生命保険に入ってから1週間ほど経ったある雨の日・・・。






午後5時。



由香がわざわざ俺の職場まで迎えに来た。



入社してから残業が続いていたが、今日はいわゆる生面保険加入時の「健康診断」のため定時で、由香と一緒に職場を出る。



由香とはあの日から特段何も進展がなかった・・・というより、上手くはぐらかされているように感じた。



“あれ”は契約を取るためのエサでしかなかったのか・・・?






由香はいつもの営業スマイルで



「雨が降ってるから、タクシーで行きましょ。」



「俺、そんなに金、もってないけど」



「いいのよ、会社の経費だから」



他愛もない機械的な会話が続く。






5分ほどでタクシーはY生命の指定医療機関にしては小さい、診療所に着いた。



ここで心電図や採血など、一通りこなしてゆく・・・。



診断は30分ほどで終わり、待合室で女性週刊誌を読みながら待っていた由香の許に歩み寄る。






「終わった?」



「ああ」



「駅まで・・・連れてってあげる。さっき、会社の車を呼んだけど、混んでるみたいで時間がかかりそうだって・・・雨もやんだし表で待ちましょ?」






俺と由香は2人で表通りへと出て、由香が社用車との待ち合わせ位置らしい場所で止まったので、俺も立ち止まる。



俺の左横で由香が立っている状態だ。



2人とも手持ち無沙汰なので、とり止めもない会話を愉しむ。



由香が俺の方に首を向け俺の顔を見上げるように話す。






「・・・Nクンの出身は、どこ?」



「俺?・・・この近くだよ。小学校までは◯◯ってとこで・・・」






ここで由香が驚いたように



「嘘・・・アタシも◯◯だよ・・・!?」と1オクターブ高い声で答えた。



「へぇ・・・そうなんだ」



「ふふ、偶然って、あるものね・・・クスクス」



会話に弾みがついた。






俺たちは小学校から、お互いの中学、高校の頃の思い出話に花を咲かせた。



由香の顔が、単なる営業スマイルでない朗らかな笑みを湛えているのが分かる。



大人のオンナではない、一人の少女のような・・・。



由香の年不相応な朗らかな笑顔を見て、俺の中にあのどす黒い欲望が蘇って来た・・・。






“畜生・・・結構、かわいいぜ、由香!”






「・・・いいなぁ、Nクン、△△高校なんだぁ。アタシ、××高校だから、頭悪くて・・・」



「・・・・・」



「・・・どうしたの?Nクン、急に黙っちゃって・・・ン?」



由香が俺の顔を覗き込む。






“もう・・・我慢できない!!”






俺はふと!ギュっと由香の左肩をつかみそのムチムチな身体を手繰り寄せ、由香の、グロスが輝く唇に唇を重ねた・・・。






「ぅぐ?」不意をつかれた由香が軽く呻く。






由香の口からはグロスの匂いと芳しい吐息と、微かに苦みばしった口臭が感じられた・・・。



一か八かの賭けだった・・・。



普通の女性であれば嫌われる行為だろうが、俺に一週間前、あの濃厚なフェラチオをしてくれた由香なら・・・。






賭けは成功だった。



別段嫌がる素振りを見せない由香は、「うぅ・・・ん」と妖しく喘いだ。



だが舌を挿れようとすると、ふと由香は唇を離した・・・。






そして、「もぅ、Nクンたら・・・意外と大胆、なんだから♪」と俺に向かい微笑む。






「・・・ここ、街中だヨ・・・?」






由香があの1週間前のあの妖しい笑顔で俺をなじる。






「ホント、エッチなんだから・・・」



「ゆ、由香・・・!」



「ん・・・?」



「・・・よかったら、この後俺と食事にでも・・・」






だが、由香が放った言葉は、意外なものだった・・・。






「あら・・・ホテルじゃなくていいの・・・?」






その言葉と次の言葉は、俺の脳髄と股間にダイレクトに響いた。






「・・・アタシとセックスしたいんでしょ?・・・スケベなNクン♪」