結構前の話だから時効ということで書きます。






当時はインターネットではなく、パソコン通信という世界だった。



美沙子と俺は横浜と大阪の遠距離恋愛。



付き合いは始めてちょうど半年くらいだった。









そんなある日、彼女が神戸でのオフ会に参加したいと言い出した。



「危ないからやめろ」と言ったが、どうしても行くと言うので、俺も一緒に参加するという条件で行くこととなった。



神戸なら俺も行ってみたいと思ったし、オフ会が土曜日ということで、日曜は美沙子と神戸でも歩いてみるかと旅行がてら参加するということにした。



但し、場がシラけるといけないので、カップルということを隠し、赤の他人という設定で参加することとなった。



地元じゃないから何かあっても後を引くこともないし、第一俺も一緒だから何も問題はないと思っていた。






「これじゃ少し大胆すぎるかしら?」






赤いノースリーブのブラウスと丈が短めの白いスカート姿だった。



美沙子が駅まで迎えに来てくれて、そのままホテルにチェックインを済ませた。



部屋にあがると窓の外に海が見えた。



まだ少し時間があるから少し歩こうかと、神戸の港を散歩した。



オフ会は18時スタートで、場所は明るい洋風酒場のような店だった。



2人でタクシーに乗って店の近くまで行き、時間をずらして別々に店に入った。



すでに男3人が来ていて、もう1人が少し遅れて入ってきた。






結局、集まったのは男4人と、俺と彼女。



画面上では『参加しまーす』って書いていたやつらが男女合わせて20人くらい居たんだけど、結局は総勢6人という寂しいものだった。






男2人は前からの知り合いらしく、吉田、河野と名乗った。



彼らは地元の人で、このオフ会の主催者だ。



あとの2人は、1人は大阪の佐藤、もう1人は名古屋から参加した黒田。



2人は初対面とのことだった。



美沙子と俺もそれぞれ自己紹介し、お互い初対面だと言った。






当然のことだが唯一の女性で、しかも美人ということで、美沙子の扱いは最上級。



俺については、口には出さないまでも、招かざる客扱いだった。



馬鹿くさ・・・と思いながらも、どうせ赤の他人の設定なんだから、彼女がチヤホヤされるのを見てみようと決めた。






取り留めのない話しばかりだったが、佐藤は明らかに彼女への下心が見え見えだった。






「美沙子さんは今日は泊まって行くんでしょ。ゆっくりしてってくださいね~」






鼻の下を伸ばしてんじゃねー!



大阪から神戸なら日帰り圏内だが、今日はホテルの予約をしてあるので心配はない。






20時を過ぎた頃、2次会ということで店を代えた。



近代的な雑居ビルにある小さなスナック風。



他の客はなく、貸切状態だった。






場所を代えてからはスケベ系の話が中心となった。



しばらくすると、「王様ゲーム、やりませんか?」と佐藤が言い出した。






(この野郎!男5人、女1人の環境で、そんなもんに乗る女がいるか!)






と思ったが、意外にも彼女は停止条件付きということでOKした。



(後で聞いたら、断ると場がシラけると思ったとのこと)






美沙子は勝気なタイプである。



頭も良くてそつがない。



フリーで仕事をやっているので、相手を煙に巻く技術を持っていないとビジネスなんかやっていけないと日頃から言っている。






美沙子はきわどい命令にも、「それはダーメ」と上手にノラリクラリとかわして切り抜けていた。



例えば「ブラウスのボタンを外させる」という命令には、「2つ目まで」という条件を付けるなどして、彼女はうまくかわしながらも上手に場を盛り上げていた。



俺は進行にハラハラドキドキしながらも、俺自身も結構きわどい命令を飛ばしたりしながら、赤の他人を楽しんでいたし、美沙子もそれを上手くかわしていた。



他の連中は俺たち2人がカップルであることには全く気づいていないはずだ。






トイレに行こうと中座して店を出た時(この店は雑居ビル内にあり、トイレはビルの共同トイレを利用する)、主催者格の吉田と河野が廊下でひそひそと何か相談していた。



目が合ったので軽く会釈をしたが、少し慌てた様子だった。



何だろうと思いながらも用を済ませ、戻ってきたら吉田1人が俺を待っていた。






「佐々木さん(俺)、今日はどうされます?」






吉田が俺に尋ねた。



俺は一次会でも答えたのと同じように、「最後までいますよ」と言った。



何となく吉田が、『困ったな・・・』という顔をしたように感じた。



で、「何か?」と聞き返すと、吉田は一瞬躊躇ったが話し始めた。






「単刀直入に言います。美沙子さんを頂いちゃおうと計画してるんですけど、佐々木さんも乗りませんか?」






「えっ?」






俺は一瞬、言葉を失った。






「実は、このオフ会の本当の目的はそれなんです。河野も佐藤も黒田も仲間ですし、次に行く店のマスターも仲間で協力してくれます」






俺は返事ができない。






「今までも同じようなことを何回かしてきましたけど、全部上手くいきましたし、美沙子さんならノリも悪くないし大丈夫です。それに滅多にないチャンスですよ。あれだけ綺麗な人が1人で出てくるのは。きっと彼女も何か期待してきてますよ、絶対。上手く合わせてくれれば後はこっちで仕込みますから、そのまま普通にしていてください」






吉田は、「だめですよ、気づかれちゃ」と言い残して先に戻って行った。






まさか、自分の彼女を犯っちゃう相談を持ちかけられるとは考えてもいなかった。






(あいつらみんなグルだったんだ・・・)






心臓がバクバクしてきて、頭がカッとなった。



でもまあ、俺がついているから何とかなるだろう。



もう少しだけ話を合わせてみるのもいいかも知れないと考えた。



『悪魔が囁く』ってこういうことだと思う。



両方の意味で、赤の他人という設定にしておいて良かったと思った。






部屋に戻ると美沙子は楽しそうにしていた。



吉田が俺にニヤっと目配せした。



程なくして三次会に行こうという話になり、店を出た。



美沙子はほろ酔い加減で、佐藤と黒田と一緒に歩いていたが、俺は少し遅れて1人で歩いた。



吉田と河野は先頭を歩いているが話は聞こえない。






こいつら、何をする気だろう?



どうやって実行するつもりなんだろう?



どこまでやる気なんだ?



見たところ普通の部類に入る連中だし、その手のプロや組系でないことは確かだと思った。



それよりも俺自身がどこまで引っ張っていいのか?



どの段階で止めるか?



そっちのほうが問題だった。






これまでも美沙子が複数の男に弄ばれる姿を想像して萌えることはあったが、そんなものは妄想の世界でのことであって実現させるわけにはいかない。



しかし、このまま成り行きに任せておけば本当に実現してしまう。



そう思うと頭に血が上り、鼓動が高まった。



俺は一体何を考えてんだ?!






「佐々木さん、簡単に説明しときます」






河野に声を掛けられて我に返った。



横には河野がいた。






河野「まずは大阪に戻る終電がなくなるまで引っ張ります。終電がなくなって泊まるということを確定させます。そのあとは、そのままエッチな路線に引っ張ります。そのままいければそのままいっちゃいます。でも、ノリだけでは無理かも知れません。その時には奥の手を使います。ガードが固いようであれば、薬で眠って頂もらいます」






俺「薬って?」






河野「睡眠導入剤ってやつですか。危険はありませんから大丈夫です。『いつものドリンク』とマスターに頼めば、彼女の飲み物に薬を仕込んでくれます。だいたい薬を入れて30分もすれば酔い潰れたように寝ちゃいますから、あとは近くのシティホテルに運んで頂いてしまうという段取りです」






俺「後はどうなるんだ?」






河野「彼女は翌朝ベッドで裸で目を覚ますこととなりますが、その時には自分達はいません。それだけのことです」






俺「けど・・・」






河野「あ、中出しはしないルールになってますから、コンドームは用意してあります。佐々木さんもちゃんと使ってくださいよ。あと、痕跡が残るようなことは一切なし。怪我もさせない。洋服も破かない。後でヤバくなるような過激なことは一切なし」






俺「・・・」






河野「それから、順番は公平にじゃんけんです。僕達、そんなに悪質なことはしませんよ。後を引くようなことも。第一、眠っちゃっている相手とは、ちゃんとしたセックスはできません。触って、写真撮って楽しむだけ、あくまでも、ちょっと過激ないたずらの範囲と決めていますから」






(それのどこがいたずらの範囲なんだ?十分犯罪だろ・・・)






俺「しかし・・・そんなことが本当に上手くいくのか?」






河野「トラブルになったこともありません。それに、美沙子さんって結構スケベなんじゃないかな。だんだんエッチな話の乗りも良くなって来てるし、嫌ならここまでついて来ないでしょ。酒だけ飲めればどこでも行くというタイプでははしないし、逆に何かしてあげなければ失礼じゃないじゃないですか?あんな美人に。それにしても佐々木さん、ラッキーですよ。美沙子さんは今までの女の中でピカイチです。文句なくダントツ、レベルが違います。今日は思いっきり楽しめますよ。僕はもうさっきから立ちっぱなしですよ」






俺「・・・」






河野「ところで、念のためにもう一度伺いますけど、佐々木さんは美沙子さんとは今日が初対面ですよね?」






俺「そうだけど、何で?」






河野「それなら何も問題ありません。ただの確認ですから深い意味はありませんよ。じゃあ、決行時間は25時を目処にしてますので、楽しみにしていてください」






そう言うと河野は前を歩いているの4人の方へ走っていった。



時計を見ると22時を少し回っていた。






(こいつら相当に慣れてる。下手したら本当にヤラレかねないぞ)






そう思い、遅くても24時までに美沙子を連れ出して逃げることに決めた。



もう少しだけ、このままにして様子を見ていたい。



非現実的な妄想の世界に浸ってみたい。



それが、そのときの本音だったのかも知れない。



今にして思えばそれが間違いだった。



すぐに美沙子を連れ出しておけばよかった。






「着きましたよ」と言われたのは小さなスナックという感じの店の前だった。






「皆さん、三次会は下ネタを中心にハメを外して楽しくやりましょう」






佐藤がはしゃいでいる。



美沙子も酔ってる上に女王様的な待遇を受けて満更じゃない様子。



まずは美沙子を呼び出して12時までに切り上げることを伝えておかなければいけない。



やつらの企みについては、急いで伝える必要があるとは思わなかった。






一段落ついたところで美沙子を呼び出すことにした。



お決まりの乾杯の後、頃合いを見計らって美沙子に目で合図を送ってトイレに立たせた。



俺は美沙子より一足早く先にトイレに向かった。



トイレの中で、『11時30分までには出る。了解したら合図を』とメモに書いて、個室の便座のカバーの上に置き、石鹸を重石にしてトイレを後にした。






すぐ後に美沙子が来る。



トイレは男女共用だから見落とす心配はない。



美沙子と廊下ですれ違ったが、「どうも」と声を掛けただけで部屋に戻った。



部屋で見たよりも酔っていない様子だったので安心した。






しばらくして美沙子がトイレから戻ってきて、メモを見たことを目のサインを送ってきた。



これで少し気が楽になった。



あとは頃合いを見て逃げ出すだけだ。



佐藤と黒田が、「泊まってくんでしょ?ゆっくりしていってくださいよ」と美沙子の引き止め工作を行なっていた。



美沙子も、「どーしようかな~」とお茶を濁した返事を返していた。



河野も泊まっていけと言っていた。






その時、頭がクラーっとして、いきなり睡魔が襲ってきた。






(あれ?)と思ったが、後の祭りだった・・・。






<続く>