500円じゃ高いだろ?』



('A`)『一理あるな・・・』



/'、З『まぁ、100円という値段でおみくじを出せるのは、大抵の神社のバックに○がいるからだよ』



(;^ω^)('A`)ξ;゚?゚)ξ『・・・・・・・・・・・・』



/'、З『ん?お嬢ちゃん、3回も引いたのか?』



ξ;゚?゚)ξ『あっ・・・はい、3回とも末吉で・・・・』



/'、З『そうか。同じ結果になったということはそれはやっぱり神様の力が働いてるからだ

   あと○の力もな』



ξ;゚?゚)ξ『・・・・そうですか・・・』



/'、З『お嬢ちゃんはいくつだ?』



ξ;゚?゚)ξ『16・・・・です』



/'、З『若いねー。うちの店で働かない?』



ξ;゚?゚)ξ『はぁ?』



/'、З『おじさん、飲み屋経営してるんだよ。この間人気のホステスが当然辞めちゃって困っててね。

    お嬢ちゃん可愛いから、時給3000円出すよ』



(;^ω^)『いや・・・・・あの・・・・』



/'、З『あれ、もしかして君、このコの彼氏?』



(;^ω^)『違いますお・・・・』



/'、З『違うの?でもさ、エッチはしたでしょ?』



('A`;)『・・・・・・・・・・・・・・』



ξ;゚?゚)ξ『・・・・・・・・・・・・何こいつ、きもい』



/'、З『あ?』



(;^ω^)『ちょwwwwwww』



('A`)『おいツン、相手にすんな』



ξ;゚?゚)ξ『だって・・・・』



(;^ω^)『お、おじさん、俺たちは帰りますお』



/'、З『待てよ、俺は○の一員だぞ』



ξ;゚?゚)ξ『・・・っ!!!』



( ^ω^)『ツン、行くお』



ξ;゚?゚)ξ『う・・・うんっ』



ブーンはツンの手を引いて、早足でその場を立ち去ろうとした。



ξ;゚?゚)ξ『待って、まだドクオが・・・・』



('A`)『俺はいいから行け!』



( ^ω^)『わかったお!』



ブーンとツンは走ってその場を後にした。



/'、З『あ、お前があのコの彼氏なんだ?食った?食ったの?』



('A`)『すいません、今日のところは失礼しますんで』



/'、З『わかった、時給4000円でどうだ?』



('A`)『申し訳ないですけど、大切な妹に水商売させるわけにはいかないので』



/'、З『あん?お前あのコの・・・』



('A`)『兄です。ですから、すいませんが・・・』



/'、З『・・・・ちっ』



('A`)『じゃあ、失礼します』



/'、З『んだよ、じゃあ本人に話つけるよ』



('A`)『いえ、もう本当に勘弁して下さい。・・・・・・・あっ、ちょっと!!!!』



バタバタバタ・・・・



(;^ω^)『はあっ、はあっ、

      そこの角を曲がったところにコンビニがあるお、ひとまずそこに入るお!!』



ξ;゚?゚)ξ『うん!』



ξ;゚?゚)ξ『・・・・あっ、待って、ドクオが来た!!!』



(;^ω^)『ドクオ!!!!・・・・・・・・・あっ!?』



/'、З『おいこら待てや!!!!』



(;^ω^)ξ;゚?゚)ξ『!!!!』



ξ;゚?゚)ξ『ドクオの後ろにあのおっさんが・・・』



(;^ω^)『ツン!タクシーに乗るお!!!!』



ξ;゚?゚)ξ『うん!でも、ドクオは?』



(;^ω^)『運転手さん!友達が痴漢に追われてるお!友達を乗せたらすぐ出して欲しいお!』



(;`・ω・´)『ええ!?大丈夫か!?』



(;^ω^)『ドクオー―――――!早く乗るおー――――――っっ!』



ξ;゚?゚)ξ『あっ・・・・・・・・・・!おっさん転んだ!!』



('A`;)『はあっ、はあっ・・・逃げ切った・・・!』



(`・ω・´)『出しますよ!』



ブウウン・・・・



('A`;)『はあ、はあ・・・』



(;^ω^)『ドクオ、大丈夫かお?』



ξ゚?゚)ξ『ドクオごめんね・・・・ごめん・・・』



('A`)『あいつだいぶ酔っ払ってたから、本気で喋ってたわけじゃないと思うから・・・もう大丈夫だよ』



( ^ω^)『ツン、泣くなお・・・』



ξ゚?゚)ξ『泣いてないわよ!!』



('A`)『あいつはもういないから安心しろ』



ξ゚?゚)ξ『うん・・・ごめんね・・・ありがとう・・・・』



(`・ω・´)『お客さん、警察に行きますか?』



('A`)『いえ、いいです。相手はただの酔っ払いですし。とりあえず神山住宅街まで』



(`・ω・´)『はい』



???????????????



ξ-?-)ξ「・・・・・・・・・」



そうだ、それでその後にドクオの家で大反省会したんだ。



ξ゚?゚)ξ(まさしく、末吉3枚分の災難だったな・・・)



ベッドから降り、思いっきり背伸びをする。

少し寝すぎた・・・。なんだかすっきりしない。

ブーンは、ドクオは、そしてジョルジュは、どんなお正月を過ごしてるのかな・・・。

そんなことを考えながら、ツンはあと2ヶ月ほどでみんなとの別れがくることを思い出した。



冬休み中もツンはバイトに明け暮れた。

たまの休みの日も、どこにも出かけずに家でゴロゴロしていた。

こんな休日の過ごし方もいいけど、やっぱりどこかへ出かける方が性にあっていることを、改めて実感した。



(^▽^)「ツンーひさしぶりー」



ξ゚?゚)ξ「あ、りかちゃん、久し振り」



新学期がきた。クラスメートとの久々の対面だ。

他のコたちは冬休み中も遊んでいたらしいが、ツンはバイトするか家にいるかだったため、

2学期の終業式以来の対面となった。



(^▽^)「もー、なんで初詣来なかったのよー」



ξ゚?゚)ξ「ごめんね、なんか気分が乗らなくて」



(^▽^)「冬休み中もさー、ツンに新しい彼氏ができるようにと思って合コンセッティングしたのにー」



ξ゚?゚)ξ「ああ・・・そうゆうのあんま好きじゃないんだ」



(^▽^)「なんで彼氏と別れたのよー?」



ξ゚?゚)ξ「え!?・・・・・・・まぁ、色々あってね」



(^▽^)「まぁ元気出しなって!ツンならすぐ彼氏できるよ!」



ξ゚?゚)ξ「うん・・・・」



キーンコーンカーンコーン



( ´∀`)「はい、始業式だから体育館に集合ー」



(^▽^)「体育館だって、行こー」



ξ゚?゚)ξ「うん・・・」



りかは、1年の頃からツンと同じクラスで、よくツンに話し掛けてくるコだった。

しかしツンはりかが苦手だった。今の会話のように、無神経な言動が多々あるからだ。



ξ゚?゚)ξ(なんで別れたとか・・・そんな理由、他人に言えるような簡単な問題じゃないってことがわからないのかな・・・?)



りかに嫌悪感を抱きつつも、事を荒立てるのも面倒だったので、いつも適当に話を聞いていた。



始業式では、校長が、3年生はもうすぐセンター試験があるだとか、

就職が決まっていない人は就職活動により一層励まなくてはならないとか、

3月には卒業式があるから頑張りなさい、という内容の話をした。

もう1月。2ヶ月も経てば、卒業式がくる。



卒業式という言葉が、やけにツンの心に残っていた。



('A`)「最近みんな忙しそうだよな」



(;^ω^)「当たり前だお。就活とか受験勉強があるお」



('A`)「お前、内定は?」



(;^ω^)「・・・・・・・・まだもらってないお」



('A`)「・・・・・・まぁ、落ち込むなって」



(;^ω^)「そんなこと言うと余計へこむお」



始業式が終わった後、二人はまたいつもの本屋に来ていた。



( ^ω^)「ところでドクオは専門学校にでも進学するのかお?」



('A`)「え?なんで?」



( ^ω^)「就活も何もしてないし・・・」



('A`)「何言ってんだ。俺は毎日ネトゲしてるぜ」



(;^ω^)「そうじゃなくて」



('A`)「あったあった、新しい快楽点。俺、村田オレンジの絵好きなんだよ」



ドクオは快楽点を手にすると、迷わずレジに向かった。

しかし高校の制服を着ているとの理由で、店員に販売を拒否されていた。

ドクオは、たまにはこんな日もあるさと、特に気にする様子もなく、再び成人向け雑誌のコーナーを物色していた。



( ^ω^)「ただいまだおー」



おかえり、の返事は今日もない。母はいつものように仕事に出ていた。

郵便受けを見ると、冬休みに入る前に面接を受けた企業からの封書が入っていた。

ブーンは自分の部屋に入り、その封筒をびりびりと破いて中の書類を取り出した。

書類を隅から隅までじっくり見た後、がっくりとうなだれてベッドに倒れこんだ。



不採用通知はもう見飽きた。そろそろ採用通知を見てみたかった。

しかし、何度面接を受けても、来るのは期待していない返事ばかりだった。



( ^ω^)「やる気がないのが、自然と態度に出てるのかお・・・?」



面接での受け答えもきちんとこなしてるつもりだったし、履歴書の応募動機の欄も手を抜いて書いたことはなかった。

それでも企業が自分を採用しないのは、面接者の本質を見抜く力があるからなのだろう。



( ^ω^)「本当にやりたい事が見つからないお・・・」



高校を卒業した後は進学せずに就職しようというのは、ずっと心にあった。

しかし、いざ就職活動をしてみた時、その職種の多さに戸惑った。

それと同時に、自分の考えがどんなに浅はかだったかということを実感した。



( ^ω^)「ここまできたら、就職が決まらないまま卒業するのを覚悟するお」



卒業後に、のんびりやりたい事を探せばいい。

・・・・なんてことは思わないが、どうすれば自分の納得のできるカタチに納まるかを日々探求していこうと、そう思っていた。



学校はもう自由登校に入っていたが、ブーンは毎日学校に行き、採用情報を調べていた。

担任と生徒指導室で話し合う日も多かった。そしてたまに生徒会室に立ち寄っては、思いにふける日もあった。



この日もいつものように採用情報を調べる合い間に、一人生徒会室で就職情報誌と睨めっこしていた。

その時、生徒会室をノックする音がした。



コンコン



( ^ω^)「はーい、あいてるおー」



( ゚∀゚)「・・・・よっ」



(;^ω^)「ジョルジュ!」



扉を開けて入ってきたのはジョルジュだった。

冬休みに入った時以来、ろくに会話もしていなかったから、少しだけ体が強張る。



( ゚∀゚)「就活頑張ってるな」



( ^ω^)「ジョルジュこそ、来週センターなのに大丈夫かお?」



( ゚∀゚)「ああ、今日はちょっと学校に用があってな」



( ^ω^)「そうかお」



( ゚∀゚)「懐かしいな、生徒会室」



そう言ってジョルジュはブーンの向かい側の椅子に腰掛ける。

ジョルジュの手を見るとひどく荒れており、ペンだこも以前にも増してふくらんでいた。

睡眠時間を削っているのだろう、目の下にはうっすらとクマができていた。

相当勉強しているのだろうということは、何も言わなくともジョルジュを見るだけで察することができた。



( ゚∀゚)「ごめんな、取り込み中なのに」



( ^ω^)「いや、いいお。今日はそろそろ帰ろうと思ってたお」



( ゚∀゚)「そうか・・・」



( ^ω^)「じゃあ、俺は帰るお。まだいるなら鍵を頼んだお」



( ゚∀゚)「あっ、待ってくれ。ちょっと話さないか?」



( ^ω^)「?いいお」



ブーンはペンを筆箱に入れ、本とひとまとめにしてカバンにしまった。

ジョルジュは少し遠くを見た後に、口を開いた。



( ゚∀゚)「知ってると思うけどさ、ツンと別れたんだ」



( ^ω^)「ドクオから聞いたお・・・」



やはりこの話題か。予想していた通りだ。

きっとこの後、ツンへの謝罪の言葉を口にするのだろう。



( ゚∀゚)「俺、ツンに悪い事をしたと思う・・・謝っても足りないくらいだ」



( ^ω^)(・・・・当たったお)



( ゚∀゚)「でも、ツンは俺との間に壁を作ってたと思う。

    俺が踏み込もうとしても、あいつ、近寄らせてくれなかった」



( ^ω^)「・・・・・」



( ゚∀゚)「でも、きっと無理に近付いちゃだめだったんだな。長い目で見ることができれば良かったんだ。

     そしてツンが全てを見せると決めたときに、受け入れてやれば・・・」



( ^ω^)「・・・・・」



( ゚∀゚)「今更気付いても遅いよな」



ジョルジュは口元にうっすらと笑みを浮かべた後、肩を落としてうつむいた。



( ゚∀゚)「俺、ツンのこと本当に好きだったんだ。正直今でも未練はある」



( ^ω^)「・・・・・」



( ゚∀゚)「でも今は新しい彼女もいる。今まで以上にそいつを大切にしようと思う・・・」



( ^ω^)「そうかお・・・」



( ゚∀゚)「ごめんな、なんかお前に聞いて欲しくて」



( ^ω^)「俺はジョルジュを尊敬するお。自分の気持ちをそんなにはっきりと示す事ができるなんて、羨ましいお」



( ゚∀゚)「そうか?逆に裏表がなさすぎるって自分で思うけどなw」



( ^ω^)「確かにそうだおwwwwww」



( ゚∀゚)「はははっ。じゃ、話はそれだけだ。邪魔してごめんな」



( ^ω^)「気にするなお。ジョルジュも勉強頑張るお」



( ゚∀゚)「サンキュ。じゃあな」



そう言ってジョルジュはすっきりした表情で生徒会室を出た。

その様子を見て、ブーン自身も晴れやかな気分になった。



時間がどんどん過ぎていく。

センター試験も終わり、受験生たちの勉強にも拍車がかかる。

また、未だに就職が決まらない生徒たちはさすがに焦りを隠せない様子だった。

中には諦めて専門学校への進学に変更する者もいたが、経済的に余裕のある家庭の生徒だけで、ごく一部だった。



( ´_ゝ`)「内藤、お前どうすんの。まだ内定もらってないでしょ」



( ^ω^)「俺はただ全力を尽くすだけだお」



( ´_ゝ`)「フーン。ドクオは?」



('A`)「俺もただ全力を尽くすだけだ」



( ´_ゝ`)「お前はどうせネトゲだろ」



一週間ぶりにドクオが登校してきたので、二人で流石のもとを訪ねた。

流石とは、教師と生徒という関係を忘れるほど仲が良かった。

こうして会話をするのもあと少しで終わりか・・・。そう思うと少し切なくなったが、卒業後も学校に遊びに来れば会える。

そう思えば、寂しさも少しは和らいだ。



('A`)「つーか流石、いい加減スタオ2返して。久々にレナたんに会いたい」



( ´_ゝ`)「ああ、借りたゲーム全部返すよ。お前今度いつ来るの?」



('A`)「アン?別にそんな急がなくても・・・」



( ´_ゝ`)「俺、転勤するんだよね」



(;^ω^)('A`)「!!!!」



( ´_ゝ`)「俺、新任でこの学校に来て、今三年目だろ?

     今度の春、違う学校に変わると思うんだ」



(;^ω^)「そうかお・・・・」



('A`)「まぁ、俺らもちょうど卒業だしな・・・ちょうどいいっつーか・・・」



( ´_ゝ`)「お前ら、元気でやれよ」



(;^ω^)「ちょwwwwwお別れの言葉はまだ早いおwwwwwwww」



('A`)「じゃー最後にお別れパーティーやんね?カラオケかどっかで」



( ^ω^)「それいいお!流石も来るお?」



( ´_ゝ`)「行けたら行く」



('A`)「決まりだな」



ブーンはふと、その日が楽しみだ、と言いかけた。パーティーは楽しみだが、別れが来るのは嫌だということに気が付いた。

これで、流石とも卒業後に気軽に会えなくなってしまった。

ブーンの気持ちとは反対に、卒業と別れへ対しての実感が日に日に強くなっていく。

皆は平気なのだろうか?卒業がくるということに。別れがくるということに。



( ^ω^)(もしかして、みんな考えてる余裕なんてないのかお?)



受験生は受験勉強のラストスパートに入っており、他のことを考える余裕などないだろう。

また、すでに推薦合格した者や、専門学校への進学を決めた者、就職が決まった者は、

卒業という”別れ”の後に、新しい出会いが待っている。

しかしブーンには、卒業後のビジョンがまだ描けていない状態だ。別れを惜しむ気持ちが強くなるのも無理はない。



(;^ω^)(・・・・悪い方に考えちゃだめだお!全力を尽くすお!!)



まだ結果が来ていない企業もある。最後まで望みを捨てずにいよう。

ブーンは改めてそう決心した。



2月は日数が少ないので、いつもより日が過ぎるのが早い。

私立大学と国立大学の受験も終わり、もうすぐ3月になる。

受験が終わったと言っても後期もあるので、まだ気が抜けない状態ではあるが。



この日、生徒会役員は久々の招集がかけられていた。



( ´_ゝ`)「来週はいよいよ卒業式です。

     例年通り、役員は卒業式の準備と後片付けをしなければなりません」



去年と同じ説明を受ける。

卒業式当日、役員はいつもより早く登校して式の準備をし、

式が終わった後は、クラスで帰りのホームルームが終わった後に体育館に集合して、椅子やテーブルなどを片付けなくてはならない。

他の委員会の生徒も手伝うことになっているので、さほど大変な作業ではないのだが、

一般の生徒よりも下校が遅くなるという点が、役員たちの不満を買っていた。

しかし普段あまり活動しない分、こういう場面でしか出番がないので、

文句を言わないことが、生徒会の暗黙の了解となっていた。



そして、様々な思いが揺れ動く月、3月がやってきた。

卒業式まで、時間はあっという間に流れた―。



(-_-)「ツン先輩、この花瓶はどこに置けばいいですか?」



ξ゚?゚)ξ「ああ、それは来賓席の横に・・・」



( ‘д‘)「ツンちゃん、こっち手伝ってー」



ξ;゚?゚)ξ「はーい」



前日から会場の準備に追われ、当日も時間ギリギリまで働いていた。

教室に戻るようにと指示を受けたのは、在校生が体育館に移動する5分前のことだった。

教室に戻ると、りかがツンを迎え入れた。



(^▽^)「ツンちゃんおつかれさまだねー」



ξ゚?゚)ξ「うん、本当に疲れちゃった。卒業式中に寝ちゃいそうw」



(^▽^)「卒業式なんてすぐ終わるから大丈夫!」



ξ゚?゚)ξ「そうだね」



( ´∀`)「おーい、体育館に移動するぞー」



(^▽^)「ツン行こー」



ξ゚?゚)ξ「うん」



休む間もなく体育館へと移動する。

もうすぐ卒業式が始まる、なんて緊張感もないままに。



体育館へ行くと、すでに卒業生の保護者たちの席は埋まっていた。

他の先生たちも体育館脇に一列に並んでいる。

在校生が自分の席につくと、「生徒たちは私語をやめてください」とアナウンスが入った。

体育館が静まり返ったところで、PTA会長などの来賓が入場し、開式のアナウンスが流れた。

「ただいまより、平成○○年度卒業証書授与式を行います」

「卒業生の入場です。在校生はご起立願います。在校生、及びご来場の方々は、拍手をして卒業生をお迎えください。

卒業生、入場!」



吹奏楽部の演奏と共に、卒業生たちが入場する。同時に、盛大な拍手が体育館を包んだ。

ツンはこの時改めて、今日が卒業式だということを認識した。

在校生たちは卒業生の方へ体を向けて、拍手をして卒業生を迎え入れる。

卒業生たちは少し照れながら、自分の席へと移動する。



ツンは顔を上げる事ができなかった。ずっとうつむいたまま拍手をしていた。

視界に入れたくないものがあったから・・・。



そして卒業生たちがそれぞれの席の前にスタンバイし終えると、

「卒業生、在校生、着席」

とうアナウンスが流れ、生徒たちは一斉に席についた。



放送委員の坦々としたアナウンスにより、式は順調に進行していく。

外は綺麗に晴れ渡っていたが、時折吹く北風が体育館の窓を揺らす。



会場内には大型のヒーターが設置されており、ぽかぽかと心地良い空気に加えて、

どこかの偉い人のスピーチが長くて、つい眠くなる。



ツンが軽くあくびをしたところで、式は卒業証書授与へとうつった。

「卒業証書授与。各クラスの代表は前へ出て下さい」

ツンはふと顔を上げた。3年2組の代表者の後姿に、妙に見覚えがあった。



ξ;゚?゚)ξ「あっ・・・・・・・・・」



壇上には、ジョルジュの姿があった。

まさかジョルジュがクラスの代表として卒業証書を受け取るなんて・・・。

確かにジョルジュは頭も良くて人気だった。性格も明るいから、代表に選ばれるのもうなずける。

しかしツンは壇上を見続けることができず、目線をそらした。別にジョルジュにはもう未練も何もないが、不意に視界に入るとやっぱり緊張する。

思わぬハプニングにびっくりしたが、嫌な気はしなかった。



式は順調に進んだ。涙をこらえながら答辞を読む卒業生の姿に、思わず目頭が熱くなったりもした。

生徒全員での校歌斉唱を終え、式は終わりを向かえた。



「卒業生退場。在校生、及びご来場の皆様は拍手で卒業生をお送りください」

再び、吹奏楽部の演奏が始まり、割れんばかりの拍手が会場に響き渡る。

その時、体育館の2階のギャラリーの方から紙ふぶきが舞い降りてきた。

できるだけ遠くに飛ばせるようにしているのだろう、演劇部で使用している大きな扇風機の風に紙ふぶきをのせて、

体育館中を色鮮やかに飾っていた。



そして、体育館の後ろの方には、いつの間にか応援団員が一列に整列していた。

団長「えー、卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます!!!」

団員「おめでとうございます!!!!」

団長「只今より、VIP高の伝統にのっとり、卒業生へエールを送ります!!!!!」



ドンドンドンドンドンドン・・・!!

和太鼓の音が響き渡る。



団長「全員、かまえっ!!」

ドンドン!

団長「いくぞー――――――――っっっ!!!!」

団員「オス!!!!!」



団長「はいオメデト!」

団員「オメデト!!」

団長「オメデト!」

団員「オメデト!!」



団長「今夜の主役は卒業生♪別れがくるのは寂しいけれど♪門出を祝福致します♪

    ハイ!!」

団員「のーんでのーんでのんで♪のーんでのーんでのんで♪のーんでのーんでのんで♪のーんでのーんでのんで♪」

団長「お酒ははたちを過ぎてからああああああああああ!!!!!!!」

団員「オメデト!

   オメデト!

   オメデト!

   オメデト!」



これは、数年前から始めた応援団によるホスト応援で、主に体育祭と文化祭で披露されていたが、

職員会議で許可が下りると、運動部の壮行式や入学式などでもこのような応援の掛け声をすることを許されていた。

今年の卒業生は偏差値が高く、就職率も去年より高かった為、卒業式という厳粛な場でのホスト応援を許されたのだろう。



会場内に笑いが響き渡る。ホスト応援の掛け声の中、卒業生たちも笑いながら退場していく。

舞い落ちる紙ふぶきが、よりいっそうにぎやかに演出していた。



(^▽^)「まさか卒業式でホストやるとはねw」



ξ゚?゚)ξ「そうだねw去年みたく普通の掛け声かと思ってたw」



りかと笑い合いながら、ふと目線を上に向けると、その先にはブーンとドクオの姿があった。



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・・・あっ」



体が硬直し、視線が釘付けになる。

二人は紙ふぶきを体に浴びながら、何か話をしながら歩いている。

ツンはその様子を目で追った。

冗談を言い合いながら楽しそうに歩いていく二人の姿が、やけに眩しく見えた。



これで彼らは卒業。もうこの学校には来ない。

彼らとの関係を絶ってしまった今、今後会う機会も来ないだろう。



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・」



なんとも言えないむなしさがツンの胸に残った。



( ^ω^)「うはwwwwww卒業式テラネムタスだったお」



('A`)「おい、頭に紙ふぶきついてるぞ」



( ^ω^)「そういうドクオもいっぱいついてるお」



体育館の外に退場した卒業生たちは、興奮冷めやらぬ様子だ。

泣いている女生徒をなぐさめていたり、お互いについた紙ふぶきを払ったり、楽しく語らったりしていた。



( ´_ゝ`)「はいー卒業生は一旦教室に戻ってー」



流石が生徒たちを教室に戻るように促す。

生徒たちはぞろぞろと、教室に向かって歩き出した。



('A`)「流石ー今日来るよなー?」



( ´_ゝ`)「ちょっと遅くなるけど行こうと思う。何人くらい集まるんだ?」



( ^ω^)「多分10人くらいだお。場所はシダッ糞だお」



( ´_ゝ`)「フーン。まぁ行く前にメールするわ。つーか早く教室行け」



('A`)「ういー」



二人は他の生徒たちに混ざって教室に向かった。



('A`)「おい、カラオケって2時半集合だったよな?」



( ^ω^)「そうだお」



('A`)「俺、時間まで学校に残ってたいんだけど」



( ^ω^)「?」



('A`)「なんつーか、名残惜しいじゃん。ちょっと物思いにふけらせてくれ」



( ^ω^)「わかったお。俺も付き合うお」



('A`)「つーかお前もやり残した事あんじゃん」



(;^ω^)「?」



('A`)「ちゃんと渡せんのか?」



( ^ω^)「・・・・・・頑張るお」



('A`)「間違っても俺を敗戦処理道具にすんなよ」



( ^ω^)「うんお」



二人は騒がしい教室に戻った。ブーンは自分の席につき、黒板の上の時計を見た。



( ^ω^)「まだお昼前かお・・・」



きっと生徒会役員は卒業式の後片付けをするに違いない。

でも、他の委員の生徒も手伝ったりするから、いつも通りなら1時くらいで終わるはず。

ドクオと校内を回って思い出話をし終わる頃にはちょうど良く落ち合えるはずだ。



(;^ω^)「ふおおおお・・・・・」



なんだかとても緊張する。掌に汗がにじんでいる。

うまく言葉が出てくるだろうか。うまく目を見て話すことができるだろうか。



( ´_ゝ`)「お前ら席につけー」



流石が教室に入ってきた。生徒たちは自分の席についた。

この後流石は、数日後に控えている大学の合格発表の日程と合否報告の説明をした。

ブーンは時計をちらちらと見ながら、落ち着かない様子で流石の話を聞いていた。



( ´_ゝ`)「このメンバーでこの教室に集まるのは今日で最後です。

     社会に出る人も進学する人も引き篭もりになる人もそれなりに頑張って下さい。

     では終わり」



女子生徒1「先生!これ・・・・」



流石の話が終わった後、女子生徒数名が流石のもとへ歩み寄った。



女子生徒2「今までお世話になりました!」



( ´_ゝ`)「おお・・・・」



その生徒たちは、大きな花束を流石に手渡した。



女子生徒3「みんなでお金出し合って買ったんです」



男子生徒1「せんせー花束似合ってるよー」



男子生徒2「あはははは!!」



( ´_ゝ`)「お前らからかってねーか?まぁいいや、ありがとう」



流石の周りを、複数の生徒たちが取り囲む。

一緒に写真を撮るものもいれば、手帳にメッセージを書き込んでもらう者もいた。



('A`)「おいブーン、今のうちに行こうぜ」



( ^ω^)「うんお」



本当はこの後卒業生が学校を出るのを在校生が送り出すことになっている。

そこで、1・2年生は第2ボタンをもらいに行ったり、憧れの先輩と写真を撮ったりするのが毎年恒例となっていた。

二人はそれに参加せず、こっそりと学校に残ることにしたのだ。



('A`)「俺、写真とか好きじゃないんだよね。

    それに第2ボタンだって、なんで見ず知らずの後輩にあげなきゃならんの?」



(;^ω^)(勝手に、モテる先輩の設定にひたってるお・・・)



二人は屋上に向かった。冷たくはあるが、すがすがしい風が吹いている。

昨日まで雪が降っていた為、屋上は雪で埋もれていた。

ズボンの裾を軽く持ち上げながら雪の上を歩き、フェンスごしに下を覗いた。

玄関の外で、生徒たちがはしゃいでいる。



('A`)「ふっ・・・若いな・・・」



( ^ω^)「・・・・・・3年間、あっという間だったお」



('A`)「結局お前とは3年間同じクラスだったな」



( ^ω^)「そうだお。腐れ縁だお」



二人は屋上で思い出話に花を咲かせた。

こうして学校で語らうのも今日が最後、なんて考えが頭をよぎり胸がしめつけられるように切なくなったが、

ドクオとの付き合いは今後も大切にしていきたいと、改めて思った。



校内を回り、購買の自販機でジュースを買って一休みをしているところで、時計は1時を過ぎていた。



( ^ω^)「きっとそろそろ片付けが終わって帰る頃だお」



('A`)「おう。俺ここで待ってるから行ってこい。

   2時までにケリつけてこいよ」



( ^ω^)「わかったお」



ブーンは体育館へと向かった。体育館の引き戸をそーっと開けると、中には数名の生徒がいた。



( ^ω^)「あれ?いないお・・・・」



もしかしてもう帰ってしまったのか?

少し不安になりつつ体育館を後いしようと振り返ると、生徒会役員が歩いているのを見つけた。



( ^ω^)「あ、ちょっと・・・」



( ‘д‘)「あ、内藤先輩。まだ帰ってなかったんですか?」



( ^ω^)「あいちゃん、ツンがどこにいるか知らないかお?」



( ‘д‘)「あー・・・片付けが終わった後、すぐに帰りましたよ」



(;^ω^)「もう後片付けは終わってるのかお?」



( ‘д‘)「はい、15分くらい前かな・・・。今年は終わるの早かったから」



( ^ω^)「分かったお。ありがとうだお」



ブーンは急いで玄関へと向かった。そしてツンの下駄箱の中にツンの靴があるのを確認すると、再び校内へ戻った。



( ^ω^)(ツンはまだ学校にいるお・・・どこだお)



2年1組の教室に向かったブーンは、ツンの机を探した。

ひとつだけ、荷物が置きっぱなしになっている机があった。そこにはツンのバッグがあった。



( ^ω^)「・・・・ツンのバッグがあるってことは、まだ教室に戻ってないってことかお?」



教室にいないとすれば、生徒会室だろうか。

正直、生徒会室くらいしかツンが行きそうな所は心当たりがない・・・。

ブーンは生徒会室に向かい、ドアに手をかけた。



(;^ω^)「あれっ」



ドアには鍵がかかっていた。



(;^ω^)「ここにもいないお・・・?」



生徒会室にいないとすれば、ツンはどこにいるのだろうか。

ブーンは校内を隅から隅まで探した。

どこにもいない。どこにもツンの姿がない。



(;^ω^)「ツン、どこにいるお・・・」



校内の全ての教室を探し終わった頃には、もうすぐ2時になろうとしていた。



(;^ω^)「まずいお!ドクオにおいてかれちゃうお!」



ブーンは急いで購買へ向かった。

購買の前にあるベンチで、ドクオは「モノの旅」を読んでいた。



('A`)「おー、どうだった?」



(;^ω^)「ツンがどこにもいないんだお・・・・」



('A`)「は?電話しても出ないのか?」



(;^ω^)「電話!!!!!・・・・・・・・その手があったお・・・・」



('A`)「あんたばかぁ?つーかツンの教室で待ってりゃ良かったじゃん」



(;^ω^)「・・・・気付かなかったお」



('A`)「お前少しは落ち着けよ。

   んで、どうすんだよ?そろそろ出発すんぞ」



(;^ω^)「・・・・分かったお、仕方ないお・・・・」



('A`)「やれやれ。行くぞ」



ブーンは何か紙にメモをした後、ドクオと二人、購買を後にした。



ξ;-?-)ξ「あー疲れた・・・」



職員室からツンが姿を現した。

体育館の片づけが終わった後すぐに帰ろうと思ったのだが、運悪く家庭科の女教師につかまってしまい、

卒業式の来賓の控え室の後片付けと、湯のみ茶碗などの食器洗いを、職員室内の給湯室でさせられていた。



ξ;-?-)ξ「早く帰るつもりだったのに・・・」



女教師は、「これ、お礼ね」と言ってチョコレートを手渡してくれた。

そのチョコレートをほおばり、廊下をとぼとぼと歩いた。

2階にあがり、静まり返った教室のドアを開けた。他の生徒は帰ってしまったようだ。



ξ゚?゚)ξ「帰ったら何しようかな・・・・・」



今日はバイトもない。遊ぶ予定も入っていないので、何もすることがない。



ξ-?-)ξ(去年は卒業式の後、ブーンと一緒にドクオの家に遊びに行ったっけ・・・)



3人で楽しく過ごした去年と、今教室で一人でいることのギャップに、孤独感が一層強まった。

自分がみじめでたまらなくなった。



本当はブーンが卒業する前に仲直りしたかった。でも、自分からはなかなか連絡しづらかった。

ブーンから連絡がくることもなかったので、余計に疎遠になってしまった。



もしかして、ブーンは仲直りしなくてもいいと思ってるんじゃないかな。

自分勝手で、言葉遣いが悪くて、ネガティブな自分とは、友達でいる必要はないと思ってるに違いない。

だから、メールの1通もくれないんだ。



ツンの瞳に涙がにじむ。

・・・だめだ、泣くな。自分が撒いた種じゃないか。自業自得なんだ。

ツンは涙をぐっとこらえ、自分の机へ向かった。

何もする事がないけど、とりあえず家に帰ろう。



ξ゚?゚)ξ「・・・・あれ?」



自分の机の上に、見覚えのない紙袋が置いてあるのに気が付いた。



ξ゚?゚)ξ「・・・・この紙袋、射精堂の・・・・」



心臓の鼓動が早くなっていく。恐る恐る紙袋をあけてみると、

中には可愛らしいパッケージの化粧品が入っていた。



ξ゚?゚)ξ「これ・・・・雑誌に載ってた・・・」



それは3月末に発売になる予定の、10代向けの新ブランドのボディケア用品だった。

紙袋の中には、リップクリーム、ボディミルク、ハンドクリームなどが入っていた。

ツンがいつも買っているファッション誌に、この化粧品の特集が載っていた。

可愛らしいパッケージに惹かれ、とても気になっていたのだ。



ξ゚?゚)ξ「これ、まだ発売前なのに・・・・」



ふと、紙袋の底にメモが入っているのに気付いた。

ツンはそのメモを手に取った。



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・!!!」



そこには、見覚えのある字で自分当宛てのメッセージが書かれていた。



『ツンへ

 

 これからも 頑張って



 ハンドクリーム は 手がきれいになりました



                         ブーン』



ξ;゚?゚)ξ「ブーン・・・・」

 

いつも「ミミズみたい」と、笑ってからかっていた字。

お世辞にも上手とは言えない字なのに、急いで書いた為かいつもより余計に下手くそな上に、文もなんだかおかしい。



ツンは、以前ブーンとした会話を思い出した。



ξ;-?-)ξ『バイトで手が荒れてさー』

( ^ω^)『ふーん』



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・覚えてたの・・・?」



ブーンに、ブーンに会わないと。

でも、きっともう帰ったに違いない・・・。どうしよう・・・・。

そうだ!電話しよう!



ツンは急いでバッグから携帯を取り出す。画面を見ると、メールが1通届いていた。

そのメールは、ブーンからのものだった。



『from:ブーン

件名:

本文:プレゼント置いておきました。

    良ければ使って下さい。    』



ξ;゚?゚)ξ「ブーン・・・!」



受信時間を見ると、14:05になっていた。

ツンの携帯の時計は、14:10と表示されていた。



ξ;゚?゚)ξ「ついさっきまで、ここにいたの・・・?」



ブーンはきっとまだ学校の近くにいる。もしかしたら近くを歩いているかもしれない。

ツンは窓から外を見た。



ξ゚?゚)ξ「・・・・・・・・あっ、いた!」



そこには、ブーンがドクオと肩を並べて歩いている姿があった。

どうしよう、今から追いかけようか?いや、きっと間に合わない。

追いかけている間にバスにでも乗ってしまったら、今日はもう会う事ができない・・・。

いや、今日どころか、もうずっと会えなくなるかも・・・・・。



ツンは急いで窓を開け、思いっきり叫んだ。



ξ;゚?゚)ξ「内藤ー――――――――――――――――――――っっっっ!!!!!!!!!!!!!!」



その声に、ブーンたちの足が止まった。



( ^ω^)「ツン!?」



ブーンが見上げると、2階の2年1組の教室の窓から、ツンが身を乗り出してこちらを見ているのが見えた。

ちょうど逆光でうまく目を開けることができなかったが、それは間違いなくツンだった。



( ^ω^)「ツン!!!!!!」



ツンの姿を確認すると、ブーンもツンの名前を叫んだ。



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・・」



どうしよう、つい勢いで呼んでみたものの、何を話せばいいか、何から話せばいいのか全く考えていなかった。

こちらを見上げているブーンの姿を見て、ツンの体が固まる。



ξ;゚?゚)ξ「あ、あの・・・・・えーと・・・・・」



( ^ω^)「ツン!!!!!」



ツンが言葉につまっているところに、ブーンがまた叫んだ。



( ^ω^)「今からカラオケ行くお!ツンも来るお!!」



ξ;゚?゚)ξ「えっ!?」



思いもよらない言葉が返ってきた。



ツンが返事に戸惑っていると、ドクオが叫んだ。



('A`)「ツン来いよ!一緒にまやや歌おうぜ!!」



ξ*゚?゚)ξ「・・・・・・・・・・うん!!!!!」



ツンは急いで窓をしめ、荷物を持って一目散に階段を駆け下りた。



慌ててうわばきを履き替え、外に出ると、正門の所にブーンとドクオが立っていた。



ξ;゚?゚)ξ「・・・・・・・」



ツンはここで、自分が一緒に言っていいのか迷った。

何も考えずにここまで走ってきたが、急に二人の間に自分が入り込んでいいものか。

今まで疎遠だったのに、こんなに都合よく仲間に加わってもいいのか・・・。

そう考え、再び体が硬直するのを感じた。



('A`)「おーいツン!早く行くぞー」



( ^ω^)「コンビニでジュース買ってくおー!早く来ないと買ってあげないおー!」



二人がツンに声を掛ける。二人は、以前と変わらぬ表情でツンを見ていた。

こんな私を、今まで通り受け入れてくれるの・・・・?



ξ;?;)ξ「・・・・・・・・・・・うんっ!!!」



ツンは二人のもとへ駆け寄った。

ドクオが、なーに泣いてるんだよ、と言ってツンの頭をなでる。

ブーンは笑顔で、卒業式の粗品だけど・・・と言ってツンにハンカチを差し出す。

ツンはそのハンカチで涙を拭き、もう大丈夫、と言った。



3人は歩き出した。

ツンをはさんで、両脇にブーンとドクオ。

以前と同じように肩を並べて歩く3人の姿が、そこにあった。



(;^ω^)「結局、就職決まらなかったおwwwwwwwwww」



卒業式から数日後、まだ結果通知がきていなかった企業から、不採用のしらせが届いた。

これでブーンは就職浪人となってしまった。



( ^ω^)「仕方ないお・・・パートでもいいから働くお」



そう思って求人情報を調べていたところへ、一本の電話がかかってきた。



ピピルピルピピ?♪



ピッ

( ^ω^)「もしもしだおー」



(゚Д゚)「あー、内藤ー?俺俺ー」



( ^ω^)「ギコさんかお?」



ギコとは、ブーンがスーパーでバイトをしていた時に知り合った、微糖園という飲料メーカーの営業の人だ。

年は離れていたが、好きなアーティストが一緒で、音楽の話をするうちに親しくなった。



(゚Д゚)「お前どこに就職決まったの?」



(;^ω^)「実はまだ決まってないお・・・」



(゚Д゚)「うっそ?じゃあうちでバイトしね?」



( ^ω^)「いいのかお?」



(゚Д゚)「ああ。でも土日と祝日だけなんだけど」



( ^ω^)「それでもいいお」



(゚Д゚)「マジで?助かるわー。休日だけのバイトしてくれる奴、なかなかいなくてよー」



( ^ω^)「いつから始まるのかお?」



(゚Д゚)「とりあえず来週の土曜の朝8時にお前んちに迎えに行くわ。

    契約書用意しとくから、印鑑持ってきて」



( ^ω^)「分かったお。よろしくだお」



(゚Д゚)「こちらこそよろしく。じゃー」



( ^ω^)「ばいぶー」



ピッ



(*^ω^)「とりあえずバイト決まったお。

       土日と祝日だけだけどまぁいいお」



こうして、ブーンの半ニート生活が幕を開けた。



翌週の土曜の朝、ギコがブーンを迎えに来た。

ブーンはギコの車に乗り、微糖園の営業所へと向かった。

そこで契約書に捺印し、早速バイトを始めることになった。



ブーンのバイトは、主に管轄内の自販機の補充や、スーパーでの販促・売場作りなどであった。

以前スーパーでバイトをしていたこともあり、体力勝負の仕事には慣れていた。



(゚Д゚)「お前、思ったよりも要領いいんだな」



( ^ω^)「そうかお?」



(゚Д゚)「ああ。なかなかよく気が付くし。

    お前みたいのが社員になってくれりゃ助かるんだけどな」



(*^ω^)「フッフ?ン♪」



本来なら、ここで”社員になりたい”と申し出るところだが、この時のブーンの頭には、

そんな言葉は浮んでいなかった。

まだ就職したくないという深層心理の表れか、はたまたただの天然なのか・・・。

それはブーン自身もわかっていない。



ギコのおかげで土日はバイトがあったが、平日は暇だった。

特にする事もないので、一日中家にいて家事を手伝ったりしていた。

ドクオとは割と頻繁にメールのやりとりをしていた。

ある日、ドクオから、”ホーソンの深夜のバイトが決まった”とメールが来た。



( ^ω^)「ドクオがニートにならなくて良かったお」



自分のことよりもドクオのことの方が気がかりだっただけに、その報告は何よりも嬉しいものだった。



平日は引き篭もり・土日はバイト、という妙なバランスの生活をしていたある日、

ドクオの誘いで久々にドクオ宅で遊ぶ事になった。



ピンポーン



ガチャッ

( ^ω^)「お邪魔するおー」



ブーンはドクオ宅のインターホンを押した後、慣れた様子で家の中に入り、

階段を上って2階にあるドクオの部屋のドアをノックした。



コンコン

( ^ω^)「きたおー」



('A`)「おー 入れー」



( ^ω^)「すぐそこの公園の桜が咲き始めてたお」



('A`)「もうそんな季節か。夜以外外に出ないから気付かなかった。

   つーか夜勤明けでねみい」



ドクオはけだるそうな表情でゲームをしていた。

ブーンは荷物をドアの近くのハンガーにかけ、ソファに腰掛けた。

テーブルの上にコップが2つ用意されていたので、ジュースを注いでドクオに差し出した。



( ^ω^)「バイトは慣れたかお?」



('A`)「ああ。もう入って3週間くらい経つからな」



暦は既に4月下旬になっていた。

この街の桜の見頃は、毎年4月下旬からGWかけてで、GWともなると近隣の町村から花見に来る人が多かった。



( ^ω^)「またみんなでお花見に行くお。

      去年のお花見は楽しかったお」



去年の5月の初め頃、ブーンとドクオは、ツンのバイト先を急に訪ねた。

そしてツンがバイトが終わった後に、公園に夜桜を見に行った。

お酒こそ飲まなかったが、ツンのお手製のチョコレートパフェ(といっても急いで作ってきたので

コーンフレークの上にアイスクリームと生クリーム、チョコレートソースがのっているだけだったが)と、

ツンのバイト先のファミレスの厨房のスタッフのはからいでもらってきた唐揚げ、焼きそば、そしてパスタの盛り合わせで、大いに盛り上がった。

3人という少人数ではあったが、気の知れた仲間同士、楽しく過ごす事が出来た。



('A`)「・・・ま、ツンが酔っ払いにからまれて大変だったけどな」



(;^ω^)「・・・・そんなこともあったお」



ツンと出かけると、何かしらハプニングがある。

男の中に女の子が一人だから、目立ってしまうのだろう。



('A`)「そういやツンといえばさー、こないだ電話かかってきたぞ」



( ^ω^)「?なんでだお?」



('A`)「シラネ。

   なんか夜9時半くらいにかかってきて、”あんた今何やってんの?ニート?”って。

   俺が”ホーソンで夜勤してる”っつったら、”バイト決まって良かったねー”とか言ってた。

   あとはもう取り留めのない話をしてた」



( ^ω^)「そうかお」



('A`)「やっべ、きたんじゃね?コレ」



( ^ω^)「?」



('A`)「ツン、俺のこと好きなんじゃね?」



( ^ω^)「wwwwwwwwwwwww」



('A`)「困っちゃうよー、俺には咲代がいるのにー」



( ^ω^)「良かったおwww同じツインテールだおwwwwwwwww」



('A`)「萌えるぜ」



ドクオの冗談にのって盛り上がっているところで、ブーンはふと気付いた。



(;^ω^)(そういえばツンとは電話どころかメールすらしてないお・・・)



卒業式の日にカラオケで盛り上がった後、

何通かメールのやりとりをしただけで、ツンとは連絡を取り合っていなかった。

なぜツンはドクオにだけ連絡を取ったのだろうか・・・?



( ^ω^)(ツンは気まぐれなコだお。

      きっと理由は”ただなんとなく”だお)



そうは思い聞かせたものの、何かがひっかかるのを感じた。

ブーンはその思いを振り払うように、コーラを飲み干した。



ブーンの表情が晴れない様子を、ドクオは見逃さなかった。



('A`)(やっべ、ちょっと調子に乗りすぎたかな)



ドクオは、体をテレビに向けたままブーンの方をチラリと見た。

コーラを無理に飲み干して少しむせた後、ブーンは何事もなかったかのように本棚から漫画本を選んでいた。



('A`)(・・・・・・・・・・まいっか。知ったこっちゃねー。

    つーか三次元なんて萌えねーよ。)



ドクオは再び体をテレビに向けた。



桜は見事に咲き誇り、綺麗な花びらを風にのせて、街中に春を運んでいた。

スイセンやチューリップといった色とりどりの花が街を鮮やかに彩り、春のやわらかな日差しが人々を明るく照らす。



5月に入ったばかりのある日の午後、家でテレビを見ていたブーンの携帯が鳴った。



( ^ω^)「・・・・・・・・ツンからだお!!!!」



携帯の画面には、『着信中:ツン』と表示されていた。

つい先日、ドクオとの会話に出てきたツンからの久し振りの電話だ。

まともに連絡をとるのは、実に1ヶ月半ぶりである。

ブーンはおそるおそる通話ボタンを押した。



( ^ω^)「・・・もしもしだお」



ξ゚?゚)ξ「あ、ブーン?私ー。久し振りだねー」



( ^ω^)「おひさだお」



以前と変わらないツンの声に、ブーンは心が落ち着くのを感じた。



ξ゚?゚)ξ「ところであんた、5月×日、暇?」



(*^ω^)(デートのお誘いktkr!!!!!!!!!!!!!)



ブーンの体温が一気に上昇していく。心臓の鼓動も急激に早くなった。



(*^ω^)「ひっ、暇だお!!!!!!!!」



ξ゚?゚)ξ「私、チェミストリーの千台公演のペアチケット持ってるんだけど」



チェミストリーといえば、ブーンの好きなアーティストで、よくツンにもアルバムを貸したりしていた。

雑誌に載っていれば必ずチェックしたし、よくツンと一緒に本屋へチェミストリーのインタビューが掲載されている雑誌を買いに行ったものだ。

そのチェミストリーのコンサートに、ツンと行ける。しかもツンからのお誘いで。



(*^ω^)「チェミ大好きだお!!!!!」



ξ゚?゚)ξ「チケット、買ってくんない?」



(;^ω^)「・・・・・・・・・は?」



意味が分からない。一緒に行こう、という誘いではないのか?



ξ゚?゚)ξ「知り合いにチェミファンがいて、×日のチケット取ったけど、都合悪くて行けないらしくて。

      チケット買わないかって言われて買ったはいいものの、一緒に行く人いないし・・・・。

      だからもし良ければ、ブーンが行かないかなーと思って・・・・」



(;^ω^)「俺も一緒に行く人いないお・・・」



ξ゚?゚)ξ「ドクオと行けばいいじゃない!」



( ^ω^)「ドクオは夜勤のバイトがあるお」



ξ゚?゚)ξ「休み取れないの?」



( ^ω^)「人手が足りなくて、契約休以外は絶対休めないらしいお」



ξ;゚?゚)ξ「そうなの・・・?

       あーどうしよう。ヤプオクで売ろうかな・・・・」



( ^ω^)「今から売っても遅いと思うお」



ξ;゚?゚)ξ「そうだよね・・・。どうしよっかな・・・」



( ^ω^)「ツンも一緒に行くなら買うお」



ξ;゚?゚)ξ「えっ?」



( ^ω^)「2枚買っても俺も一緒に行く人いないし・・・・

     ツンが行くなら俺も行くお」



ξ;-?-)ξ「えー、あんたと千台ー?あんた千台行った事あんの?

       言っとくけど私、地下鉄とか乗ったことないよ」



( ^ω^)「何回かあるお。電車も地下鉄も任せるお」



ξ゚?゚)ξ「どうしよっかな・・・・・・バイト休めないかもしれないし・・・・」



( ^ω^)「店長に休み取れるか聞いてみてくれお。それで休み取れたら一緒に行くお」



ξ゚?゚)ξ「うん・・・・・そうだね。わかった。聞いてみる」



( ^ω^)「取る時は二日取るお。千台へは日帰りで行けなくもないけど、

     コンサート終わってから最終の新幹線で帰るのは、結構疲れると思うお」



ξ゚?゚)ξ「わかった、二日ね。取れるか分かんないけど、聞いてみるよ」



( ^ω^)「ktkr」



ξ゚?゚)ξ「あー、バス来た。それじゃーね。休みの事決まったらまた電話する」



( ^ω^)「わかったお。ばいぶー」



ピッ



(*^ω^)「ツンと旅行ktkr!!!!!!!!」



ブーンは思わずガッツポーズをした。



( ^ω^)「・・・・・・でも嘘ついちゃったお」



実は、ドクオがバイトを絶対休めないというのは、口から出たデタラメだった。

ツンと旅行に行きたいが為に、ブーンは嘘をついたのだ。

でもまさか、こんなにうまくいくなんて。自分には詐欺師の才能があるのかもしれない。



( ^ω^)「それにしてもチェミのチケット買わされるなんて、ツンはお人よしだお」



ツンは男性には冷たい態度を取るが、女性に対しては(特に年上の女性には)逆らう事ができない性分だった。

今回も、大方、バイト先のスタッフにチケットを買ってくれと頼まれ、断りきれずに買ってしまったに違いない。

ブーンはそう予想した。



( ^ω^)「ツンは損な性格だお」



男性に対しても、ただ冷たい態度を取り続けるわけではない。

冷たい態度を取った後は、何気ない優しさを見せる。きっと、ツンなりの罪悪感があるのだろう。

その結果、無意識のうちに飴と鞭の行為を男性にしている時があるのだ。

それに勘違いをしたクラスメートに熱烈なアタックをされたことがある、とツンが言っていたのを思い出した。



何はともあれ、ツンと旅行に行けるかもしれない。

不測の事態ではあったが、なんだか上手く転がりそうな気がする。



(*^ω^)「楽しみだお」



ブーンは、心が今だかつてないほど軽やかなのを感じた。



つづく







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