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遠距離恋愛している間彼女が喰われる話 4









26



「はぁ・・・・。」



ため息をつきながら自分の部屋でアルバイトに行くための準備をする果歩、鏡のまえで身なりを整える。



鏡に映る自分の顔は前より少しだけ痩せて見えた。



この2日間まともな食事を摂れなかったのだ。摂れなかったというより、ごはんが喉を通らなかったというべきか。



あれから2日間、果歩は大学とアルバイトを休んでいた。



友哉の携帯に電話したあの夜は、涙が枯れてしまうほど泣き続けた。



次の日、大学に行く時間になっても、体と心が重く感じてとても行く気にはなれなかった。



知子は心配して電話を掛けてきてくれた、果歩が涙声で『大丈夫だから』とだけ伝えると『大丈夫じゃないでしょ』と言って、その後果歩のアパートまでケーキを買って持ってきてくれた。



その時の知子はとても優しくて、一生懸命果歩を励ましてくれた。



そして土曜日の今日、知子の励ましのおかげで少し元気を取り戻した果歩はトミタスポーツのアルバイトに行く事にしたのだ。



しっかりしなきゃと自分に言い聞かせる果歩、それに、アルバイト先にもこれ以上迷惑をかけられない。



だけど・・・



あれから3日、友哉からは折り返しの電話どころか、メールの返事もない。



『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ』



あの時の女性の声、言葉が、思い出したくもないのに頭の中で何回も再生される。



浮気・・・



あの友哉が浮気なんて・・・



そう思うだけで、すぐ眼に涙が溜まってしまう。



グッと目を瞑り、その事を頭から必○に消そうとする果歩。



「もう、バイト行かないと……。」



溢れそうな涙をグッと堪えて、果歩は自宅アパートを出た。



「おぉ!果歩ちゃん!体調大丈夫かぁ?」



トミタスポーツに着いた果歩、スタッフルームの入り口付近で、ここのスタッフで面接の時も同席していた山井に声を掛けられた。



「はい、もう大丈夫です。ご迷惑かけてすみませんでした。」



体調を聞かれたのは、アルバイトを急に休んだ理由を風邪をひいたという事にしておいたためだ。



「そっかぁ、じゃもう普通にバイトの仕事今まで通りできるんだね?」



「はい、大丈夫です、もう完璧に治りましたから。」



「じゃあ、今日はプールの監視員の仕事頼んでいいかな?仕事内容は確かこのまえ富田さんに教えてもらったよね?」



「監視員・・・ですか。」



「うん、まぁほとんど座ってるだけだし、できるよね?」



「は、はい・・・わかりました。」



確かに監視員の仕事は楽すぎるほど楽だ、しかし果歩は気が進まなかった。



「はぁ、またこれ着ないといけないんだぁ・・・。」



更衣室のロッカーの前で、ため息をする果歩。



手に持っているのは、先日も身に着けた果歩の体には少しサイズが小さめの競泳用水着だ。



先日の事を思い出す果歩、自分の身体に向けられる男性会員たちからの視線、そして富田。



富田の身体を見て、淫らな想像をして水着に染みをつくってしまった自分自身のことを思い出す。



しかし、仕事を引き受けた以上、この水着を着ないわけにはいかない。



そう小さな覚悟を決め、果歩は身に着けている衣服を脱いでいった。



・・・やっぱり・・・



室内プールに出てきた果歩は、案の定、複数の男性会員達からの視線感じた。



嫌悪感ではない、しかし、とても恥ずかしかったのだ。



上はTシャツを着ているものの、下半身のハイレグ部分と、水着が小さいために若干食い込んでしまっているお尻の部分、男性会員達の視線は特にそこに集中している。



・・・やっぱこんなの恥ずかしいよぉ・・・



・・・早く監視台に座っちゃお・・・



監視台の椅子に座ってしまえば、下半身を見られることはほとんどない。



果歩は少し小走りぎみで監視台に向かった。



「あれ、果歩ちゃん?」



監視台に向かっていた途中、後ろから名前を呼ばれて果歩は振り返った。



「あ、秋絵先輩?」



そこにいたのは、秋絵だった。しかも秋絵は水着姿、水着は果歩の水着と同様の競泳水着のようだった。



「フフ、果歩ちゃん今日は監視員の係?」



「は、はい。」



果歩は秋絵の水着姿に見とれてしまっていた。



・・・すごい・・・秋絵先輩モデルみたい・・・それに・・・



それに秋絵のプロポーションからは、女の果歩でもドキっとしてしまうような、何か成熟した大人の女性の雰囲気のようなものを感じた。



「果歩ちゃん大丈夫?実は知子ちゃんに食堂で会ったからちょっと聞いちゃったんだけど、果歩ちゃん、友哉君との事で悩んでて休んでるって。」



秋絵は心配そうな表情で果歩を見ながら言った。



「え、知子ちゃんが?・・・はい・・・あの・・・ちょっと・・・」



その事を聞かれ、果歩の顔が少し曇る。



なんだか、こんな場所でも、友哉の事を少しでも思い出すだけで泣きそうになってしまう。



「そっかぁ、私でよかったらいつでも相談のるからね、遠慮なく言ってね。」



「は、はい。ありがとうございます。」



秋絵からそんな風に声を掛けてもらえたのは正直うれしかった。



知子にも励ましてもらったが、自分の中に何か詰まったような思いを、果歩は誰かに吐き出したかったのかもしれない。



尊敬し、憧れている秋絵になら、その詰まったものをすべて曝け出す事ができるような気がした。



そして秋絵なら、そのすべてを受け止めて、いい答えを導きだしてくれる様な気もしたのだ。



「なになに?果歩ちゃん恋の悩みかい?」



「え!?」



突然聞こえた後ろからの男性の声。



いつの間にかすぐ後ろに来ていたその男性の声に聞き覚えのある果歩は少しビックリして後ろに振り向いた。



「な?んだ、じゃあ果歩ちゃん休んでたのは風邪じゃなかったのかぁ」



その声の主は先日同様、ビキニパンツの水着姿の富田だった。



27



「あ・・・すみません・・・あの・・・」



「ハハッ!いいのいいの!果歩ちゃんくらいの年頃は恋の悩みは多いもんだしねぇ。」



バイトの欠勤の理由が嘘だった事を正直に謝る果歩に対し、富田はそんな事は気にしてないよ、といった感じの反応を見せた。



「そうかぁ、そういえば果歩ちゃん、彼氏と遠距離恋愛中だったもんなぁ。」



「は、はい・・・」



果歩は一瞬富田の方を見たがすぐに目線を外して下に俯いてしまった。



プールからあがったばかりの、水の滴る富田の逞しい肉体を果歩は直視できない。



チラッと富田の身体を見ただけで、先日の自分の自慰行為を思い出してしまう・・・。



あの時、果歩は自分が富田に抱かれているシーンを想像して行為に及んだのだ。



そう、今目の前にいる富田の身体をオカズにしてオナニーをした。



あの夜の事を思い出すと、恥ずかしくて富田とまともに会話できそうにない。



下を向き顔を赤らめている果歩。



富田はそんな果歩の身体を上から下までジロ?っとイヤらしい細めた目で見つめる。



そして富田は秋絵の方を見ると、なにか目で合図を送った。



秋絵も富田のその合図に小さく頷く。



「ねぇ果歩ちゃん、今日バイト終ったらちょっと飲みにでも行かない?明日は学校もバイトもお休みでしょ?」



「飲みに、ですか・・・?」



「そうそう!こういう時はパァっと楽しくお酒を飲んで、ストレス発散した方がいいわ。ですよね?富田さん。」



秋絵は明るい表情でそう言い、富田のほうを見た。



「ハハッ!そうだよぉ!よし!今日は俺が奢る(おごる)よ!」



明るく振舞う富田と秋絵、果歩は自分を元気付けようとふたりが誘ってくれているのだと感じた。



「でもそんな・・・なんか申し訳ないです。」



しかし果歩は正直そんな気分ではなかった、今日はバイトが終れば自分の部屋でまた一人で泣きたい気分だったのだ。



泣けば少しは気分がスッキリする。



嫌な事を忘れるためのお酒なんて、果歩は今まで経験したことがなかったため、なんだか気が進まなかったし、それで気分が晴れるなんて思えなかった。



「フフ、大丈夫よ、富田さんお金だけはたくさん持ってるから。」



「おいおい!お金だけってなんだよぉ!ハハッまぁ2人を奢るくらいの金は財布にあるけどなぁ。」



秋絵の言葉に対し富田は笑いながらそう言った。



「フフ、ね?果歩ちゃん、富田さんもそう言ってるし、どうかな?」



もうこうなってしまっては断るわけにはいかない。



「ホントに、いいんですか?」



「もちろん!」



富田が景気良くそう答える。



「じゃあ今日はいつもより早めに仕事あがって飲みに行くかぁ!」



「え、でもお仕事は・・・。」



早めにあがると言っても、他のスタッフの方に迷惑が掛かるのではないかと、果歩は心配そうな表情だ。



「いいのいいの!オーナーの特権特権!ハハッ仕事は他の奴に任せればいいから!」



「富田さんホント仕事いいかげんですよねぇ。」



「いいんだよ!じゃあ、果歩ちゃん、いつもより一時間早くあがっていいから、着替えたら、スタッフルームで待ってろよな?」



「はい。」



・・・飲み会かぁ・・・



監視台の椅子に座る果歩、今日もこの仕事は相変わらず退屈だ。



ボ?っとプールを眺める。



そんな退屈すぎる時間、時計の針の動きが遅く感じる。



そんな時間を過ごすうちに、いつしか水色のプールを眺めていた果歩の視線は、お客さんに泳ぎ方を指導している富田に向いていた。



『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』



ハっとして果歩は慌てて富田を見ていた視線を外した。



先日富田から言われた言葉を思い出したからだ。



どうしてだろう・・・無意識のうちに富田を見つめてしまっていた。



・・・今は友哉の事で頭がいっぱいなはずなのに・・・



恋・・・じゃない・・・



富田に対する果歩の思い。



それが単に性の対象として富田を見てしまっているという事に、自分で果歩はしっかりとした自覚はなくても、心のどこかでわかっていたのかもしれない。



友哉の事で心が疲れきってしまっているというのに・・・



そんな自分の気持ちに、先日の自慰行為の後と同じような罪悪感を感じる果歩。



富田さんは悪い人じゃない、というか富田さんはいい人だもの・・・



でも、富田を見て、変な気持ちになっている自分が、まるで心の中で浮気をしてしまっているようで、自分で自分を許せなかった。



・・・でも・・・友哉は・・・友哉だって・・・



その日、富田と秋絵が提案してくれた飲み会、メンバーは富田と秋絵と果歩、そしてスタッフの中で特に富田と親しい山井の4人だった。



富田は居酒屋の個室を予約していてくれた。



その居酒屋は料理の値段はそこそこするようだったが、味は申し分なく美味しかった。



そんな美味しい料理だから、自然とみんなお酒も進む。



富田 「さぁさぁ!今日は果歩ちゃんを励ます会なんだから、果歩ちゃん、さぁ飲んで飲んで!」



果歩 「あ・・・はい、ありがとうございます。」



秋絵 「富田さんあんまり果歩ちゃんに飲ませすぎちゃダメですよ。」



山井 「まぁまぁ、いいじゃん、俺果歩ちゃんが酔いつぶれるところ見てみたいし。」



果歩 「そ、そんな・・・だめですよ・・・」



富田主催のこの飲み会、果歩にとっては意外と楽しいものになっていた。



富田と山井の話は面白いものだったし、秋絵が少し暴走気味の2人のブレーキ役になってくれている。



暗く落ち込んでいた果歩の心が、少しずつ晴れていくようだった。



友哉の事も、今は思い出すこともない。



果歩も楽しい気分でお酒が進む。これがアルコールの効果なのか、飲めば飲むほど楽しく感じる。



富田のススメもあり、果歩は今まで経験した事が無い程の速いペースでお酒を口にしていた。



コースで出されていた料理もすべて食べ終り、デザートを口にしていた4人。



腕時計を見た富田が口を開いた。



富田 「さて、そろそろ次!二次会行こうか!」



果歩 「え・・・二次会ですか?」



山井 「そうそう、トミタスポーツの飲み会の二次会はいつも富田さんの部屋でって決まってるんスよね?」



富田 「ハハッそうだよ、俺の部屋なら酒もいっぱいあるしなぁ。」



果歩 「富田さんの部屋・・・ですか・・・?」



秋絵 「果歩ちゃん、私も行くから、二次会も富田さんの部屋でどう?」



果歩 「ん?っと・・・どうしようかな・・・」



秋絵 「明日は休みだし、今日はパァっとやりましょ?ね?」



山井 「そうそう!今日はなんたって果歩ちゃんが主役なんだから。」



確かに明日は休みだし、今はとても楽しい時間を過ごせている。



果歩はもう少しこの時間を味わいたいと感じていた。



果歩 「それじゃ・・・はい・・・いいですか?」



富田 「よ?し!果歩ちゃんからOK出たし、おい山井!タクシー呼べ!」



山井 「了解しましたぁ!」



威勢がいい男ふたり、その顔はニヤっとなんともイヤらしい表情をしていた。



この後の事を考えると2人は笑いを堪えることができなかったのだ・・・。



28



富田 「まぁ、適当なところに座ってくれよな。酒とつまみ持ってくるわ。」



盛り上がった居酒屋での飲み会の後、二次会として4人が向かったのは富田のマンションの部屋だった。



果歩 「わぁ?広い部屋ですねぇ!」



富田が住んでいるマンションは、まさに高級マンションと言っていい。



先日果歩が訪れた秋絵のマンション、その部屋も高級感があり広々としていたが、富田のマンションはそこ以上に豪勢で広い部屋だった。



山井 「うらやましいよなぁ。こんな所に住めるなんて。」



果歩 「本当ですね。」



果歩は大きなソファに腰を下ろし、キョロキョロと辺りを見渡している。



部屋が広いだけじゃなく、置いてある家具も高級そうなものばかりだ。



富田 「ハハッ!でもまぁ、これはこれで、掃除とか大変なんだぜ。」



秋絵 「フフ・・・富田さんホントに自分で掃除してます?この前はお手伝いさんに頼んでるって言ってませんでした?」



富田 「ハハッ!まいったなぁ、秋絵ちゃん余計な事言わんでくれよぉ!」



やはりトミタグループの社長の息子であり、トミタスポーツのオーナーでもあるのだから経済的に恵まれているのは当然だった。



こんな遊び呆けているような人間が、このような恵まれた生活を送っていることに苛立ちを感じる人も多いはず。



しかしそんな富田の事を、お人好しの果歩は特に嫉んだりする事はなかった。



むしろ果歩の目には、富田はトミタスポーツのオーナーとして立派に働いているように見えていたため、尊敬のような気持ちさえあった。



最初の居酒屋に続き、二次会も富田が用意してくれたおいしいお酒とつまみ、それに富田と山井の面白いトークで盛り上がっていた。



果歩も辛いことがあった反動なのか、これまで飲んだことがないくらいお酒も進み、頬をピンクに染め、富田と山井の話を聞きながら笑っていた。



・・・やっぱり参加してよかった・・・秋絵先輩も富田さんもこうやって元気づけてくれて・・・やさしいなぁ・・・



果歩は心の中で富田や秋絵に感謝した。



今日は帰っても部屋でひとりで泣くだけだったはずが、今はこんなにも楽しい気分でいられるのだから。



今この時間だけは嫌なことも忘れられる。



4人とも大分お酒を飲み終えて、盛り上がっていた時間から少し落ち着いて、みんなソファに座りゆったりとした時間になった時、富田がふいに口を開いた。



富田 「それにしても、大変だよなぁ果歩ちゃんも、遠距離恋愛ってのは。」



果歩 「え・・・あ・・・はい・・・。」



突然富田にそんな事を言われ、友哉の事を思い出してしまい果歩の顔が少し沈む。



秋絵 「富田さん、そんな事言ったら果歩ちゃん嫌な事思い出しちゃうじゃないですかぁ。」



富田 「あ・・・あはは・・・あ?ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったんだけど。」



富田はばつの悪そうな顔で慌てて謝った。



果歩 「い、いいんです・・・別にそんなお気遣いして頂かなくても・・・。」



秋絵 「フフ・・・あ、そうだぁ果歩ちゃん。彼との事、富田さんと山井さんにも相談してみたら?一応私達より恋愛の経験値はあるだろうし。」



山井 「ハハッ!一応じゃなくて、ありまっせ?経験値、特に富田さんは。そうっスよね?」



富田 「おうおう!果歩ちゃん、俺達でよかったら相談にのるぜ?恋愛相談なら馴れたもんだからさ。」



果歩 「で、でも・・・そんな・・・」



そんな事を言われても、富田達に言ったところで状況が変わるとは思えなかったし、せっかく楽しい飲み会を暗い雰囲気にしてしまうのではと、果歩は思った。



秋絵 「ねぇ果歩ちゃん、今日は果歩ちゃんを励ます会でもあるんだし、ここで思っていること全部言っちゃえばきっと気分も楽になるわよ、ね?富田さん達がしっかり受け止めてくれるわ。そうですよね?富田さん?」



「そうそう!誰にも言わずに悩みを溜め込んじゃうのはよくないぜ?」



確かにそうかもしれない・・・ここで胸に詰まった苦しい思いを吐き出してしまえば少しは楽になれるかもしれない・・・



アルコールが回っていたせいもあるかもしれないが、果歩は誰かに今の自分の状況を擁護してもらいという気持ちになっていた。



こんなかわいそうな自分を慰めてほしいという弱い心に。



富田 「そうかぁ、彼氏の電話に女がねぇ……。」



山井 「いやぁマジこんな可愛い彼女がいるのに浮気とかありえないっスねぇその彼氏。」



秋絵 「私が知っている限り、友哉君はそんな事するような子には思えないだけどねぇ。すごいマジメな子よね?友哉君って。」



果歩 「はい・・・私もそう思ってたんですけど・・・。」



友哉はそんな人じゃない・・・あの優しくてまじめな友哉がそんな事するはずがなかった・・・



そんな事するはず・・・



しかし、あの電話に出た女性・・・・あの言葉は・・・



『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるから・・・』



山井 「甘い!甘いなぁ?果歩ちゃんと秋絵ちゃんは、男なんてそんな美しい生き物じゃないんだぜ?」



富田 「ハハッ、まぁなぁ。」



山井の言葉に富田はごもっともといった感じで頷いている。



山井 「どんだけ真面目そうな男でも溜まるもんは溜まるしねぇ。」



果歩 「え・・・たまる・・・?」



富田 「ハハッ果歩ちゃん、果歩ちゃんだって男がある事をしないと溜まってちゃうモノがある事くらい知ってるだろ?」



果歩 「え・・・そ、それは・・・。」



もちろん、果歩もそれが何なのかは理解できたが、恋愛相談のはずが突然の下の話に、果歩は顔を赤らめる事しかできなかった。



29



秋絵 「フフ、2人ともなんで急に下ネタなんですか?これは恋愛相談ですよ?」



言葉に詰まって困っていた果歩を見て、秋絵は男ふたりに言った。



富田 「ハハッ果歩ちゃん、恋愛の話と性の話は深く結びついてるんだよ?」



果歩 「・・・そう・・・なんですか・・・?」



果歩は富田の言っている意味がよくわからなかったのか、首を傾げている。



山井 「まぁさ、果歩ちゃん、男はあれが溜まってムラムラしているところに、セクシーな女とかが近づいてきたら、だいたいヤっちゃう可能性が高いんだよねぇ。」



富田 「残念ながら遠距離とかで彼女に会えない奴なんてとくにね。」



果歩 「そ・・・そんなぁ・・・。」



・・・そうなの?・・・男の人ってみんなそうなの・・・?



アルコールのせいで涙脆く(なみだもろく)なっていたのか、果歩は男ふたりの言葉を聞いて目に涙を浮かべていた。



富田 「まぁ果歩ちゃんさ、果歩ちゃんはまだ若いんだし、何事も経験さ。今回の彼氏の事は残念だったけどさ。」



果歩 「・・・・・・・。」



富田 「女の子はいっぱい恋をしたり、いろんな経験して魅力的な大人の女になっていく訳だし。今回のことも、その一部だと思ったほうがいいよ、な?」



秋絵 「そうよ果歩ちゃん、恋も他のいろんな事もたくさん経験した方がいいわ。いい大人の女性になって、友哉君を見返すくらいにならないと。だから今回の事も、いい経験だと思ったほうがいいわ。」



果歩 「・・・でも・・・私は・・・友哉の事が・・・。」



友哉の事をそう簡単に忘れられることなど、今の果歩にはまだできるはずもなかった。



秋絵 「まだ無理して友哉君の事を忘れようとしなくていいの、時間を掛けてゆっくりでいいのよ、ゆっくり・・・。」



果歩 「・・・ハイ・・・。」



果歩は消え入りそうな小さい声で、悲しそうに返事をした。



山井 「そうそう!浮気してた彼氏の事なんてはやく忘れて、新しい幸せを見つけたほうがいいっしょ!」



新しい幸せと言われてもピンと来なかった。



これは果歩にとって初めての失恋だったからかもしれない。



失恋の後の対処法を何も知らないのだ。



・・・新しい恋人を見つけるって事・・・?



・・・でも今はとてもそんな気分じゃ・・・



富田 「まぁとりあえず今日はさ、果歩ちゃんが早く彼氏の事を忘れる事ができるように俺達が協力するからさ。ささっ飲んで飲んで。」



そう言いながら富田は果歩の隣に座ると、果歩が使っていたグラスに新たにお酒を注いだ。



果歩 「あっ、富田さん、もう私は・・・。」



もう結構飲んだ後だ。



今日の果歩はすでに今までにないくらいアルコールを摂取してしまっていた。



これ以上飲むのは少し怖い気がする・・・



富田 「いいじゃんいいじゃん、たまには、この酒うまいんだぜ?」



果歩 「じゃあ・・・後一杯だけ・・・。」



断れない性格の果歩、これだけ進められたら、あと一杯くらいは飲まない訳にはいかない。



ゴク・・・ゴク・・・



富田 「お?いいねぇ!いい飲みっぷりだねぇ!」



グラスを口に運び、半分ヤケになった様に一気に入れられたお酒を飲み干す果歩。



もう今夜は・・・今夜だけは、ここにいる先輩達に甘えてもいいかも・・・と果歩は思い始めていた。



・・・はぁ・・・熱い・・・なんだか体が熱くなってきた・・・



どうやら富田がさっき注いだお酒はアルコール度数がかなり高めのお酒だったらしい。



ちょっとだけ覚めかけていたアルコールが再び効き始め、頬がさらにピンクになっていく果歩。



秋絵 「フフ、でもねぇ果歩ちゃん、女の子にはまだ果歩ちゃんが知らないような幸せがいっぱいあるのよ。」



富田とは反対側の果歩の隣に座った秋絵がポ?っとアルコールが回ってきている果歩に話しかけた。



果歩 「・・・私がまだ知らない幸せ・・・・ですか・・・?」



ボ?っとする頭で考えてみても秋絵の言っている意味がよくわからなかった果歩。



その時、秋絵は何やら怪しい笑みを浮かべて、果歩に気付かれないようにして山井に目で合図を送った。



山井はその合図を確認すると、ニヤっと笑い口を開いた。



山井 「そういや、彼氏の事は置いておいても、果歩ちゃんは大丈夫なの?」



果歩 「え?・・・大丈夫って何がですか?」



富田 「ハハッ、そうだよなぁ、果歩ちゃんも女の子とはいえ、年頃だもんなぁ。」



富田と山井がニヤニヤと笑みを浮かべているが、果歩はその意図する事が何なのかサッパリわからない。



山井 「果歩ちゃんもさ、彼氏と遠距離ってことは、いろいろと溜まってんじゃないのぉ?」



果歩 「えっ……?」



富田 「ずっとしてないんじゃ、溜まってるんだろ?果歩ちゃんも。」



果歩 「え?え?・・・な、なに言い出すんですか2人とも・・・。」



男ふたりの質問の意味がわかった果歩は、カァっとピンク色だった顔色を赤色に変えて言った。



というか、こんな質問は普通、男性が女性に面と向かって言うことではないと思った。



秋絵 「フフ、ちょっと2人とも質問がストレートすぎますよ。」



困り果てる果歩をフォローするように秋絵が富田と山井に言った。



山井 「ハハッごめんごめん!でもさ、実際問題あるだろ?果歩ちゃんだってムラムラする事。」



果歩 「・・・そ・・・それは・・・。」



正直者で嘘をつけない性格の果歩は、そんな事ありませんとは言えずに言葉に詰まってしまう。



富田 「清純で可愛い果歩ちゃんも人間だもんなぁ、果歩ちゃんがそういう時どうやってムラムラを処理してんのか興味あるわぁ!」



果歩 「と・・・富田さん・・・・。」



あまりに直接的な富田の言葉にもう恥ずかしくてしかたない様子の果歩。



いや恥ずかしいと言うより、もうこれはセクハラのようなものだ。



しかしここで、今まで男ふたりの下ネタから果歩を守ってくれていた秋絵が信じられない言葉を口にする。



秋絵 「フフ、果歩ちゃんは……果歩ちゃんはムラムラしたらバイブオナニーで処理してるんだよねぇ?」



30



果歩 「あっ秋絵先輩!!?」



果歩は自分の耳を疑った。



秋絵が今言った事、あの事は心を許した女の子同士の秘密だったはず。



秘密だったはずというか、常識的に暗黙の了解で秘密のはず。



山井 「うっわ?マジ!?果歩ちゃんバイブ使ってんの!?」



富田 「ハハッていうか、果歩ちゃんがオナっちゃてるって事実だけでなんかすごいな。」



果歩 「え?あ…あの……。」



もう恥ずかしいどころではない。



それにアルコールで意識ボーっとしているのもあり、思考もうまく回らない。



パニック状態の果歩は富田と山井に何を言われても返す言葉が見つからなかった。



秋絵 「これだけ可愛い果歩ちゃんも人の子だものね、いいのよ果歩ちゃん、それぐらいの事は女の子でもほとんどの子はしてるわ。」



果歩 「秋絵先輩……でも、どうして・・・?」



・・・どうして富田さんと山井さんの前でそんな事・・・



秋絵 「フフ・・・ごめんね、果歩ちゃん。でもね、果歩ちゃんが大人の女性に一歩近づくにはこういう勉強も必要なのよ?」



果歩 「・・・秋絵先輩・・・よく言ってる意味が・・・勉強って・・・?」



秋絵 「だからね、女の子だってエッチな勉強は少しはしないとね。男の子が逃げてっちゃうのよ。」



果歩 「・・・でも・・・私は・・・。」



秋絵 「友哉君がなぜ浮気しちゃったのかはわからないけど、これからのために果歩ちゃんはもう少し知識と経験を増やしておいた方がいいと思うわよ?」



果歩 「そんな事・・・言われても・・・。」



確かに同年代の周りの子と比べれば果歩はそういった事の知識も経験も少なかった。



・・・でも・・・だからって・・・私がそんなだから友哉は他の女の子と?・・・そんな・・・・



秋絵 「幸いここにいるお二人さんは、知識も経験も豊富だしね。」



富田 「よ?し果歩ちゃん!俺達で良かったらいくらでも協力するぜ?なぁ山井?」



山井 「もちろんっスよ!果歩ちゃんのためなら何でもするって。」



そう言って果歩に詰め寄ってくる男ふたり。



果歩 「えっ!?…ちょ、ちょっと!待ってください!」



果歩は反射的に逃げるようにソファの背もたれの方に身体を引いた。



話が想像もしてなかったあらぬ方向へ進み始めて、果歩の頭の中はさらにパニック状態になっていた。



果歩 「あの…なんか、話が変な方向にいってません?」



秋絵 「フフ、果歩ちゃん、もしかして果歩ちゃんは友哉君と付き合っていてもこういった事は全部受身だったんじゃない?」



果歩 「…それは…。」



そう言われれば、友哉との交わり時はすべて友哉に任せて、友哉の言う通りにしていただけだった。



しかしそれは、果歩は知識も経験もなく、恥ずかしがり屋でもあったため仕方がなかった事かもしれない。



富田 「ハハッなるほどね、果歩ちゃんは彼氏にまったく自分の気持ちを解放していなかったって事だな?それじゃ彼氏さんがちょっと気の毒だなぁ。」



果歩 「…解放って言われても…。」



なんだかこれでは果歩が性に疎いせいで友哉が浮気したんだと言われているようだ。



山井 「男ってのは相手に気持ちよくなってもらってなんぼだからなぁ・・・果歩ちゃんが気持ちを解放してくれなかったら・・・彼氏の気持ちも盛り上がらないよなぁ。」



果歩 「そんな事言われても・・・。」



確かに友哉の前で果歩はそんなに乱れた姿を見せた事はない。



秋絵にもらったバイブレーターでのオナニー。

あの時のような興奮は友哉との性交で感じた事はない。



・・・でも、それって私が悪いの・・・?



友哉にまかせっきりだったから・・・?



秋絵 「フフ、果歩ちゃんは友哉君にフェラチオもしてあげた事ないんだよね?」



果歩 「・・・ハイ・・・。」



フェラチオ、男性器を口に含んだり舌で刺激したりする行為。



果歩は知識としては知っていても実際に友哉にしてあげた事はなかった。



それは友哉から頼まれたこともなかったし、もちろん恥ずかしがりやの果歩から積極的に行為に及ぶことなどあるはずがなかった。



しかし、果歩の本心では、フェラチオに興味がないわけではなかった。



それどころか先日、果歩は男根の形を模ったバイブレーターをまるでフェラチオをするように口に含んで舐めていたのだから。



山井 「え?マジ?果歩ちゃん彼氏にフェラしてあげたことないの!?あ?そりゃ彼氏かわいそうだわぁ!」



富田 「今時フェラチオしないカップルなんて珍しいよなぁ?」



果歩 「そ、そうなんですか・・・。」



なんだかさっきから果歩は自分ばかり責められているようで、今にも泣きそうであった。



しかしその一方で、富田達が言うとおり、性に消極的な自分に友哉は不満を抱いていたのかもしれない、と思うようになっていた。



秋絵 「フフ、果歩ちゃん、じゃあ果歩ちゃんのこれからの恋愛生活のためにも、ちょっとここで練習してみない?」



果歩 「練習・・・ですか・・・?」



秋絵 「そう、フェラチオの練習をね。」









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