夫婦逆転 妻へのご奉仕を仕込まれる僕
絢子様が「夫が会社を勝手に辞め、酒を飲んではDVをするようになったので離婚した」と周囲に説明していたことを知ったのは、昨年の夏のことでした。正確には、絢子様がもとの事務所から独立し、事務所でパートナーとして働いていた先輩弁護士の武内様と「武内・斎藤綜合法律事務所」を設立したころです。わたしの姓である「原田」から旧姓の「斎藤絢子」に戻した名刺を見せられ、「あれ、言ってなかったっけ?そういうことだから、外では間違えないようにちゃんと覚えておくのよ」と当然のように言われました。あまりに突然のことで、わたしには、あいまいなほほえみを浮かべて「お、おめでとうございます」とわけのわからない祝辞を述べることしかできませんでした。
武内様とは、それまで直接お会いしたことはありませんでした。絢子様によると、アルマーニのスーツがよく似合う30代の男性で、弁護士としての能力も大変優秀で業界でも有名な方だということでした。お2人は同じ分野を専門としていたこともあり、以前から「独立するときは一緒に」と約束していたそうです。絢子様がわたしに説明も断りもなくどんどん新しい生活を始めていくことに、わたしは強い疎外感を覚えていましたが、わたしに絢子様の生活に口を出す権利は全くありませんでした。主人に離婚されず、なんとか家においてもらうことだけがすべての人生。それは、古い時代の日本の妻たちの日常であり、いまのわたしの日常だったのです。
新しい事務所は電車で通勤しにくい場所だったので、絢子様を車で送り迎えするのがそれからのわたしの日課となりました。
*
絢子様をはじめて事務所までお送りした日のことは、一生忘れられません。
「いい?今日はあなたを宗一郎さんに紹介するから、きちんとあいさつするのよ。わたしは離婚したことになっているから、家の外ではあなたとは何の関係もないことを忘れないでね。余計なことは言わずに黙っているのよ」
あの日、車の後部座席から絢子様にそう言い含められ、運転席のわたしはやや緊張していました。事務所につくと、武内様のものらしいスポーツタイプのBMWが既に駐車場に止められています。わたしが運転しているのは絢子様が最近購入されたメルセデスベンツで、その2台が並ぶと、わたしの存在が実に矮小なものに感じられてなりませんでした。わたしが働いていたころの年収では、どちらも一生手が出そうにない車でしたから。
お恥ずかしい話ですが、オフィスで武内様にお会いするまで、わたしはてっきり「夫」として紹介してもらえるつもりでいました。しかし、絢子様は武内様にわたしを引き合わせるなり、「あ、武内先生。これ、うちのお手伝いさんです」と笑顔で紹介されたのでした。
「送り迎えや家の管理をしてもらっているから、何か御用があったら自由に使って下さいね。・・・ほら、ちゃんとあいさつしなさい!」
「ああ、君が例のね。アヤ・・・いや斎藤先生から聴いていますよ。我々の仕事はいろいろと多忙で家庭がおろそかになってしまうから、これから何かとお世話になるかと思いますが、よろしく」
あっけにとられているわたしに、武内様はそう言って手を差し出しました。学生時代からテニスで鍛えたという精悍な体つき、映画俳優のような艶のある顔立ち。わたしはすっかり意気消沈して、「はあ、よろしくお願いいたします」とこびを売るような笑顔を浮かべて、握手を交わしました。オンボロ軽自動車と最新のBMWがぶつかって、軽自動車だけが全損。そんな感じの初対面でした。
「はい、じゃあ誠子は家に帰ってなさい。20時になったらまた車で迎えに来るのよ」
そう言って絢子様はわたしを事務所から追い出し、ドアを閉めてしまいました。
「あのお手伝いさん、西湖さんっていうのか?珍しい名字だな」
「うふふ、どちらの出身なのかしら。新しく来たお手伝いさんなんでよく知らないんです」
中から漏れ聞こえた会話を聴いて、わたしはとたんに気恥ずかしくなり、逃げるように事務所をあとにしました。どうでもいいことですが、その後の補足をします。20時にわたしが事務所まで迎えにいくと、すでにオフィスには誰もおらず、絢子様の携帯に電話してみても応答がありません。日付が変わっても絢子様の行方はわからず、わたしは家に戻って一人で心配していました。午前1時を回ったころ、聞き慣れないエンジンの車が家の外に止まった気配があります。カーテンを開けて様子をうかがってみると、昼間見掛けた例のBMWから絢子様がおりてくるところでした。帰宅した絢子様は、わたしが迎えに来ることなどすっかり忘れて、武内様と都内のホテルへお食事に出掛けていたと悪びれた様子もなく明かしたのでした。
「え、予定が変わったらあなたにいちいち連絡しなきゃならないの?あーいちいちうるさいわね、そんなところだけ女らしいんだから。はいはい、わかりました」
絢子様はずいぶんお酒を召し上がっていたようで、いい気分が台無しとばかりにわたしにそう言い捨てると、さっさと床につかれました。「あんなに心配したのにあんまりだ」と思っていたわたしですが、ふと、わたしも会社員時代に家で待っている妻に対してそんなぞんざいな扱いをしたことがあるのを思い出しました。絢子様がそのときの仕返しを狙ったのかどうかはわかりません。ただその夜は、武内様が親しげに「絢子」と言いかけたことだけが、わたしの胸に引っかかって取れませんでした。
*
絢子様が独立されてから、わたしの扱いはどんどん「悪化」していったように感じます。クローゼットの中にあったわたしの服は、買い物や送り迎えの際に身に付ける最低限の服以外、いつの間にか処分されてしまいました。驚いて絢子様に尋ねると、「え、あなたにはもう必要ないでしょう?クローゼットが前から狭いと思ってたのよ」と当たり前のように返され、おまけに「そういえば、間違えてあなたの下着も全部捨てちゃったのよね。代わりを買ってきてあげたから、しばらくコレでもはいてなさい」と、『ドン・キホーテ』の黄色いビニール袋を投げ渡されました。中には、十代の女の子が身に付けるような可愛らしいデザインのパンツが7枚入っており、絢子様には「ちゃんと毎日履き替えるのよ。女の子は身だしなみをきちんとしないとね」とくすくす笑われてしまいました。
女性もののパンツを身に付けるのには、最初はかなり抵抗がありました・・・と言いたいところですが、絢子様との異常な生活にずっぷりと漬かっていたわたしには、さほどの抵抗感はありませんでした。わたしのペニスは平均よりかなり小さいですが、女性もののパンツには当然おさまらないので、どうしても無様な見た目になってしまいます。わたしが言われたとおりに着替えて恥ずかしい下着姿を披露すると、絢子様はたいへん大喜びされ、「うわ?、誠子ちゃんったらすっごい似合うじゃない!」と手を叩いて笑っていらっしゃいました。
「これからは男の服なんか着ないで、家ではちゃんと女の子らしく過ごすのよ。返事は?」
「はい・・・」
「御礼はどうしたの?」
「はい、ありがとうございました絢子様。かわいい服をプレゼントしてもらえて、誠子はとっても嬉しいです・・・」
「よしよし、かわいいね。あら?ちょっとクリトリスがおっきくなってるわよ、さっそく恥ずかしい染みを作っちゃって、誠子ちゃんはほんとに変態マゾね」
それから、わたしは男性用の服を着て外出するときも、ズボンの下には女性用の下着を身につけて生活しています。もう、わたしは絢子様には逆らえないのです。たとえば、絢子様がお食事をされているあいだ、わたしはまるで執事やメイドのようにテーブルの脇で直立不動し、トレイを抱えて女性用のパンツ一枚の姿で控えているのが日常になりました。絢子様のために料理をし、絢子様のために配膳し、絢子様のためにお風呂を準備する。お着替えの手伝いや、お体を洗うのもわたしの仕事です。それでも、わたしは絢子様のパートナーとして、最低限のプライドを手放さずに生きているつもりでした。絢子様がある晩、「そうそう。あたし、新しい彼氏ができたから」と言い出すまでは。
「はぁ!?彼氏って、な、何言ってるの!?」
「なによ主人に向かってその口の利き方は。お前に事前に断らないと、あたしは恋愛しちゃいけないってわけ?」
絢子様は口を尖らせ、悪びれる様子もなくそう言います。なおも抗議するわたしに、絢子様は噛んで含めるように話しました。
「いい?あなたは今でもあたしの夫のつもりかもしれないけど、何の稼ぎもないあなたを置いてあげているのはわたしの好意なのよ?ちゃんと約束したでしょう、これからはあたしのために誠心誠意尽くすって」
「そ、それだって、『妻として』ってことだったじゃないか。男女逆転しただけで、僕以外の人を好きになるなんて許されない・・・」
「なによ、久しぶりに男みたいな言葉遣いして。自分の格好、鏡で見てみたら?変態女装メイドさん。男ぶってるくせに、フリルのパンツがずいぶんお似合いだわ。粗末なクリチ●ポにピンクのリボンでも結んであげようか?」
「うう・・・」
「別にいいのよ、わたしは離婚しても。どうせ書類上だけのことだし。慰謝料請求でも調停でも裁判でもどれでもいいわよ、今から頑張って弁護士さんでも捜したら?」
意地悪そうに笑って、絢子様はそう言いました。絢子様は別にわたしに訴えられようと何をされようと、痛くもかゆくもないのですから当然でした。「夫婦逆転」の契約書のなかには、夫婦の共有財産についてわたしは一切請求しない旨の誓約書も含まれています。当然弁護士である彼女が作成した正式な書類ですから、訴えようが何をしようが、わたしに一切勝ち目はないのです。わたしには、いま自由に出来るお金すらありません。絢子様に頂いているお小遣いは、月たったの3万円でした。
「どうする?今のままでいたいなら、もちろん家に置いてあげるわよ。これまでどおりお小遣いもあげるし、何なら月1万円アップしてあげてもいいわ、あははっ。そうよね、あたしに彼氏ができたらさすがの誠子ちゃんも嫉妬しちゃうよね?。それじゃ慰謝料、月1万円ね。それで手打ちにしましょ」
彼女はそう笑って、プラダの財布から福沢諭吉を一枚差し出し、わたしの足下にピン、と投げました。
「ほら、せっかくあげたんだから拾いなさい。それともあたしと離婚する?ほーんと、どっちでもいいのよね、あたしとしては。そのお金でまずは男もののパンツでも買って、それから弁護士さんでも捜せば?事情を聴いて『勝てますよ原田さん!』って言ってくれる先生なんていないと思うけどね。あ、拾うの?拾っちゃうんだあ?!うわぁ情けな?い!もう男失格どころか人間失格じゃない?ほら、お小遣い月4万円だよ??嬉しい?嬉しいときはどうするんだっけ?」
もう、わたしには選択肢がありませんでした。というより、いつかこうなる気がしていた・・・というのが正確なところかもしれません。初めて事務所に送っていったあの日からか、それとも『夫婦逆転契約』をした日からか・・・。わたしはおずおずと絢子様の足下にひざまずき、拾った一万円をおがむように差し出しながら、いつものように土下座してお願いしました。
「お小遣いアップありがとうございます。これまで以上に一生懸命働きますので、これからも誠子をこの家に置いて下さい」
これが、わたしの敗北宣言でした。絢子様はソファに腰掛けたまま、ためらいなくわたしの頭に脚を置き、小さい子どもに言って聞かせるような口調で言いました。
「いいわよ、誠子ちゃん。これからは心を入れ替えて、かわいい女の子として生きることね」
むっちりとした太ももの先に大人なデザインをした下着がちらちらとのぞき見えて、わたしはこんな状況だというのにクリチ●ポを勃起させてしまいました。
「はい、絢子様。・・・今後のために、彼氏様のお名前を伺っても宜しいでしょうか」
わたしが尋ねると、絢子様はぐりぐりとわたしの頭を踏みながら、こう言いました。
「あなたのよ?く知っている人よ」
・・・この日を境に、わたしが絢子様にチ●ボを使ってご奉仕させていただくことはなくなりました。わたしに許された性行為はみじめな寝取られオナニーと絢子様の「オナニー補助」だけになり、わたしは絢子様と彼氏様・・・いや、武内様のラブラブHのお手伝いをさせていただく寝取られマゾ夫、いやそれ以下の存在「寝取られマゾメイド」に堕ちたのです。
(続く)
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