僕には、小学2年の時からずっと大好きな幼馴染みがいる。でも、幼馴染みの涼子は、学校でも評判の悪い栄治先輩と付き合い始めてしまった……気持ちを伝えることが出来ず、涼子を失ってしまったことを後悔する僕に、涼子は無邪気にエッチの練習をさせてくれと言った。
そして始まった、天国と地獄の日々。そして僕は、先輩の正体を知り、涼子を奪うことを心に決めた。
僕は、先輩に制裁を加えて、涼子の元からいなくなってもらおうと考えた。でも、なかなかアイデアが浮かばなかった。そもそも先輩は、最低のクズだけど、ボクシング部の主将をやしている。と言っても、うちの高校は弱小高なので、全然たいしたことはない。その上先輩は、読モみたいな事もやってるので、最近では練習もロクにしていないらしい。
でも、そんな中途半端な部活でも、素人よりは段違いに強いらしく、いわゆる不良のグループにも一目を置かれているらしい。
それに引き換え、僕はケンカもしたことがないような草食男子だ。
どうしたら、なにをしたらいいのだろう? と考えているうちに、ばったり先輩に出会ってしまった。
「アレ? 前島じゃん」
後ろから声をかけられ、振り向くと、ニヤけたイケメンがいた。僕は、動揺しながらも、結局ヘタレて挨拶をした。我ながら情けない……。
「そうだ、いいもん見せてやるよ。ウチ来いよw」
先輩は、嫌な笑い方をして言う。僕は、何となくその言い方に引っかかりも覚え、結局先輩について行った。
先輩は、僕を部屋に招き入れると、パソコンを起動して動画を再生した。僕は、嫌な予感しかしなかった。そしてそれは、半分的中した。
画面の中には、この前僕が盗撮した果凛ちゃんが裸で映った。
「スゲぇ可愛いだろw」
先輩は、ドヤ顔で言う。そして動画は、当然だけど、僕が盗撮したモノと同じ内容だった。違うのはアングルだけだ。
「これって、どうやって撮ったんですか?」
僕は、ムカつきながらもそう聞くと、
「これこれ、わかんねーだろ?」
と言いながら、本棚から辞典を取りだした。それは、中が本ではなくカメラで、隠し撮りするためのモノだった。僕は、
「これって、先輩ですか? 浮気してるんですか?」
と、ストレートに聞いた。
「俺だよ。昔のだってw 涼子がいるのに、浮気なんてあり得ないっしょw」
と、ごまかした。画面の中では、先輩が果凛ちゃんに酷いことをしている。
「涼子のことも……撮ってるんですか?」
僕は、恐る恐る聞いた。
「さぁ?w」
先輩はとぼけるだけで、答えない。
僕は、涼子も隠し撮りされていると確信した。心底気分が悪いが、その動画も回収しないと、涼子の未来に関わると思った。
気分が悪くなった僕は、先輩の部屋から出ようとした。そんな僕に、先輩はUSBメモリを投げてよこし、
「おかずにしろよw」
と、本当に嫌な笑顔で言った。
僕は自分の家に帰ると、部屋にすぐこもり、USBメモリの中を確認した。涼子が映っているのでは? そんな思いからだ。
でも、メモリの中に涼子の動画はなかった。
なかったが、中身は酷いものだった。中学生……もしかしたら、もっと年下の子や、同級生の母親のモノまであった。それも、何人も……。
同級生の母親とヤリまくるなんて、頭がいかれているとしか思えない。
40歳くらいの女性が、裸にエプロンをつけて恥ずかしそうにモジモジしている。
『本当に撮るの? ダメよ、他の人に見せたりしたら……』
その女性は、恥ずかしそうに言う。隠し撮りではなく、堂々と撮影をしているらしい。
「後ろ向いてよ」
先輩の声がする。すると、女性は後ろを向く。裸エプロンなので、お尻の割れ目まで丸見えだ。その裸体は、果凛ちゃんや涼子とは違い、ふくよかで少し弛んでいる。でも、凄く綺麗な人だと思った。何となく、見覚えもある感じだ。学校の行事なんかで見たのだと思う。美人なので印象に残ったのかもしれない。
「言われた通りにしてる?」
先輩が、冷たい声で言う。
『……はい……ちゃんと、家族の料理に、栄治君の精液混ぜてます……』
「ははw じゃあ、有美も俺の飲んでるんだw」
『はい……』
そこでやっとわかった。この女性は、有美先輩のママだ。有美先輩は、学校でもお嬢様として有名だ。凄くお金持ちの家だったはずだ。
そして有美先輩は顔も美形で、リアルお嬢様とか言われている。
その母親が、こんな事になっているなんて、とても信じられない。
「今度、有美も混ぜてセックスしようぜ」
先輩は、そんなとんでもない提案をする。
『ダメよ。栄治君は私だけのモノ♡ 有美にだって、貸してあげないんだから!』
振り返って有美ちゃんのママが言う。その顔は、まるで恋する少女だ。
「なにw そんなに俺のこと好き?」
得意げに言う先輩。
『もちろん。愛してるわ♡ 初めて人を好きになれたんだもん♡ 私の一番大切な人♡』
そう言って、カメラに近づく有美ママ。カメラがブレるが、すぐにキスしているところが映る。
しばらく濃厚に舌を絡めると、
『栄治君、愛してる。結婚しようね♡』
と、ラリッた顔で言う有美ママ。
「就職したらな。俺も早く真子と一緒になりたいって。愛してるよ♡」
先輩は一回り以上も年上の、しかも同級生の母親に対して、こんな事を言う。
栄治先輩は、想像以上に酷い男なのだと思う。
「今度さ、また撮影あるんだよね」
『また雑誌に載るの? 凄いわね!』
「あぁ、真子のおかげだよ。あのジャケットのおかげ」
『ふふw 嬉しい♡ あ、じゃあ、また何か買わないとね! どうする? なにが欲しいの?』
有美ママは、そんな提案をする。
「いいよ、そんなの。いつもいつも、悪いし」
先輩は、そんな風に遠慮した。
『なに言ってるの! そんなの気にしないの! いくらでもカードで買えるんだから、遠慮しないで♡』
「じゃあ、遠慮なく。愛してるよ♡」
そう言って、キスをする先輩。カメラは、いつの間にかどこかに置いたみたいだ。固定アングルで、キスする二人。有美ママは嬉しそうに舌を絡め、抱きつく。
先輩の手口がわかった。こうやって、同級生の母親から金を引っ張っている……本当に、吐き気がするほどのワルだ。
でも、いきなり解決した気がする。これを有美先輩の父親に見せれば、先輩は最後だと思う。先輩は、どうせわからないと思ったのだと思う。有美先輩や、有美ママのことを僕が知らないのだと思ったのだと思う。なので、こんな動画を貸したのだと思う。そんな、傲慢なところが、足元をすくうことになる。
画面の中では、有美ママがバックでハメられている。
『ンほおおォッ! お尻気持ちいいぃっ! 栄治ぃ! もっとしてぇっ!』
キッチンでアナルを犯されている有美ママ。凄く豪華な感じのキッチンだ。多分、有美先輩の自宅なんだと思う。人妻を、その自宅で犯す先輩。ある意味では凄いと思う。でも、本当に最悪だと思う。
「よし、電話しろよ」
先輩が冷たく命令する。
『うぅあぁ、はいぃ……しますぅ……』
有美ママはそう言うと、携帯電話を取りだした。そして、操作して耳に当てる。
その様子を、先輩はニヤニヤしながら見ている。とりあえず腰の動きは止めているが、有美ママはトロトロにとろけた顔になっている。
『あ、あなた、ゴメンなさい……お忙しいのに……』
有美ママが、バカ丁寧な言い方で会話を始める。夫に、いつもこんな丁寧なしゃべり方なんだろうか?
『うぅん、夕食、なにがいいかなぁって……』
会話を続ける有美ママ。先輩は、ゆっくりと腰を振り始める。
『ンンッ! ンッ! ゴメンなさい、ちょっと喉が……うぅん、大丈夫です……ンッ』
有美ママは、必○で声を抑え込もうとしている。顔はとろけきって、口はだらしなく半開きだ。そんな状態なのに、夫との会話を続ける有美ママ。
先輩は、軽薄で、見ていてムカムカするような笑みを浮かべながら、そっと腰を振る。
『んっ、はい、わ、わかり、ましたぁ……え? あぁ、はい……平気、です……ちょっと、階段登った、からぁ……息が……ンッ!』
関係ない僕がバレやしないかとドキドキするくらい、際どい会話を続ける有美ママ。
ちょっとのことで、家庭が壊れてしまうような状況なのに、信じられないくらいとろけて淫らな顔をする有美ママ。さっき、栄治先輩に、初めての恋だというようなことを言っていた。箱入りのお嬢様で、恋愛経験なく家庭を持ってしまったのかもしれない。
それが、娘の同級生と恋に落ちてしまった……しかもそれは、一方通行のいつわりの恋だ……。
すると、先輩が急に腰の動きを強くした。
慌てて自分の口を手で押さえる有美ママ。もう、必○という感じだ。
『ンッ! ンッ! ンーッ!』
有美ママは口を押さえているが、くぐもったうめきが漏れる。
『だ、大丈夫、です……ちょっと、電波がぁ……ンッ! は、はい……』
これでバレないのか? と、心配になる。
すると、いきなり有美ママが電話を操作して、ポンとキッチンの上に投げた。
『もうダメぇっ! イカせてぇっ! 栄治ぃ! 狂っちゃうぅっ!!』
と、泣きそうな声で叫んだ。有美ママはもう限界で、思わず電話を切って、イカせてもらうことを選んだようだ。
「酷いねw 切っちゃったよw」
先輩はそんな事を言いながら、腰をガンガン振る。
『オォオオおぁっ! ンオォオッ! お尻壊れるぅッ! イクっ! もっとぉッ! 栄治もっとぉッ!』
ほとんど絶叫状態だ。
そして、すぐに電話が鳴る。多分、途中で切れてしまって、心配で夫がかけてきているのだと思う。
でも、まったく無視して、あえぎ続ける有美ママ。
「あぁ、イク、イクぞ!」
『イッてっぇっ! 栄治ぃっ! 中にっ! こっちでイッてぇっ!』
有美ママがそんな風に絶叫する。すると先輩は、一旦チンポを抜いて、有美ママの膣に入れた。
『ンギィッ! イクっ! イクぅっ!』
有美ママは、アナルに入れていたチンポをそのまま膣に入れられたのに、全身を痙攣させるようにしてイッた。
そしてすぐに、
「イクっ!」
と、短く叫び、栄治先輩が中出しをキメた。
『うぅあぁあぁ……赤ちゃん、欲しいぃ……栄治ぃ、愛してるぅ……』
有美ママは、本当に幸せそうに言う。
「ほら、電話w やばいっしょ」
先輩は、うっとりとする有美ママに、クールにそう言った。
有美ママは、気だるそうに電話を手に取り、かけ始めた。
『ゴメンなさい。宅急便の方がみえたので……はい、わかりました……嬉しいです……私も、愛してます』
こんな会話をして、有美ママは電話を切った。
「なに、旦那のこと愛してるの?w」
先輩が、イジワルっぽく言う。
『そんなわけないじゃんw 早く○んで欲しいよ。今日も、塩分たっぷりのご飯作ってあげるからw 早く一緒になろうね♡』
有美ママは、本気の顔でそう言った。女は怖い……心底そう思った。
この動画で、すべてにケリをつける。それでいいはずだったのに、僕はどうしても自分でケリをつけたくなった。
怒りが渦巻いていたからだ。
僕は、親友の英夫に声をかけた。英夫は、中学からレスリングをしていて、全国中学生大会で準決勝まで行ったことがある男だ。そして、高一の時レスリング部に入ってすぐに、主将をボコボコにして結構大きな問題になった。結局、主将が悪いと言うことでケリが付いたが、英夫も退部、停学になった。
だけど、すぐに総合格闘技の修斗を始め、アマチュア大会で優勝をして、卒業を待たずにプロデビューが決まった男だ。
彼とは中学一年の時からの付き合いで、まだレスリングを始める前の英夫が、なぜかクラスの不良に目を付けられ、クラスの男子全員からハブられたときに、僕だけそうしなかったことで、親友になった。
英夫は、そのイジメがきっかけでレスリングを始め、あっという間に才能が開花し、そのいじめっ子は逆にクラスからのけ者にされた。
いじめられっ子から、学校の期待の星に変わった英夫は、そうなった後も僕と凄く仲良くしてくれた。
僕が、僕まではぶられるのを覚悟してまで、英夫と仲良くした理由は、涼子だ。涼子は、ハブられる英夫にも優しく接していた。そして僕に、マー君だけはそんな事しないよね? と言ってきた。その言葉のせいで、結局僕は英夫と親友になれた。
英夫に相談すると、
「栄治先輩か。いいぞ、俺がやるよ。アイツは気に入らねぇし」
と言った。でも、それじゃ意味がないということと、僕がやるということを力説すると、
「難しいぞ。素人がボクサーに勝てる確率はほぼゼロだぞ」
と言った。でも、英夫は知恵を絞ってくれた。
そして、タックル一本に絞って僕を特訓してくれた。とにかく倒して馬乗りになって、顔に頭突きをしろ。
作戦としてはそれだけだった。なので、とにかくタックルだけを繰り返し繰り返し、何度も反復した。筋肉痛で、歩くのも出来なくなるほど練習し、そのうち練習のあとに筋肉痛にならなくなった頃、
「タックルだけなら、合格。今なら、20パーくらいチャンスあると思うぞ」
と、英夫は言ってくれた。これだけ練習しても、20パーなのか……と思いながらも、5回に一度はいけるってことかと思い直した。
「まぁ、負けても俺がフォローするよ」
と、英夫は言ってくれたが、僕は負けても手を出さないでくれとお願いした。
「ケンカは、技術とかじゃねーから。気持ち折れなきゃ、負けじゃねーよ」
と言ってくれた。
この特訓をしている間も、涼子はいつも通り僕に接してきたし、実は例の練習もした……でも、キスしてエッチまでしてるのに、凄く壁を感じてしまった。
僕は絶対に涼子を先輩から救い出すと、強く決意した。
そして、先輩を呼び出した。僕は、すべて一人でやると言ったが、英夫は立ち会うと言ってきかなかった。そして絶対に手は出さないと約束してくれたが、僕のことを本気で心配してくれているみたいだった。
僕は、彼と友達になれたことが、学生時代の唯一の収穫だったのかもしれないと思った。
そして、英夫が教えてくれた廃工場で先輩と対峙した。
「なんだよ話って。それに、なんで所がいるんだよ」
と、英夫のことを凄く警戒している感じだ。
「俺はただの立会いっす。前島が、アンタをぶちのめすって聞かないもんでw」
英夫は、舐め腐った態度を取る。でも、栄治先輩は怒ることもなく、
「はぁ? なんで? 俺、オマエになんかしたっけ?」
と、僕の方を威嚇するように言った。先輩は、英夫が参戦しないと知り、余裕を取り戻した感じだ。
「涼子を、騙してますよね」
「してねーよ」
先輩は、妙に余裕な態度だ。僕なんか、恐るるに足らずと思っているのだと思う。
「あの動画、最近のばっかりじゃないですか」
「ちげーよ。て言うか、そうだとしても、オマエにはかんけーねーだろ?」
正直、先輩にこんな風に強く言われて、足が震えだした。
「涼子と別れて下さい」
僕は、きっぱりと言いきった。
「え? いいよ、別に。もう別れようかなって思ってたしw」
こんな事を言い出す先輩。僕は、気が抜けてしまった。
「な、なんでですか?」
僕は、理由を聞いた。
「アイツ、なんか妙に上手いんだよな。実は浮気してんじゃねーかな? ヤリマンだよ。アソコもガバガバでユルユルだしw」
先輩がこんな事を言う。僕は、一瞬で怒りが振り切れた。そして、先輩に殴りかかった。あんなにタックルを練習したのに、殴りかかってしまった……。
英夫の、あちゃーというような声が聞こえた途端、鼻に衝撃を受けて、涙と鼻血が吹き出した。何をされたのかすらまったくわからないまま、その衝撃が2回続き、僕は地面にへたり込んでしまった。
後で英夫に聞いた話だが、ジャブを3発食らっただけらしい。でも、生まれて初めて顔を殴られ、僕はもう気持ちが折れてしまった。
「何してんのw 俺にパンチがあたるかよw イケメンの顔、狙ってんじぇねーよw」
先輩は、余裕たっぷりだ。でも、チラチラと英夫のことを気にしている。
その様子を見て、英夫の言葉を思いだした。そして、涼子の事をバカにした先輩に対する怒りが復活した。
僕は立ち上がり、
「これ、なんですか? もしかしてパンチですか? ボクサーって、弱いんですねw」
と、本当は痛くて泣きそうだったのに、なんとかそう言った。
「はぁ? テメェ、○す」
馬鹿な先輩は、そう言って僕に踏み込んできた。僕は、自分が意識していないのに、英夫と特訓したタックルの動きをしていた。そして、先輩の太もも裏を持ち上げるように地面に押し倒し、特訓通り馬乗りになれた。
「ざっけんな、いってーな! どけよ! オラ!」
僕をにらみながら怒鳴る先輩。僕は、そのまま抱きつくようにして、思いきり額を先輩の鼻筋に叩き込んだ。
ゴンっ! と、鈍い音と、額の鋭い痛み。でも、一発で先輩は鼻血を吹き出した。
「て、てめ、待て、オイ!」
何か言いかけていたが、僕はさらに頭突きを叩き込んだ。さっきよりも手応えがあり、先輩の鼻が曲がったのがわかる。
「や、止めろ、顔は! 止めてくれ!」
泣き声で叫ぶ先輩。僕は、そのまま3発目を入れた。
「ひっぐぅっ! うぅあ、やめ、止めて、ぐぅ」
先輩は、一気に弱気になる。そして、泣きながらそんな事を言う。僕は、そのまま4発目を入れた。先輩が変な風に逃げたので、先輩の口に額が突き刺さってしまった。僕は、額に鋭い痛みを感じて、手で触ってみた。すると、何かが刺さっていた。慌てて抜くと、先輩の前歯だった。
口を閉じてるのに、どうして? と思ってよく見ると、先輩の唇の上が裂けていた。歯が唇の上の皮膚を突き破ってしまったのを見て、僕は怖くなった。
「や、やめ、もう、やめて、やめてくれ……」
先輩は、恐怖に引きつった顔で言う。
「……まれ……」
僕は、緊張と興奮で声が上手くでない。
「え? な、なに?」
恐怖に引きつった顔で先輩が言う。
「涼子に謝れっ!!」
僕は、全力で怒鳴った。
「す、すまなかった! 俺が悪かった! もう別れる!」
必○で叫ぶ先輩。
僕は、もう終わったと思った。先輩の上からどこうとした瞬間、
「がぁっ!」
と、先輩が叫んだ。驚いて横を見ると、英夫が立っていた。そして、先輩の右腕を思いきり踏みつけていた。その先輩の右手には、大きな石が握られていた。
「やるからには徹底的にヤレって言ったろ? 中途半端はすべて失うぞ」
英夫は、冷たい口調で言った。先輩は、恐怖に引きつった目で僕を見る。僕は、そのまま頭突きを続けた。2回、3回、4回目をしたときには、すでに先輩は何も言わなくなっていた。そのあとさらに、3回したあと、英夫が僕の肩を持ち、
「オマエの勝ちだ」
と言ってくれた。
そのあとは、勝った自覚もなく、ただ呆然とする僕をおいて、英夫が先輩の顔を携帯で撮影する。それだけではなく、全裸に剥いて撮影した。
ひとしきり撮影が終わると、持っていたペットボトルの水を先輩の顔にぶっかけた。
終わった直後はそうでもなかったのに、まぶたや鼻が腫れて、酷い顔になっている。
「う、うぅあ、ヒィッ! もう止めてっ! やめて下さいっ! ゴメンなさいぃっ! ヒィッ!」
怯えて叫ぶ先輩。前歯が3本もなくなっている。
震える先輩を引きづり起し、英夫が言う。
「涼子ちゃんの動画、よこせ。行くぞ、てめーの家」
「わかりましたっ! もうやめてぇ!」
女みたいに叫ぶ先輩。やっぱり、中途半端はダメだなとあらためて知った。ここまでやれば、もうあとは簡単だと思う。
そして、ボコボコの先輩を連れて先輩の家に行き、動画データを回収した。
「他にもあったら、今度は俺が相手だからな」
と、英夫が言ってくれた。先輩は、もう逆らう気力もゼロのようで、涼子以外のデータも、全部渡してきた。
「後は任せろ」
英夫はそう言って、涼子以外のデータを持って行った。
そのあとは、展開が早かった。僕と涼子の話ではないので、かいつまむが、先輩は同級生の父親達から複数の民事訴訟を起こされた。
先輩の両親も訴えれたそうだ。そのあとどうなったのかは、不明だ。先輩はあのあと一度も学校に来なかったし、すぐに引っ越してしまったからだ。
英夫の話では、両親は離婚して、先輩は祖父祖母の家にいるそうだ。曲がった鼻は完全には戻らなかったらしいし、右目だけ一重まぶたになってしまったとのことだ。そして、抜けた歯も入れられない状況らしい。
「なんで知ってるの?」
僕が質問すると、英夫は実際に先輩を見に行ったらしい。単に、好奇心で行ったとのことだ。
「アイツがモテることはもうねーよw」
と、楽しそうに言う英夫。実は、英夫が好きだった女の子も、先輩に酷い目にあっていたらしい。
涼子は、急に先輩と連絡が付かなくなり、凄く慌てていたし、心配していた。でも、噂で先輩の悪事のことを知ると、もう何も言わなくなった。
そして、どことなく影がある感じになった。僕と顔を合わせても、一瞬ニコッとしてくれるが、挨拶程度で終わってしまう感じだ。時間が解決するのを待つしかないのかな? と思った。
そして僕は、涼子の動画を処分しようと思った。でも、色々と考えて、全部見てから処分することにした。
見ずに処分してしまったら、僕は自分の中でこの件を消化出来ないと思ったからだ。そして、全部見ても涼子への気持ちが変わらなければ、涼子にもう一度告白して気持ちを伝えようと思った。
『こんなの、絶対に見えちゃいます!』
涼子は、恐ろしく丈の短いミニスカートをはいている。上は普通のブラウスという感じでも、スカートが短すぎて、エロコスプレーヤーみたいになってしまっている。
「いいから、行くぞ。開けるぞ」
そう言って、先輩はトイレのドアを開ける。そこは、いつものショッピングモールだった。
『ダメだよぉ……見えちゃうもん』
涼子はそう言いながらも、先輩に手を引かれたのか、外に出た。先に歩く涼子を、後ろから撮影する先輩といった感じだ。そのあまりに短いスカートは、すれ違う男達の視線をほぼ100%集めていた。
「みんな見てるぞw」
先輩のイヤらしい声がする。高校生同士のカップルで、こんな露出AVみたいなことをするなんて、あり得ないと思う。先輩は、人妻とアブノーマルなエッチをしすぎて、おかしくなっていたのかもしれない。
『ダメだよぉ……知り合いに見られるかも……』
涼子は、泣きそうな顔でスカートの裾を下に引っ張っている。こんな扱いをされていたのに、別れようとしなかった涼子。恋は盲目にしても、限度があると思う。
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