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仲間内でみんながみんな片思いしあってた思い出話









ネカフェでハチクロを初めて読んで(今更w)、自分の学生時代を思い出した。

少し昔を振り返りたくなったので、良ければ付き合ってくれw

スレ立て初めてやし、語るも初めてやから、見苦しいところあっても多目に見てちょw

あと覚えてないとこは多少話を盛るんで、そこらへんもよろしく。



私(以下、アキ)が雪と出会ったのは高2になりたての春。

クラス替えの直後で、教室の中はざわざわと浮き足立ってた。

そして私が初めて自分の席に着いた時、前に座っていた女の子が、

グルンッと体を反転して声をかけてきた。

「一年の時隣のクラスだったよね!?私のこと解る!?」

笑うと八重歯が覗く可愛らしい女の子。

見覚えはなかったw

馴れ馴れしいな…と思いながらも、気使い屋な私が「顔は見たことあるかも」と答えると、

その女の子はパァッと明るい笑顔になった。

「私、雪(ゆき)!○○雪!!」

よろしく!と言わんばかりに、意気揚々と自己紹介を始めた雪。

私は呆気にとられて、ただウンウン頷くだけだったw

最終的に「次の移動、一緒に行ってくれる?」と、

豆柴のような瞳で迫ってきて、「もちろん」と答える押しに弱い私w 



雪は小柄で華奢で色素が薄くて、女の子のテンプレみたいな子だった。

ほにゃーんとした笑顔から覗く八重歯が、雪をより魅力的に見せた。

事実、雪は男子から「可愛い」と人気があった。

でも雪は意外にも人見知りで、私以外の人間とは積極的に話そうとしてなかった。

だから大人しく見られがち、というか、実際真面目で物静かな女の子だった。

なんで私にはあんなに積極的だったん?と聞くと、

「アキが優しいこと、私前から知ってたから!仲良くなりたかった!」と返ってきた。

まぁその話は追々。



こんな女の子らしい雪とは対照的に、

私は目つきが悪くてヤンキーに見られがちなjkだった。

人並みに校則破る程度の、普っ通ーの女子高生なのに!失礼な話だ。

自分で言うけどw、

私ってキツイ見た目とは裏腹に、情に熱い気配り屋さんなんだw

そんな私を解ってくれてる男が一人いた。

中3からツルんでる、夏(なつ)だ。

地元が同じで、中3で同じクラスになって以来、ビックリする程打ち解けた。

元々クラスのお祭り男で、誰とでも仲良く話せる夏。

馴れ馴れしい夏に合わせて話してたら、

なんだか無性に気が合うことに気付いて、毎日が楽しくなった。

私が背伸びすると、身長追い越しちゃいそうなくらい、男子にしては小柄な夏。

声変わりはしてたけど、リスみたいな頬袋を持ってる夏は、いつまでも少しだけ幼く見えたw

私は、そんな夏のことがずっと好きだった。



同じ高校に通えてるのだって、私が好きな人を追っかけたからだ。

告白したいと思ったことは何度もあったけど、

夏には何度か彼女がいたし、気まずい関係になるのが何より一番怖かった。

だからずっと友達の顔をして、夏と一番仲のいい女子を演じてた。

あまりの仲の良さに何度も噂になったけど、

そのたびに夏が気持ちいいくらい否定してた。

噂になって内心喜んでる私は、その瞬間いつも胸を痛めてたんだ。



新しいクラスに慣れてきた頃、雪と廊下を歩いていて、夏とバッタリ出くわした。

「おー」って何気なく声掛けながらも、ラッキーって内心ガッツポーズの私。

でも、夏の視線は私の隣、雪に止まってた。

なんだかね、一瞬で解った

「あ、やばいかも」って。

案の定夏は「誰?新しい友達?」って、雪に興味を示し始めた。

「うん、雪。雪、こっちは同中の夏」淡々と説明したけど、心はぶるぶると震えてた。

そんな私を知る由もない夏は、目を輝かせて夏に挨拶してた。

人懐っこい夏の笑顔に、雪も笑顔で返してた。



「あ、こいつハル!同じクラスの奴」

夏が後ろを振り返り、背の高い男の腕をつかんだ。

夏にしか目がいってなかったから、連れがいたなんて気付かなかった。

背がやけに高くて、手足も長くて、全体がヌボーっとした印象の男。

でも私はこの男をうっすら知っていた。

一年の時、この男を好きだと言う女の子と友達だったから。

そういやそんな名前だったっけ?程度の認識だったけどw

ハルと呼ばれる男は、私と夏をヌボーっと見て、小さくペコッと頭を下げた。

中身もヌボーっとしてんのか、って私が呆れ気味にハルを見てるとき、

それとは違う視線をハルに向けてる人間がいた事には気付かなかった。

「どーもー」って当たり障りなくハルに返して、その日は夏達と別れた。



それから雪のソワソワした振る舞いが始まった。

移動教室や休み時間、しきりにキョロキョロとする雪。

教室にいても、窓の向こうに何かを見つけた途端、雪の意識はそちらに向かう。

そして毎日どこか楽しそう。

いよいよ本腰入れて「どうしたの?」って聞くと、

「…ハル君って、いいよね…」とはにかむ雪。

ややこしいことになった、と思った。



夏の気持ちを確認してはないけれど、

夏が雪を好意的な目で見ているのは気付いていた。

そして私はそんな夏が好き。

でも雪は、夏の隣のハルを見ている。

ややこしいことに気付いてしまった。

それからと言うもの、私は毎日溜め息ばかりついていた。



そして、私の溜め息を更に重たくするメールが届いた。

「雪ちゃんって彼氏おんの?」

これで今までうっすら気付いた程度の夏の気持ちが、確信に変わった。



よりによって私の親友を好きになるなんて、と夏に苛立ちさえ覚えた。

私はこんなに夏のことが好きなのに、私を通り越して雪を見つめるなんて。

でも、しょうがない、と諦めるほかなかった。

それ程に雪という女の子は可愛かったから。

私には永久に越えられない壁だった。



でも私は、雪の気持ちを知っていた。

雪はハルが好きなんだ。

夏を通り越して、ハルを熱い視線で見つめてる。

私の中の黒い感情が、言葉となって出た。

「雪、私応援するから、頑張ってハルを落としてね!」

ありがとうと喜ぶ雪。

雪を思って目を輝かせる夏。

私は二人の笑顔を思い浮かべながら、毎日どんより重たい気分を味わっていた。



新しい恋に目を輝かせる夏と雪は、しきりに四人で居たがった。

週の半分は四人でお弁当を食べ、休日には四人で外出。

心底楽しそうに青春を謳歌する二人に、私は作り笑顔しか返せなかった。



夏休みになると、四人で海に行こうと夏が提案してきた。

夏からの電話に浮き足立っていた私は、一瞬で地面に叩きつけられた。

「雪ちゃんの水着たっのしみー!」と受話器の向こうでハシャぐ馬鹿野郎に

「はよシコって寝ろ」と言っちゃった事を、今でも私は悔やんでいる。



そしてその日は来た。

私と夏は地元が一緒だから、待ち合わせ場所まで二人きりだった。

嬉しかった。

まるでデートだと思った。

夏が私を家まで迎えに来て、笑顔で隣を歩いてくれる。

ハル達との待ち合わせなんて、なくなればいいのに。

でも無情にも、夏は雪の話ばかりしてるし、待ち合わせ場所にも着いてしまう。

自分のテンションが上下し過ぎて○ぬかと思っていた。



待ち合わせ場所にいる雪は眩しかった。

今でも覚えてる。

白いミニワンピースに負けない白い肌。

いつもは二つにくくられてる長い髪は、ヘアアイロンで綺麗で真っ直ぐな髪に。

誰もが振り向く可愛い可愛い女の子が、そこにはいた。

それに比べて私なんか、一生懸命お洒落したつもりでも、なんだかヤンキー臭さが抜けない。

むしろギャルみたいになっちゃってたりして…。

夏はそんな雪を見てテンション上がっちゃって、私にコッソリ耳打ちしてきた。

「アキアキ、俺、夏休み中に雪ちゃんの彼氏になるけぇ!」

日差しがギラギラしてて暑いのに、視界は真っ暗で冷や汗をかいた。



電車の中でも、夏はお祭り騒ぎで、雪はケラケラ笑ってて。

でも、雪はちゃっかりハルに手作りのお菓子を持参したりして。

普段ヌボーっとしてるハルも、なんだか楽しそうで。

私一人だけは、早く帰りたいって、窓の流れる景色を見てた。

でも気使い屋だから、それ悟られないように頑張っちゃったけどw



いざ海に着いて、場所を確保して、あとは雪の水着披露会。

私も水着着てるけど誰も興味ないだろうから、夏と一緒に雪コールした…

「アキも一緒に脱ごうよ」って照れる雪を無理やり脱がしたったよ…

おおおおおおおおおお!!!とか声上げちゃう男子共。

そりゃそうでしょう、清純系の雪が黒のビキニ(下はヒラヒラスカート)なんだから。

しかもおっぱいも普通に大きいし。



こんな雪の後に脱げないわって、ずっとパーカー羽織ってたんだ。

そしたらいつの間にかハルが後ろにいて、

「アキは脱がんの?」ってヌボーっと聞いてきた。

「あー、どうしよっかなって」と適当に返す私に、

「脱げよ」ってセクハラ発言するハル。

渋々パーカー脱いだら、

「あぁ俺アキの水着の方が好き」ってハルに淡々と誉められた。

運良く雪には聞こえてなくて安心した。



パーカー脱いだのに気付いた夏が、

「おぉ!馬子にも衣装!」って言ってくれて嬉しかったなぁ。

「まぁな」とかしか言えなかったけど。



そして、海の中ではしゃぐ三人を見ながら荷物番してた。

あの三人って三角関係なんだよなーとか思ったりしながら。

どんよりしながら砂いじってたら、影が私を覆って、

淡い期待を込めて見上げたら…ハルだった。

「喉渇いた」って言うから、二人でかき氷買いに行った。

ハルと二人きりなんて滅多にないけど、

まぁ別に気まずくもないし、淡々とかき氷買ったんだ。

そしたら「夏、雪ちゃんと2人になりたいだろうから、気を利かした」ってハルが言って、

私は「へー」としか言えなかった。



「アキ、大丈夫?」

ハルが急にそんなこと聞くから、ギクって心が揺れた。

「なんで?なにが?w」ってとぼけてたら、「元気ない時あるしさ」って言われて。

普段ヌボーっとしてるのに、そういうの気付くのかって感心したw

「暑いから疲れただけ!」みたいなこと言って誤魔化したけど。



そして二人のところへ帰ったら、雪が少し複雑そうに見てた。

「ハル、雪の水着褒めてたよ!」って耳打ちしたら、雪ニンマリして喜んでた。

罪悪感はあったけど、雪とハルには上手くいってもらわなきゃ、そう思っていた。

雪とハルが恋人同士になったって、夏が私を好きになるかなんて解らないのにね。



日が暮れて、海岸沿いで花火をした。

雪が頑張ってハルと二人きりになろうとしてた。

だから私は喜んで夏を引き受けた。

でも元気のない夏。

「雪ちゃん俺のことどう思ってんのかなー」ってうなだれていた。

「雪は、ハルが好きなんだよ」

黒い私がそう言いたい衝動に駆られた。

でも言えなかった。

そんなことしちゃ駄目だ、夏が可哀想だ、傷つけたくない。

そう思ってしまう私は、一体何がしたいんだろう。



「まぁ頑張れよ」って、気持ちとは裏腹な事言っちゃって、

「お前も頑張れよ!」って笑顔で答えられたりして。

綺麗な手持ち花火が、綺麗と思えなかった。

無の感情で、黒く広がる海の波打つ音を聞いていた。



花火大会にも行った。

この日も雪は女の子の実力を見せつけた。

白地の可愛らしい浴衣に、綺麗なうなじが見えるアップヘアー。

私は紺色のありきりたりな浴衣。

こうも違うものか、と一人で失笑した。

例によって、夏が雪を褒めたたえ、ハルが私をちょろっとフォローした。

人混みの中、はぐれないように雪を気遣う夏。

花火が打ち上がり、見上げるハルの横顔を盗み見る雪。

何の行動も起こせない私。

一人一人、違う人を思い浮かべながら、色づく空を見上げていた。



その帰り、夏が雪を家まで送り届けると意気込んでいたけど、雪が断った。

おこぼれで私が夏に送ってもらう特権を手に入れたw

雪を思って反省会してる夏の隣で、ずっとドキドキしていた。

浴衣褒めてくれないかな。

また「馬子にも衣装だ」って言ってくれないかな。

私のこと見てくれないかな。



願いも虚しく、夏は雪の話だけをして、「じゃ」と私に背を向けた。

落胆しながら背中を見送ってたら、夏が振り向いた。

「ちゃんと手当しろよー」

そう言って手を振って去っていった。

下駄の鼻緒で靴擦れしていた私を、気遣ってくれた。

最後に少し胸が高揚して、救われた気持ちになっていた。



それからも夏休みは何度か四人で遊んで、二学期になった。

学祭の準備で慌ただしい時期だった。

私はと言うと、相変わらず夏に恋をして、

夏の恋を応援している振りをしていた。

電車や廊下で夏と会えるのをドキドキしながら期待して、

雪の話でニヤつく夏を見て落胆して。

自分の気持ちが限界に近くて、雪への嫉妬も感じていた。

ニコニコとハルの話をする雪に、勝手だけど「無神経」と思ったこともある。

雪は何も悪くないのにね…



学祭が近付いていたある日、夏と電車の中で鉢合わせて一緒に下校した。

例によって私は内心喜んでいたけれど、またガックリ落胆させられた。

夏が、学祭でみんなの前で雪に告白すると意気込んでいたからだ。

学祭のイベントで、「未成年の主張」なるものがあって、

メインステージに立ち、観客の前で何かを叫ぶというものだった。

それにエントリーするのだと。

なるほど、お祭り男の考えつきそうなことだ。

でも反応に困ってしまった。

そんなことしたら、大勢の観客の前で夏が振られてしまう。

そんなのあまりに酷だ。

でも…雪がほだされる可能性は…?

進展しないハルに見切りをつけて、夏に心変わりする可能性は…?

ゼロだと言い切れる?



言い切れなかった。

こんなに魅力的な男を振る女なんていないだろ、くらいに思っていた。



だから私は、当日まで「考え直せ」とやんわり伝え続けた。

けれどその日は来た。

自分のクラスの催しなんかどうでも良かった。

夏の告白のことばかり考えていた。

本番の時間が近付いていた。

そんな時、夏が私を訪ねてきた。



「やばい、めっちゃ緊張する」

夏は私の前で武者震いしていた。

珍しく、顔から笑みが消えていたんだ。

「どうしても告るん?」

最後のあがきで、そう訊ねた私。

夏の返事は意外なものだった。

「やっぱ、やめようかな」



無理に作った笑顔で、夏は答えた。

いざ夏にそう言われると、

「それでいいのか」と自分に問いかける自分がいた。

目の前で自信なさげに俯く夏に、

私は「うん、やめときなよ」と言ってしまうのか。

雪の心変わりが怖いから?

そんなの夏にも雪にも失礼だ。

何というか、自分はズルイと思った。

だから言ったんだ。

「いやいや、もうエントリーしてんだから、言ってこいよw」

「でも」とグズつく夏に、「長い片思いに決着つけてこい!!」って、

自分の耳が痛いことを言い放った。

単純な夏は「そうやな!」って力強く立ち上がって。

「じゃ行ってくるわ!」って

「あんがとー(ありがとう)」って言って、走って行ってしまった。

その後ろ姿を見ながら、爽快感と絶望感が、ごちゃ混ぜになった。

全身がカタカタと震えてしまった。



時間になって、夏との約束通り、雪とハルを連れて会場へ向かった。

学祭のメインイベントということもあって、

ギャラリーは会場いっぱいに溢れていた。

メインステージで叫ばれるのかと思いきや、

三階の校舎の窓から叫ぶシナリオになっていた。

その三階の校舎を見上げて、

今頃夏はスタンバってるのかと思うと、不思議と吹っ切れてきた。

「夏、がんばれ」そう思っていた。

夏に告白されとも知らず、隣でワクワクしている雪に、

「ちゃんと聞いてあげてね」と声をかけた。

事情を知っているであろうハルも、雪を見ながら頷いていた。



一年生から順番に回っていき、

その中には夏と同じように告白する生徒もいた。

告白された生徒はメインステージに上がって答えを出すんだけど、

なんとOKされて会場が沸いた。

これには、夏もきっと勇気づけられたんじゃないかなって思った。



そして夏の名前が発表された。

窓から、夏が顔を出した。

ガッチガチに緊張してるのが下からでも解って、三人で顔を見合わせて笑った。

私は雪の肩に手を回した。

雪はキョトンとしたけれど、すぐに笑顔で夏を見つめた。



夏のドキドキが私にも移ったように、ドキドキしていた。

いつまでも叫ばない夏に、会場が少しざわついた。

私達は、がんばれがんばれと、夏に向けて呟いた。



ようやく、夏が口を開いた。



「雪ーーーーーーーー!!!!」



雪が小さく「えっ」と声を上げた。

私はより力を込めて雪の肩を握った。

さぁ、くるぞ。



「ハルーーーーーーーーー!!!!」



ん?



「アキーーーーーーーーー!!!!」



あれ??



「俺ら永久に不滅なりィィィィィィィイアアアアアアアアアッーーーー!!!!」



一瞬の間の後、ハァハァと夏の呼吸の音だけが会場に響き渡り、

私達三人はポカンとしていた。

司会者が「会場に今の方々いらっしゃいますか?」と訊ねてきたけど、

まだまだ私はポカン続行中だった。



すると、いつもは大人しい雪が

「いぇーーーーーーーーーい!!!!」って声上げた。

そしたらハルも「おおおおおおおおおお!!!」って叫んでて、

意外な二人の大声に我に返って、笑ってしまった。

私の笑い声で、会場からチラホラ笑い声聞こえて、

「あ、以上です」って言う夏の声で一斉に拍手が湧き起こった。

夏は最後だけヘラヘラしながら手を振って、引っ込んでいった。



雪は興奮した様子で

「びっくりした!!びっくりした!!」と繰り返していて、

ハルと私は顔を見合わせて少し笑った。



そしてイベントの結果発表。

夏の雄叫びはBEST3にも入らなかったw

それにも私たち三人は笑いあった。



私は一人、夏を探した。

すぐに見つかったけどw

夏の教室でクラスメートに囲まれてケラケラ笑ってた。

私に気付いた夏は、ばつが悪そうに笑った。



二人で階段に座って、しばらく黙り込んでた。

磨り硝子から差し込むオレンジ色が、後ろから夏を照らしていた。

日が落ちるの早くなったな、とぼんやり思いながら、

「なんで言うのやめたん?」

早速直球を投げたw

夏はヘラヘラ笑って、黙り込んで、頭を抱えた。



「土壇場でビビった…」

蚊の泣くような声でそう呟いた夏の肩が震え始めた。

「告れんかった…」「情けねぇ」って嗚咽混じりに呟く夏。

ビックリしたけど、夏の足の間にポツポツ落ちていく涙の滴を見てたら、

何故かこっちも視界が滲んだ。



「ぜっがぐ応援じでぐれだのにごめん」って言うから、

「泣くほどのことでもないでしょ!振られたら泣け!」って

肩ポンポンしながら返した。

「うん」って頷きながら、「でも告るのこえぇー」って、

夏は少し泣き止んで言った。

「解る…」としか言えなかった。

「え、解る?」って聞かれて、意味もなく頭はたいたw

夏に笑顔が戻ったから、

「でも、嬉しかったよ、俺ら永久に不滅なりってヤツ」

そう伝えられた。

「スベッてたけどw」って付け加えると、アアアアアア…って呻いてたw



少し暗くなった頃、ハルと雪もやってきた。

雪が「ありがとー」って言いながら夏に駆け寄ってた。

夏はまたばつが悪そうに笑ってたけど、どこか嬉しそうだった。

でも多分一番喜んでたのは雪だ。

雪はこういう、友情を感じられる言動に滅法弱いから。

ハルはヌボーっとしながらも笑ってた。

そんな高2の学祭だった。



それから今まで通りの日常に戻って、12月に入った頃だったかな。

変わらない関係に、ついに痺れを切らした人間がいた。

意外にも雪だった。

「頑張ってメールしても絶対返事返してくれるし、何度か二人で帰ったこともあるし、賭けてみる…私ハル君に告白する。」



覚悟を決めた雪の行動は早かった。

次の日の放課後にはハルを空き教室に呼び出して、告白した。

私は教室でドキドキしながら待つしかなかった。

その時、雪の言葉をずっと思い返してた。



「私、ハル君に告白する」の前に、雪は言った。

「勘違いやったら言ってくれて構わんのやけど、夏君って、私のこと好き?」

突然の振りに私は言葉に詰まってしまって、雪はそれで全てを察したようだった。

「やっぱりそうか」と呟く雪に、

「バレバレよね、あいつ…」としか言えない私。

「だいぶ気付かない振りしてたんだけど、やっぱりかぁ」

雪はいつから気付いてたんだろう。



「でも、私、ちゃんと断るからね」

雪が私と目をそらしながら言った。

動揺してしまった私は「なんで私に言うん?」と強い口調で雪に訊ねた。

私は、夏が好きだということを、雪に伝えてなかった。

何故か、言えなかったんだ。

自分では上手く隠せているつもりだった。



「なんで私に言うん?」の返事は、

「四人の関係を壊さないためだよ」だった。

そして雪の言葉は「ハル君に告白する」に続いたんだ。



そんな事をぐるぐると考えていると、夏が教室に入ってきた。

「なぁ、もしかしてさぁ…」って言いながら。

もしかして、の続きはなんとなく予想が付いていたから、

「そうだよ」って答えた。

夏は大きく息を吐きながら、空いてる席に座った。



「いや、ふられるよ、雪ちゃん」

夏が苦しそうな声で呟いた。

そうはなってほしくないと願っていた私には重い一言だった。

「なんでよ」って強い口調で聞いたけど、

夏は言葉を濁らせるだけだった。



それから二人で雪を待った。

会話は特になかった。



ハルと雪が上手くいくことを願いながらも、

私は何となくこの後の流れを予想していた。

もし夏の言うとおり雪がふられしまったら。

夏は、雪を精一杯慰めるだろう。

もしかしたらその時告白するかもしれない。

でも雪は「断る」と言ってくれた。

ほだされないと、約束してくれた。

だから夏もふられる。

雪の言うように、このまま四人の関係が壊れないなんて、有り得るのだろうか。

言いようのない不安な気持ちに襲われた。



そんなことをぐるぐる考えていると、教室のドアが開いた。

雪が「あれ、夏君もいたんだ」とぎこちなく笑った。

まだ教室にクラスメートが数人いたから、

私は雪を引っ張って、カーテンの中に連れ込んだ。

入った途端、雪の両目からぼろぼろと涙がこぼれた。

そして「ダメだったぁ」と呟いたんだ。

「なんで?」と聞いてしまった私に、

「好きな人がいるんやって」と嗚咽混じりに答える雪。

「誰か聞いた?」と続けると、首を横に振って一層泣き出してしまった。

雪を抱きしめて撫でてあげることしかできなかった。



少し落ち着いた頃、雪が言った

「ふられるだろうなーって、思ってたんよ」

そうなん?て聞く私に、力無く雪は笑った。



カーテンから出ると、夏が何とも言えない顔でこっちを見てた。

そして「雪ちゃん、帰ろう」って言った。

私なんて夏の眼中に入っていないようだった。

その証拠に夏は言った。

「アキはハルに付いてやって」



ショックだった。

夏は、雪と二人きりになりたいから、こんなこと言うんだ。

そう思った。



けれど雪は一人で教室から出て行った。

私の顔を見ずに。

その後を夏が走って追いかけてった。

私に「ハル頼んだ」と言い残して。



なんだか打ちのめされた気分で、ふらふらしながらハルの教室へ向かった。

今の私のメンタルでハルをフォローできっこないのに、と思いながら。

でもハルはもう教室にはいなかった。

ホッとした。

そして一人でふらふらと帰った。



次の日学校へ行くのは気が重かった。

あの後の雪と夏を想像するだけで、ひどく胸が痛んだ。

重たい体を引きずるように教室に入ったら、雪はまだ来ていなかった。

その日雪は学校を休んだ。



昼休みになった。

夏達とご飯を食べる曜日だったけれど、どうすればいいのか解らず悩んでいた。

けれど夏が迎えに来てくれた。

後ろには相変わらずヌボーっとしたハルが立っていた。

いつもと変わらない笑顔で「いくぞ」って夏が言って、なんだかすごくホッとした。

三人で定位置でお弁当広げた時も、気まずさを振り払うように夏が喋った。

でもそれも尽きて、三人に沈黙が走った。



「昨日、あの後、雪どうだった?」最初に口を開いたのは私だった。

「駅で別れたから、その後は解らんけど、それまでは泣いとった」

夏がぽつりと呟いた。

ハルは黙って箸を進めてた。

そんなハルと夏に、

「ごめん、昨日ハルの教室行ったけど、ハル帰ってた」と謝った。

ハルが「教室、来てくれたん?」って、やっと顔を上げた。

「うん」って答えると、そっかぁって少しハルの表情が和らいだ。

そんなハルを見て、夏が言った。

「今日こそは二人で帰ったら?」

訳が分からなくて、「え、なんで」と聞く私に、「二人お似合いやし」と笑う夏。

あまりに衝撃が大きくて、黙り込んでしまった。



「な、ハル」と笑う夏に、「いや、二人じゃなくていいよ」と返すハル。

「夏はなんでそういうこと言うん?」

喉カラッカラみたいな声で訊ねた。

「二人が上手くいったらいいなぁーと思うし」

夏が笑顔でそう発した時、

もう苦しくてしょうがなかったけど、声を振り絞って言った。

「ハルには好きな人がいるんやろ、勝手なこと言わんでよ」

そして一人で教室に戻った。

やっぱり上手くいかなくなってしまったと、めそめそ嘆きながら。



次の日、雪は登校してきた。

明るく振る舞う雪に、かける言葉が見つからなかった。

そんな雰囲気を察したのか「もうハル君なんかどうでもいいー」と、

雪はニコニコ笑顔で言い放った。

だから今まで通り、四人でやっていこうね

雪は笑顔でそう言った。

「昔みたいに戻れるかな」と聞く私に、「努力する」と笑った雪。

雪は強い子だったね。



そして四人で顔を合わせて、雪が笑顔で場を盛り上げた。

ハルも私もホッとして、ぬるま湯に身を委ねていた。

夏だけは、雪のことを真っ直ぐ見ていた。



それから夏は、より甲斐甲斐しく雪を気遣い始めた。

誰が見ても、夏が雪を好きなのは明確だった。

夏は隠そうともせずに、毎日雪にアタックしていた。

けれど「好き」とは伝えていないようだった。



告白されなきゃ断りようがない、雪がぽつりとそう呟いた。

確かにその通りで、なかなか変化しない関係性に、

私の気持ちは宙ぶらりんになっていた。

夏が告白したと聞いたらショックだろうけど、

夏が告白しなければ夏は雪を諦めない。

何度か告白をけしかけたこともあった。

でも夏は笑ってるだけだった。



クリスマスは四人で過ごした。

カラオケに行って、お世辞でも上手とは言えない夏と雪の歌を聞いて笑ってた。

呑気に笑っていられたのは、この時までだった。



少し街をぶらついて、解散になった。

夏と二人で同じ駅に帰れることが嬉しかった。

でも夏は、電車に乗り込む前に行ってしまった。

雪のところへ。

「俺やっぱ雪ちゃん送ってくわ」って、走って行ってしまった。

一人、満員電車に揺られて、

クリスマスで浮き足立ってる街を見下ろしながら帰った。

いやな予感がしていた。



次の日、夏が珍しく電話をかけてきた。

受話器の向こうで夏が興奮していて、もうなんとなく予想はついていた。

雪と上手くいったんだろう。

「雪ちゃんとチューした!!」

夏の言葉は私の予想の一寸先進んでいた。

胸が大きく跳ねた。



「告白したん?」と力なく訊ねる私に、

「いや、正式にはまだ」と彼は言った。

好きだと伝えけど、付き合ってくれとは言っていない。

「でも確かにあの瞬間、雪ちゃんと心が通じ合ってチューした!」

受話器の向こうで夏がどんな顔してた容易に想像が付く。

私は「うん、うん、へぇ」を繰り返すロボットになっていた。



最悪の冬休みだった。

廃人のように横たわる毎日だった。

雪からの連絡は返せなかった。

けれど「話がしたい」、雪からのその文面を見て、話さなきゃ、と思った。



そして私の地元に雪がやってきた。

二人で無言で公園へ向かって、その空気のままベンチに座った。

雪がぶるぶる震えながら「ごめんね」と泣いた。

「雪は、私が夏のことを好きなの、とっくに気付いてたんやね」

私がそう言うと、雪は首を縦に振った。

「でも、雪も夏を好きになっちゃったんやね」

私のその言葉に雪はワッと泣き出した。



「ハル君のことがあって、毎日泣いてて

でもみんなが心配するから、学校では平気なふりしてて

そんなとき、夏君が毎日メール送ってくれてて

大丈夫?とか、今日ハルの前で頑張ってたね、とか、

全部気付いてくれてて

沢山励ましてくれて気遣ってくれて、褒めてくれて

気付いたら、少しずつ夏君の時間が増えてて

でもまだハル君のこと気になってて、

クリスマスの日も本当に辛くて

みんなと別れて泣きそうになりながら帰ってたら、

夏君が追いかけてきてくれた

嬉しくて、ありがとうって思って

 

ごめん…」



雪は言葉を詰まらせながらそう言った。



私が、気丈に振る舞う雪に気付かず

現状に甘えてぬるま湯に浸かってる間に、

夏だけは気付いたんだ。

それはそうだろう。

夏は誰よりも雪を見つめていた。



「ごめん」と繰り返す雪に、返事はできなかった。

だって雪は言ったじゃないか。

「断るからね」って。

ほだされないからねってことじゃなかったの?

裏切り者。

私の方が夏をずっと好きなのに。



でも、私にそんなこと言う権利ある?

人の気持ちなんて変わるのが当たり前だし、夏は私の私有物じゃない。

ただ私が夏を好きだと言うだけで、人の恋愛を制限していいはずがない。

そして何より、気丈に振る舞う親友に気付いてあげられなかった。

それが全ての原因。

私が気付いてあげられたら、こんなに雪を泣かせてしまうことも、

こんなことになって私が泣くこともなかったかもしれない。

そもそも、いつも「私なんか」って自分を卑下して、

私はスタートラインにすら立っていなかった。

夏に好きになって貰う努力を、何もしていなかった。

自分の気持ちから逃げて、全て人任せ。

そんなの、私が選ばれないのは当然のことだった。



「雪、夏は、初めて雪と会話したあの日から、ずっと雪のことが好きやったんよ。夏の気持ちが報われて良かった」

恥ずかしげもなくぼろぼろ泣きながら、「夏をよろしくね」って言った。



「やだ、私アキの方が大事やもん、夏とは付き合わない」

そう泣きじゃくる雪に、

「夏と雪は好き同士なのに、何言ってるん?そんな気の使われ方嬉しくないし」

でも、でも、と続ける雪に、私は最大級かっこつけて言ったんだ。

「私のことが大事なら、私の大事な夏を大事にしてやってよ」



やっと雪は、うんって言ってくれた。



こうなったら、私の片思いの終わりを見届けよう。

「雪、夏呼べば?地元やからすぐ来るよ」

私のその申し出に、雪は従った。

すぐに夏は飛んできて、ぼろぼろに泣いてる雪を気遣ってた。

やっぱり私のことは視界に入ってないな。

そう思うと吹っ切れるような気がした。

「今日話したことは、夏には内緒ね」って雪に伝えて、私は一人帰った。

でも、やっぱり往生際の悪い私は傷ついていた。



三学期が始まった。

夏と雪は付き合い始めた。

噂は瞬く間に学年中に広がり、夏は可愛い彼女にご満悦だった。

クラスメートに「夏はアキと付き合ってるかと思ってた」って突っ込まれて、

今度は私が気持ち良く否定する番だった。



でも正直、うまくいってはなかった。

あの日あんなにカッコつけて、上手く話をまとめたつもりになってたのに、

私と雪の間にはうっすらわだかまりが出来ていた。



雪は頑張って修復しようとしてくれてた。

でも私が無理だった。

仲のいい夏と雪を見ていると、心がささくれ立って、

四人でいて心から笑えたことなんてなかった。

あのハルが何度も気分転換に誘ってくれたけど、全部断った。

そんなことをしていると、夏が切れた。

いつものようにみんなでお弁当を広げている時、

私の白々しさに、夏が怒鳴った。

「お前何なん!?何が不満なん!?どれだけみんながお前に気使ってると思ってんだよ!」



夏には解らないよ。

夏には言われたくないよ。

そう思っても口には出せない私は、ただ黙っていた。



雪が間に入った。

「ごめんね、私が恩を仇で返すようなことをしたんよ」

ぼろぼろ泣きながら、雪が言った。

恩を仇で返す?

何を言ってるんだろう。

身に覚えがなかった。



「私、一年の時から、アキのこと知ってた

その時私、クラスの女子からハブられてて

その日も耐えれなくなって、

トイレの個室に逃げ込んで、一人で泣いてた

そしたら、その女子達、トイレまで追いかけてきて

私に聞こえるように、キモイとか、○ねばいいのにとか

そしたら、隣の個室から誰か出て行って

隣の個室の子、ずっと泣いてるんだけど、って

胸糞悪いことやめろよ、って

親の顔が見たいわ、って、言ってくれて 

アキが出てった後、女子達がアキの名前言ってるの聞いて

ずっと感謝してた

凄く嬉しかったのに

恩を返さなきゃってずっと思ってたのに

私が、そんなアキを裏切った

ごめんね、アキ、ごめんね」



そう言えばそんなこともあったな、と思った。

その後、私その女子達から陰口叩かれてたみたいだけど、

まぁ有り難いことに私への被害はそれくらいだった。

そうか、あれは雪だったのか。

「アキが優しいこと知ってるから、仲良くなりたかった」ってのは、これだったんだね。



そんな中、夏が笑った。

「何や、アキお前、めっちゃかっこいーな!お前らしいわw」

大好きだったあの笑顔で、夏に褒めてもらえた。

何だかむず痒かったけど、嬉しかった。

誇らしかった。

「かっこいー」って言ってもらえた。

お前らしいって褒めてもらえた。

そうか、夏の目に映ってる私は、そんな女だったんだ。

なんかもう、充分だな、うん。よく解らないけど。

この瞬間、パァって気分が晴れたのを、今でも覚えてるんだ。



「でも裏切ったって、何したん?」と話を続けようとする夏に、私は謝った。

雪にも、ハルにも謝った。

「ごめん、もう大丈夫!」って。

だって今なら心から笑えそうだから。

もういいんだ、もういい。

終わったんだ、私の片思いは。



それからは、ハルが開き直ったかのように毎日絡んできた。

「一緒に帰ろう」とか、わざわざ一人でうちのクラスに言いに来たりして。

仲間内からカップルが生まれて、こいつも寂しいのかなって思ってた。

自然と二人でいることも増えた。



そして春休み直前、雪がハルに告白した教室で、ハルに告白された。

「廊下で初めて会話した時から、ずっと好きやった」って。

笑ってしまった。

あの日あの瞬間、私以外の三人が一気に恋に落ちたのか。

なんて面白いメンツなんだろうw

運命的とも言えるじゃないかw

しかし私の鈍さは、夏に負けず劣らずだな。

そう言えばハルはやたら私を褒めてきたなー、とか、

やたら夏がハルを押してたなぁ、とか、

そこでやっと気が付いたんだw

申し訳ないことをした。

でも生憎、返事はNOだ。

私はハルのことを男としてなんて見れなかった。

その頃まだ私の一番は夏だったし。

そう簡単に次にはいけなかった。私はね。



その後一年間しつこく私を好きだと言い続けるハルがいるのだけど、

それはまた別のお話。



出会いから4年たったけど、今でも私たちは連絡を取り合ってる。

夏と雪は別れたりくっついたりを繰り返しながらも続いてるよ。

だから、夏が大声で叫んだ「永久不滅なり」は、まだかろうじて守られてるw



長々と詠んでくれてありがとう!





よければその後の話で印象的なエピソードを後日



解った!

今日はぶっ続けで書いちゃって疲れたから、

また明日書くね(`・ω・´)



今思い出を総動員して書いてるんだけど、

うまくまとまらないというか、

長くなっちゃいそうなのね(`・ω・´)汗



では再開。







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