今から7年前の春の体験話。



とある中東諸国の会社との商談のため、俺の会社と子会社からチームを組んで海外出張に行くことになった。



この仕事は1年間も残業に残業を重ねて積み上げた仕事。



もし次の出張で契約がまとまれば、赤字気味の会社も好転するってもんだ。






チームは全部で6人。



リーダーは常務、そして語学だけが取り柄の部長。



そして俺(伊藤)は常務の鞄持ち兼プレゼンター。



子会社からは、やり手のA専務、紅一点で俺の仕事上のカウンターパートのB主任(慶子)、そして通訳役のC君。






出張2週間前、チームの顔合わせということで、俺の会社でプレゼンと書類のチェックが行われた。



日頃から慶子とは打ち合わせているので、想定される質問までみっちり打ち合わせ、書類も事前に配布して赤ペンを入れてもらっているので加筆訂正箇所のチェックを行い、午後7時頃解散となった。



全員が集まるのは初めてだし、うちの常務が発案して、夕食をみんなでとることになった。



常務が、「伊藤、店はここな」と開いた手帳を俺に示した。



店に予約を入れ、ワゴンタクシーを会社に呼んだ。






向かった店は、洋食なんだけど掘り炬燵形式のお店。



一応招待した側の人間なんで、一番の末席に座る。



常務が一番奥に座ったので、座る位置はみんな暗黙のうちに自然に決まる。



慶子は俺の隣。






「まずはビールだよな」






そう言ってビールを頼んだ後に、常務がぽんぽんとメニューを決めていく。



慶子とは仕事上の関係では接点はあったが、私語を交わしたことはほとんどなかった。



店の中でも俺は、「出発まで、もう少しですね。チェックを入れられたところは明日手直しをして、メールで送りますね」なんて仕事場の延長みたいな会話をしてた。



常務と専務ばかりがしゃべり続けている。






ビールが来て、とりあえず乾杯。



ビールのあとにお通しがきた。






「すみませんけど回してくださ~い」と店員。






6つの小鉢が俺の前に置かれる。






「そっち、回して頂戴」と俺。






子会社の専務に手を伸ばす。



俺の右腕が慶子の顔の真ん前。



俺が身を乗り出したためにネクタイが皿に乗る。



慶子は「ネクタイが」と言いながら左手でネクタイをどけようとする。



X攻撃みたい。



慶子の顔が俺の腕にぶつかった。






俺「伊藤さん、ごめんなさい」






慶子「あ、こっちこそ」






ワイシャツの腕にはほんのりとファンデーション。



常務と子会社の専務の話はいつもマシンガントーク。



俺の些細な事件なんて何も無かったに等しい。



慶子はバッグからハンカチを取り出す。



俺はさっさとおしぼりで腕を拭く。






俺「おお、取れねぇな。さすが汗に強いファンデーションだ」






慶子「ごめんなさい。洗濯すれば落ちますけど、大丈夫ですか?」






俺「ま、大丈夫でしょ」






俺は結婚3年目で子供はまだいない。



家ではいい旦那さんで、浮気の経験はなし。



妻を愛していたし、楽しい新婚生活だったから他の女性を色恋の目で見る事がなかったし、慶子も仕事上のパートナーとしてしか見ていなかった。






慶子の取り出したハンカチからなのか、開けたバッグからなのか、とてもいい香りがした。



俺、結構匂いに敏感なところがあって、エレベーターに乗って生理中の女性がいても結構わかっちゃうほうなんだよね。






慶子のバッグに目をやると、慶子の白いブラウスの膨らみに目が行ってしまった。



ブラの縁取りなのかレースが透けて見える。



太股の上に乗せられたバッグの下にはペイズリー柄のスカート。






(今日は、こんなスカートだったんだ・・・)






なんとなくだけど、初めて慶子を女として見た。



大事な取引前の前夜祭みたいな飲み会で、少し気が緩んだ瞬間に魔が差したのかも。



食事の席上、小会社の人間からの発言で、慶子のいくつかプライバシーを垣間見れた。






慶子は英語が上手(これは知ってた)。



独身なんで残業もバリバリやる。



でもお酒の席にはあまり付き合ってくれないらしい。



年齢は25歳で、学歴は4大中退だけど、いつかは大学に戻るんだそうな。



身長は160cm弱で、ぽちゃっとしているといったほどではないが、痩せているというほどでもない。



中肉っぽいけど、後ろから見てもウエストはくびれている。






俺「なんか趣味とかある?」






お見合いみたいな質問をしてみた。



慶子は旅行が好きで、大学生の頃はバイクでツーリングもしたらしい。



バイクが趣味の俺は見事に食いついた。






俺「え?ホント?俺、◯◯◯に乗ってるんだよ。休みの日にはちょくちょく出かけるんだ。今度一緒に行きましょう」






慶子はバイクを降りて4年は経ってて、メットも道具もすでに手元にはないらしい。






慶子「でも、久しぶりに乗ってみたいです」






よし、そっちも食いついた。



俺の愛車の写真を携帯で見せる。






慶子「すごいですね。重くないんですか?」






なんて、常務と専務のマシンガントークの横でバイクの話が続く。






俺「とにかく、今度の出張が終われば、俺達は一段落だよな。出張から帰って、梅雨が明けたらどっかに行こう。バイクなんかは俺が用意するから」






慶子「はい。ぜひ」






慶子とは今まで訪れた場所なんかの旅の思い出を語りあった。



慶子のブラウスの合わせ目っていうのか、ボタンの間からブラが見えていた。



完全に目は釘付け。



結構な乳房の盛り上がりに少し興奮した。



慶子もホントにいい匂い。



慶子の吐く息、髪の匂い、汗の匂いが俺をさらに興奮させた。






慶子は本上まなみに似てる。



普段は眼鏡をかけて、仕事もバリバリするキャリアウーマン。



同席した子会社のC君も、「主任は厳しいです」なんて言ってた。



その夜は9時過ぎにお開き。



慶子は子会社の連中と会社に戻っていった。






翌朝、朝イチで慶子にメールを送ろうとしたが、すでに慶子からメールが2通入っていた。



1通は、昨日の会議での指摘部分を直した100%仕事メール。



もう一通は、ワイシャツにファンデーションをつけてしまった詫びと、ツーリングに誘われたことに対する礼だった。



出張までは俺も仕事モード。



プレゼン資料を書き直したり、出発間際まで毎日午前様だった。



慶子とも仕事上のメールはやりとりしたけど、私語は全然やりとりがなかった。






子会社連中は先に成田を出て、1ヶ所寄って現地で俺たちと合流した。



現地で合流後、夜のうちに先方企業との会食、翌朝から実務レベルでの打ち合わせ、会議、そして契約・調印。



トントンと事が運んだ。



会議では俺がプレゼンした後、先方から意地悪な質問も出たが、慶子の助け船もあって事なきを得た。



契約式の後、レセプションが開かれ、俺と慶子は先方企業役員の間を引っ張り回された。






慶子はこないだよりも短いスカートを穿いていた。



ストッキングは黒で色気はなかったが、それでも現地の人にはウケがよく、「ケーコ、ケーコ」と呼ばれていた。






「無事に終わってよかったね。会社に電話報告するのはC君に任せて、明日報告書を作ろうよ」






俺がそう言うと、「そうですね」と慶子。






「そっちは俺たちよりもひと仕事多くしているし、今夜は早く休んだ方がいいよ」と俺。






レセプションはポツポツと人も帰り始め、常務と専務はお見送りラインに立っていた。



俺は常務に、「報告書作りますんで、先に部屋に戻ります」と言い、レセプション会場の上階の宿室に戻った。



慶子は現地の企業家につかまっていて、仕事の話をしてる。



俺はその中に割り込んで、電話が慶子に入っていると嘘を現地企業家に言い、慶子を引き離した。






俺「もういいじゃん。今日の仕事は終わりだよ。部屋に戻ろうよ」






慶子「はい」






二人でクロークに行き、預けてあった資料などを手にエレベーターに乗った。



エレベーターには二人きり。



ガラス張りになっていて、箱が上昇すると夜の海が見えた。






「きれいだね」と俺。






慶子が俺にもたれかかってきた。






(ん?なんだなんだ?)






俺の部屋は22階、慶子の部屋は25階。



22階に着いてドアが開き、「んじゃ。明日は8時な」と告げてエレベータを降りようとした。



すると、慶子も一緒に降りた。






慶子「荷物、伊藤さんのところに置いてもらっていいですか」






俺「あ、いいよ。んじゃ、持ってくよ」






慶子「あ、いいえ、持って行きます」






(え?何、何かあるん?)






ごそごそとカードキーをポケットから取り出すけど、部屋番号をど忘れ。



カードにも書いてないし。






慶子「2216です」






え?覚えているの?さすが才媛。



部屋を開けて、荷物を置いた。



慶子がドアのところで立っている。



部屋はジュニアスイートで、ドアの奥はリビングになっている。






俺「お、どうした。いいよ、ここに荷物置きな」






テーブルを指差した。



俺はベッドルームに行ってジャケットをベッドに放り、ネクタイを外した。



リビングに戻り、「ほら、こっち、こっち」とか言いながら冷蔵庫を開けて、「なんか飲む?」なんて間抜けなことを聞いてた。



本心は、もうドキドキ。



ベッドに座らせるのも露骨だし、かといって気の利いた話題もない。



そもそも、慶子はこの部屋に何しに来たんだ?






「失礼します」と言いながら、慶子が入ってきた。






俺「ほら、ソファーに掛けて、ペリエでも飲むか」






栓を開けて、グラスに注いだ。



冷蔵庫にはレモンスライスもあって、グラスに添えた。



慶子の横に座って、慶子の手を握った。






俺「どした、疲れたか?」






慶子「ちょっと疲れました」






俺「そうだよなぁ、頑張ってくれたもんな。日本に帰ったら、また報告会とかあるし、もう一踏ん張りだよ」






そう言って慶子の頭を撫でた。



慶子は「ふぅ~っ」と息をして目を閉じた。



ホントに疲れている感じだ。



このまま寝ちゃいそうに動かない。






<続く>