俺は、地方都市の工場で働く22歳だ。



田舎なので、社員寮の周辺にはパチンコ屋ぐらいしかなく、普段の休みはゲーム三昧。



今日は(気分転換のつもりで)寮の最寄駅に車を停め、電車とバスを乗り継いで、とあるショッピングセンターにあるシネマコンプレックスに映画を観に行くところだ。






営業や配達で毎日のように車に乗っているので、今日ぐらいは運転から解放されたい。



郊外ショッピングセンターへは、ターミナル駅からバスに乗り、40分。



iPodのイヤホンを耳に挿し発車を待っていると、スタイルがよく上品な女性が乗り込んできた。



春物の薄手の白いニットはCカップぐらいの胸の形を丸く映し出している。



ボトムはチェックのショートパンツに黒タイツ。



パンツの裾から見える太ももはむっちりしていて触り心地が良さそうだ。



ロングヘアーに細面の顔。



アクセサリーもさりげなく輝いている。






(きれいな人だなぁ)と見惚れていると、「お客さん、座ってください」と運転手のだみ声。






車内はにぎやかな中高生たちで混んでいて、女性は空席を探している。



ふと俺と目線が合った。






「ここ、よろしいですか?」






頷いた俺は、iPodで音楽を聴きながらも女性のほうをちらちらと見る。



きれいに揃えられた黒タイツの太ももは、タイツ越しにムチムチしているし、ニットを押し上げている柔らかそうな胸も思わず触りたくなる。



何よりも、今まで嗅いだことのないような化粧品の匂いがたまらない。






窓から入る暖かい日差しとバスの振動にうとうとしていると、肩に重みを感じた。



女性が俺の肩にもたれかかって寝てしまったのだ。



俺は女性の方を振り向き、しげしげと眺める。



ちょっと影がある様子で年齢は俺より年上。



20代後半ぐらいか?






目的地まであと10分。



女性は、はっと目を覚ますと・・・。






「す、すみません」






「いえいえ、自分も寝ていたので平気ですよ」






気まずさを払拭するように、「いい天気ですね。今日はお1人なんですか?」と女性。






「ええ、映画を」と俺。






その後、タイトルも教え、映画の話を少しした。



到着前、女性は両替のため運転席へ。



ショートパンツ越しにヒップの膨らみが揺れていた。






ショッピングセンターに着くと、まずシネコンで指定券を買った。



その後は本屋へ直行し、楽しみにしていたコミックの新刊を買う。



何か視線を感じるが、そんなはずはない、今日は一人なのだから・・・。






コミックを買った俺は、シネコンのベンチに腰掛けて受付開始を待ちながら、今までのことを振り返る。



俺は高校を出てから遠く離れた地方都市の工場に就職した。



地元では友達も少なく、いじめのターゲットになっていたから、とにかく地元を出たかった。



工場はとんでもない田舎町で、社員寮と職場を往復する毎日。



先輩はパチンコの話ばかりしていた。






そんなある日、先輩に付き合わされて参加した合コンで一つ年下の大学生の女の子と知り合った。



間もなく体の関係も持った。



バージンではなかったし、胸は小さく、体もガリガリで子供みたいだったが、明るくて社交的な性格の子だった。



学生でお金がないということで、デート代は社会人である俺が全部負担していた。



が、彼女の休みと俺の休暇が合わないことも多く、すれ違いを感じた頃、彼女がゼミの同級生と体の関係があることが発覚した。



ゼミ旅行で初エッチし、その後もだらだらと続いているそうだ。



社交的な性格が災いして、ゼミ仲間に誘われて断り切れなかったとのこと。






彼女は、「あなたは好きだけど、学生には学生の付き合いがあるのよ」とゼミ仲間をかばう。



終いには「なんなら会わせてあげるから直接抗議して白黒つけてもいいわよ」と開き直られたが、そんな男とまともに話なんて出来ないだろう。






向こうは大学生、こちらは高卒。



それだけでコンプレックスを感じるのに・・・。



ということで、1ヶ月前に別れたのだった。



このシネコンにも何回か車で来ているし、色々プレゼントも買い、帰りにはホテルに寄ったっけ、全部俺の金で・・・。






と、入場のアナウンスが流れた。



入場前にコーラを買って劇場に持ち込んだ。



館内は3割の入り。



前回の映画の時は混んでいて、隣のおっさんの口臭に悩まされたが、今回は隣に誰か座ることはなさそうだ。



左隣の席にコミックの入った袋やカバンを置くと、「すみません、そこ私の席ですけど」と聞き覚えのある女性の声がした。



振り向くと、さっきバスで隣に座った女性が指定券を見せてくれる。






「すみません、すぐどかします」






荷物を動かしながら、(ラッキー!)と密かに思った。



あれ?でもよくよく考えると、このシネコン、空いている時は一つずつ空けて座席指定されるはず。



館内は空いているのに・・・まあ、いいか。






本編が始まると、女性は映画を食い入るように眺めている。



俺は女性の横顔が気になって仕方がない。



整った顔立ちは、ただ甘えん坊だけがとりえだった前カノの比ではなく、きれいだ。






すると女性が2人の間に置いてあった俺のコーラに手を伸ばし、ストローに吸い付いた。



飲んですぐ、「す、すみません」と小声で謝った。






「あ、いいですよ」と言った後、少しして俺はそのコーラをそのまま飲んだ。



なんか照れくさい。






「よろしければ、どうぞ」






ポップコーンを差し出されたので、遠慮なく手を突っ込んだ。



狭いポップコーンバケツに2人で手を突っ込むので手が触れる。



細くて柔らかくてひんやりした手だった。






ポップコーンが空になると画面は退屈な会話のシーン。



女性は俺にもたれかかると、寝息が聞こえた。



画面がアクションシーンに変わると女性はさすがに目を覚ました。



目の前は目を見張るようなバイオレンスシーン。



女性は俺の左腕にしがみついた。



肘には柔らかい胸の感触、手の甲は太ももの上。



タイツ越しに、柔らかくて汗ばんだ太ももの感触。



タイツの感触に逸物が膨らんできた・・・。



シーンが変わり、しがみついた腕は離されたが、いつの間にか女性は俺と手を繋いでいて、そのままエンディングへ。



エンドロールが流れて場内が明るくなると、「お食事、ご一緒しませんか?」と誘われた。






心臓バクバクの俺は女性とショッピングセンター内にあるイタリア料理店に入る。



980円のコースを注文して話を始めた。






まず、彼女は美穂と言い、30歳の人妻で子供はいない。



俺はぎょっとしたが、「大丈夫よ」と。



何か訳ありのようだ。



俺も、色々しゃべらされた。



彼女と別れたことも。



料理に続き、伝票が机の上に来た。



男である俺が払うのは構わないが、でも、向こうは年上だし・・・と思っていると、美穂さんは伝票を取った。



中を見て、「はい、私の分ね」と1000円札を差し出す様子が妙に大人っぽく見えた。






帰りのバスまでは時間があるが、特に買うものもないというので、別のコーヒーハウスに移動する。



そこで美穂さんは色々話してくれた。



結婚してすぐに旦那は単身赴任。



ついて行くと言ったが、マイホームの近くに旦那の両親が住んでいて、時々顔を出して欲しいと。



割とわがままな両親で、雑用を言われることも多く、相手をするのも疲れる。






「私、なんのために結婚したのかな?」と疑問に思う日々だった。






もちろん旦那と顔を合わせるたびに子作りに励むが、できない。






「医者に調べてもらわなきゃ」と言っているうちに、旦那が任地で独身の部下の女の子と不倫をして、不倫相手を妊娠させてしまったとのこと。






なのに「あんたは子供のできない女」と旦那の両親から責められ、浮気の追求どころではない。



それどころか、「孫の顔が見たい」「相手の女性に対して責任を取らせないと」「子供が片親では可哀想」「あなたはまだ若いのだし」と支離滅裂なことを言われ、放り出されそうな気配もする。



ともかく最悪な状態だ。



今日はその気分転換として映画を観に来た。






「あなたのようなステキな人といられて良かった・・・」とも言われた。






そして帰りのバスの時間に。



俺と美穂さんは昔からの知り合いのように一緒にバスに乗り込む。



バスが着いたら別々の駅に向かわなくてはならないのか・・・。



でも夢のような一日だった。



きれいな年上の女性との思いがけないデート。






美穂さんは再び俺にもたれかかっている。



バスがターミナルに着いた。



バスを降りても俺の足は動かない。



すると美穂さんが言った。






「もう少しご一緒してもいいですか?」






これだけで十分だった。



俺たちは電車に乗り、駐車場の車へ美穂さんを伴うと、そのまま隣町のホテルへ直行した。






<続く>