6年生の時の話。






生徒数が多かったうちの学校では、夏の間だけ『0時間目』ってのがあった。



より多くのクラスが授業でプールを使うために先生たちが考えた苦肉の策だったのだが、意外と俺たちの間では評判が良かった。



まず6時間目が振り替えられるので、0時間目があるときはいつもより1時間早く帰ることができること、そしてまだ誰もいない小学校というなんだかミステリアスな雰囲気、そしてこれは存分に個人的見解なのだが、着替えは教室だった。






プールに付属した更衣室は体育の時間が重複した時は上級生が使うことになっていて、異性の体に興味を持ち始める頃には、俺たちの欲望は更衣室というコンクリートの壁に阻まれる仕組みになっていた。



だからこそ、だからこそ!この0時間目に対して過大な期待を抱いてしまうのは必然だったのではないだろうか。






0時間目のあった水曜日、いつもより早く家を出る俺。



友人のツトムと登校中も平然を装い踊る心を抑えつけた。



しかし、教室に着いて俺は愕然とした。



6年生になり、異性を意識するのは女子も同じだったんだ。



男子と同じ教室で着替えるのを恥ずかしがる女子の多くは異常なくらい早く来て着替えを済ませているか、女子トイレで着替えてしまうか、あるいは家で服の下に水着を着て登校していた。



いや、後で聞いた話では、教室で着替えをした女子もそこそこいたらしい。



しかしその光景を見ようと心に決めたツワモノの男子は早々と教室入りし、着替えにできる限りの時間を費やし、女子との間で『見るVS隠す』の攻防戦を繰り広げたそうだ。






授業の始まる10分以上前には教室は閑散とし、俺とツトムは悠々と着替えをしてプールに向かった。



その時、1人の女子が大慌てで登校してくる姿が見えた。






(もうちょっとゆっくり着替えてればそいつの生着替えが見れたな)








その時はそんな考えが頭をよぎった。



ちなみに、授業の後の着替えは更衣室が使用されるので女子の着替えを見ることは叶わない。



なんというか、期待が大きかっただけにガッカリ感も比例して大きかった気がする。






女子の裸をどうこうしたいってわけじゃない。



わかるだろ?



好きな女の子のちらりと見える秘部や、着替えの際に脱ぎ捨てられるパンツ、それだけでも当時小学生だった俺からすれば暴走モード突入ってわけで・・・。






そんなとき頭をよぎったのが、遅れて走ってきたユミコだった。



もう時間はほとんどなかったし、速攻で着替えを行ったはずだ。



教室の男子が残っていなければ隠すことすらしなかったかもしれない。



あるいは、“時間がないので隠すことすらせずに着替えをする”ために、わざとギリギリの時間に登校してきたんじゃないだろうか?



なんだかわかりにくいかもしれないが、ともかく俺はそんな妄想に取り憑かれた。



時々、本当に時々だが、自分でもユミコに意識がいっていることに気がつくと、真っ向からその気持ちを否定しまうくらいユミコの方を見ている俺がいた。






それから1週間、じっくり観察したわけではないが、ユミコのガードが甘いというのはよーくわかった。



まず、スカートを穿いてても普通に股を開いてしゃがむので、パンツが丸見えってことがあった。



明らかにサイズの合っていないシャツを着ていて、袖口が大きく開いていて、授業中にユミコが手を挙げるたびに、その隙間から膨らみかけの胸と乳首が見えた。



もちろんノーブラである。



(ちなみに俺の席はユミコの斜め後ろだった)



明らかに恋愛の対象ではなく、性的な意味でユミコを観察する、そんな最低の俺がいた。






そして水曜日、俺とツトムは前回と同じくらいの時間に登校した。



建前上は、前回も悠々着替えができたから。



しかし胸の内では、着替えを少しだけ遅らせて、ユミコの生着替えを見たいと思う俺がいた。



もし自分らの着替え中に来ないようだったら、プールに向かう途中、忘れ物をしたふりをして教室に戻り、ツトムを先に行かせよう。



そんな悪魔のような考えすら、これからの俺の行動計画表には書き込まれていた。






教室の中にいたのは男子が数名、その数名も俺の狡猾な時間稼ぎの間に着替えを終えてプールに向かって行った。



しかし俺より遅れて登校してくるのもみんな男子で、教室のドアが開くたびにその方角へ期待の眼差しを向けるのが情けなくなってきていた。



俺の次の次の次の次の次、つまり5人目もやっぱり男・・・。



残り10分。






(ユミコはもうプールに行ってしまったんじゃないか)と諦めかけた、その瞬間だった。






5人目の男子が開けた扉が閉まろうとしたその瞬間、白くて細い腕が、その扉をもう一度開け直した。



ユミコだった。



入り口付近に席のあるツトムと二言三言あいさつを交わしたかと思うと、俺の斜め前の席にランドセルを置く。



水泳道具の中から着替え用タオルを取り出して腰に巻きつける。



スカートとパンツを一気に脱いで、スクール水着に着替える。



この間たぶん1分未満、下半身のガードはこれで完璧になってしまった・・・。



しかし、そこからがユミコのユミコたる所以だった。



しっかり観察したわけではないのだが、完璧に見られないようにするためにはタオルを胸の辺りまで上げてから上着を脱げば良いのだが、ユミコはノーガードでシャツを脱ぎ捨てた!



そうしてタオルの隙間から水着の肩紐部分を擦り上げて着替えを終えるのだが、その間、ユミコのオッパイは俺以下男子7名に視姦されていた。



いや、そんな気がした。






(これは俺んだ!見るなお前ら!)






俺の心がそう叫んでた・・・。






プールに向かう途中、ツトムがスーっと寄ってきて俺の耳元で囁いた。






「やったじゃん、ユミコの胸見れて!」






「はへ?」






努めて平静を装ったつもりだが、明らかに挙動不審だったと思う。






「先週見れなかったから、今週こそ見ようとしたんじゃないの?」



「そ、そんなエッチなこと・・・」






「いーじゃん、別にラッキーってさ」



「・・・」






俺には兄がいて、それが友人含めて下品な話が大好きで、俺も相当感化されていたと思う。



しかしツトムはもっと俺の兄に感化されていた・・・、ような気がする。






ツトムは近所だったこともあって、低学年の頃からの友人だった。



俺よりはるかに頭が良くて、両親に俺や俺の兄なんかと遊んでる暇があったらもっと勉強しなさいとよく注意されていた。



それでも、特に同じクラスになった6年生の時は毎日一緒にいる友人だった。



それでもユミコのことは言われて胸がチクリとした・・・。






「好きなんじゃねーの?最近ユミコの方ばかり見てるじゃん、授業中も」






そりゃユミコの袖口から見える、“おっぱい”を見てたんだ・・・。






「な、んなわけねーじゃん」






「・・・なーんだ。で、でもさぁ、生オッパイ見れてラッキーだったな、アハハハハ」






「こ、声がデカいって!」






・・・んでもって次の水曜日。



ツトムに妙な指摘をされたせいもあって、じっくりまったり見つめることは出来なかったけど、先週よりもはるかに長い時間、ユミコの生オッパイを観察することができた。



ワンピースタイプの服の上から着替えタオルを羽織るものだから服を脱ぐのに悪戦苦闘、随分長いこと生オッパイが晒されてたような気がする。



しかし席の関係上、幾度となくユミコの乳首を見てきた俺にとって、それはすでに俺の性的欲求を満足させるものではなくなっていた。



むしろ、これまで俺が独占してきた(と、自分では思ってた)ユミコの胸が他の同級生に見られることにムカついていた・・・。






「あれ、絶対見せてるよなぁ」






俺とツトムとミツルで3人、ある日の密談。






「そう・・・なの?」






「だってな、少し時間をずらすか、少し要領よく着替えれば、毎回生着替えせんでも良いわけだろ?あいつ、パンツとかわざと見せてる時があるしなぁ」






「そ、そうだな・・・」






肯定しつつも内心穏やかでない俺。



俺だってちょっとはそんな気もしてたけど、級友たちまでもがそんな目で見てたとは・・・。



自分がスケベなのはおかしいからではない、男はすべからくスケベなのだ。



そのことに気がついた時と同じ衝撃が、腹の底から沸々と湧いてくるのを感じていた。






女もまたスケベなのだと!






<続く>