過ぎ去ったあの夜明が懐かしく思い出される。






結婚してまだ二ヶ月しか経っていなかった八月四日未明、出張から二週間ぶりに主人が帰る日がやってきた。



この日が待ち遠しく、前夜から嬉しくて心が弾んでうとうとと眠りは浅かった。



主人は、前日の午後四時、東京駅発、特急寝台列車「西海」に乗って、その朝四時三十九分、駅に着いて、そのままタクシーをとばせ、夜が明けようとする四時五十分、玄関の扉を叩いた。



その音を聞いた私は浴衣姿のまま跳び起きて玄関で迎えた。



私は主人が帰った嬉しさに素肌も見えるほどに着衣は乱れ乱れていた。



私が主人の帰りを待ちわびていたその様子は、すべて私の態度に表れていたらしい。






主人は私にキスして抱きしめながら、私がそれまで寝ていた寝床に倒れ込んで激しく抱いてくれた。



私の浴衣の紐が緩められた。



裾が拡げられると、弾ける二十三歳新妻の太腿が露わになって乱れた。



主人は、その太腿に脚を絡ませ、硬いものを押し当てて抱きしめ、下着を剥ぎとり、私を真っ裸にさせて挑んできた。



私も激しく抱きついた。



これほど激しく抱きついてきたことは後にも先にもなかった。



新婚の激しく燃える男と女であった。






主人は、二週間ぶりに見る私の全裸を、明るくなる夜明けとともにくまなく見つめ、愛してくれた。



その柔肌に、硬い鋼鉄のような男が貫き通された。



待ちに待った硬くて逞しい男塊だった。



主人は私のからだに入ったかと思うと呆気なく果ててしまた。





私も何も分からぬままに主人のすべてを子宮の中に吸い取って果てていた。



主人は休む間もなくそのまま二度目に挑戦してきた。



私のからだもすぐに回復し、主人の挑戦を受けた。



最初は、アッという間だったが、二度目は私のからだも快感の宙を彷徨い続け、女の悦びを噛みしめて、いつの間にか安らかな眠りについていた。






夜がすっかり明けて、障子には夏の暑い陽が差して、すっかり明るくなっていた。



目が覚めたとき時計は十時を指していた。



目が覚めると再び主人の静かに抱擁に包まれ、またも愛の波間を漂った。



岩に砕けるような大波はこないが、波の上をふわりふわりと静かな快楽の波に浮き沈み流されているようだった。



小高い丘にふわりと押し上げられたかと思うと、すっと谷底に滑り落ちて沈んでいく。



その浮き沈みの中に泳がされているようだった。



山並みのような快感とその繰り返しが続いて、結婚した女の幸せをひしひしと噛みしめていた。