突然の事故で妻・遙海が逝って十日、何も手につかず無為に日を送っていた私の許に一通の手紙が舞い込みました。
「奥様の突然のご逝去、お悔やみ申し上げます。
亡くなられた状況からお心を痛めておられることとお察しいたしますが、
どうか奥様のことを理解し許してあげてください。
そのためにも一度、ここをお訪ねください」
差出人の名は、ありませんでしたが、整った女文字で書かれた手紙には一枚の地図と鍵が同封されていました。
鍵は、レンタルルームのもののようです。
胸騒ぎを抑えながら私は、地図に示された場所へ急ぎました。
「○○署交通課の榎本と申しますが……」
突然、かかってきた一本の電話がこれほど私の人生を狂わせるとは……。それは勤務時間がそろそろ終わる頃でした。
レントゲン写真の読影をしていた私に電話の主は落ち着いた低い声で、妻が事故にあって救急病院に搬送されたことを告げました。
取るものも取りあえず、隣市の病院へ急ぎましたが、そこで待っていた警察官から妻の○を知らされたのです。
「乗用車での単独事故でした」
突然のことに頭の中が真っ白になった私に、榎本と名告った巡査部長は淡々とした口調 で説明してくれました。
「奥様は、男性の運転するセダンの助手席に乗っておられたのですが、山間部の県道でカーブを曲がり切れずに15メートルほど下の谷に車ごと転落したようです。二人ともほぼ即○状態でした」
この日、妻は、行きつけの園芸サークルに行ってくると言っていました。
おそらく、私が出勤した後、お昼前には家を出たのだと思います。
園芸サークルには山野草が趣味の会員もいると言っていましたから、観察か採集に山へ向かったのだろうかと、ぼうっとなった頭で巡査部長の説明を聞いていました。
「今、ご遺体の解剖を行っています」
「えっ、解剖ですか……」
驚きました。
交通事故○で解剖が必要なのかと……。
「後ろを走っていた車の二人が転落の瞬間を目撃していまして、事故そのものに事件性はないと考えていますが、実は若干不審な点がありまして……」
言いにくそうに口ごもる巡査部長の様子に私は、言い知れぬ不安を覚えました。
事故を起こすほんの少し前、妻達の車は、電力会社の社員二人が乗るバンを猛スピードで追い越していったと言います。
その県道は、つづら折りの続く山道で、目撃者の二人は〈危ない運転をする奴だ〉と思ったそうです。
追い越して間もなく、妻達の車は、右カーブを曲がり切れずにガードレールのない山道から転落したと言います。
直前に踏んだブレーキ痕から時速80キロ近く出していたようだと、巡査部長は説明してくれました。
「目撃した二人が携帯で119番通報したのですが、奥様も男性も全身打撲でほぼ即○状態でした。ところが、不審な点というのがですね……」
顔を伏せながら巡査部長は言いにくそうに続けます。
「不審な点というのは、男性の方なのですが、下半身を剥き出しにして運転していたようなのです」
「えっ……」
思っても見なかったことに私は言葉を失いました。
「そういう状況ですので、今、解剖を行って詳しい状況を調べさせていただいているんです」
その時、どんな顔で巡査部長の言葉を聞いていたのかを私は、今に至るまで思い出すことができません。
私の様子を心配した榎本巡査部長に付き添われて霊安室に通されたのは、やがて真夜中を迎える頃でした。
「監察医の水野です。竹下さんですね、お悔やみ申し上げます。
奥様の直接的な○因は、 後頭部の陥没骨折による脳挫傷でした。
その傷は、運転席のハンドルで付いたものと見られます」
「事故車のハンドル下部に奥様の毛髪が付着していました」
巡査部長が補足を入れます。
「それは……」
「ご主人にこんなことを申し上げるのは忍びないのですが、
奥様は運転席の男性の下腹部に顔を伏せた状態で事故に遭われたようです。
つまり、いわゆるフェラチオを行っている時に事故が起きたと思われます。
誠に言いにくいのですが、奥様の口中には男性の精液が認められました」
大地に開いた暗い割れ目の中に落ち込んでいくような錯覚に陥り、私は思わず妻の遺体が載ったストレッチャーの持ち手に寄りかかってしまいました。
「大丈夫ですか? それから更に申しますと、奥様は事故の直前に男性と性行為を持っていたと見られます。
膣内からも精液が検出されています」
真っ白になった頭の中に、淡々とした口調で説明を続ける監察医の言葉が虚ろに響くのを私はただ無表情に聞いていたのでした。
「イレギュラーな点はありますが、事件性はないと判断しますので、ご遺体をお引き取りください」
「それから、ご遺体はこちらで清拭を済ませておきました。ご愁傷様でございます」
巡査部長と監察医に見送られ、葬儀社のワゴン車で病院を出たのは夜中を2時間ほども回った頃でした。
妻の両親は、結婚以前に○んでいましたし、私にも両親・兄弟ともにいませんので、従兄や親しい同僚だけでこぢんまりとした葬儀を出しました。
もちろん、誰にも事故の詳しい状況は話す気になれません。
傷一つない妻の○に顔は眠るかのように穏やかなものでした。
しかし、棺に横たわる妻の美しい顔がまるで全くの他人のもののように私には映ります。
見慣れたはずの妻の顔の奥には、まぎれもなく私の知らない女がいたのです。
泣き崩れることもなく淡々と弔問者に応対する私を、周りの者は、突然の出来事に動転して涙も出ないのだろうと思ったようでしたが、それは大いなる誤解でした。
私の心中は氷のように冷え切っていたのです。
運転者は、木原貴史という男でした。
バツイチの独身者で、経営コンサルタントを営んでいたと言うことです。
身よりらしい身よりもなく、結局、遺体は遠縁の親戚が引き取って葬儀を出したと聞きました。
妻と木原は、事故を起こした県道を3キロほど奥へ行ったラブホテルで情交していたということです。
昼少し前にチェックインをし、事故を起こす15分ほど前に二人でホテルを出たようです。
つまり、5時間近くも二人はラブホテルで時を過ごしていたことになります。
警察は、ホテルの従業員にも事情を聴き、同時刻にホテルを利用した客を調べようともしたと言いますが、密室性の高いラブホテルですから、ほとんど成果は上がらなかったと聞きました。
しかし、妻と木原が利用した部屋を清掃した従業員は、同じ部屋にもう一人、女性が居たのではないかと警察に話したそうです。
備え付けのシャワーキャップ以外に、別のシャワーキャップが脱衣所に落ちていたと言います。
しかし、妻と木原の体からは、アルコールや薬物は検出されず、目撃証言からも、事故についてはスピードの出し過ぎでの単独事故以外に考えられないことから、警察はそれ以上の捜査は不必要と判断したと後日、巡査部長から聞かされました。
職場に休職願を出し、何するともなく日を送っていた私に件の手紙が届いたのです。
レンタルルームは、県庁所在地の駅裏にありました。
管理人に、部屋を借りていた妻が○亡したと事情を話すと、私の身元を確認の上、部屋を開けてくれました。
八畳ほどの倉庫のような部屋の中には、おびただしい数の衣装が吊されていました。
「私はこれで……」
管理人が去った後、私はしばらく茫然として部屋の中に佇んでいました。
部屋に溢れている衣装は、およそ私が知っていた妻の趣味に合うものではありませんでした。
けばけばしいとしか言いようのない衣装の山の中に、数え切れないほどの下着が吊されていました。
そして、チェストの中にも詰まったそれらの下着は、どれもこれも一般的な主婦が身につけるようなものではありませんでした。
色とりどりのガーターベルト、極小のビキニパンティやもっと際どいTバックショーツ。
ほとんどのパンティは、恥毛が透けて見えるようなスケスケのレースで作られています。
いくら鈍な私でも、それらがみんな、男との逢瀬の際に、男を興奮させるために女が身につける下着だということくらい分かりました。
下着だけではありませんでした。
チェストの下の段には、見たこともないグロテスクなオモチャが詰まっていました。
大小様々、何本ものバイブレーターにディルド、手錠や目隠し、猿轡に混じって、使い込まれた麻縄や蝋燭、果てはガラス製の浣腸器まで……。
アブノーマルなセックスやSMプレイに使われる道具一式が仕舞われていたのです。
それらのおぞましい道具と私の知っている清楚な妻とは、どう理解しようとしても私の中で結びつきません。
ただ、それらが整然と整理して仕舞われている様に、几帳面な妻の面影が浮かぶだけです。
小一時間も経ったでしょうか。
我に帰った私は、衣装の奥にラックに並ぶ数十本のビデオテープを見つけました。
背表紙にはタイトルはなく、通し番号とイニシャルと覚しき文字、年月日が記されています。
よく見れば、かなりの数のテープが抜き取られているようです。
胸を突くような不安に苛まれ、私はすべてのビデオテープを紙袋に詰めると部屋を出ました。
「あの部屋の契約は一応今月いっぱいになっているのですが、どうなさいますか?」
そう尋ねる管理人に、整理に少し時間がかかるので契約を延長したいと答え、手続きを済ませて家路に着きました。
夕闇の迫るマンションの一室で、私は電気も点けずにソファに蹲っていました。
レンタルルームから帰り着いてから、もう3時間近くが経っていました。
あの部屋の存在は、妻が私の知らないところで、全く別の存在として生きていたのだという事実を容赦なく私に突きつけていました。その事実を認めないわけにいかないことは理解できても、恐らく、それを完全に証明するであろう持ち帰ったビデオテープを見る勇気が私にはありませんでした。
『どうか奥様のことを理解し許してあげてください』
誰とも知れぬ手紙の主の言葉が頭の中にこだまのように何度も響きます。
私は意を決して、一本のテープを選び出しました。
それのテープには背表紙に、No。54の1、H。T&T。K、0 8/03/18と記されていました。
その日付には記憶がありました。
学会出席のため、私が二泊三日で上京した日の日付でした。
背表紙に書かれたものと同じタイトルバックがしばらく続いた後、リビングのモニタに映像が映し出されました。
それはラブホテルの室内のようでした。
中央に特大サイズのダブルベッド、奥の方にはガラス張りのバスルームが映っています。
カメラは三脚に固定されているらしく、映像は薄暗いながらとても鮮明なものでした。
よく見ると、バスルームの中に動きがあります。
湯気と水滴でガラスが曇ってはっきりとはしませんが、誰かがシャワーを浴びているようです。
目を凝らして見るとそれは二人の男女でした。
シャワーの下で二人はぴったりと抱き合い激しく口づけを交わしているのです。
女の顔はぼんやりしてはっきりしませんが、容姿からして私は、妻だと一瞬に覚りました。
後頭部を一撃されたような衝撃が走り、一気に血の気が引いて視野が真っ暗になります。
大柄な男が小柄な女の体を抱き寄せ、覆い被さるように唇を奪っています。
そして、女は男の首に下から両手ですがりついて口づけに応えているのです。
どう見ても力ずくで嫌々行われている行為には見えません。
その間も男の両手は、豊かな二つの乳房を代わる代わる押し揉み、ミッシリと実った尻の丘を荒々しく掴んでいました。
尻に回されていた男の手が、前に回り女の股間に滑り込んだ時、女は仰け反って唇を離しました。
濡れたガラス越しに見えた女の顔は、まぎれもない妻の顔でした。
その瞬間、私の中で、大切な何かが弾け飛びました。
男の手が股間で微妙に蠢く度に、妻は背中を仰け反らして体を震わせます。
前に突き出されて揺れる双丘に男が屈み込むようにして口を付ければ、
妻の震えはにわかに激しさを増し、腰が悩ましくくねり始めます。
ぼやけたガラスの向こうで、妻は大きく口を開けて喘いでいるようでしたが、防音が良いのか声は聞こえません。
やがて、妻の体がガクガクと痙攣し、二度、三度と男の体に強くすがりつくような動きを見せました。
その時、微かでしたが妻の叫びが私の耳に確かに届きました。
それは、私は一度も聞いたことのないような、あからさまに絶頂を告げる高い叫びでした。
妻・遙海は今から8年前、私が勤めている病院に事務職として勤め始めました。
中学生の頃に両親と○別した妻は、叔父夫婦に育てられ短大を出た後、都内の病院で勤務していました。
こちらへの転勤後、どちらからともなく惹かれ合って交際が始まり、2年後に式を挙げ、それを機に妻は病院を退職しました。
妻には妹がいるのですが、こちらは叔母夫婦に預けられ、その後、叔父・叔母が兄妹同士で疎遠になって、成人してからは会うこともなく過ごしてきたと言います。
造り酒屋として資産家だった妻の父の○後、兄妹間で遺産を巡る争いが起きたのだそうですが、妻は詳しく語ろうとしませんでした。そんなわけで、結婚式にも妻側の親戚は叔父夫婦が参列しただけで、私は今に至るまで妻の妹に会ったことはありません。
妻を育ててくれた叔父夫婦も3年ほど前に、相次いで病○したため、妻の葬儀には妻側の親族は誰一人来ませんでした。
遙海は、私にとって理想的な妻でした。
病院の勤務医の仕事は、経験のない人には想像もつかないほどハードなものです。
妻としての遙海は、医療関係者であったこともあり、そのことを熟知していました。
もし、遙海と一緒でなかったならば、私は勤務医を続けることができなかっただろうと思います。
それくらい細やかに、妻は私の心と体を毎日気遣ってくれました。いや、私はそう思い込んでいました。
セックスの面では、妻はほんとうに慎ましい女でした。
今となっては、私の前ではという意味ですが……。
妻が初めての女というわけではありませんが、私自身も、セックスには奥手で淡泊な男でした。
性での結びつきよりも、互いの価値観の共有や思いやりの深さでこそ、夫婦はより深い結びつきを得られるものだと思っていました。
そして、妻も同じような思いで、そんな私との生活に満足しているものだと思い込んでいました。
そんな私の思い込みの陰で、私には素振りも見せずに妻は私の全く知らない別の「女」として生きてきたのでした。
迂闊な男と笑われるかも知れませんが、妻の○後になって初めて、そのことを思い知らされるとは夫として残酷の極みでした。
いつの間にか画面が切り替わっています。
バスルームでの戯れを終えたのか、男は腰にタオルを巻いてダブルベッドに仰向けになって新聞を読んでいます。
妻の姿は視界にはありませんが、時折聞こえる声からすると同じ部屋に居るようでした。
カメラはベッド全体を足元の高い位置から写し込んでいます。
「お待たせしました」という声と共に女の姿が現れました。
それは紛うことない妻・遙海でした。
ベビードール、いやキャミソールというのでしょうか、淡いグリーンの薄物を纏っただけの姿で、男の待つベッドに妻はもぐり込みます。
透き通ったキャミソールの下に、妻はパンティを穿いているだけでブラジャーは着けていません。
ミニのキャミソールから、はみ出した艶やかな太腿の白さが目を射ります。
上掛けをまくってもぐり込む時、女らしく盛り上がった妻の尻が突き出され熟れた果実のようにうねります。
その時、新聞を手から離し、隠されていた男の顔がカメラに晒されます。
その顔は、あの日、霊安室で見た木原の顔に間違いありません。
やはり、この男が妻をおもちゃにしていたのだと、私は錐を指されるような痛みを胸に感じながら画面から目を離すことができませんでした。
恐らく妻と木原は、これまでにも何度も秘密の逢瀬を重ねてきたに違いありません。
ベッドの中での二人は、恋人か長年連れ添った夫婦のように自然で馴染みきった男と女の姿でした。
仰向けの男の体に寄り添い、妻は甘えた仕草で男の胸に頬を擦り寄せていきます。
逞しく厚い男の胸に生えた胸毛を指先で弄りながら、妻は男の顔を見上げて言いました。
「木原さん、今日はたっぷりね、お願い」
妻の口から、こんな言葉が出ようとは想像もつきませんでした。
私の知る控えめで淑やかな妻は、夫婦の交わりの時でも自分から積極的に求めたり、ましてそれを口に出してねだるようなことは一度もありませんでした。
妻の豊かに張りつめた胸にむっちりとしたヒップ、そして、その間の腰は小気味よくくびれていて、胸と尻の豊かさを引き立てます。
しかし、着痩せするタイプなのか、服を着ていれば外からは、そんな風には見えません。
整ってはいても決して冷たくは見えない愛くるしい顔立ちの下に、熟れた女の体を隠している妻は、私にとって最高の女でした。
付き合いだして男と女の関係を結び、結婚し今に至るまで、何度、そんな妻の女らしい体を味わったことか。
けれども遙海は、私に抱かれてもどこまでも淑やかな妻でした。
決して不感症というわけではありませんでしたが、あのときの声も慎ましやかで、感じながらも、ついつい漏れてしまう喘ぎ声を押し○しながら達する妻をとても愛おしく思っていたのでした。
ですから、さっき見たバスルームの戯れでの憚りを忘れたエクスタシーの姿や、今目の前で見る、男に絡みつくようにしながらの睦
言など、到底、私の知る妻からは想像もつきません。
しかし、ビデオに記録された容姿も声も、妻・遙海のものであることは否定できない冷酷な事実なのでした。
私の知らない妻が、ビデオ映像とはいえ、目の前で男と睦み合っています。
「今日から旦那さんは出張だったよな。昨日の晩は可愛がってもらったんじゃないのか? 」
「いやっ、主人のことは言わないで!」
私のことを木原が口にしたとたん、妻は身を固くして驚くほど激しい口調で木原の言葉を遮りました。
ある意味、私は妻のその態度にホッとしました。
木原と不倫関係にあっても、遙海は私に対する罪悪感だけは持っていたと感じたからです。
しかし、次の瞬間、私の淡い願望は粉々に砕かれてしまいます。
「今日の遙海はいつもとは違う遙海よ。今日の遙海を可愛がってぇ」
「ああ、そうだったな。俺に抱かれる時は、もう一人の遙海に変身するんだったな。よし、たっぷりと可愛がってあげるよ。いけない遙海を……」
木原は私の妻を、さも当たり前のように「遙海」と呼び捨てました。
そう言うと木原は体勢を入れ替え、抱きすくめるようにして上から唇を奪いました。
心待ちにしていたかのように、自分から唇を開き男のキスを受け入れていく妻。
男の頭の影になって二人の口元はほとんど見えませんが、マイクが捉える濡れた音が口づけの深さを伝えます。
次第に激しさを増す口づけに、妻が洩らす甘い鼻声が大きくなっていくのは息苦しさのせいだけではないようでした。
3分以上も二人のキスは続いています。
妻はもう、塞がれた口で絶え間なしに喘ぎながら腰をくねらせています。
男の背中に回された手が、すがりつくような動きでさまよい、唇を吸い合う濡れた音が私の耳に突き刺さります。
「あぅっ、ああっ……」
男の大きな手が、キャミソールの上から妻の胸を覆い、絞り込むような動きを始めると、逃れるように離した妻の唇から、熱い吐息と一緒に短い叫びが上がりました。。
男の手は乳房の張りを楽しむように自在に動き、それに応じて豊かな双丘が重たげに揺れます。
キャミソールをまくり上げられれば、たわわに実った乳房の中央に、固くしこった両の乳首が突き上げていました。
そこへ顔を伏せると、すぐに男は乳首を口に含み舌を絡ませ吸い始めました。
チュッ、ジュッ、ジュルッ、チュバッ……
「んんっ、はぁっ、あぁっ……」
音を立てて激しく乳首を吸われ、もう片方の突起を指先で払うように弄られ、遙海は胸を突き上げるように身を反り返えらせます。
両乳首への口と指での愛撫が交互に繰り返され、ただでさえ豊満な胸が波打つように男の眼前に突き出される様は、妻自らが乳首への
激しい愛撫を欲しているとしか思えないあからさまな動きでした。
やがて男は乳首から口を離し、妻の耳たぶを甘噛みしながら、親指と人差し指で両方の乳首を摘みひねり上げます。
「あぁっ……だめぇぇ……はあぁあっ……」
激しい喘ぎとともに高い嬌声が妻の口から飛び出します。
男の指の動きは、愛撫と言うよりも拷問に近いほど荒々しいものでした。
丘の上の敏感な蕾を摘み上げ、ひねり、千切れてしまうほど引っ張り上げるのです。
妻は、乳首の敏感な女です。
私との時でも乳首への愛撫だけで十分にあそこを濡らします。
逆に少し乱暴になると、痛みを感じるらしく、夫婦の閨では乳首へのキスも指での愛撫もソフトタッチを心がけてきました。
そんな風に私が愛おしんできた妻のデリケートな蕾をこんなに乱暴に痛めつけるように扱うとは……。
私は男に対して○意に近い憎悪を感じながらも画面から目を離すことができませんでした。
「あぁっ……いっ……いぃっ……」
上掛けをはね飛ばす勢いで脚をばたつかせ、妻は叫ぶように快感を訴えます。まるで強
姦魔が女に対して取るようにな、女の体の感覚を無視した行為であるはずなのに、痛みを
感じて嫌がるどころか、あの淑やかな妻がベッドの上で狂おしく体をくねらせ、快楽を訴える叫びを上げているのです。
「あぁん、いいのぉ……もっと、もっとよぉ……いじめてっ……遙海をいじめてぇ!… …」
荒々しい乳首攻めに、無残にも二つの蕾は固く真っ赤に腫れ上がっているにもかかわらず、妻は、更に強い刺激を求めて嬌声を上げながら男にしがみつき、おねだりの言葉を叫びます。
映像に記録された妻は、我が妻でありながら、すでに木原という男のものになりきっていました。
そんな隠された事実を妻の○後に知らされるとは……。胸
を掻き毟られるような怒りを感じて画面を見つめる私の顔は鬼の様相を示していたことでしょう。
二人の激しい動きに上掛けはベッドからずり落ち、妻はレースで飾られた極小のパンティ一枚のみの裸身をすっかり晒してしまいました。
もう既に官能の虜になっているのでしょう、膝を立て艶やかな太腿を大きくM字に開いた妻は、尻をシーツに擦りつけるように絶え間なくくねらせます。
色白の体が桜色に染まり、滑らかな肌が汗ばんでオイルを塗ったように光っていました。
その時、あることに気づいて、私の目は一点に吸い寄せられました。
漆黒の恥毛がレースに透けるパンティの、ぴったりと股間を被う部分に濡れたような染みが広がっていたのです。
その事実に打ちのめされて私は言葉を失い、体を震わせながら食い入るようにその一点を凝視し続けました。。
「おっぱいだけじゃイヤっ、、オ、オマンコも可愛がってぇ!」
信じられませんでした。
妻がこんなことを口にするなんて……。結 婚前も含め私との交 わりの中で、一度も口にしたことすらない淫らな四文字言葉を叫んで遙海は、女にとって一番恥ずかしい部分への愛撫を自らせがむのでした。
「オマンコがどうなってるんだ? 遙海」
「ああっ、熱いの、オマンコ熱くなってるのぉ……」
からかうような男の問いかけに、堪らない様子で細腰をくねらせ切れ切れに答える遙海。
「熱いだけなのか?」
「はんっ……もう、溢れてるのぉ、オマンコ……」
「じゃあ、確かめてみろよ」
妻の次の行為は私を更に驚かせるものでした。
シーツの上を這い回っていた妻の右手が滑らかな腹をすべり降り、ゴムをくぐってパンティの中に差し込まれたのです。
「ああんっ……いっぱい……」
その言葉どおり、パンティから現れた遙海の指先には透明な粘液が糸を引きます。
「ねえ、お願い、オマンコ、可愛がって……お願いよぉ……」
クールな表情で見おろす男の顔を、目元をすっかり上気させた顔で見つめながら妻は切なく体をくねらせ哀訴の声を上げ続けます。
「ああ、いいよ。でも、その前にいつものように見せてみなさい」
「ああん、いじわるぅ……」
聞いていられないような甘い睦言が二人の間で交わされ、妻は口に含んだ濡れた指先を
再びパンティの中に滑り込ませました。
「ああっ……あぅっ……」
大きく開かれた太腿の間、パンティの中で妻の手が一定のリズムで動き、左手は自ら掴んだ豊満な乳房の先端、尖りきった乳首を弾くように絶え間なく律動し始めます。
レースと濡れた薄布を通して、パンティの中の指の動きがはっきりと見て取れ、切ない喘ぎに混じって、クチョクチョいう濡れた音まで聞こえてきます。
信じられないことですが、すぐ横に胡座をかく男の目の前で、妻は女として最も恥ずかしい行為、自慰にのめり込んでいきました。
とても嫌々しているようには見えません。
しかも、男は「いつものように見せてみろ」と妻に命じているのです。
これまでも、私の知らないところで、何度も何度も妻は、この男の前でオナニーショーを披露してきたのでした。
そして今も、男の目の前に痴態を晒すことで、妻はますます乱れ、激しく喘ぎながら登りつめていったのです。
それは私の中にある妻・遙海の面影を粉々に打ち砕く光景でした。
「いいっ、いっ……いっ、いくっ、いくぅっー……」
パンティの中で妻の手が秘部を鷲掴みするように荒々しく動き、高々と浮かせた腰が二度、三度と痙攣します。
エクスタシーの痴態を男に見られながら、終に妻は切れ切れに最後の言葉を叫びました。
それは、妻が男の牝となったことを告げる屈服の叫びでした。
茫然としてモニターを凝視していた私は、妻の次の言葉を聞き漏らすところでした。
「ねえ、あなた、遙海のパンティ脱がせてぇ……」
遙海は、木原という男のことを「あなた」と呼んだのです。
始めて抱いた時、遙海は処女ではありませんでした。それはそうでしょう。
25歳の健康な女性に、それまで一人や二人の恋人がいたって何の不思議もありません。
私が初めての男でなかったからといって、遙海の過去をあれやこれやと詮索するようなことをする気も私にはありませんでした。
ありのままの遙海を私は受け入れ、遙海もまた、私のすべてを受け入れてくれました。
そうして、結婚以来6年間、私たちはこの世に唯一のパートナー・夫婦として、互いを分かり合い愛しあってきたと思っていました。
当然、遙海が「あなた」と呼ぶのは、この私以外にいないものと信じ込んできたのです。
「早くぅ、あなた……遙海のパンティ脱がせてぇ……」
媚びを含んだ声で私以外の男を「あなた」と呼ぶばかりか、その男にあからさまな言い方で、体を覆う最後の下着を取って欲しいとねだる遙海を、我が妻と呼ぶことはもうできません。
私は何も知らずに、こんな淫らな性情を隠していた女と「夫婦」として暮らしてきたのです。
何と愚かで滑稽な夫だったのでしょう、私は……。
そう思った時、先ほどまで混乱の極みだった私の頭の中は、不思議と澄み切っていきました。
そして、どす黒い欲望が私の胸の中にむくむくと育っているのを感じたのです。
その○意にも似た暗い欲望は、木原に向けられたものではありませんでした。
それはまさに遙海に向けた暗い怨念でした。
その時、私は股間に、スラックスを突き破らんばかりにこわばりがそそり立っていることに気づいたのです。
画面では、四つん這いになって高く掲げた尻をくねらせる遙海の腰に手を掛け、木原がパンティを引き下ろしていました。
白く豊満な尻が男の目の前でゆっくりとあらわになっていきます。
驚くほどの愛液が溢れ出しているのでしょう、重く湿ったパンティクロッチは離れることを嫌がるように一瞬、股間に張り付きます。
クロッチと割れ目の間に遙海の淫らさを証明する粘液が長く糸を引くのがはっきりと捉えられています。
高く尻を掲げ、女の秘めた部分を無防備にさらけだす最も恥ずかしい姿勢で、遙海は男の口づけを秘裂に受けてのたうち回ります。
張りつめた尻肉を両手でかき分け、男の舌は秘裂ばかりか、その上に咲く小さく引き締まった菊の花にまで這い回ります。
「はぁーん、んんん……そ、そうよぉ……もっと、もっとぉ、舐めてぇ……」
横向きにシーツに押しつけられた遙海の顔は快感に歪み、その口からは涎さえ垂れています。
そのあられもないよがり顔が私の歪んだ暗い欲望を爆発的に増幅していきます。
いつの間にか私は、ブリーフも脱ぎ捨て、剥き出しになった下半身に屹立するこわばりを激しく手でしごき始めていました。
「ねえ、キスだけじゃイヤぁ……ゆ、指もちょうだい!」
「どこに欲しいんだ? 遙海」
意地悪く訪ねる男に叫ぶような声で遙海はねだります。
「オマンコよ、オマンコぉ……遙海のオマンコにあなたのエッチな指をちょうだい!」
「オマンコか、こっちじゃないのか?」
クリトリスにゆるゆると舌を這わせながら、男の指は隠微な後ろの窪みの周りを円を描くように撫で回します。
「ああん、そっちじゃない! オマンコに入れてぇ!」
「よしよし、淫らな奥さん、こっちは後のお楽しみにとっておくか」
男の言葉は、遙海が既にこの男に最も恥ずかしい排泄孔・アナルまで捧げていたことを示唆しています。
シーツの上に仰向けに体を開いた遙海の股間に手を伸ばし、木原は重ねた二本の指を秘裂に差し入れていきました。
「はぅっ、そ、そうよ、ここに欲しかったのぉ……いけない遙海を可愛がってぇ……」
愛液に溢れた秘裂は男の太い指を難なく納め、指が中で動き始めると、それと同期して遙海の腰のくねりはすぐさま悩ましく狂おしいものに変わっていきます。
男はクリトリスを舌で転がし、もう一方の指で双乳を代わる代わる揉みしだきながら、的確に女の急所を攻め立てていきました。
「はっ、はっ……はぁっ……」
遙海の喘ぎ声が明らかに変わっていきます。大きく開いた太腿の内側に痙攣のさざ波が走り、男の指を逃れるように遙海はシーツの上でどんどんずり上がり、ヘッドボードに頭
を着けて首を曲げた不自由な姿勢で切れ切れに叫びます。
「ああっ、ダ、ダメぇ! も、漏れちゃう!」
遙海の訴えを聞いても、男の指の動きは弱まるどころかますます激しさを増していきました。
その男の手に同期したように私も、これ以上ないほど高まりきったこわばりを激しくしごき上げていました。
男の指は遙海の膣内を掻き毟るような動きを見せ、その激しさは膣壁を痛めてしまいそうな勢いでした。
その時、私は男に完全に同化していました。
私に代わって、妻・遙海を完全に壊し犯して欲しいと、憎いはずの画面の中の男に私は、どす黒い欲望をぶつけていったのです。
「ダメっ、で、出るぅ!……あっ、ああっー……」
男が股間から顔を離した途端、断末魔のような鋭い叫びとともに、遙海の秘裂から勢いよく飛沫が噴き出しました。
大きく拡げて踏ん張った両脚と後ろ頭でブリッジするように反り返り、天に向かって突き上げた股間から、透明な液体が何度も何度も間歇的に噴き上げます。
叫び声はピタリと止み、遙海は苦悶するかのような表情で固く目を瞑り息を詰めて高みに達しました。
下腹の筋肉が小刻みにブルブルと震える以外、ブリッジの体位のままで凍りつく遙海の肢体。
初めて見る妻の壮絶な潮吹きに、私も低く呻いて膨らみきったこわばりから大量の精液を飛ばしていました。
股間からの潮の噴出が止み、ブリッジが崩れて遙海の体がシーツの上に沈みます。
深すぎる絶頂は1分近くも続いたようでした。
詰めていた息が吐き出され、鞴のように胸を喘がせ粗い呼吸を続ける遙海を見下ろして男は腰のタオルを外します。
私は思わず息を詰め目を見張りました。
膝立ちした男の股間には、私のものより少なくとも二回りは長大なこわばりがそそり立っていたのです。
気配を感じ目を開けた遙海が男の足元ににじり寄ります。
そして、腹を叩かんばかりにそそり立つ男のシンボルに頬を寄せ、さも愛おしそうに頬ずりするのです。
「凄かったわ……今度はあなたに……お口でさせて……」
その言葉に、立ち上がって仁王立ちになった男の前に跪いて遙海は、目の前の股間に顔を寄せて行きます。
根本からぶら下がる大きな二つの胡桃を舌で舐め上げ、血管の浮いた太幹を、長く伸ばした舌で唾液を塗り込めるように何度もなぞる様子をカメラは克明に捉えます。
這い上がった舌が赤黒い亀頭の周りをクルクルと這い回り、尖らせた舌先が亀頭の先端に開いた尿道口をチロチロと刺激します。
O字型に開いた口で赤黒い亀頭を呑み込と、すぐに浅く深くのストロークが始まりました。
口中では舌が複雑な動きを見せているのでしょう、遙海の口元は様々に歪み、溢れ出した涎が奇麗な形の顎を伝って垂れ落ちます。
垂れ下がった大きな睾丸をやわやわと揉みながら甘い鼻声を洩らして男のシンボルを長々としゃぶり続け、やがて、遙海は両手を男の毛深い太腿に回し、裂けそうなほどに口を開いて、これ以上はできないほど奥にまで長大なこわばりを呑み込んでいきました。
固い亀頭が喉奥を突き、咽せそうになって喉を鳴らしながら、それでも遙海こわばりに吸い付き離そうとしません。
頬をすぼめて吸い上げる度に、濡れた音に交じって淫らな吸引音が響きます。
私との営みでももちろん、遙海がフェラチオをすることはありましたが、それは挿入前の通過儀式であって、時間にすればいつも1分程度のものでした。
今、遙海が見せているのは、身も心もすべてを捧げて強い牡に奉仕する従順な牝の姿でした。
遙海の舌と指は、仁王立ちする男の股間のすべて、後ろの固く締まった窪みにまで這い回ります。
時には、バンザイするように挙げた両手で男の乳首を刺激しながら、口では反り返ったこわばりを舐めしゃぶり吸い上げます。
こんな淫らなフェラチオを仕掛けられれば、どんな男でもひとたまりもなく精を搾り取られてしまいそうですが、木原は時折低く呻くだけで、奉仕する遙海を余裕を持って見おろし、彼女の柔らかい髪の感触を確かめ、揺れる双乳に伸ばした手で乳房の丸味と張りを楽しんでいました。
淫らな口唇奉仕に遙海自身、興奮がいや増すのでしょう。息が上がり、目の周りが紅く染まって、くびれ腰が無意識のうちにくねります。
「ねえ、もう、堪らないの私……あなたの凄いのをちょうだい……」
案の定、男よりも先に音を上げたのは遙海でした。
涎だらけの口元で男を見上げ挿入を懇願します。
そんな遙海を満足げに見おろし男は、遙海の肩を押してベッドに這わせます。
再び膝立ちになった男の股間に顔を寄せた遙海の口に、超弩級のこわばりがねじ込まれ、片脚を跳ね上げられた両脚のつけ根に男が手を伸ばします。
「何だ? こんなに濡らして……昨日、旦那に抱いてもらったのに欲求不満なのかい、淫らな奥さん」
「そうよぉ、主人のじゃダメなの、あなたのこの凄いのじゃなくちゃ!……ね、お願い早くぅ!」
興奮と牡の逞しいものへの欲望が理性を遙かに上回ってしまったのでしょう。
私のことを口にされても、もう、遙海はその言葉を拒絶しようともしません。
確かに、この日、学会出張に出掛ける前の晩、私は妻を抱いています。
いつもは快感を堪えて静かに達する遙海でしたが、この夜はいつも通りの愛撫でも驚くような濡れ方で、挿入してからも、いつになく感じて、悦びの声が溢れ出そうになるのを無理矢理押し○していたことを思い出しました。
その時は、いつもよりも熱く、貪欲な膣壁の締め付けに耐えかねて私は、挿入後、3分と持たずに果ててしまったと思います。
妻はいつものように「良かったわ」と言ってくれましたが、それは口先だけの言だったのでしょう。
画像でも、遙海の股間には新しい蜜液が夥しく溢れ出していることが見て取れます。
それは大陰唇の周りを彩る薄くしなやかな恥毛を越え、つけ根から太腿にまで流れ出すほどの濡れ方でした。
ピチャピチャ、クチュクチュという濡れた音も、遙海の期待と興奮の深さを如実に証明していました。
「ねえ、もう、ダメ……堪らないの……あなたの凄いオチンチンを私に……ねえ、ちょうだい」
「どこに何を欲しいんだい? 遙海」
「ああん、いじわる……あなたのこのオチンチンを遙海のオマンコにちょうだい!」
とうとう、遙海はあからさまな言葉で木原の男を求めました。
その顔は、興奮を通り越して、逞しい牡を求める生々しい欲望が剥き出しになった、見たこともないほど淫らな牝そのものの顔でした。
終に妻が汚されるという思いに痛いほど胸を締め付けられながら、私のペニスはその時、木原に負けないほどの固さで激しく勃起していたのです。
この後、ビデオには遙海と木原の交わりが延々と記録されていました。
あからさまに男を求める妻を余裕で焦らしながら木原は、その長大なこわばりを濡れきった秘裂へゆっくりと突き立てていきました。
木原のこわばりには避妊具は着けられていません。
そして、遙海もそれを拒むこともなく、当然のように生のままの男を受け入れていきました。
シーツの上に仰向けなって大きく脚を拡げた正常位に始まり、シャワーと短い休憩を挟んで二人は、様々な体位、様々なプレイで3時間近く交わり続けました。
男の人間離れしたスタミナにも圧倒されましたが、一切のタブーなしに互いに貪り合い、流れるように体位を変えて交わり続ける様子から、二人がこれまでに何度もこうやって愛を交わしてきたことを思い知らされ、私は滂沱の涙を流しながら最後まで画面から目を離すことができませんでした。
正常位で逞しい男に組み伏されて、自ら少しでも深い挿入をねだって、高々と上げた両脚を男の腰に絡みつける遙海。
対面座位では互いの唾液を飲ませ合う深い口づけを交わし、騎乗位では、男の腰にまたがって自ら肉棒を秘裂に納め、重々しく揺れる乳房を自分の手で押し揉みながら、抜き差しを男に見せつけるように放恣に脚を開いて淫らに腰をくねら
せます。
側位では、更にショッキングな場面が私を待ち受けていました。
少しも焦らず着実なピストンを繰り返す木原の手が、艶やかに張った尻を這い、撫で回し、みっしり詰まった尻肉の弾力を楽しむかのように強く鷲掴みにすると、遙海は絞り出すように叫びました。
「ああっ、あなた……撲ってぇ!」
「何だって、何処を撲って欲しいんだ?」
「ああん、お尻よ、お尻……いけない遙海の淫らなお尻を撲ってぇ!」
私には、心臓が止まるほどの驚きでした。
ここまで見てきて、遙海が完全に木原という男に身も心も屈服させられていることは分かっていたつもりでしたが、あの貞淑な妻が、こんな破廉恥な行為まで木原にねだるとは……。
怒りさえ通り超し、私の胸の中には冬の氷原のように寒風が吹きすさんでいました。
ピチッ、ピチッ……バチッ……パンッ……
肉が肉を打つ重たい音が響き始めます。
男の手が尻肉に振り下ろされる度に遙海は、掠れた叫び声を上げ狂おしく身もだえしています。
しかし、それは痛みを感じて嫌がっているのではありませんでした。
「はぁっ……はぁーん……んんんっ……はぁっ……」
「ああん、お、お尻が……お尻が熱いのぉ……つ、突いて、もっと突いてぇ!」
明らかに撲たれることで遙海は強い性感を感じていました。男の容赦のない打擲は、大きく開かれた尻の谷間、アナルにまで及びました。
「だ、ダメぇっ……いっ、いくっ、いっくぅー……」
激しく撲たれながら尻肉を真っ赤に染めて、遙海は憚りを忘れた悦楽の叫び上げて達しました。
男のピストンが止まっても、長い時間、遙海は真っ赤に腫れ上がった尻をブルブルと痙攣させ続け、長い乱れ髪が絡みつく汗まみれの顔には、口元に涎の筋さえ流れていました。
その後も、松葉崩しで秘裂深くを激しく抉られ、長大なこわばりで子宮を突き上げられ背を仰け反らせて踊り狂い、後背位では、顔と胸をシーツに付けて自ら尻を高々と掲げた牝犬の姿勢をとり、豊尻を鷲掴みにされ、アナルにまで指を受け入れながら犯されて、快感と男への服従の言葉を叫ぶのでした。
その間、体位を変える毎に、遙海は自らの蜜液で濡れ光る男のこわばりを嬉々として咥え、貪るように舐めしゃぶります。
最後は正常位に戻って木原を受け入れ、激しく唇を吸い合いながら決定的な言葉を叫びました。
「どうだ、俺のチンポは……旦那のよりも良いだろう?」
「ああっ、そうよ、そうよぉ……比べものにならないわ……凄いのぉ……ああっ、いいっ……あなたのチンポ!」
最初は、私のことを持ち出されると激しく抗った妻が、何の躊躇いもなく私と男を比較して淫らな言葉を叫ぶのでした。
小1時間もほぼ連続して交わりながら、木原はまだ一度も射精していません。
その間、萎えることもなく緩急様々に女を攻め続けることなど、私には及びもつかぬことでした。
私には与えることのできない途方もない悦楽を受けてのたうつ妻の女体を打ちのめされながら私は見つめ続けました。
「あぅっ、いいっ……いいのぉ……あなたの逞しくて固いのがいいのぉっ!」
「ああっ、突いてぇ……グリグリしてぇ……大っきいチンポでグリグリしてぇ!」
快楽に狂わされているとはいえ、あの上品な妻の口から便所の落書きのような卑猥極まりない言葉を吐かせるとは……。
木原も最後のモードに入ったらしく、遙海の両腿を抱え上げると激しいピストンを連続して繰り出していきます。
逞しい牡に本気で追い上げられて妻は、もう言葉にもならない呻きを立て続けに上げながら、シーツを掻き毟ってのたうち回りました。
「いっ、いくわ……いっちゃう……あ、あなた……あなたも来てぇ!」
「どこに欲しいんだ?」
「ああっ、中っ……中よぉ……遙海の中にいっぱいちょうだい!」
美しい顔を引き攣らせて、狂ったように妻は中出しをおねだりするのでした。
やがて、低い唸り声とともに男の腰が大きく二度、三度と打ち付けられ、そして、ぴたりと止まりました。
「ぁー……!」
巨大なこわばりから迸る煮えたぎった樹液を膣奥に受けて、声にならない断末魔の叫びを上げて遙海は逝きました。
身も心も融け合うような二人の絶頂は深く長く続きました。
やがて、大きくため息をつくと木原は、結合を解き遙海の傍らに身を横たえました。
エクスタシーの海に漂う遙海が満足げに木原の胸に顔を寄せます。
黒々とした恥毛は愛液と汗でべっとりと濡れそぼり、秘裂は傷口のように開いて、その中から白濁した男の絶頂のしるしがドロリと流れ出しました。
その少し下、左の尻の膨らみが始まる間際に、小さなほくろが見えます。
それは愛しい妻の、私しか知らないはずだった愛らしいしるしでした。
その後、シャワーを浴びて汗を流した二人は、再び体を合わせ、たっぷりと濃密な時間を過ごしました。
これ以上、詳しく書くことは控えますが、
手錠や縄で緊縛された妻は、ローターやバイブ、見たこともない淫らなオモチャを秘裂は、おろか、アナルにまで使われて乱れ狂い、数えきれぬほどの回数、絶頂に押し上げられていました。
そして、信じられないことに、木原はその間、最初の一度を含めて四回も精を噴き上げていたのです。
私より、はるかに年上なのに、木原という男は驚くべき精力の持ち主でした。
とても私には及びもつかない木原の巨根と絶倫さに、牝として妻はすっかり屈服させられてしまったのでしょうか。
膣内深くに二回、シックスナインからの淫らなフェラチオでは妻の口に一回、そして、最後はバックから深々とアナルを突き立てて……。
この時、妻は秘裂にも太いバイブを突き入れられたまま絶頂し、快楽極みに股間から失禁のしぶきを飛ばしながら失神していました。
もう、何を見せられても驚きません。
すべてのタブーを取り払い、ありとあらゆる性愛の限りを尽くして、極太のこわばりをアナルにまで受け入れて乱れ狂う画面の中の女が、私の知る淑やかで知的な妻・遙海と同一人物であるとは、どうしても信じることができないのです。
それから、3日3晩かけて私は、レンタルルームから持ち帰ったビデオのすべてに目を通しました。
驚くことにその中で妻は、木原だけではなく複数の男と関係を持っていたのです。
それだけではありません。
ビデオの中には、レズビアンプレイも含め、複数の男女とのアブノーマル極まりないプレイも納められていたのです。
妻たちが事故○したあの日、直前まで二人が交わっていたラブホテルの清掃員は、もう一人、女性が同室していたのではと感じていたと言いますが、彼女の勘は正しかったのでした。
○に至るドライブの直前、昼下がりの密室で、妻たちは男1人に女2人という、常軌を逸した淫らな複数プレイを楽しんでいたに違いありません。
唯一、ビデオに登場する妻の相手には、男女ともにどれも全く面識がなかったことが、私にとって救いにもならない救いでした。
妻は、ビデオの中で今まで通りの美しい女でした。
そして、同時に、悦楽の限りを貪欲に求め尽くす限りなく淫らな女でもありました。
私の前では上品で貞淑な妻を演じながら、どうしてこれほど淫乱な女の内面を隠しおおせて生きることができたのでしょうか?
私はそれほど鈍感で馬鹿な夫だったのでしょうか?
「解離性同一性障害」。
ふとこの言葉が頭をよぎりました。
一般には「二重人格」という言葉で知られ、複数の人格が一人の人間に現れるという精神的疾患です。
内面を隠して貞淑な妻を演じていたにしろ、複数人格が出現する病を病んでいたにしろ、
知的で性の面では控えめな貞淑そのものの妻と、
複数の男のみならず女とまで交わる淫乱極まりないふしだら女、
この二つが妻・遙海の中に同居していたことは紛れもない事実のようです。
精神医学の専門書に依れば、「解離性同一性障害」の場合、重度の記憶喪失を伴うことが多く、
主人格(この場合は貞淑な妻・遙海)と
交代人格(淫乱極まりない女・遙海)の間では、記憶が継承・共有されないとされていますが、
ビデオを見る限りそうとは言えず、精神医学を専門としない私には、かえって謎が深まるばかりでした。
いつまでも休んでいるわけにもいかず、それから一週間後、私は仕事に復帰しました。
ただ、当分は病院側の配慮で昼間だけの勤務にしてもらえたので、夕方からは自由な時間を持つことができました。
その間、医学生時代の友人で精神科医をしている何人かに、「解離性同一性障害」のことを電話で尋ねましたが、
妻のことを打ち明ける気持ちにはどうしてもなりませんから、一般論としての質問になり、
彼らの答えもまた一般論としての答えで、妻の謎を解く手がかりにはほとんどなりませんでした。
友人たちは口々に、「実際に会って診察してみないことには何とも言えない」と言います。
医師としては当然の答えですが、それが叶うはずもありません。
興信所に頼んで妻のことを調べてもらおうとも考えましたが、すでに○亡していては調査のしようがなく、妻の相手達の調査を依頼するには、妻の映ったビデオを見せるしかな
く、とてもそんな気持ちになりません。
八方ふさがりのまま日を過ごしているうちに、妻の四十九日が過ぎていきました。
その日、難しい症例の患者の治療方針について後輩の主治医とのカンファレンスが長引き、いつもより帰りが遅くなりました。
すっかり暗くなった道をマンションへ戻る車内に携帯の着信音が鳴り響きます。
さては患者が急変したのかと急いで出ると、相手は知らない女の声でした。
「突然お電話してごめんなさい。奥様のことで、どうしてもお知らせしておきたいことがありましてお電話しました。お手間は取らせませんから、これからお会いできませんか?
」
その声は柔らかく落ち着いた声でした。
一瞬、躊躇いましたが私は、女の申し出を受け入れ、指定された小料理屋へ車を走らせました。
「竹下様ですね。お連れ様がお待ちです。ご案内します」
女将にそう言われて奥の小さな座敷に入ると、30代半ばと見える女性がきちんと正座して私を待っていました。
その顔を見るなり私は、あっと声を上げそうなくらい驚きました。
卵形の整った顔にすっきりと通った鼻筋、切れ長の大きな瞳に艶めかしい唇。
見るからにキャリアウーマンという上品なスーツを着こなした彼女は、あのビデオの中で妻とともに複数の男達と淫らなプレイを繰り広げていた女の一人に他ならなかったのです。
「ごめんなさい。突然、お呼びしたりして……それに、私のことはもうご存じですね」
「……」
突然こみ上げてきた激情に駆られて声もなく突っ立っている私に落ち着いた様子で席を勧め女は続けます。
「私は、並木純子と申します。お怒りはごもっともですが、どうしてもお話ししておかなければと思いまして……」
「あの手紙を出したのは君だな」
絞り出すような声で私は尋ねました。
その声には○意すらこもっていたかも知れません。
肯定のしるしに頷くと女は女将に、料理と酒の手はずを頼み、私の様子に恐れる素振りも見せずに話し出しました。
「奥様のことお悔やみ申し上げます。親しくさせていただいていたので、あんな風にお亡くなりなって私にとってもショックでした」
「どういうつもりなんだ。妻をあんな風に弄んでおいて、今更、お悔やみもないだろう!」
「そう思われても仕方ありませんわ。でも、私たちは奥様のことを大切に思ってましたし、奥様も私たちとのことをとても楽しんでおられたんですよ」
沸々と湧き上がってきた怒りに私は声を荒げてしまいます。
「それはそうだろう。良かったな、変態同士、精いっぱい楽しめて。
それとも知らずに、上品で貞淑な妻を演ずる遙海にコロッと騙されて、さぞかしマヌケな亭主だと思ったろうよ」
「それは違います!」
言下に否定した女の口調には有無を言わせないものがあり、私は思わず口を閉じます。
「それは違います。奥様はご主人を騙していたんじゃありません。
奥様はご主人のことを誰よりも深く愛してらっしゃいました。
いえ、奥様はご主人だけを愛してらっしゃったのです」
「バカな気休めは、ほどほどにしろ! それじゃ、妻は解離性同一性障害だったと言うのか?
デタラメを言うんじゃない。妻の記憶は途切れてなんかいないじゃないか!」
怒りに拳を震わせる私に女は言いました。
「さすがですね、竹下先生。確かに解離性同一性障害の場合、一般的には二つの人格間で記憶の共有はあり得ないとされて来ました。
しかし、精神疾患の場合、けっこう例外もあるのです。最近は症例もいくつか報告されています」
「何だって? 君は医者か?」
「はい、こう見えましても精神科医の端くれです。
奥様の場合も、出現した交代人格には、本当の意味では、ご主人との記憶は継承されていません。
しかし、そこには、新しく形成されたご主人との関係の記憶があったのです」
「……」
料理が運ばれてきて、彼女と私の会話はしばし中断されました。
「分かりにくい言い方になって済みません。
つまり、奥様の主人格と交代人格の間には、本当の意味の記憶の継承はないのですが、
交代人格で奥様は、あなたとの真実の記憶、つまりあなたと奥様との間に実際にあった事柄ですが、
その裏返しの記憶、いわば鏡像のような記憶を継承していたのです」
「それは、どういうことだ?」
「実生活で奥様は、あなたのことを自分には過ぎた理想的な人として尊敬し、そして、唯一の男性として深く愛して来たのです。
そのことは精神科医として断言できます」
「……」
「しかし、奥様には解離性同一性障害がありました。
発症の素因は、恐らく思春期に於ける経験に遡るものだと思われます」
並木純子と名乗った女の口調は、クライアントと接し慣れた精神科医のそれでした。
いつしか私は怒りを忘れて彼女の言葉に真剣に耳を傾けていました。
「簡潔に言えば、思春期に受けたある特異な経験によって、奥様の心には決定的な傷が生じたようでした」
「年月が経っても、その傷は癒えることはなく、奥様の心の奥底に深く沈潜していきました。
しかし、その傷を無理矢理隠そうとすることで奥様は、解離性同一性障害を発症することになったと言うのが私の診断です」
「……」
「奥様が、先生の病院に転勤して来られた理由をお聞きになっていますか?」
「ああ、大都市の病院の気ぜわしさに疲れたと言っていたが……」
「それも嘘ではありません。でも、本当に理由は他にあったのです」
「それは何なんだ?」
「それは私の口からは言えません。
しかし、東京の病院であったあることが、最終的に奥様の解離性同一性障害を引き起こす原因になったのだと思います」
「つまり、思春期に心に深く傷を負った遙海は、それを忘れようとしていた東京の病院で、あることに出会って、逆にそれを引き金に人格の分離を引き起こしてしまったと言うのかね、君は?」
「大筋はそのとおりです。そして、奥様は、そのことから逃れようと、前の病院を辞めてあなたの勤務する病院に移ったのです。
そこであなたに出会い奥様は、あなたのことを誰よりも、唯一、深く愛するようになりました。
けれども、奥様は、解離性同一性障害という厄介な病を持っておられました。
そして、そのことであなたを傷つけることを何よりも恐れていたのです」
俄には信じられないことですが、並木純子の言葉には、ある一定の説得力があったことは事実です。
いや、彼女の論理に頷くことに、私は救いを見出そうとしていたのかも知れません。
「奥様はあなたを愛し、あなたとの生活を何よりも大切に思っていました。
けれども、過去に受けた心の傷は余りにも深くて、奥様の意志とは関係なしに解離性同一性障害を引き起こしました。
逆説的に言えば、交代人格が現れることで、かろうじて奥様は心のバランスを保っていたのだと思います」
「交代人格で現実の記憶の裏返しとも言える主人格の記憶を引きずっていたことも、ご主人を忘れたくないという奥様の強い意志に依るものだと思います」
「……」
「ビデオの中で奥様は、あなたを傷つけるような言葉を吐きながら行為に及んでおられ
たでしょう。そのことであなたは深く傷つかれた……。でも、あれがあなたに対する奥様
の愛の表現なのです。歪んではいますが、奥様の深い愛の現れなんですよ」
「何だか都合の良い話になってきたな」
「それでは、あなたはこれまで奥様と一緒に暮らしてきて、奥様のことを少しでも疑ったことがありましたか?」
「……」
彼女に言われるまでもなく、確かに、遙海は理想的な妻でした。
激務としか言いようがない勤務医の仕事をよく理解していた遙海は、私が疲労やストレスをため込まないよう、
実に細やかに気遣ってくれていました。
しかも、その心遣いはわざとらしさを感じさせない、とても自然なものでした。
私が家に何の憂いもなく仕事に打ち込めたのも、遙海のおかげでした。
強いて言えば、子どもができなかったことと、夜の夫婦生活がいささか淡泊に過ぎるというのが不満と言えば不満でしたが、それを補って余りある遙海の深い思いやりを感じながら私は暮らしてきたのです。
ですから、並木純子の言う通り、妻のことを疑ったことなど露ほどもありませんでした。
「竹下先生、あなたのお立場では、なかなか信じてもらえないと思います。
けれども、私が言ったことに嘘偽りはありません。誇張もしていませんよ」
「信じがたい話ですが、どうか、奥様のために信じてあげてください。あら、料理が冷えてしまいますわ」
それから、運ばれてきた料理に手をつけながら、私と並木純子は会話を交わし続けました。
突然に呼び出され、本意ではなかったにせよ、遙海のことを話題にして、誰かとじっくりと話すことを心の底で私は待望していたのかも知れません。
その時、何を食べ、何を飲んだのか、私にはほとんど記憶がありません。
それほどに私は並木純子の話に引き込まれていました。
「ビデオで私のこともご覧になったのね?」
「ああ、見たよ……」
食事がほぼ終わった頃、適当にアルコールも入った二人の間には、それまでの敵対する緊張感とは違う空気が流れ出しているようでした。
「恥ずかしいわ……」
そう言って顔を伏せた純子は、敏腕の精神科医ではなく成熟した一人の女でした。
頬やうなじが少し赤らんでいるのはアルコールのせいばかりではないようです。
「あれは、君にとっても治療の一環だったのじゃないのか?」
それには答えず彼女は今宵のお開きを宣しました。
口調とどおりの冷静なものに戻っています。
「明日はお互いに勤務がありますので、今日はこの辺りでお開きにしましょう。
今日は突然だったのにお付き合いしていただいてありがとうございました」
「私が本当のことだけをお話したことを信じてください。奥様のために……」
「よろしければ、週末にお会いできませんか? もう少しお話ししたいこともありますので……」
承諾のしるしに頷くと彼女はパッと美しい顔を輝かせましたが、その顔には安堵とともに別の不思議な表情が浮かんでいました。
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