私は足を通したパンツに手を伸ばしてユウくんの動作を止めた。
「ちょっと、どこ行くの?」
「いや、帰るよ。もういいでしょ」
「まだしてない」
「1回イッたでしょ、もうしたってことでいいじゃん」
「まだ入ってない、ユウくんはイッてない」
「別に挿入だけがセックスじゃないし、男がイク回数でした回数を決めなくてもいいでしょ。ミオちゃんには自由なセックス感を持って欲しいな」
なんなの、そのフェミニズムぶったセリフ。
「私、まだイッてない。あんなの演技なんだからね」
・・・嘘だけど。
「やっぱ、まずいよ、こういうの」
この期に及んで、まだそんなことを言うか!
「私、そんなに魅力ない?胸のない子は嫌い?」
「そんなことないよ」
「絶対そうだよ。ユウくんの彼女、巨乳さんだもん、ユウくんって巨乳好きでしょ?」
ユウくんは私から目を逸らした。
「・・・違うよ」
何その間、今一瞬、考えましたよね?
「じゃあ、しなくていいから、ぎゅっとして」
私はベッドの上でちょこんと座り、両手を広げてユウくんに向かい合う。
ユウくんは困った顔をして動こうとしない。
シャツが肌蹴たまま、パンツも膝まで下ろした格好で。
結構間抜けな格好だ。
それを見て、私はおかしくなって笑い出す。
急に笑い出したものだから、ユウくんはきょとんとして見返してる。
「何?何なの?」
ユウくんは苦笑いして訊き返す。
「だって、その格好・・・」
ユウくんはやっと気がついたのか、「ああ」と笑いながらパンツを上げた。
やべえ、服着られちゃう。
「ねえ、しなくていいから、ちょっとだけ側にいて。私、ユウくんといるとほっとする」
ユウくんはベッドに座り直す。
私は彼にしなだれかかる。
シャツのごわごわした感触が頬に当たる。
やっぱ服が邪魔だ。
私はユウくんのシャツを脱がしにかかる。
「ねえ、なんで脱がすの?」
「裸で、ぎゅっとされたいから」
ユウくんのシャツを脱がし終わると、私はユウくんをそっと押し倒し、腕を取って頭を下にした。
腕枕されたまま私はユウくんのもう片腕をとって、浮き上がってる血管をなぞったり、意外と太い鎖骨を摘んだり、胸にあるほくろを数えたりした。
こうやって男の子の腕の中で安らぐのって、久しぶりだった。
いっつも、終わったら寝るか帰るかだったし。
たまにはこういうのもいいかもしれない。
もう今日はしなくてもいいかも。
「ねえ、ぎゅっとして」
ユウくんは私の言う通り、背中に手を回してきて、そっと抱き寄せてくれる。
あったかい。
私の手もユウくんの背中に回り、肩甲骨や筋肉をなぞる。
私は「ぎゅうして」とか「ちゅうして」とか「頭撫でてて」とか、さんざん甘える。
太腿にユウくんパンツの感触がある。
やっぱ服が邪魔。
私はユウくんのパンツをそっと下げて、膝までずらす。
「ねえ、なんで脱がすの?」
「もっと裸でぎゅっとされたいから」
私はパンツを足の指で挟んで、完全に脱がした。
ペニスが太腿に当たる。
勃起していて、すごく熱い。
私はそれをそっと握る。
ユウくんのお尻がぴくっとする。
「ねえ、なんで握ってんの?」
「こうしてると落ち着くから」
ペニスが脈打ってるのが分かる。
私はそっと擦りだす。
(だめだ、やっぱりコレが欲しい)
私はユウくんの上に跨がり、ペニスを裂け目にあてがった。
そっと体重をかけてユウくんのを飲み込んでいく。
「ねえ、なんで入れてんの?」
したいからに決まってんだろ!
私はユウくんの唇を塞いで腰を動かす。
ユウくんも私のリズムに合わせて、ゆっくりと動かしている。
貫いたペニスが私の全てをかき混ぜているような気がする。
私のアソコからはどんどん溢れてきて、ペニスが簡単に抜けちゃいそうになって、私は注意しながら動いたりしてたんだけど、ユウくんの腰の動きは私と合わさり、心臓の音や呼吸の回数まで合ってるような気がして、快感が広がり、体がとろけ、腰は勝手に動いちゃってて、気がついたらアンアン言ってて・・・。
やっぱそうだ。
私とユウくんって体の相性がいいんだ。
嬉しくなって、またユウくんに抱きついた。
「なに、どうしたの?」
もう、つまんないこと訊かないで。
私はユウくんの頭を持って、ちゅっちゅっと顔中にキスをして、そしたらユウくんは私のお尻を掴んで激しく突いた。
「んっ!やっ!あんっ!あ、ぁぁあああーーーー」
突然の激しい振動に翻弄され、私は必★になってユウくんにしがみつく。
敏感な部分が擦れ、繋がった性器の境目が液体になったようにとろけて・・・、ユウくんすごい!
世界が暗転する!
もっと遠くに連れてって!
意識が遠のきそうになったそのとき、ユウくんの動きはゆっくりになった。
(あれ、なんで?もっと動いて!)
私は快感を求めて腰を動かす。
ユウくんの激しく熱い呼吸が耳に当たる。
私の唇はユウくんの舌を求めて吸い付く。
ユウくん、苦しそうに肩で息をしている。
上気したユウくんの額に汗が浮かんでいる。
疲れちゃったのね、ゴメン。
いいよ、ゆっくりしよ。
少年のような顔をしているけど、呼吸と共に蠢く喉はやっぱり男だ。
ぐったりしたまま私はユウくんに体重を預ける。
重なり合った互いの心臓の音が部屋中に響いている気がする。
ユウくんは片手で私を支えたまま体を反転させる。
上下が入れ替わり、天井と一緒にユウくんの顔が見えた。
目が合って、思わず笑みがこぼれた。
彼の耳の後ろに手をやると、汗で濡れた髪の毛が纏わりつき、ぬるま湯に浸したように心地よい。
彼のごつごつした手の平が私の胸を刺激して、私はぴくぴくと体を震わせる。
舐めて欲しくて頭を胸に引き寄せた。
ユウくんは乳首を軽く噛んで、痺れが体を襲う。
腰は再びゆっくりと動き出していて、ユウくんは上体を起こして私を突き上げる。
腰を支えた彼の腕が私を宙に浮かせる。
ふわふわとした快感の海に浸っていると、今度は足を持ち上げられて、体を『く』の字に曲げられ、ユウくんが深く入り込んできた。
ユウくんの体を私の性器で支えているみたいで、子宮が押し上げられて、思わず痛みに顔が歪む。
でも、その痛みの先にあるものが知りたくて、私は神経を集中させる。
「痛い?」
ユウくんが心配そうに尋ねる。
「んっ、大丈夫」
私はユウくんの腕を掴む。
湿った皮膚が手の平に吸い付き、硬い筋肉の動きが伝わる。
ユウくんの動きがだんだんと速くなり、私の体の深いところまで彼の細胞が侵入しているような気がする。
彼は痙攣するように私を深く突いた。
「やっあぁぁぁあ!すっごぃぃ!いやあっ!ああーーー」
私はベッドの上で弾み、踊り、首を左右に激しく振って絶叫する。
自分が消えてなくなりそうで、恐怖に似た感情に襲われ、掴んだユウくんの腕に爪を食い込ませる。
(やだ、怖い・・・)
たまらず私はユウくんを引き寄せる。
力の入った手の平がユウくんの体を登り、隆起した背中に腕を回す。
私がユウくんに密着すると、ユウくんも私の背中に腕を回し抱き寄せてくれる。
私は足を絡ませて、皮膚という皮膚、すべてをユウくんと密着させる。
のしかかるユウくんの体重に私は委ね、腰は快感を求めて動いている。
強く締め付け合い、唇を重ね、舌と舌が絡み合い、汗で滑る皮膚がお互いの境目をなくし、ユウくんの細胞が私に侵食して意識は薄れ、まるでユウくんのペニスそのものになっちゃったみたいで、私が私でなくなりそうで・・・。
(私・・・、★んじゃうかも。ユウくん、名前を呼んで、私の名前を呼んで)
「ミオ・・・」
私が喋ったかどうか分からない言葉にユウくんが答えたのか、彼の言葉が脳裏にこだまする。
「ミオ・・・」
今度ははっきり聞こえた。
「ユウくん・・・」
「ミオ・・・」
「ユウくん・・・」
私は隙間を埋めるように抱き締めて、ユウくんの名前を呼ぶ。
もっと知りたくて何かを届けたくて、でも言葉が何も浮かばなくて、ただ名前を叫ぶ。
「ミオちゃん、イッていい?」
ユウくんの吐息が耳に当たる。
私は頷く。
「いいよ・・・あはっ・・・ちょうだい・・・」
ユウくんの動きが激しくなって、私は強くしがみつく。
「やっ、あっあっあぁぁー・・・」
・・・音が止まる・・・。
すべてが、スローモーションのようにユウくんが震えている。
暴発した精液を子宮に感じる。
熱い体温が伝わる。
来てる。
ユウくんは体全体で私を締め付ける。
ただ強く締め付ける。
ユウくんが私の中に来て、私の膣は精液の最後の一滴を搾り出すようにペニスに纏わりつく。
私とユウくんの激しい呼吸音がこだまする。
力の抜けたユウくんの体がのしかかり、私は小さな体でそれを受け止める。
(好きだよ、好き好き)
私はユウくんの頭を掴んでキスをした。
チュチュッ、好きだよ、チュチュ、もう放さないんだから。
ユウくんは私の髪を掻き上げて、優しくキスした。
私は嬉しくなって、また抱きついた。
互いの体液を始末し終えると、湿ったシーツを避けるように私は隅っこで縮こまった。
ベッドに腰を掛けたユウくんの横顔がカーテン越しの明かりに照らされて見えた。
ユウくんは一点を見つめたまま、じっとしていた。
あー、その表情、嫌になっちゃうな。
後悔と罪悪感に苛まれながらも、それを悟られまいとするような、そんな表情。
私、男の人のそんな表情を何回か見たことがあるけれど、正直、ユウくんにはそんな表情して欲しくなかったな。
「またしちゃったね!」
私はわざと明るく言った。
「そうだね」
ユウくんは呟いて、それっきり黙ってしまい、私は急に胸が押し潰されそうになった。
私はただセックスがしたかっただけなのに、こんな気持ちになるのは嫌だった。
相手が私のすべてになって、翻弄されるのはまっぴらだ。
「ユウくん、彼女さんのこと考えてるでしょ?」
私はおどけて訊いてみた。
「え?」
ユウくんは訊き返してきたけれど、私は答えないでじっとしている。
「そんなことないよ」って言って欲しかったのかな?
自分でも分からない。
ただ、そんなことは訊くべきじゃなかったことだけは分かる。
勝手に涙が溢れてきた。
私はユウくんにばれないように静かにしていたけれど、涙は頬を伝わり、シーツを濡らしていった。
「ミオちゃん、泣いてるの?」
その言葉が契機になって私は肩を震わせた。
「ねえ、泣いてる?」
そんなこと訊かないで。
「ニャア」
私はふざけてネコの真似をして、彼にすがりついた。
「ニャアニャア」
彼の胸が涙で濡れた。
ユウくんは私がなんで泣いてるのかなんてきっと分からないんだろうなと思う。
私もよく分かってない。
私のすがりつく反動で、ユウくんの体はベッドの中央に寝転んだ。
「わっ、冷たい」
まだ湿っていたシーツがユウくんの体に触れた。
私は笑った。
涙を流した顔で私は笑いながら、ニャアニャア言い続けた。
これが恋かどうかは分からないけれど・・・。
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